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バランス変換ボリューム2(番外編8)

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番外編8

設計変更により進行が思わしくないことと、回路について何れ触れておきたかったため番外編を入れさせていただきました。

使用回路について

私の手がけたアンプは、基本差動2段構成ですが、その2段目に良く使われるカレントミラー負荷を使っていません。音を聴いて決めたわけではなく、私のトランジスタアンプのバイブル金田明彦先生著作の「最新オーディオDCアンプ」を参考にさせてもらった結果です。この本については、BTL方式A級DCパワーアンプ(構想編)で紹介しましたが、大学生の時に購入して以来手放さずにもっています。簡単にその内容について紹介します。

カレントミラー回路

図は抵抗負荷の差動2段アンプと、2段目の負荷をカレントミラー回路としたものです。

■抵抗負荷の差動2段アンプ

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■カレントミラー負荷の差動2段アンプ

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初めにカレントミラー負荷の動作原理を簡単に説明します。2段目の反転側負荷のベースとコレクタが接続されたトランジスタは、ベースエミッタ間のPN接合と等価となり、ダイオードとして動作します。このダイオードの特性は非反転側のトランジスタのBE間特性と選別により合わせることができます。この等価ダイオードに流れる電流をIc1とすると、カレントミラー回路の反転側のトランジスタのベース電位は、

Ic1 x 220 + 0.6 V となります。

一方、非反転側のカレントミラー回路のトランジスタに流れる電流をIc2とすると、その時のトランジスタのベース電位は、

Ic2 x 220 + 0.6 V となります。

トランジスタのベース電圧は同じなので、

Ic2 = Ic1 となります。

名前のとおり、非反転側の電流が反転側の電流を鏡に写したように同じとなります。この結果、差動アンプの非反転側が、コンプリメンタリの様な動作となり、この時の2段目差動アンプのゲインは、

k x RL x hfe x 2 となります。

ここで各パラメーターは、RL=次段の入力抵抗、hfe=差動アンプTrの直流電流増幅率、k=アンプの使用環境で決まる定数です。RLは抵抗負荷の差動アンプのコレクタに接続される負荷抵抗(回路図では5.6kΩ)よりも大きくなります。また、カレントミラー負荷は電流源のため理想的には内部抵抗は無限大となり無視することができます。さらに、疑似的なコンプリメンタリ動作によってゲインは2倍となるため、カレントミラー負荷採用によりアンプの裸ゲインをより高く設定する事ができます。アンプのオーバーオールのゲインを一定とした場合、より深く負帰還をかけることができ、アンプの周波数特性や歪率特性面で有利となります。これがカレントミラー負荷回路が採用される理由です。

カレントミラー回路を採用しない理由

いいことずくめに思えるこの回路をなぜ使わないかというと、前出の私のバイブルに掲載された差動2段アンプの歪率測定結果を参考とさせてもらったからです。

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抵抗負荷の差動2段アンプに比べてカレントミラー負荷を採用した差動2段アンプの歪率が遙かに悪い結果となっています。理由として説明されているのは、2段目の差動アンプの両トランジスタのバランス動作が崩れることによって、偶数次歪みの発生量がアンバランスとなり、その抑圧量が減ったためと説明されています。悪くなった特性を、より深く負帰還をかけて改善させることは合理的ではありません。

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高校生のときにTRIOのKA-8100というアンプを使っていましたが、カタログにはハイスピード回路採用と唱われており、すばらしい歪率特性と周波数特性が載っていました。カレントミラー回路が使われていたか定かではありませんが深い負帰還で特性改善していたものと思われます。このアンプ、外観のデザインはすばらしく、電源の設計方針も悪くありませんでしたが、音が平面的で生々しさが感じられないつまらないものでした。こんな経験を経て裸ゲインを稼ぎ、深い負帰還をかけるよりも裸の歪み特性の方が大事と考えるようになり、以来カレントミラー回路を使っていません。この結論は、音を聴いてきめたわけではないので、機会があればカレントミラー負荷回路の有無の違いを聴いてみたいとおもいます。次回は本題の製作に戻ります。

 

つづく(妥協編2)