バランス入力シングルパワーアンプ製作(製作編6)

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製作編6

アンプの心臓部、電源回路の製作を行います。また、仕方なくリップルフィルタ用に購入したの面実装トランジスタの実装方法も考えます。

はじめに

ディアゴスティーニなみの細切れの組立におつきあいいただきありがとうございます。それで、気になってディアゴスティーニのシリーズについて調べてみましたが、残念ながらオーディオ関連のものは見つかりませんでした。需要がないんでしょうね。さらに調べて見ると、こちらは単発の付録付きのムック本になりますが、大人の科学「まるごと手作りスピーカーの本」なんてものが見つかりました。Fostexの7cmスピーカーユニットを手作りするものです。私の知り合いにフォスター電機に入社した方がいますが、社内の研修でスピーカーユニットの手作り製作を行ったと教えてもらいましたがこんな感じのものなのでしょうか?

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電源基板の取り付け

本題に戻ります。電源トランスの後ろ側のスペースにできる限り大きな基板を実装するために、取り付け用のスタット位置を工夫します。基板手前側の固定は、標準の取り付け穴を使わずに別途穴を開けて、トランスとスタッドねじの干渉を回避して空きスペースいっぱいの基板を実装します。リアパネルの外装部品との干渉を避けるために、背の低い10mmのスタッドを選択しています。

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電源回路の大物部品の実装

B電源で使用する電解コンデンサは、高耐圧のため容量の割にサイズが大きくなります。このため、基板には実装できないので、個別にシャーシへ実装します。大元の560u/400Vの電解コンデンサは、φ35x45と大きく重いため、L字のアングルにインシュロックを使って固定します。端子はL字のラグ端子で受けます。尚、L字のアングルは日曜大工用の金具で、ビバホームで購入しました。アングルとLラグ用の取り付け穴は他の部品とのクリアランスを確認して後から開けました。

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他に100u/400V品を2つ使っていますが、こちらはサイズがφ25x25で比較的重さも軽いため、Lラグ端子へ直接取り付けます。

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全波整流用のダイオードは実装効率を考えて、トランスの端子へ直付けしました。空中配線部のショートを防止するためケーブルの被覆を利用してダイオードのリードにかぶせて被覆としました。

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基板端子台の採用

今回初めて試す部品を紹介します。いままでは基板への配線はタイコエレクトロニクス製のポストピンヘッダにハンダ付けをしていました。(写真右)その為、基板を外す度に配線のハンダ作業が必要となり、手間がかかる上にアンプの信頼性を下げていると考えていました。他の方の製作記事で使われていた部品を秋月電子で見つけて試しに購入してみました。アルファプラスコネクタ社製の基板端子台です。(写真左)対応電線はAWG14-22で、なんとかφ0.65の単線も使えそうです。この部品を使うことで先の懸念が払拭できることを期待して使ってみます。

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面実装トランジスタの実装

今回の記事で紹介するアンプへの部品実装は以上ですが(本記事のキャッチ写真参照)、後で考えるとしていた、リップルフィルター用に購入した面実装タイプのトランジスタの実装方法を検討しました。放熱シートよりも一回り小さく銅板をカットして、取り付け用のねじ穴を開けます。その銅板へ面実装トランジスタをハンダ付けしました。ハンダによる固定は少し心配ですが、このトランジスタの発熱は大きくないのでこのまま進めます。これでシャーシへTO-3タイプと同様に実装することができます。

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銅板は、t0.3 100x200のものをビバホームで購入しました。370円でした。ビバホームはいつもお世話になっていて、私の強い味方です。いままで通販の購入間違いや配達遅延時に助けられた部品を参考に紹介します。どれも割高ですが、通販で単品で注文することを考えれば価格差は送料よりも安いです。

・熱収縮チューブ
・スタッド(スペーサー)
白色LED
・インシュロック

などです。

 

次回は電源回路を基板へ実装していきます。

 

つづく(製作編7)

 

バランス入力シングルパワーアンプ製作(製作編5)

