バランス入力シングルパワーアンプ製作(まとめ編1)

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まとめ編1

ハムの原因を特定し、対策を行い今回の製作のまとめを行います。

真空管アンプのハム

ネット上に、真空管アンプのハムの話題がたくさんありますが、その中にプッシュプルに比べてシングルアンプはハムが発生しやすく、十分な対策が必要との書き込みがあります。プッシュプルアンプはバランス動作をしているために、電源変動の影響を受けにくいためです。今回製作のアンプは、S1503での実績から電源回路を先に製作したプッシュプルアンプと同回路としていますが、シングルアンプでの実績がないため、ハム対策として回路変更が必要となるかもしれません。まずは原因の絞り込みをおこないます。

ハムの原因の特定

検討を始める前に、現状のレベルの認識をしておきます。アンプに8Ωのダミーロードを接続して無信号状態で、出力をACモードにしたマルチメーターで電圧測定します。19mVのレベルを確認しました。まずは基本ということで、アンプの各ブロックのグランドラインの引き回しを再確認します。初めにB電源系から見ていきます。B電源は基板外に3つのコンデンサ群が配置されています。おかしなループが発生していないかを確認していたところ、あ!・・・。トランジスターで構成したリップルフィルターのコンデンサ電解コンデンサ+フィルムコンデンサー)の+側配線にハンダ外れを見つけました。写真中の紫の電線です。

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今の状態は、トランジスタ構成のリップルフィルターが全く機能していない事になります。(下記の回路図参照)早々にハンダを付け直して、出力のハムレベルの測定をしました。その結果0mVに改善したことが確認できました。

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聴感上もまったくハムが聞こえなくなりました。実はこのハム退治、もっと長期戦となり年を越してしまうのではと心配していましたが、ホッと胸を撫でおろしました。これで晴れてアンプが完成したので、最終の束線をして各部の確認を行います。シャーシ下は写真の状態となりました。

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測定

初めに電源リップルを確認します。全波整流波形とB1電源のリップル波形をポケットオシロで観測しました。トランジスタリップルフィルターは、テスターの測定結果から約10Vの電圧がかかっていることがわかっていて、今回の測定で入力側のリップルのピーク電圧が約2V(写真左)のため、トランジスタには動作に必要な電圧がかかっていることが確認できました。出力のリップル(写真右)は16mVppと十分に押さえ込まれています。リップルフィルタのトランジスタの消費電力は約1.5Wとシャーシへの放熱で十分な状態です。

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つづいてアイドル時のアンプの各部の電圧を測定しました。初段のカソードの電圧が設計に対して低くなっています。使用した特性図と現品の特性が合っていないようです。ぎりぎり許容範囲としてこのままいきます。この電圧だと、現状よりもアンプのゲインは下げられないとおもいます。

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つづいてゲイン測定をします。スピーカーの代わりに8Ωのダミーロードを接続します。特性測定用のCDをプレーヤーで再生し、入出力信号をポケットオシロで観測しました。

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出力を1Vppに合わせて入力の波形をモニタします。左側が出力波形で、右側が入力波形です。ゲインは10倍でした。S1503に比べて6dB下がると考えていましたが、誤りで裸ゲインはほぼ同等となっています。S1503同様にNFBがけられますが、初段のカソード電圧を考えるとゲインは下げられないので、当面現状の無帰還でいきます。

■L-Chゲイン測定波形

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■R-Chゲイン測定波形

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一通り確認が終わったので、次回は最終状態での音出しとプッシュプルアンプとの比較を行い、本アンプ製作をまとめます。

 

つづく(まとめ編2)

  

 

バランス入力シングルパワーアンプ製作(製作編12)

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製作編12

帰還抵抗を除き回路の組立が完了したので、通電確認を行い、問題なければ音出しをします。

アンプ通電確認

初段回路の実装が完了したので、初段管の12AX7をソケットに挿し電源オンします。真空管を挿したままひっくり返して通電したくないので、作業台のワークの間をあけてその上にアンプを乗せてシャーシ下から覗き込める状態としました。

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ヒーター動作確認の際に紹介が漏れてしまいましたが、S1503製作の際に購入した12AX7にはついていなかったシールがガラスのボディーに貼られています。真空管は発熱するので、剥がそうとしましたが、ぶちぶち切れてしまい剥がす事ができませんでした。もしや耐熱シールと考えてそのままにしていますが、問題ないでしょうか?

