High-ch用アンプ製作(設計編1)

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設計編1

構想編で構想した方針に沿って設計を進めてみます。

終段設計

終段には6N6PをA級プッシュプルで使用します。一旦出力は1W/8Ωを仕様とします。真空管アンプの設計経験が少ないのではたして構想どおりの設計が成立するか自信がありません。出力トランスには、真空管ヘッドフォンアンプで使用した春日無線のKA-X-54Pを使用します。出力タップとして16Ω、8Ω、4Ωをもっているため、下図のとおりバランス出力をさせたいとおもいます。

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図中には記載が抜けていますが、二次巻き線の黄色配線は4Ωタップです。KA-X-54Pシリーズには下記品種があります。

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巻き数比のみ自前で計算した値です。KA-8-54P2のみ周波数特性が拾えませんでした。KA-8-54P2は、KA-8-54Pの改良版で特性改善の為に、巻き線の線径を細くして巻き数を増やしているとの説明がありました。この表を見ると巻き数比を上げる(=巻き数を増やす)程、高域特性が下がっている為、今回の用途では、KA-3.5-54PまたはKA-5-54Pを選択したいと思います。初めにKA-5-54Pを16Ω出力タップ前提でロードラインを引いてみます。8Ω負荷を16Ωタップに接続する為、終段の真空管から見た負荷抵抗値は以下となります。

負荷抵抗値 = 5K/2/2 = 1.25KΩ

出力1Wを得る為のA級動作バイアス電流値は下式で算出できます。

バイアス電流値 = 1 / SQR(2500) x 1.41 = 28.2mA(SQRはルートを示す)

終段の電源電圧は、ヘッドフォンアンプの電源の流用前提として166Vとしました。166V&28.2mAの動作点から、負荷抵抗1.25kΩでロードラインを引くと以下となります。

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図中の一点鎖線が6N6Pの許容プレート損失を示しますが、電流が増える方向ですぐに許容値を越えてしまいました。16Ωタップの使用(二次巻線のバランス接続)をあきらめて8Ωタップ接続で設計しなおしてみます。各パラメータは上記の計算から以下のとおりとなります。

負荷抵抗値=2.5kΩ、バイアス電流値=20mA

このパラメータを使って再度ロードラインを引いてみました。

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ぎりぎり許容プレート損失以下に入っていますが、見るからに直線性の悪そうな特性です。次はKA-3.5-54Pを4Ωタップ接続前提で検討してみます。各パラメータは以下のとおりです。

負荷抵抗値=3.5kΩ、バイアス電流値=17mA

この時のロードラインは以下となります。

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許容プレート損失にはだいぶ余裕がとれましたが、直線性はあいかわらず良さそうには見えません。続いて、KA-5-54Pを4Ωタップ接続前提としてロードラインを引きます。各パラメータは以下のとおりです。

負荷抵抗値=5kΩ、バイアス電流値=14mA

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だいぶいい感じになってきましたが、プレート損失に余裕が取れてきたので、出力を2W前提で再度引き直してみます。

負荷抵抗値=5kΩ、バイアス電流値=20mA

この時のロードラインは以下となります。

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さらにいい感じになりました。一旦この条件で設計を進めます。

終段入力容量

6N6Pの入力容量算出に必要なパラメータは以下のとおりです。

Cgk=4.4pF, Cgp=3.5pF, μ=22, rp=1.8kΩ

初めにミラー容量算出に必要な裸利得を計算します。負荷抵抗値=5kΩ時の裸利得は以下となります。

裸利得 = 22 x 5k / (1.8K + 5K) = 16.2倍

この結果から終段の入力容量値は以下の通り計算できます。

入力容量値 = 4.4 + (16.2 + 1) x 3.5 = 64.6pF

ほぼ、EL34ppアンプと同じ容量値となっていますが、トランスまで含めた裸利得が上がっていれば、その分初段の利得を下げる事ができ、初段の出力インピーダンスを下げられる余地が生まれます。

