無帰還広帯域真空管アンプ(製作編38)

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製作編38

引き続きLch初段差動アンプバランス動作不具合検討を行います。

光明

前回の検討のおさらいをします。この現象が終段真空管には関係ない事が確認できたため、終段真空管を外して検討を行いました。終段のバイアス調整回路接続をHotとColdで入れ替えた所、cold調整回路に現象がついてくる事が確認できました。改めてアンプの回路を掲載します。

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バイアス調整回路原因検討

写真は前回の記事で掲載した検討中のバイアス調整回路基板です。

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3極の端子台の右側が問題の出力です。この状態で端子台とその上の抵抗のリード間の抵抗値をテスターで測定してみました。力の加え片によって390kΩと数Ωの2つの数値が確認できました。以前の確認でも測定値がばらつきましたが、390kΩが読みとれた為にOKとしていた事を思い出しました。基板を取り外して確認を行います。

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写真センターが390kΩの両端で、下からの配線を左のリードにハンダ付けしていますが、右のリードにも接触しているように見えます。一旦ハンダを吸い取り、改めてハンダし直しました。

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修理した基板を再実装し、現象の確認を行います。バイアス調整基板は元どおりに接続し直しました。確認結果は以下のとおりです。

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何事もなかったように正常にバランス出力しています。

対策確認

終段の真空管を取り付けて改めて動作確認を行いました。

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上は200mV入力時の初段差動真空管のVp波形です。正しく差動動作ができています。下は無信号入力時の終段真空管の入力波形です。Hot, Coldともに同位相で変動しています。2つの波形のDCレベルの差はバイアス調整結果に起因します。なんともお粗末な結果で恥ずかしい限りですが、原因の特定に約3週間も費やしてしまいました。特定に時間がかかってしまった要因を今後の為に整理します。

・原因がゲートバイアス回路でハイインピーダンスだった事

・初段出力間にコンデンサが入り、DC的には問題がなかった事

・いもハンダの逆で基板温度が上がると金属の膨張によりショートした事

後で考えると、確認結果の中にいっぱいヒントが隠されていた事がわかりました。まだ修行が足りないです、やれやれ・・・。

ゲイン確認

全体のまとめに入る前に各段のゲインを確認します。確認はHot/Coldともに1KHz/200mVの正弦波を入力し、初段出力と出力の波形を確認しました。初めは修理したばかりのLchの確認を行います。

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波形は黄が入力波形で青が初段出力波形で、上がHot側で下がCold側です。どちらも200mVppの入力に対して5.92Vppの出力でゲインは29.4dBです。同様に入出力間の波形比較を行いました。

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上がHot側、下がCold側で、どちらも200mVppの入力に対して1.74Vpp出力となっています。ゲインに換算すると18.8dBです。上記の結果から、Hot側の確認でゲイン確認ができる事がわかりました。同様にRchのゲイン確認も行いました。結果を一覧表にまとめました。

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現状のL/R間のゲイン差は0.8dBあります。さてどのようにしてゲイン差を押さえ込みましょうか?次回はL/R間のゲイン差を抑える検討を行います。

 

つづく(製作編39)