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通電確認前に、EL34と同様に選別情報を掲載します。12AX7は双三極管なので1つの真空管に2セットのパラメーターが表示されてます。それぞれの値は表のとおりです。Ipの値が今回の使用時よりも2倍以上大きいため、特性差はより広がると思われます。

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通電確認に戻ります。初段管のヒーターが明るくなり安定したところでB1電源とB2電源の電圧を測定します。それぞれ270Vと265Vで、電位差が5Vです。B2電源の1次フィルターの抵抗値が1.8KΩなので、B2に流れる電流は、2.78mAとなります。初段の差動回路の定電流ダイオードの電流値が1.5mAなので両チャンネルで3mAとなり正常動作をしていると考えられます。下の電源回路図は、アイドル状態の電流値も見直ししたもので現時点の最終版です。S1503に比べて負荷電流は10%程度増えています。

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アンプ動作の確認

一旦電源を切り、片チャンネルのダミー抵抗を取り外し、代わりに動作確認用のスピーカーを接続します。このスピーカーは、市販のノーブランド品ですが、ユニットをFOSTEXのFE83に交換したものです。

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まずは、入力無しで電源オンします。30秒程度経ってヒーターが暖まったところでムム!ハム発生。正直なところショックですが、このレベルであれば原因特定と対策は後回しとします。続いて信号入力します。現状のシステムからバランスボリューム出力を切り離してこのアンプと接続します。ボリュームを一旦絞ってCDを再生状態とし、ボリュームを徐々に上げていきます。やった!音が出ました。音を聴いた限り正常動作してそうです。一旦電源を落として、もう片チャンネルも同じ確認をします。同様に正常動作の確認ができました。

音出し

ハムのレベルはリッスニングポイントでも聞き取れるレベルなので、対策は必須ですが、音楽再生時にはマスクされてしまうレベルなので、早々にスピーカーをNS-1000Mに切り替えて音を聞いてみました。第一印象は、のびのびと音楽が鳴ると感じました。EL34pp機と交互に2曲づつを順繰りに聴いて音の比較を行いました。(本記事のキャッチ写真参照)写真手前が今回製作のアンプで、後ろのボンネットが被っているのがS1503(EL34PP)です。シングルアンプのゲインは、別途測定予定ですが現時点で無帰還なのでEL34pp機よりもやや高くなっています。帯域はややナローな印象ですが、これも無帰還に起因しているんでしょうか?

音の比較

ハム対策は後回しとして、いろいろな音楽を比較再生してみました。女性ボーカル、男性ボーカル、交響曲、Jass、ピアノ曲など。

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音像の奥行きがEL34pp機と比べてより感じられます。のびのびと音楽が鳴るように聴こえるのは、このせいでしょうか?特に弦楽器がいい感じです。低音も予想していたよりも良く鳴ります。パラレルシングルとしたためでしょうか?NS-1000Mが欧州製のフロア型スピーカーのような感じで鳴っています。シングルで真空管アンプの世界に入り、その後プッシュプル機に手を出し、またシングル機に戻る人が多いと言われますがこのような感覚に魅了された結果でしょうか?いくらでも聴き続けてしまいそうですが、一旦ハム対策に戻り、改めて音の比較を行いたいとおもいます。

 

つづく(まとめ編1)

 

バランス入力シングルパワーアンプ製作(製作編11)

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製作編11

気持ちを切り替えて改めて終段の単体動作確認を行います。また終段に所定の電流を流した状態で電源回路の確認も行い、残りの回路実装を進めます。

修正修理

0.47uF/450V仕様のパスコンをB1電源供給用のラグ端子部分に実装します。450V耐圧のフィルムコンデンサーのサイズは写真のとおりです。

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続いて、B1電源のパスコンを削除した電源基板を再度取り付けます。尚、先に交換した3.3kΩの抵抗は、手元に同サイズの物がなかったので、大型の物に変えています。

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実は、この後につまらないミスで、もう一度基板を取り外しましたが紹介は省略します。今回都合3回基板の取り外しを行いましたが、基板端子台を採用しておいて本当に良かったと思いました。