終段と出力トランスの裸利得

出力トランスの減衰量は巻き数比で決まります。各段の裸利得を現行のEL34ppアンプと比較してみました。。現行アンプの各段のゲインは記事「EL34ppパワーアンプ製作2設計編1」(2019-11-29)で計算した値を記載しています。

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アンプのトータルゲインを合わせると初段のゲインを現行のアンプ比で約6dB下げる事ができ、その分初段の出力インピーダンスを下げられる余地がある事を確認できました。次回は初段の設計を行い、終段入力部のカットオフ周波数を算出してみます。

 

つづく(設計編2)

High-ch用アンプ製作(構想編2)

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構想編2

現行アンプのカットオフ周波数が下がる要因が推定できたので改善検討を行います。

終段真空管変更による改善検討

最初は単純に、入力容量の小さな真空管を終段用に選択する事で改善できるかを検討してみます。対象の真空管はヘッドホンアンプの終段で使用した6N6Pです。写真は真空管ヘッドフォンアンプに実装された6N6Pです。

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これを現行アンプのEL34と比較してみました。

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表中のEL34のCgk, Cgpは備考欄にも記載したとおり前回の記事で推定した値を入れています。この結果からは終段の裸利得を現行と同じ7倍に押さえたとすれば、終段の入力容量は以下となります。

Cin = 4.4 + 3.5 x (7 + 1) = 32.4pF

となり、カットオフ周波数を2倍以上(100KHz以上)に上げる事が可能です。ここで問題となる点は6N6PのμがEL34の3極管接続時の3倍近く高くなっている事です。具体的にはゲインを7倍程度に設定して許容プレート損失内でロードラインを引く事が課題です。ゲインが押さえられなければEL34並の入力容量となってしまい全く効果がなくなってしまいます。

初段真空管変更による改善検討

いままでの真空管アンプの製作ではいつも初段に12AX7を使用してきましたが、以前の製作で誤って12AU7を購入した為に在庫がある事から、有効活用できないか比較検討をしてみました。

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この表を見ると、12AU7は12AX7に比べて圧倒的にrpの値が小さくなっています。そのかわりμの値も1/5となっています。仮に負荷抵抗を100KΩとしたときのそれぞれのゲインを計算すると、

12AX7ゲイン = 100 x 100K x (80K + 100K) = 56倍

12AU7ゲイン = 18 x 100K x (7K + 100K) = 17倍

初段を12AU7としたときにトータルゲインを現行アンプと合わせる為には終段のゲインを現行の約3.3倍に上げる必要があります。(終段のゲインを7 x 3.3 = 23倍)幸い対策の候補として上げた終段用真空管6N6Pではゲインアップの可能性があるので続けて検討してみます。

初段12AU7+終段6N6P時のカットオフ周波数

初段を12AU7でゲインを17倍、終段を6N6Pで23倍としたときのカットオフ周波数を計算してみます。この時の終段の入力容量は以下のとおりとなります。

Cin = 4.4 + (23 + 1) x 3.5 = 88pF

さらにこの時のカットオフ周波数は以下となります。

fc = 1 / (2π x 88pF x 6.5kΩ) = 278KHz

上記の結果から、条件設定したゲイン設定ができれば、高周波域の特性改善が期待できます。

さらなる改善

ネットを検索してみたところ、初段をSRPP(Shunt Regulated Push-Pull)構成にする事で、初段の出力インピーダンスを下げられる事がわかりました。回路は以下のとおりです。

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負荷抵抗の代わりに真空管と抵抗で置き換えた構成です。ロードラインを引いてみると出力インピーダンスを2端子回路の等価抵抗の半分くらいに容易にできそうです。課題は、初段の電圧を上げる必要がある事です。終段をEL34とした場合は容易に回路設計できそうですが、6N6Pとの組み合わせの場合、6N6Pの許容プレート損失を考えると初段のみ電圧を上げる必要があり、ざっと確認した範囲では、適当な電源トランスが見つけられませんでした。終段のみチョークインプット電源回路として電圧を下げる事もできそうですが、初トライの項目が増えるため、今後の製作候補に入れる事にします。

