製作編13
前回確認した、左右チャンネルの周波数特性の差の検討とノイズスペクトラム測定準備を行います。
左右チャンネル周波数特性差
前回測定した周波数特性の測定結果を再掲載します。
結果をごらんのとおり、R-chは可聴帯域外に約3dBのピークが観測されました。L-chでは観測されなかった事から、左右チャンネルの実装差に起因すると考えて違いを確認してみました。写真は最終の実装形態です。
写真のD級アンプ基板下側がR-chで、入力段基板は反対に上側がR-chです。明らかに配線長面では、R-chが不利な実装となっています。また入力段基板の電源をD級アンプ基板入力段L-chのオペアンプソケットから供給しています。という事でまずは、入力段基板の電源供給をD級アンプ基板入力段R-chのオペアンプソケットからに変更してみます。インシュロックタイをカットするだけで電源供給用ソケットの位置を変更する事ができました。
結果は残念ながら変化はありませんでした。次は入力段基板の特性がD級アンプ基板間の配線長の影響を受けている可能性があるので入力段基板R-chの入出力波形を確認してみました。写真はD級アンプ基板出力にピークが発生している状態(50KHz)時の波形です。
この結果をみる限り入力段基板の特性は問題ありませんでした。そうすると特性差の原因はD級アンプ基板自体にある事になります。まずはデータシート上、周波数特性に関する記載がないか確認してみました。周波数に関する記述は、PWMフレームレートに関する記述のみで、周波数特性に関する記載はありませんでした。周波数特性の肩の部分のピークは通常負帰還にともなって発生する為、LSIの負帰還ループについて確認してみました。以下はデータシートの抜粋です。
図を見ると負帰還のループはLSI内部で完結しています。よって外から手を加える事は残念ながらできません。念のためネット上に同様の事例がないか確認したところ、可聴帯域外のピークのある特性を見つけることができました。これ以上できる事はなさそうなので、このLSIの特性として受け入れざる得ません。
ノイズスペクトラム測定環境
次はハム帯域のノイズスペクトラムの測定を行います。測定はオシロスコープ内蔵のFFT機能と、ハム帯域観測用に製作したアンチエイリアスフィルターを使用します。
構成は、アクティブフィルター2段で、ジャンパースイッチの設定により、Hot/Cold単体と差動出力時の3とおりの観測ができます。回路図は以下のとおりです。
このアンチエイリアスフィルターの特性は以下のとおりです。
250Hzまでは減衰がありません。アクティブフィルター2段構成なので、肩特性は-24dB/Octとなります。オシロスコープの掃引速度を500sample/secに設定するとナイキスト周波数250Hzまでのノイズスペクトラムの観測ができる事になります。オシロスコープのカーソル機能は、感度設定によらず0dB=4Vppに対応している事がわかっています。感度を上げると分解能があがります。測定ブロック図を整理します。
採用したD級アンプICの出力は、単電源BTL方式の為、出力電位は電源電圧の半分となります。従ってアダプタと接続する為には、カップリングコンデンサが必要となります。オシロスコープの設定は、分解能を上げるため感度を目一杯上げてプローブを1:1にセットしました。この場合アダプタのDCオフセットが問題となるため、AC入力モードに設定しています。これで測定環境の説明は終わります。次回は測定と結果について報告します。
つづく(製作編14)