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バランス変換ボリューム2(妥協編1)

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妥協編1

バランス変換アンプの設計ミスのため、製作の方針を見直します。

妥協編

前回、格好良く「復活編?つづく」としましたが、1週間考えましたが妥協解しかみつからなかったため、サブタイトルを変更しました。

対策案

対策案として以下の2案を検討しました。

案1)反転アンプと非反転アンプのみをディスクリート化し、入力段のボルテージフォロワをオペアンプとしたハイブリッド構成とします。入力段のボルテージフォロワの実装スペースを確保するために、電源を3端子レギュレータ構成として、電源基板空いたスペースにボルテージフォロワを実装します。

案2)入力段のボルテージフォロワと出力段の非反転アンプを兼用し、チャンネル当たり2つのアンプですませます。

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2つの案の特徴と製作の方針

案1)電源が3端子レギュレータ構成、入力段がオペアンプを使ったボルテージフォロワとなり全回路をディスクリート化する事ができません。入力段のボルテージフォロワがアンバランス動作となり、電源に信号電流が流れます。

案2)反転出力と非反転出力信号にディレイが生じます。そのかわりディレイがあるものの回路はバランス構成となり、電源に信号電流が流れません。当初の予定どおり、電源も含めた全回路がディスクリート化できます。

暫く考えた結果、今回はディスクリート化が1つの目的なので、反転アンプのディレイを確認した上で案2で製作を再開することとします。

基板改造

初めに実装済みのバランス変換アンプを反転アンプに改造します。改造する反転アンプの回路は以下のとおりです。

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反転出力側の出力段およびそのバイアス回路、帰還回路を削除します。基板上には不自然な空白エリアができましたが、気にしないこととします。

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部品削除したハンダ面は、ハンダ吸い取り網で余分なハンダを取り除きます。改造基板ですが、見栄えも最低限整えられたとおもいます。

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動作確認

改めて調整をやり直します。手順はボルテージフォロワと同じです。調整結果は以下のとおりです。

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念のため、反転アンプの周波数特性の確認も行いました。測定した範囲では特性はフラットです。

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次に回路全体の動作確認を行います。ボルテージフォロワ出力を反転アンプに入力して、バランス変換動作を確認します。1KHz/1Vppの正弦波を入力して反転・非反転出力をモニタしました。写真のとおり正しくバランス変換されています。

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反転アンプのディレイ

バランス信号合成後の反転アンプのディレイの影響は、下記の2点です。

1)周波数が高くなるに従い位相が遅れる

2)偶数次歪みの抑圧量が下がる

測定は、500KHzの矩形波を入力し、反転アンプの入出力波形の比較を行いました。写真はバランス出力波形です。

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反転アンプ出力にリンギングが観測されますが、測定した範囲(600KHz)よりも高い周波数にピークがあると推定します。信号の変化点を拡大してディレイを確認します。

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写真からは0.039uS程度の遅れが観測できました。この遅れ時間は、25.6MHzに相当し、20KHzに対する位相に換算すると約0.3°となります。この数値の影響度はわかりませんが、この特性を理解した上で音を聴いてみたいとおもいます。リンギングの影響を確認するために、20KHzの矩形波を入力してみました。(キャッチ写真参照)この写真にはリンギングが確認できませんが、掃引速度を上げて観測すると、上記の写真のリンギングが確かに観測できました。この結果から影響は小さいと考えられます。参考としてボルテージフォロワのディレイも測定してみました。誤差かもしれませんが、ディレイ量は反転アンプより小さい事が観測されました。

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次回はもう1チャンネル分の実装を進めます。

 

つづく(妥協編2)

 

バランス変換ボリューム2(製作編6)

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製作編6

バランス変換アンプを実装した基板にボルテージフォロワを実装して片チャンネル分を完成させようと考えていましたが・・・

回路実装

残りのエリアに引いた電源線にパスコンを実装し、先に実装した端子台から給電します。このエリアには電源の端子台の代わりに入力信号用に2極(アンバランス信号入力用)の端子台を実装します。初段の実装はバランス変換アンプとほぼ同じです。

