無帰還広帯域真空管アンプ(製作編30)

f:id:torusanada98:20210504080058j:plain

製作編30

引き続き通電確認を行います。

チョークインプット電源電圧

終段の電源はチョークインプット電源です。チョークインプット電源は、出力電流によって電圧値が変動する事を確認していますが、アンプの電源投入後プレート電流が流れるまでの電圧をモニタしてみました。オシロスコープの掃引速度を下げてスクロール状態にして確認を行います。結果は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20210504080126j:plain

電源投入後、約5秒で最大電圧233Vとなり、ヒーターが暖まりプレート電流が流れ始める事で約7秒後から電圧が下がり始め、約14秒後に158Vで安定しました。オシロスコープの設定を確認するため、電源オンを何度も繰り返していたため、ヒーターが暖まっていた事を考えて、5分以上間隔をあけて再度測定しなおしてみました。

f:id:torusanada98:20210504080143j:plain

案の定、電圧が安定する時間が約20秒に増えました。終段の6N6Pの最大プレート定格電圧は300Vなので、この特性でも問題ありません。これで終段の通電確認は完了です。

初段通電確認

初段はSRPP回路初採用な事もあり、片チャンネルづつ通電確認を行います。初めにL-chの確認を行います。L-ch用真空管ソケットに12AY7を2本取り付けました。

f:id:torusanada98:20210504080205j:plain

購入した12AY7は、electro-harmonix製ですが、個体によって捺印の位置が異なります。真空管アンプの製作を始めた頃は、捺印が正面となるように拘りましたが最近はあまり気にしなくなりました。終段の通電確認と同様に、シャーシ内に触れられるように上下を逆さまに置いて電源オンしました。とりあえず何も起きずにほっとしました。真空管各端子の電圧は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20210504080234p:plain

設計以上に、SRPP等価抵抗動作をする真空管の電圧ドロップが大きく、差動入力用真空管のプレート電圧が設計よりも約10V下がってしまっています。下記が設計時の等価抵抗動作する真空管の特性図です。

f:id:torusanada98:20210504080259p:plain

等価抵抗値が120KΩで、プレート電流が1mAなので、電圧ドロップが120Vとなるはずですが、この図から108Vとしていました。下記は設計時の初段差動入力真空管のロードラインです。

f:id:torusanada98:20210504080323p:plain

プレート電圧が60Vでも、カソード-グリッド電圧が-1Vと入力信号に対して余裕がありませんが、さらに余裕のない状態となっています。初段の電源電圧を見直す必要がありそうです。続いて、R-chの真空管も装着して通電確認を行いました。

f:id:torusanada98:20210504080352j:plain

見た目はいい感じですが、初段の負荷電流が増えるため、電源電圧が下がりさらに厳しい状態となりそうです。電源オンして同様に真空管各端子の電圧確認を行いました。端子に触りにくい部分は、耐圧保護回路基板の入力端子の電圧を測定します。差動入力用のプレート電圧をモニタしている黄色の被覆の電線が接続された端子台の電圧が異常な事に気づきました。即座に電源オフして確認したところ、真空管ソケット側の接続のハンダ不良が原因でした。

f:id:torusanada98:20210504080417j:plain

写真はわかりやすいように、電線をソケットの端子から引き抜いた状態です。ハンダをやりなおし、通電確認再開です。結果は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20210504080445p:plain

予想どおり、負荷電流が増えた事で電源電圧が下がり、差動入力用の真空管のプレート電圧が34Vまで下がっています。尚、L-chはこの状態で測定をやり直す為、網かけしています。続けてこの状態で、L-chの測定をやりなおしました。結果は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20210504080530p:plain

この結果から、初段の電圧を20V以上上げる必要がありそうです。ここまできて、設計の見直しとは、とほほ・・・。次回は対応策を検討して対策を行います。

 

つづく(製作編31)