まとめ編4
制御ソフトのまとめとDACユニットの評価結果のまとめをします。
制御ソフト
制御ソフトはC++準拠のarduino言語でソースを作成しました。編集、コンパイル、転送、デバッグの全ての機能をもつ開発統合環境IDEが無償で提供されています。
今回実装したものは、PCM1792Aが持つ下記の機能を利用しました。
1)アッテネータ機能
2)ΔΣ変換オーバーサンプリング倍率切り替え
3)オーディオ信号の位相切り替え
アッテネータ機能は、12チャンネルアッテネータの分解能を補完する為、0dB, -1dB, -2dB, -3dBの4ステップのみを実装しました。ΔΣ変換オーバーサンプリング倍率は64fsと128fsの切り替え機能を実装しましたが、デフォルトを128fsとしたため実使用時に64fsに切り替える事は基本的にありません。位相切り替えはせっかくなので入れた程度の機能です。ソフトウェアの処理フローは以下のとおりです。
電源オン後のデモ表示はソフトウェアのバージョン表示のために設定しました。
ΔΣ変換オーバーサンプリング倍率切り替えは以下のとおりです。
アッテネータ切り替え時の表示は以下のとおりです。
最後に位相切り替え時の表示です。
特性の測定
今回は初めて、オシロスコープのFFT機能を使って特性測定を行いました。オシロスコープはアンチエイリアスフィルターを持っていないので、DACユニットの8倍オーバーサンプリング前提として、オシロスコープのサンプリング周波数50KHz時用に2次x3段のフィルタを製作して測定を行いました。また、バランス出力の効果も含めて特性測定するために、平衡不平衡変換回路も測定用ジグ基板に実装しています。回路図は以下のとおりです。
測定時は、DACユニットの平衡不平衡変換回路基板に段積みして使用しました。
測定はCDプレーヤーでテストディスクを再生して出力波形とスペクトラムのモニタを行います。最初は1KHz/-60dBの再生波形です。
上がDACユニット出力で、下ががフィルタ出力波形です。位相特性を重視してDACユニットのポストフィルタを1次x3段としている事で、高周波のディザ信号が漏れているため、ノイジーな波形となっています。これもHigh-ch用のアンプが帯域が広くはない真空管アンプを前提としている為です。測定用のジグのフィルターを通すときれいな波形になります。無音時のディザ信号レベルは以下のとおりです。
1kHz0dBと-60dBの正弦波を再生して、ダイナミックレンジの測定を行いました。
写真は-60dB信号再生時のスペクトラムです。この結果から-60dB再生時のダイナミックレンジは約110dBと言えます。最後は997Hz/-90dB再生波形です。
上がDACユニット出力で、下がジグフィルタ出力です。DACユニット出力は信号がディザに完全に埋もれてしまっていますが、ジグのフィルタを通すと波形が視認できました。
まとめのまとめ
ブレッドボードの加工図と外観写真を再掲載します。
今回の製作をとおしてDACユニットの理解ができ、マルチビット&ΔΣ変換のハイブリッド方式を採用したPCM1792Aの実力の一端を確認する事ができました。既製品では難しい?贅沢な部品選定と、割り切った設計でいい感じの音に仕上がったとおもいます。5月末から約4ヶ月間おつきあいいただきありがとうございました。次回からは完成したバラック版のDACユニットを一旦ばらして、ケース実装を進めます。記事はタイトルを「DACユニットの製作」に変更して完成を目指します。また、アップロードは従来通りの週2回に戻します。
おわり(まとめ編4)