無帰還広帯域真空管アンプ(構想編5)

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構想編5

前回の記事に引き続き現行アンプの周波数特性のシミュレーションの精度アップについて検討します。

前回のおさらい

現行のHigh-ch用アンプの周波数特性を初段出力と終段入力部の一次フィルタと、出力トランスと負荷抵抗の一次フィルタにモデル化してシミュレーションを行いました。その結果は以下のとおりです。

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上図は実測値とシミュレーション結果ですが、いい線まできていますが一致していません。肩特性を見ると一致しているので他のポールが影響を与えているとは考えにくいです。そうするとシミュレーションで使ったLCR値の実際とのズレを疑う必要があります。

LCR値の見直し

なぜ細かな点に拘るのか説明しておきます。ざっくりSRPP回路による無帰還アンプの周波数特性の改善検討を行ってみましたが大きな改善は難しそうな事がわかってきました。そんな検討をしていたところ、その昔カセットデッキの周波数特性が16kHzから18kHzに改善した事に大きな喜びを感じた事を思い出しました。今回もそのレベルの改善の可能性検討になりそうと考えて周波数特性のシミュレーション方法に拘っています。本題に戻ります。まず頭に浮かんだ点は配線の浮遊容量です。ネット上で調べてみると、0.5pF程度との事なので値としては小さいですが、ミラー容量への影響はそれなりになると考え直して、考慮してみる事にしました。前回の記事で使った容量値に対して、終段真空管のCgとCgaに0.5pFを加算しました。シミュレーションに使用する容量値を整理します。

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終段の入力容量は、ミラー効果により47.2pFから53.7pFと6.5pF増えました。この値を使って初段出力と終段入力間の周波数特性のシミュレーションをやり直してみました。

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グラフは初段出力と終段入力部間の前回のシミュレーション結果との比較です。ややカットオフが下がりました。この結果と出力トランスの特性を合わせて測定結果と改めて比較します。

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前回の結果よりも実測値い近づきましたが、依然として差が残っています。さらに考えてみましたが結果に近づける根拠のある要因が思いつきません。仕方がないのでこの結果を現行機の特性と仮定して、改善検討を行う事にします。

SRPP回路設計1

構想編2で検討しましたが現行機の初段負荷を真空管回路に置き換えてみます。初段をIp=1mA、等価負荷抵抗を約100kΩを念頭にSRPP真空管負荷回路のロードラインを引いてみました。

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rk=2kΩで等価負荷抵抗値が120kΩ、出力抵抗が38kΩとなっています。この時の初段管のロードラインを引いてみます。

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負荷抵抗値はSRPP回路等価負荷抵抗値120kΩと終段入力部の390kΩの並列接続となるため、90kΩとしています。rpは動作点のVp-Ip特性の傾きなので26kΩと推定しました。終段は現行機と変更していません。上記を回路図に反映してみました。

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電源回路は後で考えるとして本回路の初段出力部の抵抗をまとめてみました。

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上記表のパラメータ間の関係は以下のとおりです。

Ro = rp || Rl || Ri (||は並列接続を意味します)

Zo = Ro + Rg

この結果を見ると初段出力と終段入力部のフィルタを構成するZoは18.7kΩから17.7kΩに改善しますが、改善量はいまひとつでした。なかなかうまくいかないものです。次回は回路の見直しにより改善量のアップの検討を行います。

 

つづく(構想編6)