バランスHPアンプ製作(製作編8)

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製作編8

HPアンプ片チャンネルHot分の実装が終わったので通電確認を行います。

通電準備

前回の記事で、通電にはユニバーサル電源を使用することを説明しましたが、私の使っているユニバーサル電源には、各出力ごとに保護用に最大出力電流の設定をする機能があります。万が一を考えて設定することにします。設定値は、各電源の要求電流に余裕を持たせて決めます。初めに12V系の電流を見積もります。初段の差動アンプが約2.1mA, 初段のツェナー用のバイアス電流がそれぞれ約1.5mAと1.0mAで2段目の差動アンプが約8mAです。合計で約12.5mAとなります。設定値は十分余裕を見て100mAとします。次に6V系の電流を見積もります。ドライバ段を6.7mA、終段を70mAに調整するので、合計で約77mAとなります。ここも余裕を見て設定値を200mAに決めました。

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通電用に配線を行います。+/-12V用に3本、+/-6V用に3本で、合計6本の配線をしました。最初に通電する際はいつも緊張しますが、先に進めるためには避けて通れません。

通電確認

まず初めに+/-12Vのみ電源を入れてみます。ユニバーサル電源には、指定した1つの出力の電圧と電流をモニタする機能がありますが、対象の出力を+12Vとしました。出力電流は10mA弱とそれなりの値となっています。モニタを-12V側に切り替えると、+12V側よりやや小さな値となっていて設計どおりの動作をしていると言えます。一旦電源を切り+/-6V系の電源も同時に入れてみます。+/-12V系の電流値に変化はなく、+/-6V系の電流値は約5mAと調整前の値となっています。

調整

暴走による破壊は、ドライバ段と終段の可能性が高いので、ユニバーサル電源の電流モニタを+6V出力に切り替えます。出力オフセット電圧が大きくずれていないことを確認し、2段目の差動アンプの電流を調整します。調整は2つの負荷抵抗(2.7KΩ)の電圧を観測して行います。ドライバに接続されている側は負帰還によりつじつまが合うように所定の電圧(約-1.3V)にほぼなっているため、反対側の負荷抵抗のコレクタ側の電圧を合わせます。電流が少ないためマイナス側に大きくずれていますが、VR2を時計まわりに回して調整します。一気にあわせずに-2.0Vくらいで他の部分の調整を行います。出力オフセットをVR1で調整します。次に終段のアイドリング電流をVR3で上げてゆきます。ここも一気に上げずに、50mAくらいまで上げて一旦様子をみます。

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発振

ここまで調整した所で、+6V電源出力の電流値が2段階に変化する事に気づきました。終段のアイドリング電流50mA調整時の電源出力電流は約55mAですが、テスタのリードを終段のエミッタ抵抗から離すと約15mA程度まで下がります。さてはとおもい、出力波形をポケットオシロでモニタしてみました。電源の電流値モニタの値が上がったタイミングで、発振波形が観測されました。

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発振周波数も150KHzと高くはなく、レベルもそれほど大きくはありません。今までほぼ同構成の回路で、2段目の位相補償22pF x2で対策できていたことからいやな予感を感じながら、対策コンデンサの1つを47pFへ容量アップしてみました。ここからは、対策検討用に購入しておいたセラミックコンデンサを使用します。変更後も不安定な状況に変化はありません。さらにもう1つのコンデンサも47pFへ交換してみました。

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発振周波数にやや変化はありましたが、不安定な状況はかわりません。あてずっぽで、帰還抵抗18KΩにパラに15pFを接続しましたが、発振レベルが上がり症状は悪化しました。帰還抵抗の15pFのみ外してしばらく思案し、試しにユニバーサル電源と終段に接続しているGNDラインのユニバーサル電源側を外して、+/-12V電源のGND入力側へ接続しなおしてみたところ、不安定な状態は見事に改善しました。位相補償用のコンデンサを元通り22pFに戻して確認しましたが、この状態でも問題ありませんでした。原因はGND配線にあった事がわかったため、急遽基板内で初段側のGNDと終段のGNDの接続を行いました。写真の灰色の電線です。