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バランス変換アンプと比較して、帰還用の抵抗が3本少ないですが、見た目の実装はほとんど変わりません。初段の実装が終わった段階でいつもどおり通電確認を行います。各部の電圧は以下のとおりです。

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2段目以降の実装

バランスボリュームの基板への回路実装と同じですが、バランス変換アンプ実装でより効率的な配置ができたので、その一部を反映させました。写真からはバランス変換アンプとの実装部品の差がわかります。

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発振対策は、バランスボリュームと同様に2段目の非反転側を22pF、反転側を10pFとしています。バランス変換アンプの周波数特性と同様の結果とならないか気になるので、調整後に確認を行う予定です。

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通電・調整

バランス変換アンプの調整で、より手順を明確にできたので、その手順を実行してみます。VR2とVR3を抵抗値を大きくプリセットします。電源オンし、2段目の非反転側の負荷抵抗の出力側(終段のベース電圧)の電圧が-0.6V前後となっていることを確認します。つづいて2段目の反転側のコレクタ電圧をVR2で-0.6Vに調整します。次に、VR3で終段のアイドリング電流を調整しますが、終段の2本のエミッタ抵抗間の電圧が200mVに合わせます。最後に出力のオフセット電圧をVR1で調整します。この手順を数回繰り返すと調整が完了します。調整後の各部の電圧は以下のとおりです。

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周波数特性の測定

バランス変換アンプで、2段目の発振対策アンバランスな容量が周波数特性に影響していました。反転アンプの帰還の影響と考えていますが、念のためボルテージフォロワの周波数特性を確認します。過去に製作したボルテージフォロワと同様に2段目の発振対策の定数はアンバランスとしています。早速周波数特性の測定を行いますが、バランス変換アンプの測定と同様に基準電圧は1Vppとしています。測定結果は以下のとおりです。

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全帯域で-0.18dBと0dBを少し割っていますが、これは測定誤差でしょうか?測定範囲内では、フラットでしたので、予想どおりバランス変換アンプの結果は、反転出力の帰還の影響と言えます。これで片チャンネル分の回路の実装が終わりました。

片チャンネル全体動作確認のはずが・・・

念のためボルテージフォロワ出力をバランス変換アンプに入力して、回路全体の動作確認を行います。その確認のために日を改めて電源を入れたところ、バランス変換アンプの各出力オフセットが-0.22Vとなっていました。先に触れたとおり、バランス出力で見るとオフセットは押さえ込まれています。この事象について改めて検討をしてみます。下図がバランス変換アンプのブロック図です。

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回路の使い方は、反転入力が接地されていて、非反転入力から信号を入れますが、ここでは出力オフセットを議論するため、非反転入力も接地しています。アンプの裸ゲインA=∞とおくと、アンプの正相および反転入力電圧Vi+とVi-が等しくなり、その結果出力Vo+とVo-も等しくなってバランス出力が0となります。ここまでは問題ありませんが、アンプの入力Vi+とVi-は等しくさえあればどんな値をとってもこの系は安定します。その値をViと置くと、アンプの出力は、

Vo+=3Vi-=3Vi
Vo-=3Vi+=3Vi

となり、出力オフセットもどんな値でも安定します。言い換えると非反転・反転それぞれの出力オフセットに対して負帰還はまったく寄与せず、アンプの裸特性にのみ依存することになります。その裸特性もコールドスタート時に0.2V以上の値となることからこの回路でバランス変換することは断念せざる得ません。ここまでおつきあいいただき、大変申し訳ありませんが、本製作に関して少しお時間をいただきたいとおもいます。

お恥ずかしい状況となってしまいましたが、次回までに方針を決めたいとおもいます。

 

つづく(復活編?)

