無帰還広帯域真空管アンプ(製作編9)

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製作編9

ブリーダー抵抗値を変えながらチョークインプット電源の動作確認を行います。

ブリーダー抵抗

検討用に10KΩと4.7KΩの3W品をそれぞれ5本購入しました。電源トランスの二次巻き線出力はAC180Vなので、無負荷時のピーク二次巻き線電圧は約254Vになります。チョークインプット電源が無負荷の場合、コンデンサインプット電源と等価となり254Vが出力されます。ここに10KΩをつけると、ブリーダ抵抗の消費電力は最大で約6.5Wとなり、定格値をオーバーしてしまいます。そこで、まずは10kΩを直列に接続してブリーダ抵抗を20kΩとして動作確認をします。写真は20KΩをパラレル接続した状態ですが、配電用のラグ端子にブリーダー抵抗をハンダ付けしています。

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電源オンして出力波形をACとDCモードで観測しました。

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写真上はDCモードで出力電圧を、写真下はACモードでリップル波形をカーソル機能で測定しています。出力電圧は222Vでリップルは33mVppでした。続いて20KΩをパラレル接続してブリーダー抵抗値を10KΩとしたときの結果です。

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同様に出力電圧は213Vでリップル電圧は32mVppでした。次は直列抵抗の組み合わせを10kΩと4.7kΩとして、それをさらにパラレル接続しました。ブリーダー抵抗値は7.35kΩです。

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出力電圧は197V、リップル電圧は54mVppとなりました。一旦観測結果を整理してみます。

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表の観測結果がチョークインプット電源の特性となっているのかわかりません。もう少し電流を流して確認する必要がありそうです。設計上のB電源の出力電流は66mAで、チョークコイルの定格電流が100mAなので、電源自体で流せる電流の最大値は34mAとなります。電源の出力電圧の設計値165Vに対して、低負荷時の出力電圧は約200Vとなり、初段の等価抵抗として動作させる真空管のヒーターとカソード間の耐圧90Vを越えてしまいます。あまりやりたくはありませんが、電源オン直後と初段動作確認時のみブリーダー抵抗を並列接続する等の工夫が必要となりそうです。そもそも現状がねらい通りの動作をしているのかもう少し確認をしてみます。さらに4.7kΩと10kΩ直列接続した抵抗を並列に接続していき、その時の出力電圧とリップル電圧を観測しました。観測結果は以下のとおりです。

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表中の最大負荷状態は、負荷抵抗が約3kΩで、そのときの出力電圧が163Vとなっていました。まだ定格の約半分しか流していませんが、出力電圧が設計値を割り込んでしまっています。本記事のアイキャッチ写真はこの時の整流出力と出力のリップル電圧波形です。結果を理解しやすくするためにグラフ化してみました。

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観測結果最大負荷時のリップル電圧はすでに83mVppと高くなっているのでなんらか対策が必要です。状態を把握するために最大負荷時にチョークコイルにかかる電圧を確認してみます。ch1に整流出力をch2に電源出力を接続して、オシロスコープの演算機能を使って表示しました。

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黄色のラインが整流出力で青のラインが電源出力です。どちらも画面の下端がGNDレベルで50V/divで観測した結果です。赤のラインが差電圧です。整流出力と電源出力の電圧が同じとなるポイントにカーソルを配置しています。さらに動作を理解する為に交流の等価回路を考えてみました。

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信号源は50Hz正弦波の全波整流信号です。Rcはチョークコイルの直流抵抗分です。チョークコイル電解コンデンサで二次フィルターを構成してリップルを抑圧しています。この回路に負荷電流が重畳されている事になります。リップル電圧は平滑用の電解コンデンサの容量を大きくすれば改善すると考えられますが、出力電圧はRc値を小さくする、すなわちチョークコイルを変更しないと上げる事ができそうにありません。まずは一旦平滑用電解コンデンサの容量を大きくして様子を見たいとおもいます。雲行きが怪しくなってきましたが、つづきは次回とします。

 

つづく(製作編10)