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改めて対策の効果の確認を行いましたが問題ありませんでした。ちなみに終段側のGNDラインですが、バランス動作している時には電流は流れず、パスコンの基準電圧にのみなっています。アンバランス動作時は負荷電流がこのラインを通して電源に戻りますので、それなりの電流が流れます。アンバランス出力は音質比較用のおまけなので、基板内の配線にはあまり拘らないことにします。

次回調整の続きを行いamp1の通電確認を終わらせます。

 

つづく(製作編9)

バランスHPアンプ製作(製作編7)

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製作編7

HPアンプの2段目のバイアス回路以降の実装を行います。

発注ミス再び

前回につづき、またしても発注ミスが発覚しました。発振防止用のディップマイカ22pFを購入したつもりが、150pFを購入していました。

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今回は部品表上は正しく記載されていましたが、発注自体をミスしていました。購入先はマルツオンラインで、ここは以前指定したものとは違う商品が買い物カゴに入るトラブルを経験していますが、今回がこの症状かは定かではありません。とはいえ、発注確定時に確認が漏れたのは自分のせいなので、あきらめるしかありません。ディップマイカは1個108円で8個で900円弱、150pFは死蔵の可能性が高いです。勉強代と考えて次回以降気をつけたいとおもいます。幸い、手持ち在庫があったので今回は追加発注せずに済みました。せっかくなので、私がよく使うネット通販サイトのサービスについて整理しておきます。

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表は2017年8月現在のものですが、圧倒的にアマゾンのサービスが良いことがわかります。3社に送料無料のサービスがありますが、アマゾン以外は適用された事はありません。会社運営上良い金額設定をしているとおもいます。運送会社の労働条件改善のため、今後送料が上がる傾向にあるとおもいますが、利用者の立場としては、できる限り維持してもらいたいとおもいます。

バイアス回路以降の配置

これまでの実装で、残りの実装エリアがあまりなくなってきていますが、ここに以下の大物部品の実装が必要です。

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・バイアス調整用の半固定抵抗

・ドライバ用コンプリメンタリトランジスタ

・終段用コンプリメンタリトランジスタ

・温度補償用トランジスタ

・+/-9V電源入力用3極端子台(基板に1個)

・アンバランス出力用2極端子台(基板に1個)

・バランス出力用3極端子台(基板に1個)

かなり量が多い上に、温度補償用トランジスタは、終段のトランジスタと熱結合したいと考えています。上記を踏まえて実装位置を検討します。実際に大物部品(端子台、終段トランジスタ、半固定抵抗)を基板に置いてみます。検討のポイントの1つに、配線の交差が少なくシンプルに実現できる事も考慮します。検討の結果は以下のとおりです。

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なんとか全部品を納めることができました。温度補償用のトランジスタは、終段の2SA1488Aの背面側に配置し、最終的には接着剤で密着させる予定です。

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配線も比較的シンプルになりました。被覆線を使った部分は電源GNDを除き、温度補償用トランジスタ配線3本(黄)と、負帰還ライン(紫)だけで済みました。

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通電確認の準備

半固定抵抗が全部で3個実装されていますが、安全サイドにプリセットしておきます。オフセット調整用のVR1は、センターに調整します。2段目の電流調整用のVR2は、抵抗値を大きく設定しておきます。VR2は実装時に考慮していませんでしたが、時計回りに回すと抵抗値が小さくなり、2段目の電流が大きくなります。細かい点ですが、このあたりの考慮が後のトラブルを減らすと考えます。バイアス調整用のVR3は、実装時に時計回りでバイアス電流が増えるように考慮して実装しました。プリセットは反時計回りに回して抵抗値を大きくしておきます。

電源の準備

製作したHPアンプは、4電源(+/-12V, +/-9V)が必要です。まだ電源回路の製作を行っていないため、通電確認にはユニバーサル電源を使用します。私の使っているユニバーサル電源は4電源出力は可能ですが、各出力の最大値は以下のとおりです。