 

バランス変換ボリューム2(製作編5)

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製作編5

前回バランス変換アンプの調整ができなかったので、原因を特定して調整を完了させます。

おさらい

非反転出力終段のコンプリメンタリトランジスタの実装の向きを間違え、終段のアイドリング電流の調整ができませんでした。新品のコンプリメンタリペアを正しく実装し直しましたが、それでも調整ができなかったため私自身の冷却期間を1週間とりました。その時測定した各部電圧を1週間眺めましたが、それほど異常な値となっていませんでした。

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原因の特定

仕方がないので、一旦反転出力側の帰還ラインを外して調整をしてみることにしました。この場合のフィードバックループの動作は、2倍の非反転アンプと等価となるので、ボルテージフォロワの調整経験が参考となります。再調整の結果、非反転出力側は、ボルテージフォロワと同様に調整できました。反転出力側は出力オフセットは無視して、終段のアイドリング電流を初めに調整します。その後、VR2で2段目のバイアス電流を調整してオフセット電圧を合わせ込みました。反転出力のオフセット電圧は、回路がフィードバックループ外のため安定せず、約150mV程度変動します。温度が安定した状態で、-10mV程度までに合わせ込んで反転出力の帰還をもとどおりかけます。出力オフセットは反転非反転出力共に約30mV程度変動しましたが、バランス出力で観測すると変動自体は1mV以下と非常に安定していました。尚、バランス出力のオフセット調整はVR1で容易にできました。温度平行した時の各部電圧の測定結果は以下のとおりです。

■非反転帰還切断時

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■非反転帰還接続時

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この回路の場合、非反転・反転出力ともに出力オフセットはある程度変動しますが、両出力がほぼ同じレベルで変動し、バランス出力として見るとオフセット電圧は押さえ込まれているようです。帰還を完全にかけた状態で調整ができなかったのは、この変動によって調整値がわかりずらかったためでした。反転出力側の帰還を外し、非反転側の調整を安定した状態でできる今回の手順は理にかなっていると言えます。次にこの状態で非反転、反転アンプの周波数特性を確認します。基準電圧(入力)を1Vppとして測定をおこないました。写真は測定時の非反転・反転アンプの入出力波形(画面上段が入力、下段が出力波形)ですが、正しくバランス変換されている事が確認できます。

■非反転アンプ入出力波形

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■反転アンプ入出力波形

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発振器の出力インピーダンスは50Ωですが、入力抵抗手前で入力電圧を見ているので、出力インピーダンスの影響はありません。周波数特性は以下のとおりです。

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100KHz以上で、非反転アンプはゲインが下がり、反転アンプは逆に上がっていました。この特性は、2段目の発振対策用コンデンサ容量のアンバランス起因と推定し、反転側の対策用のコンデンサも22pFに変更して再度周波数特性の確認を行いました。対策後の回路定数は以下のとおりです。

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予想が的中し、非反転・反転アンプともに確認を行った周波数範囲ではフラットな特性となりました。

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アンプの出力のオフセットは、次段のボリュームにとって良くありませんが、今回はこの設計で製作を進めます。仮にオフセット電圧が50mVとした場合、2KΩの抵抗に流れる電流は25uAと小さい事が唯一救いです。

次回は入力段のボルテージフォロワを実装し、片チャンネル分の実装を完了させます。

 

つづく(製作編6)

 

バランス変換ボリューム2(製作編4)

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製作編4

初めにバランス変換アンプ回路の実装を行います。

回路実装方針

設計編でも言及しましたが、一枚の基板にボルテージフォロワとアンバランスバランス変換回路を実装します。構成はバランスボリュームの基板とほぼ同じですが、実装部品として以下のものが増えます。

 トランジスタ:3個
 半固定抵抗 :1個
 抵抗    :6個

写真は先日紹介したバランスボリュームのディスクリート基板ですが、写真奥の終段の実装エリアに少し余裕があるので、増える部品をなんとか詰め込むことはできそうです。

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バランス変換回路実装

手順はバランスボリューム回路実装と大きく変わりませんが、前回より詳しく紹介します。1枚の基板にボルテージフォロワとバランス変換アンプの2つを実装するため、+/-電源線で基板を2つの領域に分けます。

