無帰還広帯域真空管アンプ(まとめ編2)

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まとめ編2

耐圧保護回路とシャーシ設計と製作のまとめを行います。

耐圧保護回路

SRPP回路採用時に注意が必要な点の1つは、等価抵抗動作をさせる真空管のヒーターとカソード間の耐圧です。下記は採用した12AY7の仕様の抜粋です。

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当初は、電源電圧と入力差動用真空管の電圧設計を厳密に行う事で対処できると甘く考えていました。電源投入時の過渡状態や、初段真空管故障時を考慮すると保護回路が必須と考え直して、製作の途中で設計変更を行いました。下記が保護回路の回路図です。

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初段差動入力用真空管のVpをモニタして耐圧仕様を越えるとヒーター回路を切り離します。下の波形は、電源投入時の過渡状態の動作波形です。

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青はリレー制御波形で黃が差動入力真空管のプレート電圧Vpです。Vpが88Vを越えたタイミングで、ヒーター回路用のリレーがオフし、ヒーター回路を切り離して耐圧仕様をクリアしました。やっつけで搭載した回路でしたが、実用上で問題は出ていません。実装基板は以下のとおりです。

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シャーシ設計

シャーシは、真空管アンプでいつも使っているリードのMK-380を選択しました。最初はフロントパネル設計です。従来の設計と代わり映えしませんが、秋月電子で角型の波動(ロッカー)スイッチの取り扱いを始めたので使ってみました。加工図は以下のとおりです。

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部品をとりつけるとこんな感じです。

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続いてリアパネル設計です。従来設計と変わりありません。

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LRパネルコネクタ用の穴あけ時にシャーシパンチを使用しましたが、間違った臼を使ってしまったため、穴の縁が凹んでしまいましたが、パネルコネクタを取り付けると隠れてしまうため事なきを得ました。

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シャーシ設計の最後は、上面の設計です。チョークインプット電源用のチョークコイルの配置を迷いましたが、電源トランスの手前にしました。入力用差動真空管への干渉を心配しましたが、特に問題はありませんでした。真空管の配置は、内側から差動入力用、SRPP等価抵抗動作用、終段真空管の並びとしました。製作途中で電源基板サイズを変更しましたが、シャーシの追加加工が不要となるように基板の取り付けを工夫しています。シャーシ上面の加工図は以下のとおりです。

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耐圧保護回路基板の取り付けは、製作途中で実物合わせで2点穴を追加して対応したので、加工図面には入っていません。写真は製作途中のものです。

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出力トランス

選定に紆余曲折ありましたが、結局前世代のツイーター用アンプと同じとなりました。出力トランスが春日無線のKA-5-54Pと東栄変成器のトランスケースSです。出力トランスは、ケースの直接取り付けしますが、加工図は以下のとおりです。

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写真は組立途中のトランスケースです。

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トランスケースをシャーシに取り付けるとこんな感じになりました。

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配線

今回の設計では、耐圧保護基板内で完結する5Vを除き、3系統の電源を搭載しました。配線の都合を考えて今回も配電用の平ラグ基板を経由しました。GND配線も多くなるため、電源トランス手前に取り付けたLラグを経由して配線しました。入力用の配線には、いつものとおり2芯シールド線を採用しましたが、真空管のグリッドへの配線は、Lラグを中継して2芯シールド線のテンションを受けています。写真は完成時のシャーシ内です。

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見栄えも考慮して直角に敷線してインシュロックで固定しました。

シャーシ内部写真

参考に各部の写真を掲載します。最初は電源基板です。

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次はチョークインプット電源の平滑用電解コンデンサとブリーダー抵抗です。

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最後は、終段バイアス電流回路基板です。

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定電流回路用の基準電圧源としてツェナーダイオードの変わりにLEDを使っています。次回は特性のまとめを行います。

 

つづく(まとめ編3)