無帰還広帯域真空管アンプ(製作編34)

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製作編34

引き続きL-ch Cold側の初段ゲインが小さい原因の検討を行います。

閑話

完成後の動作確認がうまくいかない中、本日は会社の変電設備法令点検立ち会いの為休日出社しました。前任者は本年3月に定年退職されので今年から私が引き継ぎました。数年前にとった電験三種の資格が初めて役にたちます。具体的な点検作業は出入りの業者が行い、電源遮断前の準備と復電後の設備の再立ち上げおよび確認のみです。点検中は、ノートパソコンはバッテリーで動作できますが、ネットワークが使えない為、間がもちません。週明けの会議用資料はすぐに完成してしまったので、今後の製作のネタ検討をして検査終了を待ちました。予定よりも早く完了し、15時に解放されました。やれやれ。

前回のおさらい

L-chの初段真空管を新たに購入したものと交換しましたが、症状に変化はありませんでした。検討を行っている中で、Hot側のRkのまわりの波形を観測した場合に、なぜか症状が改善する場合がある事を見つけました。まだこの事象を原因検討には繋げられていません。

初段差動アンプ確認

症状発生時の動きがまだ理解できていない状態です。未確認の初段差動アンプまわりの信号確認を行います。初めに差動アンプのカソード電圧を確認してみました。

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青の波形が初段差動入力用真空管のカソード波形です。なぜか100mVppで変動しています。黄色の波形はCold入力波形で200mVppです。赤の波形は両波形の差信号です。この差信号がCold側真空管の入力信号となるため、実質の入力レベルは100mVppとなっている事がわかりました。同様にHot側のレベル確認も行います。

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Cold側とは逆に、実質の入力信号が大きくなっています。これらの結果から、差動アンプがバランスした動作をしていない事がゲインが小さくなっている要因と考えられます。真空管が理想特性とすれば、バランス動作をしなくてもゲインはかわらないとも考えられます。バランス動作をしていない原因として最初に疑ったのは、初段の定電流ダイオードがダメージを受けている可能性です。但し、初段のバイアス電流のトータルは約2mAの確認ができているので、静特性は問題ないと考えられます。まずは電源オンまたはオフ時に定電流ダイオードに過電圧がかかっていないか確認をしてみました。下記波形は、両チャンネルの初段差動アンプ真空管のカソード電位の遷移です。

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両チャンネルともに、電源オンで-5Vとなり、真空管のヒーターが暖まりプレート電流が流れ初めて最終的に0.5V付近で安定します。この波形は想定どおりでダメージを与えるようなものではありませんでした。同様に電源オフ時の電位の遷移も確認しました。

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電源オフでカソード電位が少し上がるものの問題となるレベルではありませんでした。

症状の整理

・初段のHotとColdのアンバランス動作により各相のゲインが異なっている

・HotとColdの入力レベルが同じにもかかわらず初段がアンバランス動作する原因は、

 初段差動アンプ用真空管のカソード電位の振れに起因する

・Hot側初段Rkまわりをオシロのプローブでつまむと、症状が改善する場合がある

なぜ初段動作がアンバランス状態で安定動作をしてしまうかが対策のキーと言えます。原因検討に行き詰まってしまったので続きは次回検討します。

 

つづく(製作編35)