終段スイッチング電源検討(まとめ2)

まとめ2

今回の設計と製作についてまとめを行います。

ねらい

今回のスイッチング電源を採用したパワーアンプ製作のねらいは以下のとおりです。

1)全波整流+コンデンサインプット電源をドライバ段以降に採用したアンプと比較

上述の電源は基本波100Hzのリップルが発生しますが、その音質への影響を確認します。

上の写真はNS-1000Mマルチアンプシステムのウーファー駆動用パワーアンプの全波整流コンデンサインプット電源のリップル波形の観測結果です。スイッチング電源の採用により、このリップルを改善させます。

2)大容量電源トランス有無の影響

ハムの大きな要因は電源トランスとの知見から大容量電源トランスを搭載しないスイッチング電源を採用します。

上の写真がNS-1000Mマルチアンプシステムのツィーター駆動用パワーアンプの出力ノイズスペクトラムで、下がウーハー駆動用パワーアンプの出力ノイズスペクトラムです。ウーハー用アンプの方が大容量電源トランスを採用していますが、別筐体の為、結果は良好です。

3)純粋にスイッチング電源を採用してみたかった

過去にスイッチング電源を採用したパワーアンプがいくつも製品化されましたが、HiFi用途のアンプには定着していません。その理由を自分なりに確認してみます。

スイッチング電源選定

格安の中国製スイッチング電源を購入して日本製電源と比較評価をした結果、大きな性能差を確認した為、TDKラムダ製RWS50B-12を採用しました。

値段の誘惑により、こんなに沢山の電源を購入してしまいました。写真手前がTDKラムダRWS50B-12です。

写真は3A強の負荷電流を流した時の出力ノイズ波形です。上が格安中国製電源で下がTDKラムダ製電源です。オシロスコープのレンジが異なりますが、約10倍のレベル差を確認しました。

パワーアンプ回路図

マルチアンプシステムウーファー駆動用アンプの回路図をベースとしています。検討の結果、最終の回路図は以下のとおりです。

2段目の4個直列のダイオードは、差動トランジスタの印加電圧を合わせる為に挿入しています。ベースとしたアンプよりも終段の電源電圧が上がった為、発熱が心配でしたが、大型ケースのヒートシンクにより問題にはなりませんでした。2段目の位相補償用コンデンサはまだまだ攻められそうでしたが、15pFとしています。このアンプですが、発振対策に時間がかかりました。要因は下記の2点が上げられます。

1)電源のスイッチングノイズ帯域とアンプの発振帯域がかさなりスイッチングノイズの影響で発振しました。写真は電源のスイッチングノイズとアンプの発振波形です。

電源スイッチングノイズの基本周波数は約100KHzですが、スイッチング時の波形が数MHzとなっています。一方、アンプの発振周波数は約9MHzと被っています。対策としては、アンプに同相ノイズの進入を防ぐ為に、信号ラインにフェライトコアを追加しました。

アマゾンで購入した安物でもそれなりに効果がありました。さらに電源ラインの引き回しをスイッチング電源から距離をとるようにしました。

2)出力部負荷の影響を受けて発振した。先人のリファレンス回路には必ず入っていた、出力部の位相補償回路を初めて採用しました。効果は覿面で改善しました。

対策前は寄生ノイズの見られる発振波形を確認できます。これはトランジスタスイッチング時に発生しやすいもので、たまたま終段のバイアス回路に不良が起こっていてB級動作をしていた事で発覚しました。対策できたので不幸中の幸いだとおもいます。次回は電源回路からまとめの続きを行います。

 

つづく(まとめ3)

終段スイッチング電源検討(まとめ1)

まとめ1

大容量電源トランスを別筐体に組み込んだA級BTLモノラルDCパワーアンプと比較試聴をします。

リファレンスアンプ

NS-1000Mバランスマルチアンプシステムのウーファーを駆動するアンプをリファレンスとして比較試聴を行います。試聴前にこのリファレンスアンプについて簡単に紹介します。外観は以下のとおりです。

