EL34シングルアンプ性能改善(製作編4)

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製作編4

現状の各段のゲイン測定を行い、初段真空管変更時のトータルゲインの試算値の妥当性を確認して追加改造を行います。周波数特性の測定を行い改造の効果を確認します。

各段ゲイン測定

代表してLchのHot側の測定を行いました。入力信号は1KHz/200mVppの正弦波です。いつものとおり出力には8Ωのダミー抵抗を接続しています。写真は上からL-ch初段出力、終段出力、SP出力です。

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この結果を前回の記事で作成したゲイン一覧表に反映しました。

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試算値と比較して、終段のゲインがやや大きくなっています。EL34のパラメータは、「情熱の真空管アンプ」の3結時のものを使用しましたが、動作点の違いにより誤差が発生したのでしょうか?この結果から初段真空管変更時の期待ゲインは、15dBと推定できます。私のマルチアンプシステムへの組み込みには問題となりますが、単体で使用するのであれば問題ありません。

初段真空管変更

初段真空管を12AX7から12AY7に挿し換えます。写真は現行の12AX7です。

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それを12AY7に交換しました。写真は手前側のみ12AY7に交換した状態です。

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写真では捺印は見えませんが、捺印以外区別はできません。さらにもう1本交換して交換作業は完了です。次はシャーシ内部の定電流ダイオードの交換です。現状は1.5mAタイプが取り付けられています。

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これを1mAタイプを並列接続したものに交換します。

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両チャンネルともに交換して改造作業は完了です。単純な改造なので特別は通電確認は省略します。

ゲイン測定

改造前の測定と同じ手順で各段のゲイン測定を行いました。写真は格段の出力波形です。

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上から初段出力、終段出力、SP出力です。この結果から各段のゲインを算出して一覧表に追加しました。

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各段の試算値と実測値の間には差はありましたが、初段を変更する事でトータル約6dBゲインが下がった事が確認できました。試算値と実測値の差の追求をしたいところですが、本題から逸れてしまうのでここでは触れない事とします。

周波数特性の測定

方法は何度も紹介していますので省略します。最初にLchの測定を行いました。

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波形は上から10Hz, 1KHz, 20KHz, 1MHzです。真空管交換前と同様に10Hzの波形がやや歪んでいます。測定結果をグラフ化してみました。

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結果は、オリジナル(終段デュアルシングル)、改造1(終段単純シングル)、改造2(初段12AY7+終段単純シングル)の比較です。初段の変更により高域特性は改善しているものの、想定したほどの改善はしませんでした。前回の測定でも気になった低域特性ですが試算したとおりの特性とはなっていません。試しに終段のバイパスコンデンサを470uFから1000uFに変更しましたが、ほとんど特性は変わりませんでした。この特性を決めているのは他の部分にありそうです。下記は出力トランスRW-20の特性です。

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上の特性が5KΩで駆動した時で、下が600Ωで駆動したときのものです。終段をデュアルシングル駆動した時はどちらかと言うと下側の特性に近く、単純なシングル駆動した時が上の特性に近いと考えられます。高域特性が期待レベルに改善しなかった事と、終段のバイパスコンデンサを変更しても特性が変わらなかった事は、出力トランスの特性が支配的だったと考えられます。低域特性だけを考えると、終段はデュアルシングル駆動の方がよいと言えます。最後にRchの特性測定も行いました。結果は以下のとおりです。

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終段を単純なシングル駆動に変更した際の高域特性の改善両がLchに比べて小さくなっていましたが、初段の変更によりLchとほぼ同等レベルに改善しました。カットオフ周波数がギリ30KHzというレベルでしょうか?次回は音聴きを行いまとめを行います。

 

つづく(まとめ編)