まとめ

上記の検討結果から、初段を12AU7、終段を6N6Pに変更したA級プッシュプルアンプの構成で設計を一旦進めてみる事にします。

 

つづく(設計編1)

High-ch用アンプ製作(構想編1)

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構想編1

1000MマルチアンプシステムのHighチャンネル用アンプの設計を構想します。

マルチアンプシステムその後

EL34A級ppアンプが完成し、久しぶりにゆったりと音楽を楽しんでいます。Midチャンネルと、Highチャンネルのレベルは、オーバーオールの周波数特性測定で決めたレベルよりもやや上げています。

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測定時は、スコーカーとツイーターの中間位置の正面約1mにマイクロフォンを設置しましたが、リッスニングポジションはスピーカー正面直線上から外れるため、再調整した方が聴感上バランスが取れている感じがします。色んな楽曲を聴いているうちに、今までLowチャンネルとMidチャンネル用アンプの改善をしてきた事もあり、Highチャンネルが負けている感じがしてきて、改善検討をしてみたくなりました。

Highチャンネル駆動アンプ

現状はEL34A級ppアンプ1号機を使っています。設計は2号機とほぼ同等です。どちらも無帰還構成で使用している為、高域特性はあまり良い意味ではない「そこそこ」のレベルです。

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カットオフ(-3dBダウン)周波数は約50KHzで、20KHzまではほぼフラットな状況ですが、位相は遅れているはずです。仮に1次フィルタ(-6dB/oct)特性と仮定して2号機の周波数特性に線を引いてみました。

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肩特性は-6dB/octとなっている事が確認できました。

位相特性

-6dB/oct、カットオフ周波数50KHz時の位相特性を確認してみます。ネットを検索したところ、大川電子設計様がフィルターの設計ツールをネット上で公開しているのを見つけました。上記の条件を入力するとボード線図が表示されます。グラフイメージの使用は許可されていましたので算出結果を掲載します。

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この時の20KHzの位相遅れ量は約22deg.で、ちょっと気になるレベルです。次はこの特性はどこで決まっているか検討してみます。

出力トランスの特性

2台のEL34ppアンプともに、出力トランスはソフトンのRX-40-5を使用しています。下記はネットに掲載されている周波数特性です。

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グラフは1dB/divの為、変化が大きく見えますが、高域のカットオフ周波数は100KHz以上です。一旦、出力トランスは影響の候補から外します。

真空管入力容量影響

真空管の入力(グリッド)には入力容量があり、前段の出力インピーダンスとの組み合わせでフィルターを構成します。以前製作したEL34パラレルシングルアンプは、終段の入力容量の考慮をなにもせずに設計したため、高域のカットオフが15KHzとFM放送並の特性となった事を思い出し、この部分の影響に違いないと思いました。カットオフを計算するため、終段から見た初段の出力インピーダンスを算出します。図は初段の等価回路です。

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rpは初段管12AX7の内部抵抗で、使用条件から80KΩとします。RLは初段の負荷抵抗で150KΩ、Riは終段のバイアス調整回路の抵抗で330KΩです。参考に回路図を再掲載します。

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終段の入力から見ると全ての抵抗が並列接続されるため、等価出力抵抗値Roは約45KΩとなります。次にEL34の入力容量を出します。入力容量はグリッドとカソード間の容量Cgkにグリッドとプレート間のミラー容量の加算値となります。ミラー容量は、グリッドとプレート間の容量をCgp、終段管の裸利得をAとすると以下のとおりとなります。

ミラー容量 = Cgp x (A + 1)

従って、終段の入力容量は以下となります。

終段入力容量Cin = Cgk + Cgp x (A + 1)

この入力容量と初段の出力インピーダンスRoで1次ローパスフィルタが形成され、カットオフ周波数は以下となります。

fc = 1 / (2π x Cin x Ro)