上がアンプ本体です。モノラル構成の為比較的小さな筐体に納めています。下が電源トランスユニットです。下の写真のとおり大容量トランスを左右チャンネル独立に搭載しています。

次は回路図を比較します。

構成はほぼ同等ですが、下に示す細かな点が異なります。

・ドライバー段トランジスタ

・ゲイン(帰還抵抗)

・2段目位相補償定数

・出力位相補償有無

出力位相補償については、安定性にかかわるのでこのモノラルアンプも含めて今後、全トランジスタ式DCパワーアンプに追加していきたいと考えています。次は電源回路を比較します。

ウーハーch用アンプの電源は、とにかく大容量に拘った設計としています。その分設置性や取り回し、コストを犠牲にしています。それに比べてスイッチング電源を使った電源回路は、効率重視の為最低限のマージン設計としています。この恩恵により電源内蔵ステレオ構成として実現できたと考えています。

比較試聴環境

比較試聴は以下の環境で行いました。

通常の環境との違いは、アンプの音をダイレクトに聴く為にマルチアンプとせずにフルレンジスピーカーを使用しています。この為ボリュームユニットも4chタイプを使用します。各ユニットを簡単に紹介します。D/Aコンバーターは、バーブラウン製PCM1792ステレオDACを2個使用してバランス出力を生成しています。

4chボリュームユニットは、ディスクリート構成のDCアンプをバッファとした4chボリュームを採用しています。

スピーカーはフォステックスの16cmフルレンジユニットFF165WKをフォステックスのエンクロージャーBK165WNに取り付けたものです。

スピーカーは、NS-1000Mを台として寝かして設置しています。

設置の関係でスピーカーユニットや、耳の位置よりもやや高くなっています。

比較試聴

初めに、リファレンスアンプを使ってCDを聴き、1曲聴き終わったらアンプを変更して同じ曲を聴きました。アンプのゲインが1dB今回製作したアンプの方が大きいので、リファレンスアンプから被試聴アンプ切り替え時にボリューム調整を行いました。試聴に使ったCDは以下のとおりです。

音の違いはありますが、大きな違いではありませんでした。スイッチング電源を採用したアンプの音の特徴を列記してみます。

・声の低い帯域あたりの音が豊か

・中音域の奥行きが感じられる

・ボーカルの音の離れが良い

・重低音は逆に控えめ

上記の特徴について考えてみました。リファレンスアンプのドライバー段以降の電源は全波整流コンデンサインプット電源を採用している為、基本周波数100Hzのリップルを含んでいます。このリップルの帯域で音の違いが起こったのかも知れません。可聴帯域外のスイッチングノイズの影響は、この試聴の中では特に感じる事はありませんでした。

 

おまけ

A級BTL方式の電源電流は、HotとColdアンプで相殺されてDCとなりますが、念のため確認してみました。方法は終段の+電源ラインを電流プローブでクリップして電流測定しました。結果は以下の通りです

上がHotアンプの終段電流波形です。1mV/10mAレンジの結果です。電流は音楽信号のとおり変化しています。下はHotとColdの終段電流の和です。ACモードでオシロスコープの感度を最大(5mV/Div)に上げています。終段の電流はHotとColdで打ち消し合ってDCの電流となっている事が確認できました。次回からは、今回の設計と製作のまとめを行います。

 

つづく(まとめ2)

終段スイッチング電源検討(製作編64)

製作編64

トップカバーを被せて、ファンモーターも動作させてアンプ出力の残留ノイズを確認します。結果がよければアンプ完成です。

残留ノイズ測定準備

おそらくこれでアンプ出力ノイズの確認は最後となるとおもいますので、測定前に改めて内部配線の束線を行いました。追加で束線できる箇所はあまいありませんでしたが、最終的にこんな感じとなりました。