電源基板確認

改めて無負荷状態で電源回路各部の電圧を確認します。回路図上青の値が修理後の電圧です。全体的に数値が変わっていて、先に取った電圧で異常に気づけなかった事が悔やまれます。

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終段単体再動作確認

ようやく終段の単体動作確認のやり直しができます。EL34を4本ソケットに挿し、前回の反省からB1電源モニタするためにB1のチィップジャックへマルチメータのリード端子を挿します。念のためスピーカーターミナルにダミーロード(8Ωの抵抗)を接続しておきます。Ip調整用のボリュームをIpが最小となるようにセットして電源オンします。

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ヒーターが明るくなるにつれて、B1の電圧が無負荷時の電圧から下がり始めます。270V台まで下がり安定しました。Ipの調整用にマルチメーターのリード端子をIpモニタ用のチィップジャックへ挿し直します。半固定抵抗を調整してターゲットの読み値16.3Vに合わせます。電源を安定化させていないためか、調整値は16.15Vから16.3Vの間で動いています。4本とも調整をしましたが、調整後の値の変動およびボリュームの位置は概ね同じ状態となりました。負荷時の電源回路電圧を測定し、電源が狙いどおりの動作をしていることを確認しておきます。S1503の結果と比べて低めの電圧となっていますが、負荷電流の差が原因でしょうか。

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初段回路の実装

残すは初段回路の実装のみです。終段の真空管を挿したまま、ボンネットを被せて組立を続けます。始めに初段のプレート回路を実装します。必要な部品はカップリングコンデンサと初段の負荷抵抗です。カップリングコンデンサーはS1503と同じCrossCap 0.47uF/400V品です。終段の自己バイアス回路に使用したものよりも1回り小さな物で、初段管のソケットの両脇につけたLラグ端子へ実装します。負荷抵抗150KΩはソケットの端子へ直付けします。写真では、カソードへ定電流ダイオードも接続済みです。

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次に、初段入力回路をソケット手前に取り付けた6pの平ラグへ実装します。回路構成上S1503よりもゲインが6dB程度下がるはずなので、帰還回路中の出力から戻す帰還抵抗は実装場所だけ確保して、実装を保留します。最後にXLRパネルコネクタと初段の入力部を配線します。S1503と同様にベルデン#1503A2芯シールドケーブルを使用しました。このケーブルは細身で機内の取り回しがしやすく、外側の被覆を剥くとシールドラインがより線状態で現れます。この構造でもシールドがされる工夫がされています。価格もリーズナブルなので常用してます。

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これで帰還回路を除いて回路実装が完了しました。次回は全体の通電確認と、いよいよ音出しを行います。

 

つづく(製作編12)

 

バランス入力シングルパワーアンプ製作(製作編10)

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製作編10

終段回路の実装を完了したので、終段単体動作確認を行います。ここにきてミスを連発させてしまい、恥ずかしい話ですがありのまま紹介します。アンプの特徴をストレートに表現するためにタイトルを変更しました。

終段単体動作

真空管を挿さずに電源オンして、まずは真空管ソケットの各端子電圧を確認します。特に異常はなかったので、終段真空管の単体動作確認を行います。両チャンネル4本のEL34をソケットに挿し、Ip測定用にマルチメーターのリード端子を所定のチップジャックに挿します。Ip調整用のボリュームをIpが最小となる位置にセットします。いつも最初の通電はどきどきします。前回のS1503の時は、4本中の1本が閃光を放つトラブルが起きましたので余計にどきどきしますが、意を決して電源オンします。ヒーターが点火し、ちんちんと音を立てながらヒーターの明るさが増していきます。ここまではすでに確認済みなので安心して見ていられます。30秒ほどして真空管が暖まった頃合いで、マルチメーターの値を見ると約5Vとなっていました。Ip調整用のボリュームを回してIpを上げていきます。所定のIp=40mV時の電圧の読み値は約17Vです。ボリュームを回すと電圧値が上がっていきますが、フルボリュームとしても約8V位にしか上がりません。Ipに換算すると約19mAです。一旦ボリュームを絞り、隣の真空管の確認をします。全く同じ状況を確認したところで、きな臭いにおいとともに、線香のようなうっすらとした一筋の煙が電源基板側から上がったので、あわてて電源を切りました。