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製作編5

シャーシへの大物部品の取り付けが完了したので、配線を行っていきます。

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配線の進め方

私の真空管アンプ製作は昨年(2015年)の12月に木村哲さん著の「情熱の真空管アンプ」という本を購入して、勉強したところから始まりました。それまでは「真空管アンプなんて・・・」と考えていたため真空管と関わりはありませんでした。そんな事でこの本が私の真空管アンプに関するバイブルですが、この本の中で勧めている失敗しない組立の進め方は、ブロックごとに配線を行い、その都度通電確認を行うというものです。今回もこの方針に従って配線を進めていきます。

電源1次側配線

作業に入る前に、現時点のシャーシ内部の状態を紹介します。左右の出力トランスから各4本づつの電線が出ていますが、配線作業のじゃまになるので束ねておきます。正面パネルとリアパネルに取り付けたハンドルですが、建材の流用のためにシャーシ内部に無駄に飛び出して邪魔です。次回製作の機会があれば建材ではなくハンドルを物色したいとおもいます。

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本題に戻り電源1次配線を進めていきます。関係する部品は、ACインレット、ヒューズホルダ、トグルSW、サージキラー、電源トランスです。トランジスタアンプでは、回路系全体のインピーダンスが低いため、極力太い電線を選択しましすが、真空管アンプはインピーダンスが比較的高いため太さにはこだわらずに、配線の仕上げを考えてφ0.65のすずメッキの被覆単線を使用します。正面パネルのトグルSWへの配線は、ハムの発生を防止する為に2本の線をよりました。単線のよりは綺麗にできませんね。配線は完成後の見栄えを考えて、直線・直角曲げを基本に行いますが、単線ならではの対応です。サージキラーは、部品の配置効率とサージの発生元を押さえる観点から、電源トランスの端子へ取り付けました。以上の配線が終わったところで、ヒューズホルダにヒューズをセットして、AC100Vを通電します。トランスの各巻き線に無負荷時の所定の電圧が出力されることを確認しました。

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真空管ヒーター配線

初段の真空管は12AX7ですが、頭の数字の12はヒーター電圧を示しています。真空管の端子配置を見てのとおり、ヒーター巻き線のセンターが端子出力されていて、ヒーター電圧としてメジャーな6.3V駆動できるようになっています。その際の必要電流は150mA x2/6.3Vです。初段真空管2本分のトータルヒーター電流は600mAなのでトランスの1巻き線(3A/6.3V)で駆動します。

■12AX7端子配置

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終段のEL34のヒーター電流はは6.3V/1.5Aです。片ch分2本のヒーターをトランスの1巻き線(3A/6.3V)で駆動します。尚、電源トランスPMC-190HGは6.3V/3A巻き線出力を3本もっていますので、この構成のアンプにはうってつけの仕様です。ヒーターはAC点火としていますのでハム発生防止のために、電源1次側と同様に電線をよって配線します。また、ヒーターの片側をGNDに接続しないとハムが発生するとのことなので配線しますが、アンプの基準GNDを後でLラグ端子でつくる予定なので、忘れずに接続することにします。

■EL34端子配置

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ヒーター点火確認

まずはソケットに真空管を挿さずに電源をオンし、所定の端子にAC6.3Vが出力されていることを確認します。問題なければ続いて真空管を挿してヒーター点火を確認します。真空管内部がぼーっと光始め、その際に熱膨張でチンチンと音がします。これが真空管アンプの情緒の大きなポイントだとおもいます。(本記事のキャッチ写真参照)この確認ですでにアンプが完成したような錯覚をしてしまいます。ずっと見ていたいとおもいますが、Ipを流さずにヒーターを長時間点火することは真空管にダメージを与えるとのことなので、点火の確認できた時点で電源を切ります。なごり惜しいですが、真空管を取り外し次の作業に備えます。次回は電源回路を製作します。

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つづく(製作編6)

 

バランス入力シングルパワーアンプ製作(製作編4)

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製作編4

シャーシ加工が完了したので、トランスの取り付けを行い続けて配線の準備をします。

チップジャック

今まで説明してなかったので、トランス搭載前に簡単に紹介します。本アンプでは、赤3個、黒3個の計6個のチィップジャックを取り付けました。組立完了後の電圧のモニタを簡単かつ安全に行うための部品です。