・+18V/1.8A

・-18V/1.8A

・+8V/2A

・-6V/1A

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要求にはマッチしませんが、終段側に+/-6Vを入力して確認を行うことにします。終段はエミッタフォロワなので、動作および調整結果は電源電圧にあまり依存しません。唯一、終段のトランジスタの発熱量が下がる為、温度補償用のトランジスタおよび終段トランジスタの温度平衡時の動作が変わる為、正規の電源と組み合わせ動作時に再調整する必要があります。

次回は組み上げたHPアンプの通電確認を行います。

 

つづく(製作編8)

バランスHPアンプ製作(製作編6)

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製作編6

プリアンプ基板の製作が終わったので、HPアンプ基板の製作を開始します。

部品の準備

製作用の部品は、早いタイミングで一気に注文することにしています。全て通販で準備していますが、送料がばかになりません。購入漏れした場合、漏れたもののみの発注をすると、対象部品にもよりますが部品代よりも送料の方が高くなる場合もあります。普段使用する注文先は、秋月電子、マルツオンライン、共立エレショップ、アマゾンですが、荷物が届いてすぐに内容を確認すればいいのですが、忙しさを理由に使う直前までほったらかしの事が多く、今回もHPアンプ基板製作の直前に部品確認を行ったところ、ミスが発覚しました。下記が発注時に使用した部品リストです。

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発覚したミスは、500Ωと2KΩの半固定抵抗の数量が1アンプ分しかカウントされていませんでした。手持ち在庫対応可能としていた7.5KΩの抵抗も在庫がありませんでした。半固定抵抗は、ステレオ分として2倍注文した事から片チャンネル分はあるので、製作に影響なく追加発注がかけられます。7.5KΩの抵抗(初段の基準電圧生成用ツェナーダイオードのバイアス電流用)ですが、在庫のある抵抗値に設計変更することで対応することにします。電流値を上げるべきか下げるべきかを決めるために、データシートを確認しました。

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現状の設計の場合Izは0.92mA((12-5.1)/7.5)です。今までツェナーダイオードの電流値はあまり気にしていませんでしたが、特性図から定電圧特性上はもう少し電流をながすべき事がわかりました。手持ちの在庫を確認して4.7KΩに変更することにしました。この場合の電流値は1.47mAとなります。変更後の回路図を改めて掲載します。

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HPアンプ電源ライン実装

初段とバイアス回路を除く2段目までは従来製作したアンプと共通の配置とします。製作の手順も従来の手順を踏襲します。始めに2回路分の+/-の電源線を引いてエリアを2つに分割します。線材は0.65mm単線の芯線を使用しました。

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続いて電源入力用の3極の端子台と各電源ラインに100uF/25のFineGoldと0.47uFのフィルムコンデンサパスコンとして実装します。さらに電源の端子台と各電源ラインを接続します。

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初段の実装

アンプ回路は初段のプラス電源側に接続される部品から実装します。初めにオフセット調整用の500Ωの半固定抵抗、初段の負荷抵抗を実装します。次にカスコード接続用のトランジスタを実装します。このトランジスタのペア選別ですが、後々の事を考えてコンプリメンタリペアになりにくい物を選択します。下表は2SC1815GRのhfe測定結果一覧です。

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表中の水色の網かけは、コンプリメンタリペア用に予約したトランジスタを示します。今回は、hfeの値が小さい範囲にまとまった分布があり、このレンジの特性ではコンプリメンタリペアになりにくいと考えられるため、hfeの小さい順に選別していくことにします。今回はNo.39とNo.40のトランジスタを選択しました。トランジスタの実装は、後々の交換を考えて足を曲げずに(ストレート)ハンダ付けしてゆきます。故障の可能性がほぼない、抵抗などのリードは、できる限り回路の配線に利用します。続いてカスコード接続の基準電圧生成用のツェナーダイオード、dual J-FET実装用の8pin dipソケットを実装します。次に実装する定電流源用のトランジスタは、ペア等の特性の要求がありません。先ほどのhfe測定結果の再確認をします。使用済みのものは、灰の網かけをしています。この一覧からペアにならない個体No.2を選択しました。

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基準電圧生成用のツェナーダイオード、電流設定用のエミッタ抵抗を実装して初段は完成です。