電源基板の確認

本望ではありませんが、こんなに直ぐに基板端子台のありがたみを実感することになるとは・・・。

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基板を取り外し配線をB電源用の入力から確認したところ、すぐに原因がわかりました。基板上の全波整流入力が、リップルフィルタへ正しく接続されていませんでした。回路図で示すと以下のとおりです。

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GNDラインは、別系統から接続されていましたが、B電源は3.3KΩを経由してダーリントントランジスタのベースをとおり出力されてました。ダーリントントランジスタはコレクタが接続されていないので、直列の2個のダイオードとして動作したと考えられます。煙はおそらくこの3.3kΩの抵抗が発したもので、抵抗の表面を見るとうっすらと変色が確認できました。

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この時の動作は、グリッドバイアスを調整してIpを上げようとすると、3.3kΩの抵抗で電圧が喰われてしまい、所定のVpが真空管にかからなかったと考えると、調整時の状況と辻褄があいます。修理は表面の変色が確認された3.3kΩの抵抗の交換と、ダーリントントランジスタにベース電流として過剰な電流が流れたと考えられるので、念のためトランジスタ2個も交換しました。

修正修理完了再確認

電源基板を元通りに取り付け、まずは真空管を挿さずに各部の電圧の確認を行います。電源オンして一呼吸して電圧測定を行おうとしたところ、今度は派手に電源基板から白煙が立ち登りました。すぐに電源を切りましたが、あまりの状況にしばらくぼーぜんとしてしまいました。アンプはそのままの状態で、私自身をクールダウンするために一旦買い物に出ました。

電源基板再確認

自宅に戻り基板を確認したところ、B電源のパスコンとして実装したフィルムコンデンサの表面に異常を見つけました。

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再度電源基板を取り外し、さらに該当のコンデンサを取り外して確認しました。酷い状態です。トラブル発生前にも何回か電源を入れていましたが、修正修理直後のあのタイミングでトラブル発生するとは製作者へのインパクトを計っていたのではと勘ぐってしまいます。

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原因はB電源のパスコンを耐圧を遙かに越えて実装したことによる絶縁破壊でした。具体的には無負荷で300Vを越える部分に125V耐圧のフィルムコンデンサを実装していました。S1503ではちゃんとしていたのに・・・。

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これが原因であれば、他の電子部品へのダメージはないと考えられます。コンデンサ横に実装された基板端子台のボディーに焦げ跡がありますが、交換するまでのことはないと判断しました。(本記事のキャッチ写真参照)修理は基板上から当該コンデンサを削除して、かわりにS1503同様にパスコンを電源供給用のラグ端子側に接続することとします。

 

今回はこのトラブルで予定の進行となりませんでしたが、次回は改めて終段管の単体動作確認を行います。

 

つづく(製作編11)

 

バランス入力シングルパワーアンプ製作(製作編9)

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製作編9

終段回路の実装を完了させ、終段の単体動作確認の準備を行います。

回路実装用Lラグ端子の取り付け

前回記事のキャッチ写真には取り付け済みでしたが、説明が漏れていました。終段の真空管自己バイアス回路部品実装用に6極のLラグ端子を終段真空管ソケットの手前に取り付けました。アンプ左側はフロントパネルのトグルSWと干渉するため、真空管に近い位置としています。

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つづいて初段のプレート回路部品実装用に4極のLラグを初段管の両サイドに取り付けました。初段管の手前側の6極平ラグは、アンプの入力回路・帰還回路部品実装用に取り付けています。この初段管部の構成は、先に製作したS1503(EL34pp機)と共通です。

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終段回路実装

関係する部品は、出力トランス、前回の記事内で作成したグリッドバイアス回路、EL34のカソードに接続する自己バイアス回路です。通電確認に備えて念のため出力トランスの二次側の配線も行います。終段管の自己バイアス回路のバイパスコンデンサーはオーディオ用電解コンデンサー100u/50Vと並列にS1503のカップリングコンデンサーとして使って悪くなかったCrossCapを用意しました。1uF/400V品で海神無線で1個298円といいお値段です。部品が大きい事が欠点ですが工夫してなんとか取り付けました。