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写真は終段のIp調整用に設けたものでテスターのリード端子を刺して使います。このように電圧モニタのために、シャーシ内部へわざわざアクセスする必要がありません。また構造上、通常使用時に感電の心配もありません。尚、写真では便宜的に両ジャックにテスタのリードを挿していますが、Ip測定の為の電圧モニタ時は片方をGNDのチップジャックに挿して電圧測定を行います。その際の調整は、写真チップジャック脇にφ10の穴が2つ写っていますが、この穴から終段Ip調整用のボリュームにアクセスして行います。この他に電源基板脇にB1電源とGND用のチップジャックを設けています。

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電源トランスの取り付け

電源トランスはノグチのPMC-190HGです。トランスのカバー固定用のねじと取り付け用のねじが共用されています。取り付け用のねじを取り外す際に、カバー固定用のねじがゆるむ可能性があるため、トランス取り付け前に締め直しておきます。トランスの向きは、真空管ヒーター配線を短くすることを考慮してヒーター巻き線出力側が手前となるように決めました。トランスの天面には養生用に段ボールを貼り付けておきます。

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出力トランスの取り付け

S1503(EL34pp)設計時には、トランス3個の配置決定前にハムの発生有無の確認を行いました。検討中の配置どおりに電源トランスと出力トランスを置き、電源トランスにAC100Vを通電します。出力トランスの1次側をショートし、2次側にスピーカーを接続し、ハムの発生がないことを確認しました。結果は全く問題ありませんでしたが、これは下記の設計によるものと考えています。今回もこれらの設計を踏襲しているため確認を省略しましたが、目論見どおりの結果となることを期待しています。

・大きめのケースを選定してゆったりした配置設計
 影響は距離の3乗に反比例します
・出力トランスがケースに入っていること
・電源トランスに磁気シールドタイプを選定したこと

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出力トランスソフトンのRW-20は、一次インピーダンスとして2種類が選択でき、更にUL接続用のタップ出力を2本持っています。

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今回はUL端子を使用しないため、不使用3本の電線を処理しておきます。簡単に行う場合、電線を切断すればいいわけですが、後で出力トランスを使い回すことを考慮して、不使用電線の処理用に圧着閉端子3個と、インシュロック2本が付属しています。ケースを外し、不使用電線を写真のとおり処理して再度ケースに収めます。写真左は処理前のトランスで7本の電線が引き出されています。右は処理中のもので不使用の電線3本を処理しています。処理後は外部出力線は4本のみとなり大変スッキリしました。電源トランスと同様にケースの天面に養生用の段ボールを貼りつけておきます。(本記事のキャッチ写真参照)

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配線の準備

シャーシ内部の作業を行うためには、アンプを裏返して置く必要があります。安定して逆さに置くためにボンネットを取り付けることとします。その際にトランスと同様に天面に養生用の段ボールを貼り付けます。これでシャーシを逆さにして配線の作業を安定して行うことができます。次回は電源の配線を行います。

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つづく(製作編5)

 

バランス入力シングルパワーアンプ製作(製作編3)

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製作編3

前回に引き続き、シャーシ加工を行います。今回はシャーシ加工最大の難関上面の加工です。

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加工図

設計編3でシャーシ上面の加工図を掲載しましたが、S1503(EL34pp)と大物部品が共通でケースも同じものを選択したことから、加工図をそのまま流用する方針としていました。しかし本アンプは終段のIp調整を各真空管独立調整可能としたため、各チャンネルボリュームが2個となったことの考慮を忘れていました。急遽加工図を修正して加工をスタートしました。

シャーシ上面加工

ポンチの目印49箇所、穴開けが45箇所と今までの加工に比べて格段に加工箇所が多いうえに穴径が大きい事が特徴です。唯一丸穴と角穴のみで変形加工がないのが救いです。他の面と同様に加工図を貼り付け、加工位置に目印を付け、2mmのドリルで下穴を開けます。

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続いて3.2mmのドリルで穴を広げます。φ3のねじ用の穴の加工はここで終了です。続いて残りの穴は4.2mmのドリルで穴を広げます。φ4のねじ用の穴加工はこれで終了です。さらに引き続き、残りの穴を6mmのドリルで広げます。チップジャック用の穴加工はここで終了です。残り13個の穴はステップドリルを使って10mmに穴を広げます。終段Ip調整用ボリュームの穴の加工はこれで終了です。