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2段目実装

こちらも+電源側に接続される部品から実装を進めます。初めに差動アンプの電流設定用の2KΩの半固定抵抗を実装します。続いてPNPトランジスタのペア選別をします。PNPと同様に後々コンプリメンタリペアになりにくい物を選択します。下記がhfe測定結果一覧ですが、NPNと同様に水色の網かけがコンプリメンタリペア用に予約されたトランジスタを示します。

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私の設計するアンプでは、PNPが単品使用されないので、最低でもペア選別されないと、ずっと売れ残ってしまいます。幸い単価が安いので当面対応は考えない事にします。今回はトランジスタはNo.32とNo.6を選択しました。次に負荷抵抗27KΩを実装したところで実装を一旦中断し、実装部品の配置の検討をします。

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次回は終段用バイアス回路、ドライバ、終段と実装を進めていきます。

 

つづく(製作編7)

バランスHPアンプ製作(製作編5)

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製作編5

前回の記事で途中まで製作したプリアンプ基板を組み上げて通電確認を行います。

オペアンプ

今回の製作には、過去の製作でMUSES01への換装により余っていたMUSES8920を使用します。使用するに当たり改めてMUSESをネット検索したところ、MUSESシリーズに新たなオペアンプが追加されている事を知りました。

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J-FET入力1回路のみのMUSES03です。2017年の3月に情報公開されたようです。どのようなオペアンプか気になるのでMUSESシリーズの他のJ-FET入力オペアンプと比較をしてみます。

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MUSES01を受け継ぎ、音質に配慮した設計となっているとの事ですが、MUSES01では目をつぶられた特性も見劣りしないものとなっています。表中の価格は、秋月電子での販売価格ですが、1回路あたりの単価は、シリーズ中一番高くなっています。試しに音を聴いてみたいのですが、1回路タイプなので、従来のMUSESシリーズの差し替えができません。秋月から変換基板が発売されればすぐに試す事ができるのですが・・・。下記はプレスリリースに掲載されたMUSES03の特長です。

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この中で一番気になるのは、フルバランス型差動増幅回路採用です。全高調波歪率特性が格段に良い値となっているのは、この構成に起因しているのかもしれません。入力段と出力段を別チップ構成もその効果を確かめてみたいと思いました。私のシステムは全てバランス構成となっていて回路が倍必要な為、1回路タイプのオペアンプの採用は回路実装上不利になりますが、公開されている特性を生かしてチャンネルデバイダ用のアクティブフィルタに採用してみたいと思いました。

プリアンプ基板の製作

それでは前回記事の続きで、プリアンプ基板の信号の入出力ラインの配線を行います。後で確認がしやすいように、アンバランス信号をオレンジで、バランスホットを白、バランスコールドを灰で配線しました。

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始めにテスタで導通確認を行います。+/-電源が所定のソケットの端子に接続されていることを確認します。つづいて入力の端子台とソケットの所定の端子が接続されていることを、出力の端子台とソケットの所定の端子が接続されていることを確認します。問題がなければ、次は+/-12Vを入力してピンソケットの各端子が所定の電圧になっていることを確認します。一部の端子はフローティング状態になっていますがそのフローティング状態を確認しました。

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通電確認

ここで初めてオペアンプを装着します。足を曲げてしまわないように慎重に押し込みます。

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片チャンネルづつ電源を入れて各端子が所定の電圧になっていることを確認します。電源端子は+/-12Vが、入力端子は0V、出力端子は出力オフセット電圧が観測されます。この確認も両チャンネルともに行います。最後に信号を入力して入出力の確認を行います。発信器で正弦波を入力し、ポケットオシロで波形を観測して確認をしました。

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L-ch用アンバランスバランス変換回路は周波数特性の確認を行ってみました。入力は1Vppとして正相出力と反転出力間の伝達特性を測定しました。

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ゲインが1なので予想どおり測定の範囲内はフラットな特性です。他のチャンネルも同じ特性と推測される為、周波数特性の測定は省略し、入出力の波形観測のみを行いました。下記の波形は1KHz入力時のアンバランスバランス変換出力のホットとコールド出力の観測結果です。