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自己バイアス回路は、他に430Ω3W抵抗、100u/50Vのオーディオ用電解コンデンサを取り付けて完了です。左チャンネル側は、正面パネルに取り付けたトグルSWと電源ランプとのクリアランスが少ないため、実装に手間取りましたがなんとか収めました。後は5極管の3極管接続(グリッド2を100Ω3W抵抗を介してプレートに、グリッド3をカソードに接続)を行い、グリッド1に発信防止のおまじないとして2.7kΩの抵抗を介して、前回の記事で紹介したグリッドバイアス回路を接続します。Ip調整時のモニタ用に以前紹介したチィップジャックとそれぞれの真空管のカソードを接続します。赤色が正面から見て右側の真空管に接続しています。また、B1電源とGNDを電源基板横のチップジャックに接続して終段の動作確認に備えます。

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出力トランスの配線

1次側は、B1電源(青)と真空管のプレート(橙)へ配線します。B1電源端子は、シャーシを裏側から見て右側に配置しているため、右チャンネル(シャーシ側から見て左)側の配線が届かなかったので途中で継ぎ足して配線しました。1次側のもう一方は、パラレルシングル構成なので2本の真空管のプレートへ配線します。2次側は、スピーカーをバランス駆動するために100Ω3Wの抵抗を2本使って、仮想GNDを設けてGND配線しました。この構成はS1503と同じです。2次側巻き線にセンタータップがあればいいのですが、需要がないんでしょうね。さらに通電確認に備えて、スピーカーターミナルへ8Ωのダミー抵抗を接続します。実際には16Ω3W品を並列接続しています。

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EL34

今回も真空管は初段管を含めてアマゾンで購入しました。EL34はJJ Electronics社スロバキア産です。マッチド4本組で9514円でした。マッチド品は他に2、6、8本組があり、組数が上がると単価が少しづつ高くなっていました。マッチド品の外箱にはIpとgmの値が貼られています。今回の4本の特性は表のとおりです。このアンプではIp=40mAとする予定なので、測定値の相関が比較的取れると思います。

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次回終段真空管を実装して終段の単体動作確認を行います。

 

つづく(製作編10)

 

バランス入力シングルパワーアンプ製作(製作編8)

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製作編8

前回製作した電源基板から各ブロックへの電源供給部と、終段の実装を開始します。

電源の供給

電源回路が完成したので、各ブロックへ電源供給用の端子をつくります。具体的にはB1,B2,GND供給用に複数の端子をLラグ端子を使って作ります。B1とB2は供給先が少ないため、4極のLラグを100u/400V電解コンデンサ実装部の手前に取り付けます。固定用の端子は使用せずに、両脇の2極をそれぞれB1とB2に振り分けました。それぞれの2極は後で説明しますが、ポリウレタン線で接続しておきます。それぞれの端子は実装を完了した電源基板のB1,B2出力と接続しておきます。

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続いて、GND配線用の端子を作ります。GNDは接続先が多いので6極のLラグ端子を使用し、取り付け用の端子も含めてGNDへ接続して、そこからシャーシへの1点アースをとります。取り付け場所は、シャーシのほぼセンターとなる電源トランス手前としました。

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6極のLラグ端子は、取り付け用の金具を含めると7つの端子を持っていますが、それをφ1のポリウレタン線で接続します。ポリウレタン線は事前にハンダ箇所をやすりで削り被覆を剥がしておきます。剥がした部分とLラグの各端子とハンダ付けします。7つの端子は、共通インピーダンスによる電位上昇を抑えるするため、大電流が流れるラインをセンターよりの端子に、あまり流れないラインは、両脇側に接続します。作成したGND端子と大元の電解コンデンサおよび後で接続することとしていた、真空管ヒーター配線の片側をつなぎます。念のため電源オンして、B1,B2,GNDの各端子が所定の電圧となっていることを確認します。

終段バイアス回路基板実装

終段管の実装に備えて、グリッドバイアス回路を基板へ実装します。その前に、部品購入の都合による定数の見直しを行った回路図を改めて掲載します。

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バイアス調整用の半固定抵抗を10kΩに変更しました。EL34自己バイアス回路の定数の見直しも行っています。この回路図にもS1503(EL34pp機)ベースの帰還回路を入れていますが、アンプのゲインの関係で無帰還となる可能性があります。確定後に再度改版します。それでは製作に戻ります。グリッドバイアス調整回路は抵抗と半固定抵抗のみの簡単な回路ですが、シャーシ上面から調整できるように半固定抵抗をシャーシの穴に合わせて基板のハンダ面に実装します。部品面に半固定抵抗の端子をハンダ付けするために別の基板を小さく切断し部品面側に取り付けて半固定抵抗用の基板としています。両面基板を使用すればこんな対応は不要でした。