配線がごちゃごちゃしている原因は、BTL方式のステレオアンプなのでそもそも配線数が多く、SW電源のスイッチングノイズの伝搬を防ぐ為に、考えなしに束線する事ができなかった為です。記事の写真としては、いまひとつですが、蓋をしてしまえば見えないので、あまり気にしない事にします。

アンプ出力ノイズ

アンプ出力に8Ωのダミー負荷を接続してオシロスコープで波形をモニタしました。まずはファンモーターを動作させずにトップカバーの有りと無しを比較しました。

黄色がHot、青がCold出力です。上がトップカバー無しで下がトップカバー有りです。結果はトップカバーの有無で出力ノイズに変化はありませんでした。次にL-chのノイズを確認しました。結果は以下のとおりです。

Rchの83mVppに比べ39mVppとノイズレベルが小さくなっていました。+/-12V電源との距離が離れている事と、L-chの近くにはマイコン用電源がありますが、+/-12V電源に比べて圧倒的に負荷が軽い為に影響が小さいと考えられます。Rchでトップカバーの有無はノイズに影響がなかったのでLchトップカバー有りの確認は省略しました。次はファンモーターの影響の確認を行います。確認は、ファンモーターからの距離が近いR-chで行いました。先に行ったカバーありの状態よりも状況が良くなっていた為、改めてファンモーター非動作時と動作時の確認を行いました。

上がファンモーター非動作時で、下が動作時です。波形を見る限りファンモーターの動作による影響はなさそうです。ファンモーターの回転数は315rpmなので、掃引速度を下げて念のため確認を行いました。掃引速度は5ms/divです。

上がファンモーター非動作時で、下が動作時です。この掃引速度の結果を見ても大きな差は確認できませんでした。電源のスイッチングノイズの完全な対策はできませんでしたが、これ以上は音への影響も懸念される事と、可聴帯域外のノイズという事で、当面はこの状態で使用したいと思います。

外観

改めてトップカバーを被せた状態の外観写真を掲載します。

この角度で見るとファンモーターの放熱穴が中央寄りに見えます。次はリアからの外観写真です。

フロントよりも大型の取っ手をつけていますが、スピーカーターミナルを保護する為です。フロントとリアの取っ手は、アンプの取り回し上欠かせないアイテムとなっています。次回は電源の違いによる音の違いを聴いてみます。

 

つづく(まとめ編1)

終段スイッチング電源検討(製作編63)

製作編63

PWM制御ファンの動作確認をして冷却効果の確認も行います。

PWM制御確認

初めに速度制御入力端子をオープン状態で動作確認をしてみます。速度制御入力ラインはファンモータ内部でプルアップされている事から、Duty=100%の設定となります。回転出力信号は以下のとおりです。

信号の周波数は77.5Hzでした。ブレード1回転で2波出力される為、周波数から回転速度への変換は以下のとおりです。

77.5Hz / 2 * 60 = 2325rpm

続いて速度入力端子をGNDに落として確認します。この場合はDuty=0%の設定となります。回転出力信号は以下のとおりです。

信号の周波数は10.5Hzなので、回転速度は315rpmとなります。次にarduino UNOが生成したPWM信号を入力してみます。最初は490Hz信号を入力してみました。写真はDuty=50%時の入力信号と回転出力信号です。

黄色が入力信号で青が回転速度出力信号です。回転出力信号は入力信号と非同期でした。回転速度は1449rpmでした。PWM信号周波数が490Hzでも速度制御はできているようです。ファン内部では、入力信号を平滑によりDCレベルに変換して速度指令に変換していると考えられ為、問題なく制御できていると思われます。同様にPWM信号周波数980Hz/Duty=10%の信号を入力してみました。

回転周期は画面中ではみれませんが、980Hzでも正しく速度制御できているようです。両信号のDutyを0から10%づつ増やしていき回転速度を確認してみました。結果は以下のとおりです。

