無帰還広帯域真空管アンプ(まとめ編3)

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まとめ編3

通電、調整、特性測定、音の印象をまとめます。

終段バイアス電流調整

無信号時の終段真空管のIpを15mAに調整しました。Push-Pullの合計電流は、定電流回路を採用しているので、30mAとなるので比率のみの調整です。調整はシャーシ上面からバイアス設定基板上のボリュームで行います。

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調整結果は以下のとおりです。

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各部電圧

真空管の端子電圧の確認結果は以下のとおりです。

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周波数特性の測定

入力信号は、Hot/Coldともに200mVppの正弦波を入力しました。スピーカーターミナルには8Ωのダミー抵抗を接続しています。測定時の入出力波形は以下のとおりです。

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10Hzの出力波形はやや歪んでいますが、出力トランスの特性起因と考えられます。各チャンネルの周波数特性の測定結果は以下のとおりです。

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ゲインを正規化して、従来アンプとのカットオフ周波数比較を行いました。

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L/R-chともに周波数特性が改善したことが確認できました。高域の特性を1次フィルタと仮定して、シミュレーション結果と測定結果を比較しました。

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肩特性に少し差があるので、単純な1次フィルタ特性ではないようです。特性を1次フィルタ前提として、カットオフ60KHzと100KHz時の応答特性をシミュレーションしてみました。

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CD帯域内の周波数特性に殆ど差はありませんが、位相特性が改善しています。楽器や声の倍音の位相差を人間の耳が感知して音の印象の差として感じているのでしょうか?

試聴

マルチアンプに組み込んで音を聴いてみました。組み込んだシステムは以下のとおりです。

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従来アンプとのゲイン差は0.3dBなのでそのままアンプを入れ替えて聴いています。

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従来アンプ入れ替え時程の印象の違いはありませんでしたが、音の印象は変わりました。音が前に出る感じがします。また中域の音量が上がったように聴こえました。沢山のCDをとっかえひっかえ聴いてみましたが、概ね好印象でした。

今回の製作について

製作途中で大きな設計変更を2回行いました。1回目は初段の電源電圧を上げるために、初段用の電源回路を追加しました。2回目は初段SRPPの上側真空管のヒーターvsカソード間の耐圧保護回路を追加しました。どちらもシャーシに余裕があった為に大きな無駄がなく設計変更ができました。真空管アンプで初めて採用したチョークインプット電源も問題なく動作しています。

アンプ写真

完成したアンプの写真をいくつか掲載します。最初はリアパネルです。

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次はフロントビューです。

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続いて、リア側からの俯瞰です。

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最後はボンネットを被せた写真です。

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おまけはシャーシ内全景です。

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まとめのまとめ

構想開始が2020-12-11なので、完成までに半年以上かかってしまいました。途中で抜け出せない程の沼にはまってしまったかと思いましたが、原因がわかってみると単純なミスでした。結果もまずまずで、しばらくはこのシステムで音楽を楽しみたいとおもいます。長期間にわたりおつき合いいただきありがとうございました。

 

おわり(まとめ編3)