カットオフ周波数を計算するためにEL34の仕様書からCgkとCgpに相当するパラメータを拾ってみました。各社の仕様書にはだいたい15.5pF, 10pF, 1pFの3つの数値が掲載されていたので、適当に式に代入して計算してみましたが、カットオフ周波数が50KHzとなりません。改めて回路図を眺めてみたところ終段は3極管接続されている事を忘れていました。

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改めて各社の仕様書を見てみましたが、3極管接続時の容量値は見つけられませんでしたが、そんな中Philipsの仕様書を見たところ以下の記載がありました。

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この説明を私なりに解釈し、必要な電極間の容量は以下と仮定してみました。

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この図からCgk=8pF, Cgp=8pFと考えられ、カットオフ周波数を計算しなおした所、約49KHzと測定結果と見事に一致しました。(A=7は「EL34ppアンプ製作2設計編1」2019-11-29参照)本当に正しいか自信はありませんが、私なりの理解としたいとおもいます。次回はこのカットオフ周波数改善の検討をしたいとおもいます。

 

つづく(構想編2)

EL34ppパワーアンプ製作2(まとめ編3)

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まとめ編3

システムへの組み込みおよびレベル調整が終わったので音出しをします。

音だし

普段聴いているCDをセットして再生スタートします。

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「DCパワーアンプの電源改良」のときよりも音の印象の変化は少ないです。その印象を箇条書きしてみます。

・弦楽器がやわらかく浮かび上がる印象です

・音の消え方がより自然な感じです

・ベースがより躍動的に聴こえます

・個性的な印象が後退してより自然な感じです

上記の印象を総括すると、シングルアンプの持つ味つけ部分がなくなり、自然な感じに鳴っているという事でしょうか?シングルアンプの音については、いままで音楽性豊かに鳴ると表現してきましたが、シングルアンプの真空管の特性による音の個性が味つけとして作用しているように思えます。音の変化をもっと的確に表現したくて、Midチャンネルアンプの入れ替えができるように、チャンネルデバイダのMidチャンネルボリュームに現状から+1.7dBの位置出しをして水色のシールを貼りました。

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これで容易にMidチャンネルアンプをEL34ppシングルアンプに切り替えられます。アンプを切り替えて何度も曲を聴きましたが、確かに音は変わります。しかし、語彙力が乏しくその違いを上記の箇条書き以上に表現できません。音の聴き比べをしている中で、いろんな球のシングルアンプを使って積極的に味付けを楽しむ事もおもしろいのではと思いました。アナログ変換後の全ユニットの各電源回路への信号電流の流れ込みが理論上なくなった事の影響はシングルアンプの味に含まれてしまって正直なところよくわかりませんでした。アンプ完成を期にCDを買いました。井筒香奈江の「時のままにⅣ 時代」です。

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「リンデンバウムより」と同じく全てカバー曲です。演奏はピアノとベースのみですが、このアルバムではエレキベースが使われています。久しぶりにゆったりとCD全曲を楽しみました。

設計まとめ

改めて設計の最終まとめをします。

アンプ回路

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1号機と同じ設計です。部品入手の関係で段間のカップリングコンデンサが0.47uFから0.82uFに変わっています。

電源回路

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1号機と回路は基本的に変えていませんが、三端子レギュレータ出力部の電解コンデンサを削除している点と、部品入手の都合でB電源のリップルフィルタ用トランジスタを変更しています。

フロントパネル加工図

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1号機との違いは、電源スイッチをパドル式に変更している点です。アンプを見分ける時に便利です。

リアパネル加工図

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1号機のハンドルは複雑な形状のものを選択しましたが、2号機はフロントと共通としています。

シャーシ加工図

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終段真空管ソケットのまわりに放熱の為に通風用の穴を開けました。

実機比較

以降は、1号機との違いを写真で整理します。

電源基板

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2号機では、配線用に基板ポストの代わりに基板端子台を採用しました。

シャーシ実装

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1号機は私にとって真空管アンプ初製作で、かつ久しぶりの大物製作だったため、敷線の美しさの観点で2号機に劣っています。

