DACユニットの検討(製作編26)

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製作編26

前回セットアップしたジグ基板を使ってDACユニットのバランス出力特性の測定を行います。

バランス出力特性測定

測定時のファームウェアは、各DAC基板をモノラル動作させるバランス出力モード仕様です。Rチャンネルのみ検討用にINZD=1としてゼロデータ時のディザ出力を止める設定としています。最初に1KHz 0dBを再生してスペクトラム確認を行いました。

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2つの結果を掲載していますが、上がジグの平衡不平衡出力の観測結果で、下が2次のLPF出力の観測結果です。どちらも差はなく、ダイナミックレンジ72dBとなっていました。下の結果は以前に測定したHot出力の結果です。

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この場合のダイナミックレンジは57dBでした。バランスモードの動作によってダイナミックレンジが15dB改善したと言えます。次は1KHz -60dBの再生を行って上記と同様の確認を行いました。

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アンバランス変換後のダイナミックレンジは86dB、LPF出力のダイナミックレンジは約94dBと読みとれます。しかしLPFのカットオフ周波数は約120KHzなので、オーディオ帯域で差が発生するはずがありません。この結果について考えてみました。測定結果画面下の表示から、この測定時のサンプリグ周波数は50KHzです。本測定時に25KHz以上の信号(ノイズ)が入力されると折り変えされて結果に加算されてしまいます。今まで漠然とこのFFT機能がFFTアナライザと同じ用に使えると考えていましたが、オシロFFT機能にはアンチエイリアスフィルタがないと考えるとつじつまが合います。高い周波数の正弦波を低い掃引速度で観測した時に低い周波数の正弦波として見える事を思い出しました。オシロFFT機能を使う場合には、サンプリング周波数に応じて入力信号の帯域をカットする必要がありそうです。これが正しいとするとFFTアナライザーと大きな違いとなるので、別途検証を行ってみたいとおもいます。上記が正しいとすると、現状のDACユニットのダイナミックレンジの実力はLPF出力で観測した94dB以上あると言えます。別途行う検証結果によりますが、測定用にさらに帯域外を減衰させるためにLPFを製作して本来の実力測定を行いたいとおもいます。次の結果は1KHz -60dB再生時のLPF出力を2.5MHzサンプリングしたものです。

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オシロスコープFFT機能の折り返しが発生する1.25MHz以上は、LPFによって十分減衰されているので、この結果は実体を示していると考えられます。60KHz近辺で-60dB再生信号基準で-40dB以上下がっているように見えます。この結果からも追加でLPFジグを作成して再測定をすべきとの結論となりました。次は1KHz-60dB再生時の波形比較結果です。

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LPF出力の方が波形の再現性が格段に良くなっています。本結果に関連しますが、次は無音時の波形モニタ結果です。

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上が平衡不平衡回路出力で、下がLPF出力です。LPFによってディザ信号が抑圧されている事がわかります。DAC ICの説明資料にこのあたりがどのように説明されているか気になり、改めて確認してみました。下記は関連内容の抜粋です。

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この資料は1KHz -60dB再生時の正確なダイナミックレンジを測定するには、fs/2以上を急峻にカットするフィルタを使用する事が説明されています。この説明に従って追加でカットオフ周波数50KHz程度の2次のLPFを2回路製作して追加測定を行ってみたいとおもいます。

 

つづく(製作編27)