無帰還広帯域真空管アンプ(製作編36)

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製作編36

引き続きL-ch初段のバランス動作不具合の検討を行います。

前回までのまとめ

・L-chのトータルゲインが小さい原因はCold側のゲインが小さい事に起因

・Cold側のゲインが小さい事は、初段の差動アンプがバランス動作しない事に起因

・初段差動アンプがバランス動作しない原因は差動真空管のカソード電圧の振れ起因

・左右の真空管を入れ替えても本現象はL-chでのみ発生する

・L-ch初段CRDを交換しても症状は変わらない(記事では未報告)

・回路に刺激を与えると正常動作する事がある

状況は掴めてきましたが残念ながら対策に繋がる原因の特定はできていません。

SPRRのrkの影響確認

前回の確認でSRPP等価抵抗真空管動作は問題なさそうな事を確認しましたが、念のためrkの影響確認を行います。改めて回路図を掲載しますが、初段SRPP回路の2kΩの抵抗です。

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Hot側の波形モニタをしていると正常動作する事があった事から、Hot側のrkに抵抗は並列接続して様子を見てみます。最初は27kΩを並列接続してみました。rkは1.86kΩです。

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観測条件は以前と同様に200mVppの信号を入力しています。波形は初段差動真空管のVpで黄がHot、青がColdです。写真上がオリジナル状態で下がhot側のrkを1.86kΩに変えた時のものです。症状は変わらずに、変更に伴ってHot側のVpの振幅が9.6Vppから9.0Vppに下がっています。さらに並列抵抗を15kΩに下げて確認してみました。rkは1.76kΩとなります。

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写真上は初段差動真空管のVpの電圧です。症状はかわらずに、抵抗値変更に伴って振幅レベルが下がっています。写真下は同条件時の初段差動真空管のカソード波形です。黄がカソード波形で88mVppで振れています。予想どおり上記の結果からSRPP等価抵抗回路は正常動作してそうです。

終段の影響確認

次は終段の影響確認をしてみます。初めにL-ch初段Cold回路の出力を切り離してみます。具体的には、カップリングコンデンサの接続を外してみました。

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見栄えは悪いですが、確認オンリーなのでこれで進めます。同様の条件で初段差動真空管のVp波形をモニタしてみました。

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あらら、見事に正常動作しています。一旦カップリングコンデンサの接続を戻して次はCold側の終段バイアス調整用の配線をカットしてみました。

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結果は以下のとおりです。

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写真のとおり正常動作を確認しました。念のためCold側ヒーター回路耐圧保護回路の入力配線を外してみましたが、症状は改善しませんでした。本現象は、初段Cold側の出力の負荷に関連して発生している事が解りました。しかし新たな事実がわかってもちっとも嬉しくありません。それは解決する方法が思いつかないからです。

初段真空管端子電圧比較

Cold側の終段バイアス調整回路接続をカットすると初段は正常にバランス動作する事がわかりました。これを利用して、正常時と異常時の初段真空管の各端子電圧の比較を行なってみます。測定時は無信号入力状態です。

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まず目についた差は差動真空管のカソード電位の違いです。正常時は異常時に比べて0.1V高くなっています。その結果差動真空管の入力電圧Vgが正常時の方が若干大きくなりIpが減少すると考えられます。差動真空管のプレート電圧が正常時の方がやや高くなっている事とつじつまが合います。等価抵抗動作真空管のrkの両端電圧(3pinと2pinの差)を見ると正常時はHot/Coldは同じ電圧となっていますが、異常時はなぜかCold側の方が大きくなっています。別途rkの両端電圧を各状態で確認してみたいとおもいます。次回も引き続きL-ch初段差動アンプがバランス動作しない原因の検討を行います。

 

つづく(製作編37)