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電源線にパスコンと電源入力用の端子台を接続します。電解コンデンサは、ニチコンMUSE KZの100uF品を購入してありましたが、サイズが大きくトータルの実装部品量を考慮して前回同様に1グレード下のニチコンFGで我慢しました。

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初段を+電源側の部品から実装していきます。基板スペースがないので、抵抗等のラジアル部品は立てて実装します。立てて実装する際の部品の向きは、回路検討時に確認したい端子側が基板上にリードが出る様にすると便利です。バランスボリュームのボルテージフォロワと比較して、フィードバック用の抵抗が3本増えましたが問題なく実装できました。

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初段単体で通電確認を行います。反転入力側は帰還抵抗10KΩで接地されていますが、非反転入力はオープンなので、入力を通電確認用に接地します。通電時の各部電圧は以下のとおりです。

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引き続き2段目以降の実装を進めます。2段目の差動アンプの出力にそれぞれ終段が接続されるため、2段目の差動トランジスタをバランスボリュームディスクリート基板の実装時の位置よりも後方にずらして終段を含めて対象に実装する方針としました。このアンプの実装エリアに出力用の端子台の取り付けスペースがとれませんでしたが、無理なく実装できました。実はこの実装で大きなミスを犯してしまっていますが、写真でわかるでしょうか?私が気づくのは通電確認時になります。

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バランスボリューム実装時の経験から発振防止のディップマイカコンデンサを始めから取り付けています。写真のジャンパー線は、オレンジが帰還用で、黄色が初段出力と2段目の入力接続用です。黒のジャンパーは、非反転入力の暫定接地用のものです。

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バランス変換アンプ通電確認

通電前の準備として半固定抵抗をプリセットしますが、これは電源オン時に過大な電流が流れてトランジスタにダメージを与える事を防ぐ為です。2段目の差動用トランジスタのエミッタに接続された半固定抵抗VR2および、終段バイアス設定用の半固定2個VR3/VR4はそれぞれ抵抗値を大きく設定しておきます。それでは通電を開始します。VR2を調整し、2段目の差動アンプの負荷抵抗R12とR13の電圧をそれぞれ約-0.7Vとなるように調整します。バランスがとれない場合は、初段のVR1を調整します。大体調整できたら、VR3/VR4を調整して終段のアイドリング電流を合わせます。終段のコンプリメンタリトランジスタのNPN側のエミッタ電圧を100mV、PNP側を-100mVに調整します。それぞれの調整が他の調整に影響を与えるため、上記の調整を繰り返し追い込みます。回路が発振していると、正しく調整ができないため、出力にオシロを接続して発振していないことを確認しながら調整を進めました。(キャッチ写真参照)問題発生です。非反転出力のアイドリング電流が全く調整できません。関連端子の電圧を当たっていたところミスに気がつきました。終段は2段目の差動アンプに対して対象に実装したため、コンプリメンタリペアトランジスタの実装の向きが反転するにもかかわらず、間違って同じ向きに実装していました。その結果非反転出力側のコンプリメンタリペアトランジスタのエミッタとベースの接続が反対となってしまっています。泣く泣く、新たなコンプリメンタリペアに付け替えました。(写真一番下の2個のトランジスタ

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交換後、通電を再開しましたが症状は変わったものの調整ができません。他のトランジスタもダメージを受けた可能性があり、時間をとって検討することとしました。通電確認時の電圧を参考に掲載します。状態が安定しないため、各部電圧のつじつまが合わない部分もあります。

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次回までに原因を特定して対策を行います。

 

つづく(製作編5)

 

バランス変換ボリューム2(製作編3)