電源スイッチ

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真空管アンプの電源スイッチには、ずっとトグルスイッチを採用してきましたが、見栄えの改善と固定ねじがゆるむ欠点の改善の為に2号機ではパドルスイッチを採用しました。

終段真空管放熱

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出力8WのA級動作ながら、思いの外発熱が大きかった為、2号機ではシャーシに通風用の穴を開けて対策しました。効果の検証は行っていませんが、気持ちの問題が大きいと思います。

まとめのまとめ

この製作でNS-1000Mのマルチアンプシステムは私のポリシーにマッチした構成となりました。引き続きこのシステムの改良を行っていきたいとおもいます。2019年の11月に構想をスタートし、約2.5ヶ月間おつきあいいただきありがとうございました。

 

おわり(まとめ編3)

EL34ppパワーアンプ製作2(まとめ編2)

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まとめ編2

フルレンジユニットを使った動作確認が終わったので、NS-1000Mのマルチアンプシステムへ組み込みます。

ノイズ確認

組み込む前に、出力ノイズを確認しておきます。確認は「真空管アンプのハム対策」で行った方法です。前回の記事で使用したダミー抵抗と、ヘッドフォン接続用のジグをアンプの出力についないで、ノイズをヘッドフォンで聴きます。

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ヘッドフォンを装着して、恐る恐る電源を入れます。しばらく無音が続き、ヒーターが暖まった段階でホワイトノイズが聞こえてきました。ほぼ1号機と同等のノイズ性能です。トランスの配置が悪い場合、電源オンで即座にハムが聞こえますが、このアンプではいっさい聞き取れませんでした。これで安心して1000Mのスコーカーに接続する事ができます。

システム組み込み準備

現行システムは、Midチャンネル用アンプがラックの一番下で、ラック上部にHighチャンネル用のアンプを設置していました。Midチャンネル用アンプの切り替えが容易にできるように、アンプの設置場所を入れ替えて、Midチャンネル用アンプをラックの上に設置しなおしました。

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写真のラック上のアンプが現行Midチャンネル用のDualシングルアンプで、スピーカーの上のアンプが今回製作のA級EL34ppアンプです。設置変更した現行のシステム構成で違いを認識しやすくする為に、しばらく音楽を楽しみました。

システム組み込み

いよいよ製作したアンプを1000Mマルチアンプシステムに組み込みます。一旦組み込んだ後にまた容易にシステム構成を戻せるように、現行のアンプの上に乗せました。

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正面から見た違いは、電源スイッチのみです。この組み替えで、1000Mマルチアンプシステムは下記のブロック構成となりました。

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これでアナログ変換後に、各機器の電源のGNDラインには設計上、信号電流は流れない構成となりました。はやる気持ちを押さえつつ、初めにレベル調整をします。

チャンネルデバイダレベル調整

アンプの入れ替え前後で、アンプのゲインが同じであればレベル調整は不要ですが、下記のとおり、Midチャンネルアンプのゲインがやや上がります。

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2台のEL34ppアンプのゲインはほぼ同じですが、今回入れ替えたMidチャンネル間で、約1.7dBゲインが上がっています。チャンネルデバイダのMidチャンネルとHighチャンネルにはアッテネータ(ボリューム)がありここでレベルバランスを取っています。現行システムのボリューム位置は写真のとおりです。

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通販で購入した剥がせる丸シールをパネルに貼って位置決めをしています。改めてシステムトータルの周波数特性を測定して、丸シールの位置を決めなおします。測定ブロック図は以下のとおりです。

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測定の詳細は2018-03-27「スピーカー周波数特性測定」記事を参照いただきたいとおもいますが、測定用のソフトは「WaveSpectra」(フリーソフト)を使用しています。事前に「WaveGene」(フリーソフト)で作成したスイープ信号を再生して、その音をマイクロフォンで拾って応答レベルをグラフ化します。

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当時はパソコンを2台使用してスイープ信号の再生と応答レベルのグラフ化を別々に行っていましたが、今回は1台のパソコンでWaveSpectraを2つ立ち上げて、それぞれのアプリケーションで再生と応答レベルのグラフ化を行いました。測定時のパソコンは以下のような画面となります。

