無帰還広帯域真空管アンプ(製作編12)

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製作編12

引き続きB電源の検討を行います。

B電源問題点

設計した回路の初段のSRPP構成の等価抵抗動作をさせる真空管のヒーターとカソード間の耐圧仕様を守るために初段の電源電圧を180V以下に押さえる必要があります。前回のチョークインプット電源の動作確認結果から負荷電流を30mA以上流さないと出力電圧が180V以下にならない事が確認できました。ブリーダー抵抗で30mAを流してしまうと定格動作時の負荷電流が約100mAとなり、電源電圧が設計値を大きく割り込んでしまいます。解決する方法として考えたのは以下2案です。

1)電源電圧に応じてブリーダー抵抗を切り替える

2)初段のみ別電源として定電圧化する

1案の課題は、回路追加が必要となり、誤動作で真空管を壊してしまう恐れがあります。2案の課題は、もう1系統電源回路が必要となります。どちらも一長一短ですが、真空管アンプにロジック回路を搭載するのは今一つと考え、2案を検討する事にしました。

電源回路追加検討

回路の実装場所を検討します。現状の設計は、-5V電源のみ基板に実装予定の為、電源基板として47x36mm品を選定していました。さすがにこの基板に電源回路を追加実装する事は無理そうです。1サイズ大きな基板(72x47mm)在庫があったので使えないか確認してみます。(写真左)

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幸い選定済みの基板の長辺と在庫基板の短辺の長さが同じ為、固定用の穴をうまく開けると現状のスタッドに基板の固定はできそうです。実際に加工してみました。

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実際にシャーシに取り付けてみるとこんな感じです。

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電源トランス2次巻き線用の配線が干渉しましたが、ギリギリ取り付けができました。これで電源回路の実装スペースが確保できました。

電源回路検討

実装スペースは確保できたものの十分ではないので、できる限り部品点数を減らす事を考えながら回路検討を行います。入力電圧はAC180Vの全波整流出力なので、約254Vとなります。出力電圧は165Vとすると、電源のドライバで約90Vドロップさせる必要があります。幸い負荷は初段回路のみなのでL/R合計で4mAのみです。従って電源ドライバの消費電力は約360mW程になります。現行の真空管アンプの電源のドライバはダーリントン接続としていますが、消費電流が小さく消費電力も小さいため、プリドライバ段で使用しているトランジスタのみでドライバが構成できるのではと考えて確認してみました。プリドライバで使用しているトランジスタ東芝製の2SC5122です。

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上記のとおり実装スペースもあまり必要ありません。続いて特性を確認します。

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上が絶対定格で、下がAC特性表です。コレクタ損失は900mWの為仕様範囲内です。hfeはIc=1mA条件でmin80です。負荷電流が小さい為この程度で十分そうです。念のためPc-Ta特性も確認してみました。

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消費電力360mWであれば周囲温度100℃までいけます。十分ではありませんが余裕はあります。それではこのトランジスタを使って定電圧回路を設計してみます。いつもの回路なので容易に設計できました。

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基準電圧をつくる抵抗には0.8mAを流します。電源の出力電流は4mAなのでその時のベース電流は0.05mA(Max)となります。0.8mAに対して十分小さいので問題なしと判断しました。出力の1MΩは無負荷時に約0.17mA電流を流して出力電圧を安定化させます。この回路であれば準備した基板スペースに実装できそうです。次回は部品を調達して電源実装を行います。

 

つづく(製作編13)