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製作編3

初段に使用するDual J-FETの変換基板実装とIdss測定を行います。

2SK2145の特性

今回も初段にdual J-FET 2SK2145を使用しますが、東芝製のチップなので今後が心配です。測定するIdssとは、Vgs=0の時のドレイン電流Idのことで、特性は以下のとおりです。

■2SK2145 Id-Vds特性

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グラフを見るとVdsとして2V以上印加すればIdが飽和します。今回の設計では、Vdsとして4V以上かけているので飽和領域で動作させていると言えます。あまり自信がありませんが、Vg=0Vのドレイン電流Id(Idss)を利用して定電流ダイオードが作られているとどこかで読んだ記憶がありますが、この情報が正しかったとして、一般的なダイオードとの機能の違いからこの呼び名に違和感を覚えますが、ダイオードの呼び名は単に2端子の素子と言っているだけなのでしょうか?初段に使用するので、ノイズに関するデータもついでに転載します。

■2SK2145 NF-Vds特性

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■2SK2145 NF-Id特性

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NF(雑音指数)は、入出力のS/N比(dB)の差を示し、増幅器のノイズ特性の指標となるパラメーターです。グラフを見るとNFは高電圧で使用すると悪化することがわかります。このチップの場合、Vds=15Vくらいまでに押さえて使用すべきと言えますが、電源電圧が高い場合は、カスコード接続によってVdsを下げることができます。また、Idが小さい範囲でもNFが悪化していますが、グラフからはId=0.75mA以上で使用すべき事がわかります。今回の設計は、バイアス電流としてId=1mAとしているのでクリアしています。

変換基板への実装

「音楽の女神への挑戦(製作編2)」で紹介済みですので、変換に使用した部品についてのみ簡単に紹介します。構成部品全て秋月電子の通販で購入したものです。金額は私が購入した時(2017年2月)の価格です。写真左からJ-FET 2SK2145-GR(100円/2個)、SOT23変換基板 P-04800(150円/10枚)、連結ソケット P-03758(50円)、丸ピンICソケット P-00035(15円)です。

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連結ソケットには上下がありますが、DIPソケットに装着したものを外す時の作業性を考えて写真の向きで使用しています。

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変換基板への実装は、当初罰ゲームと表現した程に苦痛でしたが、今回で3回目となり、コツもつかめたことからあまり苦になりませんでした。(キャッチ写真参照)

Idssの測定

測定の目的は、チップの故障および半田不良の確認および、dual J-FETとしてのペア特性の確認です。ペア特性については、改めてデータシートを確認してみたところ、「1パッケージに2素子を内蔵」とだけ記載があり、Idssのずれが大きくてもランク内であればクレームはつけられない状況です。今回購入したものはGRランクなのでIdss=2.6~6.0mAのものですが、この下にYランクと上にBLランクがあり、Yランクの最小値がIdss=1.2mAとなっています。アンプの設計のアイドリング電流は1mAなのでIdssの最小値の余裕を考慮して今回もGRランクを選定しています。製作編2で詳しく紹介したジグを使い、回路を下記のとおり組み替えてIdssの測定を行います。

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測定時の安定待ち時間は殆どいりません。今回実装した4個の測定結果は以下のとおりです。

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Idssはみごとに2パターンに分かれましたが、ペア特性は申し分ありません。どの程度影響があるかわかりませんが、L/Rチャンネルのバランスを考えて、入力段のボルテージフォロワの初段にIdss=3.4mAのもの(No.3,4)を、次段のバランス変換アンプの初段にIdss=4.2mAのもの(No.1,2)を使用したいとおもいます。

次回は基板への回路実装を行います。

 

つづく(製作編4)

 

バランス変換ボリューム2(製作編2)

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製作編2

前回詳しく紹介したジグをつかってトランジスタのhfeの測定を行います。

2SC1815GRのhfe測定準備

今回は40個の測定を行います。回路をジャンパーワイヤーを使って組み替えます。正しく接続されていることを確認するために、トランジスタをセットせずにBCE各端子の電圧を測定します。IcおよびIbが流れていないため、それぞれVc=5V, Ve=0Vで、Vbは半固定抵抗で5Vを分圧した電圧となります。測定時の調整後のVbは、Re=200Ω、Ic=10mAなので、2.6Vとなりますが、安全を見てVbを2Vにプリセットしておきます。

