Hi-ch用トランジスタアンプ製作(製作編11)

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製作編11

実装が完了したアンプ基板4枚の通電確認を行います。

回路図修正

通電確認に備えて回路図を確認したところ、ミスが見つかりました。ドライバ段の電流値29mAが図中に記載した電圧とつじつまが合いません。つじつまを合わせる為には、ドライバ段の電流値を見直す必要があります。終段のバイアス電流は0.47Aとしているので、終段のベース電圧は0.16Vとなります。従ってドライバのエミッタ電圧は0.76Vとなり、抵抗には23mAの電流が流れます。一方、終段のトランジスタのhfeを220と仮定すると終段Trのベース電流は2.1mAとなり、ドライバ段のバイアス電流値は23mA+2.1mA = 25mAとなります。またちょっとした勘違いで2段目のVceのバランスをとるためのダイオードを1個追加して5個としてしまいました。気づいた時にはすでに基板を改造した後だったので、このままとします。

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理想は4.5個なので、5個でも問題はありません。発振対策の位相補償用のコンデンサの容量を一旦削除しました。調整完了後に追記します。上記を反映した修正回路図は以下のとおりです。

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通電確認準備

電源はユニバーサル電源から供給します。電源の仕様上、ドライバ段の電圧を+/-6.15Vとしました。過電流保護の設定は、+/-15V電源を30mAに、+/-6.15V電源を50mAにセットしました。次に通電時の基板保護のために、半固定抵抗をプリセットします。オフセット調整用VR1、2段目電流調整用VR2、ドライバ段バイアス電流調整用VR3はそれぞれ以下のとおりセットしました。

VR1:センター

VR2:400Ω(調整推定値の2倍)

VR3:1kΩ(調整推定値の1.4倍)

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続いて初段にDUAL JFETモジュールを装着します。6pinディップソケットに向きを間違えずに差し込みます。

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基板準備の最後は、終段温度補償用のトランジスタモジュールを接続します。3本の電線を間違えないように所定の端子台に接続しました。

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次は電源以外の機材の準備をします。現状のアンプ基板は発振対策をしていません。確認用にオシロスコープを準備します。また位相補償用コンデンサの選定のために信号を入力するので信号のソースとして発振器も準備しました。これで通電確認の準備は完了しました。

通電確認

ようやく通電確認開始です。アイキャッチ写真は確認時のものです。4枚の基板の通電確認は思いの他苦労しました。何の手直しなしで確認ができた基板は1枚のみです。他の基板は、ハンダミス、ハンダ忘れとすべて私の作業ミス起因で、原因特定に四苦八苦しました。最初に手直しが必要なかった基板の確認作業を紹介します。電源オンするとオシロスコープに発振波形が現れます。

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この発振は無視して、各部の電流値を調整します。出力のオフセット電圧が大きくずれていない事を確認した上で、VR3でドライバ段の電流調整を行います。厳密な調整は不要なのでユニバーサル電源の電流表示で25mAに調整しました。次はVR2で2段目の電流調整を行います。調整方法は、R12の電源接続されていない端子電圧が約-1.4Vとなるように調整します。続いてVR1で出力オフセット電圧を調整します。上記3つの調整を数回繰り返す事で調整完了です。

発振対策

2段目のトランジスタのベースコレクタ間にまずは10pFを接続してみました。

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この対策により、発振はとまりました。この状態で正弦波を入力して出力をモニタします。周波数を1MHzからさらにあげていくと、出力の振幅レベルが大きくなり、約3.6MHzでピークとなりその後レベルが下がりました。一旦電源をオフして、位相補償コンデンサを22pFに付け替えました。同様の確認を行ったところ、超広域のピークはなくなり素直な特性となりました。

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上が1MHz時の出力波形で、下が3.6MHz時です。これで1枚の基板の動作確認は完了です。次の通電に備えてVR3を回してドライバの電流値を下げておきます。次回は苦労した残り3枚の通電確認を紹介します。

 

つづく(製作編12)