ネット上の情報どおり、この周波数の範囲では、どちらの信号でも正しく速度制御ができている事が確認できました。但し、全てのPWM制御ファンにこの結果が当てはまるとは言い切れないので注意が必要です。

ファンモーターの交換

トップカバーを外して、ファンモーターを交換します。現行のファンはM4マシンネジで取り付けています。ファンモーターを取り外して新旧のファンを並べてみました。

写真右側が新しいファンモーターです。ファンをとりつけようとしたところ、今まで固定に使っていたM4マシンネジでは、長さが足りずに取り付ける事ができませんでした。仕方がないので、ファンモーター付属の皿タッピンネジを使う事にしました。このネジを使う為にまずは穴径を少し拡大します。

ネジが入るようになったら、皿ネジ用の追加加工を行いました。

これら追加工を行い、無事新しいファンモーターが取り付けられました。

再温度上昇試験

ファンの取り付けが完了したので、スイッチング電源フレームの温度上昇試験の準備を行います。まずはDuty=0の最低回転速で効果の確認を行います。前回のファンモーターの効果確認時と同様に温度平衡した状態でファンを起動して温度の変化を確認します。この為、ファンの配線は一旦機外へ出して、途中で電源オンできるように準備しました。

Duty=0とする為に、速度入力端子はGNDに落としてあります。前回の測定と同様に+12V用と-12V用のスイッチング電源のフレームに熱電対を取り付けました。

ファンを止めた状態で温度平衡となるのを待って、ファンを動作させました。測定間隔は1分です。結果は以下のとおりです。

効果は-12V電源で約4℃で+12Vは約3℃でした。動作時の騒音は殆ど聞き取れず、開口部に手を当てても暖かい感触はありますが、風を感じられる程ではありません。測定時の室温が約20℃だったので、夏場の35℃を想定してもフレーム温度は70℃以下となりました。当面この状態で様子を見たいとおもいます。

 

つづく(製作編64)

終段スイッチング電源検討(製作編62)

製作編62

PWM制御のケースファンを調達し、スイッチング電源の冷却の検討をします。

おさらい

以前、スイッチング電源のフレームの温度上昇試験を行いましたが、結果をおさらいします。まずは何の対策なしでスイッチング電源のフレームの温度上昇を確認しました。結果は以下のとおりです。

結果を見ると、常温環境のスイッチング電源のフレームの平衡温度は65℃くらいとなる事が確認できました。真夏の室内を考慮すると対策が必要と考えて、トップカバーに穴を開けてケースファンを取り付けました。初めにファンを動作させずに放熱穴の効果を確認しました。結果は以下のとおりです。

効果は認められるものの、十分ではありませんでした。さらにファンモーターを動作させて効果の確認を行いました。

結果は約20℃温度が下がる事が確認できました。効果は十分ですが、騒音等の弊害があるため、マージン分の速度を下げるためにPWM制御のケースファンを検討してみる事にしました。

PWM制御ケースファン選定

アマゾンでPWM制御機能付きの静音ファンを探してみました。上記で検討したファンのPWM制御付きのものもありましたが、3個セット売りだった為、別のものを探しました。ファンの電源配線をどうするか考えながら探していたところ、延長電線が付属したファンが目にとまりました。

決め手は価格と延長ケーブルが付属している点です。仕様は以下のとおりです。

ラインナップは最高回転数により3種類ありますが、今回購入したものは2400rpmのものです。

PWM制御ケースファン

物が届きました。

箱は日本仕様となっています。中身を確認します。

ファン本体以外、延長ケーブルと固定用のビスが入っています。PWM制御ですが、一般的に25KHzの信号のDutyを制御して回転速度を指定します。購入したファンの仕様を確認しましたが、PWM制御信号周波数に関する記述はありませんでした。一方、アンプ搭載のarduino UNOですが、14本のデジタル入出力ポートを持ち、その中6本がPWM出力が可能となっています。6本のPWM出力ですがさらに2種類に分類でき、5、6番が980Hz出力仕様で3、6、9、10、11番は490Hz出力となります。arduino UNOのハードウェアでは25KHzのPWM出力を出す事ができません。しかし、ネット検索をするとPWM速度制御用信号周波数は必ずしも25KHzでなくても良い事がわかりました。早速検証してみます。