2SC1815GRのhfe測定

トランジスタ取り付け時は、ユニバーサル電源のSWで出力を必ずオフして装着時の端子接触順番による不安定な動作によるダメージを防止します。電源のSWを入れるとIcが流れてReの両端電圧が上がります。Re=200ΩでIc=10mAとするので、メーターの読み値を半固定抵抗を調節して2Vまで上げ、そのときのVrbの値をメモしていきます。地道な作業ですが同じ作業を測定個数分繰り返します。hfeが異なっても、エミッタフォロワ構成のため半固定抵抗の調整は殆ど影響を受けません。このため半固定抵抗はVbeのばらつき調整用と言えます。今回購入した40個の測定結果は以下のとおりです。

■2SC1815GR hfe測定結果

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GRランクにも拘らず全てのhfeが200を割っています。DCアンプ製作時に購入したものが3個残っていたので、同様に測定したところ3個ともに200を大きく越える値でした。(No.41-43)捺印にはランクを示すGRの文字が間違いなく入っています。(キャッチ写真参照)釈然としないまま次の測定を行います。

2SA1015GRのhfe測定

ジャンパーワイヤーの接続を変更して、PNPのhfe測定回路に組み替えます。NPN測定準備と同様にVbをプリセットします。電源電圧5VでIc=10mAとするので、調整後のVbは2.4Vとなりますが安全をみて3Vにプリセットして測定を開始します。NPNの測定時とIc調整の半固定抵抗の回す方向が反対になるので注意が必要です。(Vbを下げるとIcが増加)20個の測定結果は以下のとおりです。バランスボリューム改造の際に購入した残りのトランジスタも合わせて掲載しています。

■2SA1015GR hfe測定結果

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総じてhfeの値は小さいですが、1つを除き200以上なのでGRランクを唱っても問題ないレベルです。どうせ値が小さいならば、今回測定したNPN並に小さければ良かったんですがうまくいかないものです。今回は測定サンプルの数が多いので、測定後のトランジスタの保管用にケースを購入しました。ナンバーを振った小袋に入れるのは前回同様ですが、10づつに分けてケースの各列にナンバー順に保管し、必要な小袋を探しやすくしました。

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コンプリメンタリペアの選別

NPNは今回購入した40個中からhfeの大きなもの6個を、PNPは小さなものから6個を組み合わせました。

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ベストマッチでも誤差12%、6個の結果は19%以下とあまり報われない結果となりました。自分を慰めるために、たまたま一番特性の離れた組み合わせとなった場合の誤差を計算したところ、33%と余計に報われない感を増す結果となりました。追加購入も考えましたが、結果が改善する保証もなく、作業も遅れてしまうのでこのペアで進めることとしました。単なるペア品であれば十分数が確保できると考えると少し気分も晴れます。ネット情報によると、このオーディオ用パーツもご多分に漏れず、2011年頃に東芝ではすでに生産を終了しているとのことで、私が利用している秋月電子では、すでにセカンドソース品の販売が行われています。メーカーは台湾のunisonic社のものでNPN/PNP共に販売中です。今後の事を考えるとそちらを試すべきか思案中です。

次回はdual J-FETの変換基板実装とIdss測定を紹介します。

 

つづく(製作編3)

 

バランス変換ボリューム2(製作編1)

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製作編1

ディスクリートアンプ製作開始時定番のトランジスタのhfe測定を行います。

コンプリメンタリペア選別

バランスボリューム用アンプのディスクリート化の時と同様に終段トランジスタのコンプリメンタリペアの選別を行います。NPNは2SC1815GR、PNPは2SA1085GRと前回同様です。バランスボリューム用アンプのディスクリート化の際は、コンプリメンタリペアが4つ必要でしたが、今回は6ペア必要となります。このため、今回はNPNを40個、PNPを20個購入しました。せっかくなので、今回は選別に関して少し詳しく紹介します。