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正しくアンバランス変換されていることが確認できます。ついでに矩形波を入力して応答波形の確認を行いました。ホットとコールドで若干応答波形は異なりますが、概ね素直な出力波形となっています。

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プリアンプ基板の確認はここまでです。次回はHPアンプ基板の実装をスタートさせます。

 

つづく(制作編6)

バランスHPアンプ製作(製作編4)

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製作編4

トランジスタの実装前の準備が終わったので、基板実装を開始します。初めはプリアンプ基板を製作します。

プリアンプ基板

プリアンプ基板は、ボリュームを低インピーダンスで駆動して所定の減衰量を得ることと、アンバランス入力選択時に、信号をバランス変換するために入れています。回路図を改めて掲載しますが、点線の枠内が基板に実装される片チャンネル分の回路になります。

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回路図内の主要部品としては、オペアンプ2個のみですが、それ以外に信号の入出力および、電源入力用の端子台が必要です。必要な端子台の数は、バランス信号入力用に3極が1個、アンバランス信号入力用に2極が1個、バランス信号出力用に3極が2個、左右独立電源としているため、電源入力用に3極が1個必要です。片チャンネルトータルで3極が4個、2極が1個必要です。1枚の基板に左右分の実装を行うため、さらに倍の数の実装が必要となります。基板に実際に部品を置いて配置の検討を行います。その際の条件として以下の項目を考慮しました。

・左右の信号が平行して流れる事

・左右の部品配置が同じ事

・信号の入力が基板の1辺にまとまり、出力が対向する辺にまとまる事

・端子台への配線が他の部品でやりにくくならない事

・基板固定用のナット締め付けが他の部品に干渉されない事

端子台をなるべく多く基板の1辺に並べるために、信号を基板の長手辺から入力します。対向する長手辺2つを使っても、上記で見積もった10個の端子台を並べる事ができません。苦肉の策として、電源入力用の端子台を手前に配置し、信号入力用の端子台をその背後に並べることで入力用の端子台6個を、基板の1辺に並べる事ができました。その対向する辺に出力用の端子台4個を並べます。

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電源パスコン用の電解コンデンサとしてニチコンKZ(MUSE)100uF/50V品を購入していましたが、サイズが大きすぎて実装できなかったため、急遽手持ちのニチコンFG(Fine Gold)100uF/25Vに切り替えました。他の基板でも同様な事が起こるので、FG品を追加発注したいとおもいます。

部品実装開始

大物部品の配置が決まったので、全部品を仮止めします。ハンダ作業中に部品が外れて位置がわからなくなることを防ぐために、各部品の1つの端子をハンダ付けします。次にGNDの配線を行います。信号の入出力用の端子台と電源入力用の端子台のGNDを接続していきます。オペアンプの各電源端子にパスコンとしてフィルムコンを配置しますが、電源端子側と反対側の端子をGNDに接続していきます。基板上では、GNDを含めて左右独立としているので基板内ではGNDラインも2系統となっています。

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つづいて、アンプの回路を作り込みます。使用する部品は10KΩの抵抗のみです。抵抗実装に十分なエリア確保ができなかったため、抵抗は立てて実装しました。実装する抵抗は、1回路当たり入力抵抗1本と反転アンプの場合に抵抗2本が必要です。とはいえ、トータルでアンプが8回路分あるのでそれなりに手間がかかりました。

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ここまでの実装では、配線として被覆電線を使わずに済んでいます。残りは電源の配線および端子台への信号の配線が残っていますが、配線が交差するため、被覆電線を使います。

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電源の配線

電源入力用の端子台とオペアンプの電源端子を接続します。後でわかりやすいように+電源を赤で、マイナス電源を青で配線しました。配線する上で、残りの信号ラインの配線の際のハンダ付けでじゃまにならず、かつハンダ付けの熱で被覆が溶けないような敷線を心がけました。

信号ラインの配線

アンバランス入力、バランス入力、バランス出力用のそれぞれの端子台とオペアンプ間を配線してゆきます。今週は、アンバランス入力用の配線を行ったところで力つきてしまいました。