PWM制御検討

arduino UNOの5番ピンと9番ピンを使って制御信号を生成し、Dutyに対する回転速度を確認してみます。まずは、PWM制御信号生成用の簡単なソースコードを作成しました。

PWM信号は、analogWrite文を使うと、設定変更するまでPWM信号を出力し続けます。Dutyは定数定義し、測定の都度書き換えて確認を行います。早速出力信号確認を行ってみました。

黄色が9番、青が5番の出力信号です。Dutyは50%としています。仕様どおりのほぼ490Hzと980Hzの信号の確認ができました。次はファンモーターの仕様を確認します。コネクタの端子配列は以下のとおりです。

接続用配線する為に延長ケーブルをカットして被覆を剥きました。

速度出力はオープンコレクタ出力なので、出力端子を12KΩでプルアップします。

これで速度制御確認の準備は完了です。次回は上記で準備したものを使って実験を行います。

 

つづく(製作編63)

終段スイッチング電源検討(製作編61)

製作編61

アンプの低周波ノイズの確認を行います。

周波数特性改善対策フォロー

本題に入る前に、前回の記事で行った周波数特性改善対策に関して追加で1点確認を行いました。対策としてR-ch/Hotのアンプ出力のフェライトコアを取り外した為、出力ノイズへの影響の確認を行います。無信号入力状態でR-chのアンプ出力ノイズをオシロスコープで観測しました。結果は以下のとおりです。

上がフェライトコア有りで、下が外した状態のノイズ波形です。黄色がHot側です。2つを比較すると、スイッチング時のノイズの差はないように見えますが、それ以外のタイミングのノイズがやや悪化しているように見えます。この程度の差であれば無視したいと思います。

低周波ノイズ

今回スイッチング電源を採用した1つの理由は、過去の記事で電源トランスの漏洩磁束によるハムの影響が確認された事から、大型な電源トランスを必要としないスイッチング電源採用の効果を期待した為です。この効果を検証する為に、アンプの低周波ノイズの観測を行います。測定は以下のブロック図の環境で行いました。

ブロック図を簡単の補足します。ノイズの観測はオシロスコープ付属のFFT機能を使用して行います。但しオシロスコープFFTにはアンチエイリアスフィルターが内蔵されていないので、過去に製作したフィルタージグを使用しました。回路図と周波数特性は以下のとおりです。

フィルターはアクティブフィルターを2段接続し、-24dB/Octの特性としています。差動入力し、ジャンパスイッチでHot/Cold/差動の選択ができます。入力段で10倍(20dB)増幅しています。カットオフ周波数は約500Hz(-3dB)です。オシロスコープのサンプリング周波数は、上記フィルターの特性に合わせて設定します。過去の確認によりFFTの0dBは、オシロスコープ感度設定によらず、入力で4Vppに相当する事を確認しています。今回フィルターが20dBのゲインをもっているため、フィルター入力部で0dBは、0.4Vppとなります。

低周波ノイズ測定

初めにR-chから測定を行います。フィルター基板への信号入力は、ノイズの影響を考慮して2芯シールド線を使用しました。

FFTのサンプリング速度は、フルスケールで500Hzとなるように設定しています。信号のアベレージング機能があり、16回平均を選択しました。アベレージングなしの方が聴感の結果と合っているかもしれませんが、結果が安定しないための選択です。結果は以下のとおりです。

結果は上からHot, Cold, 差動の結果です。差動による改善効果が確認できます。差動のピークレベルは、-98.8dB(150Hz)なので正弦波換算すると以下のとおりとなります。