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作業は、結果を確認してチャンネルデバイダのボリュームを調整する事の繰り返しです。測定環境は無響室ではないので、定在波によるピーク&ディップが発生するので測定結果はレベル合わせのための参考として考えています。上記調整結果は以下のとおりです。

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15KHz以上の周波数域でレベルが下がっているのは、マイクロフォンの特性によります。途中の+/-10dB程度のピーク&ディップには目をつむり大まかに全体のレベルを合わせました。ボリュームの位置出しのシールの色をピンクに変えて貼り直しました。

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これで再生の準備が整いました。次回は待ちに待ったマルチアンプシステムの音だしをします。

 

つづく(まとめ編3)

EL34ppパワーアンプ製作2(まとめ編1)

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まとめ編1

EL34_A級プッシュプルアンプの組立および通電が終わったので動作確認を行います。

動作確認

具体的にはフルレンジスピーカーにつないで音を聴いてみます。システム構成は、USBDAC出力をバランスボリュームユニットに入力してその出力を今回製作したパワーアンプに入力します。写真は久しぶりに引っ張り出したバランスボリュームユニットです。

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4チャンネル分のオペアンプを使ったボルテージフォロア出力に4連のボリュームを付けた簡単なボリュームユニットです。スピーカーは、FostexのFE103Enを使ったフルレンジスピーカーです。記事公開時点では、FE103Nvに切り替わっているため、1世代前のユニットになります。

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いつも聴いているCDをプレーヤーにセットして再生をスタートさせました。あれれ?左右のチャンネルで位相が反転しています。一旦電源を落として、原因の調査は後回しにして、片側のスピーカーケーブルの接続を反転して再度再生をスタートさせました。

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無事正常に再生ができました。音もまずまずな感じで鳴っています。再度電源を落として、左右逆相の原因を調べます。出力トランスを使ったアンプは、トランスの位相で信号が反転してしまう事がありますが、今回は1号機の経験を反映して回路作成をした為、問題はないと考えていました。そもそも左右で位相が逆になっている事は、それ以前の問題です。シャーシ内の配線を確認したところ、L-chの真空管入力部の配線のHotとColdが逆になっている事を確認しました。

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写真中のLラグ端子で、入力ケーブルと真空管入力を中継しています。黄色の電線が真空管のHot用グリッド配線のですが、入力ケーブルのCold側が接続されています。この接続を入れ替えれば左右チャンネルの位相は合いますが、念のため回路図どおりの配線で入出力間の位相が正しい事を確認してみます。CDをEIAJのテストディスクに入れ替えて、1KHz正弦波トラックをリピート再生させて、オシロスコープで入出力波形を確認しました。波形は以下のとおりです。

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上段が入力、下段が出力波形です。誤配線している為に位相が反転している事を確認しました。これで安心して配線を直す事ができます。配線が込み入っている部分なので、慎重に作業を進めて配線を入れ替えました。入れ替え後に念のため入出力波形を確認しました。

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入出力の位相は合っている事が確認できました。

周波数特性の測定

次はアンプ単体の周波数特性の測定を行います。下記が測定時のブロック図です。

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アンプの出力はスピーカーの代わりに自作の約8Ωのダミー抵抗を接続しました。

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アンプの入力を100mVppに調整して、正弦波の周波数を10Hz~1MHzまで変化させて出力の波形をモニタしました。出力のレベルの測定はオシロスコープのカーソル機能を使用しています。

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波形はHot側測定時のもので、上段が入力で下段が出力波形です。同様にCold側も測定してグラフ化してみました。

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無帰還アンプなので帯域は広くはありませんが、20KHzまでほぼフラットで、40〜50KHzの間で-3dBとなっています。Midチャンネル用のアンプとしては問題ない性能と考えます。同様にRチャンネルの周波数特性も測定を行いました。結果は以下のとおりです。

