無帰還広帯域真空管アンプ(製作編39)

f:id:torusanada98:20210605190409j:plain

製作編39

L/Rチャンネルのゲインを合わせて回路を確定させます。その後終段のバイアス調整を行い、真空管の各端子電圧の確認を行いました。

前回のおさらい

原因の特定に3週間もかけてしまったLch初段バランス動作不具合ですが、ようやく解決する事ができました。原因はさておき、ようやく先に進められます。対策完了時にL/Rチャンネルのゲイン測定を行ったところ、0.8dBの差がある事がわかりました。無帰還方式の宿命で、部品の特性差がそのままトータルゲインに影響を与えます。特性測定の前に、ゲイン差を減らす検討を行います。

L/Rゲイン差改善検討

余計な調整回路の追加は極力避けるために、真空管の組み合わせで改善検討を行います。幸いバランス動作不具合検討の中で、12AY7を2本追加購入したので、真空管の組み合わせによる改善検討の余地があります。具体的には、初段の差動入力用の真空管は固定して、SRPP等価抵抗動作する真空管の組み合わせを変えてゲインバランスを取ってみました。12AY7はトータル6本あり、そのうちの4本を使ってゲイン測定を行います。4本の真空管を便宜上No.1~No.4として確認を行います。前回の記事の測定結果をまとめ直してみます。

f:id:torusanada98:20210603074947p:plain

Lchの真空管をNo.1、Rchの真空管をNo.4としています。従って未使用の真空管2本がNo.2とNo.3となります。最初にLchのNo.1真空管をNo.2と交換してみました。

f:id:torusanada98:20210603072650j:plain

f:id:torusanada98:20210603072659j:plain

黄が入力波形で、青が観測波形です。上が初段出力確認結果で下がSP出力確認結果です。初段ゲインが29.6dBでトータルゲインが18.9dBで交換前とあまり変化しませんでした。さらに交換して確認を行い結果を表にまとめました。

f:id:torusanada98:20210603075004p:plain

結局初期状態の真空管No.1とNo4をL/Rチャンネルで入れ替えてゲイン差を圧縮しました。その差は0.3dBです。まずはこの状態で様子を見てみます。

終段バイアス電流再調整

終段配線完了後に一度調整を行っていますが、全回路をFixできたので改めて調整を行います。観測が必要な回路部分にチップジャックを取り付けているので、そこにテスタのリードを接続して、無信号時の出力トランス1次側のドロップ電圧を観測するだけです。

f:id:torusanada98:20210603072722j:plain

電源オンしてから安定するまで十分待ってから調整を行いました。調整結果は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20210603072744p:plain

ほぼ設計値どおりの調整ができました。

真空管各端子電圧確認

以前にも測定を行いましたが、回路確定して調整も完了したので、全真空管の端子電圧の確認を改めておこないました。無信号状態で安定待ちを十分とってから測定を行いました。結果は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20210603075028p:plain

結果で気になった点は以下のとおりです。

・L/Rchともに差動入力真空管のVpがHotとColdで3Vの差がある

・Lch差動入力真空管のカソード電位が0.64Vと設計値よりもやや小さい

・SRPP真空管のカソード電圧は72Vで耐圧保護電圧に対して18V余裕がある

次回は、今回の製作の1番のポイントの周波数特性の測定を行います。

 

つづく(製作編40)