0.4x10^(-98.8/20)= 4.6uVpp

この結果をみる限り、スイッチング電源を採用した効果があったと言えます。参考として過去に測定した他のアンプの結果も掲載します。

上が、High-ch用アンプの結果で、電源トランスを内蔵している為、結果のピークは-82.8dBでした。下はLow-ch用アンプの結果で、電源トランスを別ユニットとしている事からピークレベル-113.6dBと優秀な結果となっています。今回のアンプはその中間に入る結果となっています。同様にL-chの測定も行いました。

R-chと同様に、上からHot, Cold, 差動の結果です。差動時のピークレベルは、R-chよりもやや劣り、-94.0dBでした。スイッチング電源を採用した効果がそれなりに確認できて良かったです。次回は放熱用のファンについて検討を行います。

 

つづく(製作編62)

終段スイッチング電源検討(製作編60)

製作編60

アンプの周波数特性の測定を行います。

測定準備

測定はアンプに正弦波を入力し、入出力波形をオシロスコープで観測して周波数ごとのゲインを算出します。観測はいつものとおり以下のブロック図の環境で行いました。

簡単に補足すると、発振器の出力をアンバランス-バランス変換アダプタに入力してバランス信号に変換します。被測定アンプには8Ωのダミー負荷を接続し、上記のバランス信号を入力します。オシロスコープで、Hot/Coldそれぞれの入出力波形を観測し、レベルの比率からゲインを算出します。今回の注意点は、アンプにオフセット検出機能たあるため、入力信号のオフセットを低く抑える為に、発振器出力レベルを上げて、アンバランス-バランス変換アダプタの信号に対するオフセット電圧比率を小さくしています。その分、アンバランス-バランス変換器のボリュームを絞っています。まずはR-chから測定を行いました。写真はR-ch/Hotの入出力波形です。

黄色が出力波形で、青が入力波形です。入力信号は400mVppとしています。写真は上から10Hz, 100KHz, 1MHzの結果です。思いの他、高域の減衰量が大きくなっていました。同様にR-ch/Coldの特性の測定を行いました。結果は以下のとおりです。

上が100KHz、下が1MHz時の入出力波形です。Hotに比べてColdの方が高域の減衰量が小さくなっていました。測定結果をグラフ化してみます。

R-ch/Hotの特性は、100KHzから減衰が始まっています。Hot側アンプの方が設置条件は悪いものの、明らかに異常な状況です。検討は後まわしにして、先にL-chの確認します。

写真は上がLch/Hot 1MHz、下がLch/Cold 1MHzの入出力波形です。この結果をR-chと同様にグラフ化してみました。

結果は、R-ch同様のHotの高域特性の方がやや悪くなっていますが、R-ch程ではなく、この差は設置環境差によるものと考える事ができます。やはり、R-ch/Hotは特性悪化の何らかの原因があると判断できます。

R-ch/Hot改善検討

R-ch/Hotに高周波信号を入力した状態で、各部を触ってみました。変化の兆しはありません。続いて他のチャンネルとの違いに着目してみました。1点、このチャンネルのみフェライトコアが1個追加されている事に気づきました。場所はアンプの出力ラインです。

フェライトコアが取り付けられている赤の被覆の太い電線がR-ch/Hotの出力ラインです。このフェライトコアがこれ程影響を与えるのか、半信半疑で取り外してみました。

早速、周波数特性の確認をしてみました。写真は、取り外し前後の1MHz入出力波形です。

出力は1.7Vppから3.0Vppにアップしています。早速結果をグラフ化してみました。

結果は想定を越えて改善していました。改めてこのようなフェライトコアの使い方は間違っている事を認識しました。改めて、R-chの周波数特性をグラフ化してみます。

対策により、ほぼL-chと同等の結果となりました。今回も途中で結果がどうなるかと思いましたが、なんとかまとめる事ができました。次回は低周波ノイズの測定を行います。

 

つづく(製作編61)