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次回は配線の続きと、通電確認を行います。

 

つづく(製作編5)

バランスHPアンプ製作(製作編3)

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製作編3

hfe測定時の温度上昇が大きかったので終段の放熱の再検討を行い、初段J-FETの変換基板実装を行います。

終段の放熱設計

前回の記事で紹介した2SC3851A/2SA1488Aのhfe測定で、想定よりも高いの温度上昇を確認しました。実使用時の放熱が心配になり改めて検討してみます。hfe測定時のトランジスタの損失は約0.5W(5V x 0.1A)です。実使用時は、電源電圧が9Vでアイドリング電流が70mAのため、トランジスタのアイドル時の損失は0.63Wになります。初めにデータシートを確認してみます。参考となるのはPc-Ta定格ですが、このクラスのトランジスタでは定格に謳われている可能性が高いです。

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今回は放熱器なしで使用する予定なので、グラフ中の一番下のラインを確認します。余裕をみて周囲温度Ta=50℃条件でPcの定格を確認します。2SC3851Aが約1.8W, 2SA1488Aが約1.2Wと読みとれます。この結果から実使用時の条件が十分範囲内に入っているので、放熱器なしで問題ないと言えます。たいした事ではありませんが、このグラフをみると、NPNとPNPでは同一条件時のPc定格値はPNPの方が小さく、グラフの作成仕様自体もなぜか異なる点が気になりました。一応、hfe測定時の損失が0.63WとなるようにIc=130mAとしてhfe測定を行い実際の温度上昇の確認を行ってみました。温度測定はタニタのマルチユースの温度計を使用しました。見た目は調理用の油温計と同じですが、園芸や趣味に幅広く対応する事を謳っています。測定範囲は-50℃~250℃で、センサーは棒状の先端2cmの範囲とのことです。早速計ってみます。放熱器が当たる面にセンサー部分を押し当てますが正確な測定には無理があります。

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最高で42℃の測定結果を確認しましたが、熱の伝導効率が悪く、センサー部分からの放熱も無視できないことから、実際には50℃くらいになっているものと思われます。熱容量および表面積が小さい物の温度計測には、熱電対を使うか、非接触測定をしないと正確な温度測定は難しい事を改めて感じました。ともかくこの結果から放熱器無しでいけると判断しました。

J-FET変換基板実装

それではHPアンプの製作に戻ります。次は初段のJ-FETを変換基板に実装します。東芝の2SK2145ですが、表面実装チップパッケージ品しかないため、いつものとおり変換基板に実装し連結ソケットを使い8pin dipソケットに挿して使用します。J-FET現品はこんな感じで提供されます。

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最初の頃は見るからに実装に不安がつのりましたが、今では慣れてしまい、変換基板へ実装後にIdss測定を行えばその後はノントラブルとなっています。そうは言うものの変換基板への実装は手間がかかります。最初にゲート端子1カ所を変換基板のパターンに合わせてハンダ付けします。次に反対側の3つの端子(ドレインとソース)ベタっとハンダ付けして吸い取り線で余分なハンダを取り除きます。最後に残ったゲートをハンダ付けして終了です。この段階で、各端子と基板の端子間の導通と、隣接端子間のショートの確認をテスタで行います。

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続いて連結ソケットへをハンダ付けします。Idss測定後のハンダ付けの修正を考慮して連結ソケットの差し込み量は最小とします。

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今回必要な4セットの実装が完了しました。

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次に実装完了したJ-FETのIdssの測定を行います。当初はIdssのペア特性の確認を行う事を目的としていましたが、今までの経験から確認が不要な程、値が揃っていることから、「正しく実装されている事」の確認が主目的となっています。測定回路は以下のとおりです。

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トランジスタのhfe測定で使用したジグにdipソケットも実装済みで、ジャンパワイヤの組み替えでIdss測定にも対応できます。

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実装した4セット分の測定結果は以下のとおりです。

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内蔵された2チャンネル分の偏差は小さく、大きなものでも約1.7%でした。Idssの大きな順に左右チャンネル分の初段に使っていきます。これで実装部品の前準備が完了したので、次回はプリアンプから実装を進めていきます。

