製作編25
初段真空管ヒーター回路用電源の見直しを行います。
初段真空管ヒーター用電源設計変更
前回の確認で、初段真空管ヒーターの点火は確認できたものの、レギュレーター入力電圧に全く余裕がない事が確認されました。余裕確保の為の設計変更を行います。改めて電源回路図を掲載します。
回路図中の上から2段目が初段真空管ヒーター用電源回路です。対策としては、全波整流回路の電解コンデンサーの容量アップや、電源トランスの出力電圧アップが考えられます。電解コンデンサーの容量アップは、大きな効果は期待できない反面、三端子レギュレーターの消費電力アップを抑える事ができます。一番の問題は、基板の実装スペースおよび実装高さの余裕が無いため、簡単に容量アップする事はできないという点です。
一旦本体策は保留として、次は電源トランスの出力アップを検討します。現状のトランスの二次巻線電圧は0-12-24Vを全波整流回路で使っています。
二次巻線電圧を少し上げた仕様の物を探すために東栄変成器の販売ページを確認してみました。ラインナップを確認したところ、一つ高い電圧仕様のタイプは0-15-30Vまたは0-15Vの2巻線タイプでした。2つの電源トランスの仕様を掲載します。
2つを比較したところ、単巻線タイプの方が安いのでJ-3005が候補とします。このトランスを使用した場合の1番の懸念点は、三端子レギュレーターの発熱です。AC15Vを全波整流した場合の電圧は約21Vで、三端子レギュレーターの出力が12.4Vなので、印加電圧は8.6Vとなります。負荷電流は0.3Aの為、消費電力は約2.6Wとなります。現状のヒートシンクでは能力があきらかに足りません。対策は別途考えるとして、取り付けスペースを確認してみます。久し振りに電源トランスユニットのトップカバーを外してみました。あっ!
なんと一次巻線に90Vタップがあるではないですか!このタップを使用する事で、二次出力電圧を約10%アップさせる事ができます。出力は理論上AC13.3Vとなり、全波整流後の電圧は約18.7Vになると考えられます。この場合の三端子レギュレーターの消費電力は約1.9Wとなります。採用ヒートシンクの熱抵抗は20.0℃/Wなので、消費電力が1.9W時の温度上昇は38℃になります。室温35℃時のヒートシンク温度は73℃となりかなり厳しい状況です。実際には全波整流後の電圧は理想値よりも下がるのでこれで一旦進める事にします。まずは回路図を修正します。
早速電源トランスの一次側配線を変更しました。
この状態で三端子レギュレーターの入出力電圧波形を改めてオシロスコープで観測してみました。
この結果を見ると、三端子レギュレーターに最低でも2.7Vの電圧が印加されている事が確認できました。(改造前は1.68Vでした)改造前と同様にオシロスコープの入力をACモードに変更して感度を上げて波形を観測しました。
黄色の波形が出力ですが、素直な波形となっていて、リップル電圧は3mVに抑えられました。本件は追加の出費なしで、使用タップの変更だけで解決できてラッキーでした。次回は終段のヒーター回路配線を行います。
つづく(製作編26)