トランジスタの特性

トランジスタのhfe(直流電流増幅率)は重要なパラメーターです。今回購入したトランジスタはNPN, PNPともにGRランクで、hfeの選別範囲はどちらも200~400です。今まであまり気せず、実際に使用するコレクタ電流を流してhfe測定をしていましたが、改めてデータシートを確認してみました。グラフはhfe-Ic特性です。

■2SC1815 hfe-Ic特性

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■2SA1085 hfe-Ic特性

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グラフを見ると、実用範囲ではhfeはコレクタ電流に依存しない事がわかります。その代わり、周囲温度Taに大きく依存しています。これが熱暴走につながるバイポーラトランジスタの特性の一つです。前回測定時に電流安定まで時間がかからなかった事から、Ic=10mA, Vce=5V程度であれば自己発熱による温度変化は殆ど起こっていないものと思われます。逆に40個測定している間の部屋の温度を一定にしておく必要があると言えます。また、実使用時もペア特性が要求されるトランジスタは出来る限り接近して実装するか、熱結合して実装すべき事がわかります。せっかくデータシートを参照したので、ついでにft-Ic特性も転載します。

■2SC1815 ft-Ic特性

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■2SA1085 ft-Ic特性

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トランジスタのftとはトランジション周波数の事で単位はMHzです。このパラメーターは簡単に言ってしまうと、増幅性能がなくなる周波数で、数値が大きい程高周波特性が良いと言えます。どちらもデータシート上は最小値80MHzと唱われていますが、Ic=1mA時の最小値です。両トランジスタともにIc=50mA付近で最大となり、今回終段で使用するIc=10mA時の特性は300MHz程度と良好です。データシートを見出すと止まらなくなってしまうので、今回はこの辺にしておきます。

測定ジグ

今までも簡単に紹介してましたが改めて紹介します。ジグが対応するNPN, PNPの測定回路はそれぞれ以下のとおりです。ベース抵抗Rbとエミッタ抵抗Reは他の値も選択できます。(実体写真参照)

■NPN hfe測定回路

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■PNP hfe測定回路

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回路は安定したhfe測定ができるように、コレクタ接地(エミッタフォロワ)としています。ジグはNPN/PNPへの対応および、複数のIc値レンジに対応できるようになっています。回路の組み替え対応は、Arduino(汎用マイコン基板)を使った際に購入したピンソケットとジャンパーワイヤーで対応しています。

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Ic調整用ボリュームは、アンプでも使っている多回転半固定ボリュームを使い調整の精度を高めています。被測定用のトランジスタの装着は、レバー付きのDIP IC用のソケットを流用しました。写真の電源用と記載のピンソケットは分岐用に設けています。基板上の8pinDIP IC用のソケットは変換基板に取付けたdual J-FETのIdss測定用に実装しています。測定回路に必要な抵抗もピンソケットとジャンパワーヤーで選択可能としています。

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Icのモニタは、Re(エミッタ抵抗)にかかる電圧を測定しますが、メーター式のテスターを使用しています。感覚的に電流の大小が瞬時にわかるので好都合です。このテスターも年代もので、なんらかの実習の際にキットとして配布されたものを組み立てたものです。(キャッチ写真参照)Ib測定のためにベース抵抗の両端電圧Vrb読みとりますが、そのためのテスタはデジタル式が便利です。これも大学の実習(生まれて初めて差動アンプを設計製作した)時に秋葉原まで買いにいったものです。30年以上経過していますがまだまだ使えています。どちらも使用期間を考えるとコストパフォーマンスはかなり高いと言えます。

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今回はジグの紹介にスペースをとってしまいましたが、次回は「当たるも八卦コンプリメンタリペア選別は運次第」hfe測定結果を紹介します。

 

つづく(製作編2)