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シャーシ側は、基板固定用の10mmのスタッド2本の間に半固定抵抗アクセス用のφ10の穴を2個開けています。

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実装部品点数が少なく基板が小さいため、固定用のスタッドは2本で十分です。

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半固定調整用の穴は、購入した半固定抵抗を基板に乗せて調整用のつまみがセンターにくるように位置出ししました。左右のチャンネル分を実装完了後、シャーシへ取り付け、配線してバイアス調整できることを確認します。

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左に回すとIpが下がるように実装したつもりでしたが、見事に反対となっていました。4回路分の修正は大変なので、このままの仕様で進めます。尚、本記事のキャッチ写真が現時点のシャーシ実装状態です。

次回は終段の回路の実装を完了させます。

 

つづく(製作編9)

 

バランス入力シングルパワーアンプ製作(製作編7)

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製作編7

基板上へC電源回路から実装を行っていきます。続けてB電源の実装も行います。

C電源実装

C電源は、三端子レギュレーターを使用した-5V電源です。トランスの低圧巻線はAC5Vしか残っていないで、倍電圧回路で三端子レギュレーターへの入力電圧を確保します。この電源は、初段のバイアス電流、終段のグリッドのバイアスおよび電源ランプに使用しますが、オーディオ信号が流れないので、部品にはあまりこだわりませんでしたが、最終段の電解コンデンサーのみオーディオ用を実装しました。残り2本分も買っていましたが、基板の実装スペースが厳しそうなので我慢しました。回路実装を完了させ、基板端子台を使ったトランス配線を行いました。配線は見た限り問題ありません。電源オンして-5Vが出力されることを確認し、続けて電源ランプ(LED)への配線を行い、電源オンで点灯することを確認しました。

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下の台は部品実装時に配線作業を安定に行うために段ボールとスタッドで簡単に作ったジグです。写真のように使用しますが、作業性が格段によくなりました。

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B電源実装

リップルフィルター用のトランジスタを専用の放熱器ではなく、シャーシに取り付けて放熱させるため、発熱を押さえる設計としています。具体的には出力電圧を調整して、トランジスタにかける電圧を低く抑えています。前回の記事で検討した方法でこのトランジスタをプラネジを使ってシャーシに実装します。高圧が掛かっているため、ショートの可能性がある部分は、チューブ+熱収縮チューブで保護します。

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すでにB電源の半分以上の部品は実装済みなので残りは今回採用した基板端子台とシャーシへ実装済みの部品の配線がポイントとなります。基板端子台は、タイコ製のピンヘッダに比べて電線の接続は楽になりますが、実装スペースが1.5倍以上必要になるので、端子台の配置に苦労しました。すべて配線が終わったら電源オンし、各部の電圧を確認しておきます。

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参考に無負荷時の電源の各部電圧を掲載します。(赤書きの値)結果のとおり、無負荷時は定格時に比べて電圧が高くなる部分がありますので、部品の耐圧に考慮が必要です。尚、回路図は設計編4で掲載したものの誤記修正と、その後の回路変更も反映しています。回路変更は、基板単体の通電後に電解コンデンサをディスチャージさせるためにC電源出力へ10kΩの負荷を追加しています。

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音の比較の準備

私のシステムのスピーカーはNS-1000Mです。密閉型の30cmウーハーをうまくならすにはアンプの駆動力が必要です。この為、常用のアンプは今年(2016年)製作したBTL A級DCパワーアンプ(S1604)としています。一方、今回のシングルアンプの製作の目的はプッシュプルアンプとの音質の比較なので、今からプッシュプルアンプの音に慣れ親しむために常用アンプをEL34ppアンプ(S1503)に切り替えました。久しぶりにこのアンプで音楽を聴きましたが悪くないです。音楽性という観点ではこのアンプの方が勝っているかもしれません。

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次回は各ブロックへの電源の供給部分と終段の実装を進めます。

 

つづく(製作編8)