 

つづく(製作編4)

バランスHPアンプ製作(製作編2)

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製作編2

引き続きトランジスタのhfe測定を行い、その結果からコンプリメンタリペアを選別します。

終段のトランジスタのhfe測定

終段にはサンケンの2SC3851A/2SA1488Aを使用します。このトランジスタBTL A級DCパワーアンプのドライバ及び終段に使ったもので、Pc=25W, Icmax=4A, ft=15MHzと特性上、特に目を引く点はありません。パッケージはTO-220タイプで、フルモールドされている点は使いやすいと思います。

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しいて言えば、このクラスのトランジスタとしては比較的安価(50円/60円)で選別して使用することを考えるとメリットがあります。DCパワーアンプを作った際の余りがありますが、当時はパワーアンプの終段で使用することから、選別時のIcを0.5Aとしてhfe測定しました。測定時の電源電圧は6Vでその際のトランジスタの発熱は無視できず、小型の放熱器を取り付けて測定を行いました。測定の効率が悪いため、在庫も含めてIc=0.1Aで測定し直します。PNPトランジスタから測定を行います。測定回路は以下のとおりですが、ジグはジャンパワイヤで組み替えて前回の記事で使用したものを流用してます。

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測定時のトランジスタには約5Vの電圧がかかり、Ic=0.1Aなのでトランジスタの損失Pcは約0.5Wになります。測定開始から1分くらいで温度が上がり、指でつまんだままでいると触っていられない程ではありませんが、かなり熱くなります。50℃は越えていると思われます。これら確認から測定時の安定待ち時間を約1分としました。(本記事キャッチ写真参照)残りの在庫を含めた測定結果は以下のとおりです。

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No.21以降が再測定を行った残りのトランジスタですが、こちらの方が全般的にhfeが高くなっています。続けてPNP品の測定を行います。測定回路は以下のとおりです。

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こちらも同様にNo.21以降が在庫の再測定品です。結果に偏りが感じられませんが、コンプリメンタリペア選別時にhfe順に並べ替えたら何か傾向が解るかもしれません。

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コンプリメンタリペア選別

今回製作するHPアンプのドライバには、2SC1815/2SA1015のコンプリメンタリペアを、終段には2SC3851A/2SA1488Aのコンプリメンタリペアを使用します。

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ヘッドフォンをバランス駆動するため、それぞれのトランジスタが片チャンネル当たり2ペア、ステレオ分で4ペア必要となります。初めに2SC1815/2SA1015のコンプリメンタリペアを選別します。選別しやすいように、それぞれの測定結果をhfeの値で昇順に並べなおしました。

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全般的に2SC1815のhfeの方が小さめですが、2SA1015のhfeの結果とオーバーラップしているため、4ペアの選別は問題ありません。2SC1815の網かけ品が今回購入したものですが、この結果からも前回購入品がはずれであった事がわかります。選別した4ペアは以下のとおりです。

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同様に終段用の2SC3851A/2SA1488Aのコンプリメンタリペア選別を行います。それぞれの測定結果を同様にhfeの値で昇順に並べなおします。

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こちらの結果も全般的にNPN品の方が小さな値となっていますが、幸い、2SA1488Aのhfe値とオーバーラップしていましたので、コンプリメンタリペア選別ができました。選別した結果は以下のとおりです。

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今回はわざわざhfe測定を行った甲斐があり、hfeパラメータによる理想的なコンプリメンタリペア選別ができました。

トランジスタの保管

前に一度紹介しましたが、測定済みのトランジスタの保管は、封止可能な部品用の小袋に1から40までナンバリングして、それぞれのトランジスタを該当するNoの小袋に入れます。それを4つに仕切られたプラケースにナンバー順に10づつ並べて保管します。現状では各袋に4個のトランジスタが入っています。アクセス性もよく、保管効率も悪くないので重宝しています。

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次回は初段のJ-FETの変換基板実装を行い、アンプ基板の製作を開始します。

 

つづく(製作編3)