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ほぼLチャンネルと同等の特性ですが、肩特性がHotとColdで一部異なっていますが総合の特性はL/Rでほぼ同等です。性能面ではほぼ問題ない事が確認できました。次回はマルチアンプシステムに組み込んでみます。

 

つづく(まとめ編2)

EL34ppパワーアンプ製作2(製作編16)

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製作編16

全ての配線が終わったので、通電、調整を行います。

通電確認1

最初は終段の真空管を挿さずに、通電して真空管ソケットの各端子電圧を確認します。参考として、回路図を再掲載します。

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初段の真空管は先日の通電確認実施後、装着したままとなっています。確認結果は以下のとおりです。

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表中の朱記の2点の電圧が異常です。まずは真空管No.3の5pinの配線確認をしてみます。確認の結果、初段のカップリングコンデンサと5pinの配線が電源ラインに接触している事を確認しました。

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配線時に気づくべき内容ですが、見過ごしていました。余分な芯線をカットしました。回路へのダメージを心配しつつ回路図を眺めたところ、330KΩを介して-5Vの三端子レギュレータおよび、調整用ボリュームに接続されていたため、ダメージ無しと判断しました。もう1点は、Lチャンネル真空管No.2の入力バイアス電圧異常です。基板単体で確認を行ったにもかかわらず異常値となっています。一旦基板を取り外してハンダ付けの怪しい部分を再ハンダしたところ改善しました。端子台への配線時に基板に応力をかけた為に、ハンダ外れが発生したと考えられます。

通電確認2

次は、終段の真空管を装着して通電確認を行います。一旦Rチャンネル分の真空管を取り付けて確認を行います。取り付け前に、真空管の組み合わせを決めます。2種類の真空管の出力抵抗rpが揃っていると仮定すると、総合のゲインは各段のgmの積に比例します。左右チャンネルのゲイン差にはある程度目をつむり、HotとColdのゲインを合わせる事を優先して組み合わせを決めました。そもそもrpが揃っている前提としている為、どの程度意味があるかはわかりませんが、自己満足の世界です。

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総合ゲインについては、完成後の周波数特性測定時に確認したいとおもいます。上記の結果に従ってRチャンネル用の真空管を取り付けました。

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EL34は出力トランスと高さがほぼ同じため、安全にシャーシ裏の電圧を確認できるようにボンネットを装着します。キズ防止の為、ダンボールをボンネットに貼り付けました。

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電源オンし、ヒーターが安定して点灯をしてから各端子の電圧を確認しました。特に問題なかったので、Lチャンネル分の真空管をさらに取り付けて各端子の電圧を確認しました。

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こちらも同様に問題ありませんでした。各端子電圧の確認結果は、Ip調整後に回路の各部電圧確認結果としてまとめて紹介します。

Ipバランス調整

これは終段の2本のEL34のIp値を合わせる調整です。2本の真空管の特性が揃っている事が前提ですが、Ip値を合わせる事で、偶数時の歪みが打ち消されて歪み率の改善させる重要な調整です。測定にはチップジャックを設けたB電源と、各真空管のプレート間の電圧を測定し、測定済みの出力トランス一次巻き線の直流抵抗値を使ってIpを算出します。算出したIp値が終段の2本のEL34で揃うようにIpバランス調整用ボリュームで合わせ込みます。調整結果は以下のとおりです。

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表中の「赤-赤」と「赤-白」は測定したチップジャックの色を示しています。良好に調整できたとおもいます。調整後のアンプ各部の電圧は以下のとおりです。

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設計値よりも終段のIpがやや小さく(約67mA)、カソードの電圧は約4V低くなっていました。この結果定電流源回路のトランジスタ印加電圧は4V弱となってしまいました。トランジスタの動作が心配となりデータシートを確認したところ3V電圧がかかればある程度の特性となる事が確認できたので、問題なしと判断しました。

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これでアンプは一通り調整は完了しました。調整後のアンプは以下のとおりです。

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見栄えは1号機とほぼ変わりませんが、電源スイッチで見分ける事ができます。次回は音出しとまとめを行います。

 

つづく(まとめ編)