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この時点で残っている部分は、電源トランス用のカク穴、出力トランス用のφ30mmの丸穴2個、初段真空管ソケット用のφ22の丸穴2個、終段真空管ソケット用φ30の丸穴4個です。これら残りの丸穴はシャーシパンチを使って開けていきます。

初段真空管ソケット用穴加工

初段は12AX7なので、ソケットはMT9を使います。ソケットの取り付けには、φ22と固定用のφ3ビス用ねじ穴の計3個が必要です。シャーシパンチの歯は21mmの上は25mmなので、21mmで穴開けして後はひたすら金ヤスリで削ります。金ヤスリで1mm拡大するには根気が必要です。他に良い方法はないものでしょうか?

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ソケットの向きは、実際に真空管をソケットにさしてマーキングが見える向きを選択します。確認の結果、S1503製作で使用した真空管と反対向きに印字されていたため急遽180度回転させて取り付けることとしました。念のためもう1本も確認しましたが同じ状態でした。

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終段真空管ソケット用穴加工

終段はEL34なので、ソケットはUS8を使います。私の購入したソケットの取り付け穴径は、27mmのものでした。シャーシパンチの歯は25mmの上が30mmです。25mmから削るのは大変なので、30mmの穴とした場合に固定用のねじ穴と干渉しないかを確認したうえで、30mmで済ますこととしました。合計4個の穴開けが必要で、初段の2個を合わせるとすでに6個の穴開けとなります。手がいたくなりはじめ、やめたくなってくるのを我慢してなんとか完了させました。

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初段と同様にソケットの向きを決めるために、ソケットに真空管をさして確認をしました。EL34は前回と同じ向きにマーキングされていたためソケットの向きはS1503と同じにしました。

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終段トランス用穴加工

この穴は、配線の引き出し用なので精度は要求されません。シャーシパンチでφ30mmの穴を開けます。配線引き出し用なので、穴開け後に切断面を面取りしておきます。

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電源トランス用穴加工

リアパネルのACインレット穴加工と同様に、カク穴の四角の目印を使ってマジックで切り取り線を引きます。あとはひたすらハンドニブラで線に沿って切っていきます。切断部が長いので、途中で手がしびれてきて握力がなくなります。根気でカバーしてなんとか切断を完了させ、後は平金ヤスリで仕上げました。これで最大の難関のシャーシ上面の穴加工が完了です。

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取り急ぎ、小物の外装部品だけ取り付けてみました。(本記事のキャッチ写真参照)部品がついていないシャーシと比べて格段にカッコ良く見えます。製作者の良く目でしょうか?次回はシャーシへのトランス取り付けと配線の準備をします。

 

つづく(製作編4)

 

バランス入力シングルパワーアンプ製作(製作編2)

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製作編2

前回引き続きシャーシ加工を進めます。今回はリアパネル加工を行います。

リアパネル

取り付ける部品は、フロントパネルとは異なり数も多く、穴径も大きい上に丸穴以外の加工が必要なため、フロントパネル加工よりも数段手間がかかります。取り付ける部品は、XLRパネルコネクタ2個、スピーカーターミナル4個、ACインレット1個、ヒューズホルダ1個、ターミナルガード2個です。

XLRパネルコネクタ取り付け穴加工

フロントパネルと同様に、加工図を貼り付け、ポンチで穴開け位置に目印をつけて、ドリルで穴を開けていきます。XLRパネルコネクタ取り付けには、φ21の変形丸穴と固定用のφ3のねじ用穴2個が必要です。φ21の変形丸穴の加工精度に自信がないため、固定用のφ3のねじ用の穴は現物合わせで位置出して穴開けは最後に行います。特に丸穴以外の加工は仕上げが難しいため、できる限り加工面が隠れるような部品を選定しています。出来上がりの見栄えを良くするための工夫です。

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φ21の丸穴はシャーシパンチを使って穴開けしますが、シャーシパンチは歯をセットする為にφ10の穴が必要です。そのためにドリルでφ6の穴を開けて、その後はステップドリル(通称タケノコ)を使って穴を広げます。ステップドリルの歯の径は2mmステップですが、φ16くらいまでの穴は比較的簡単に開けられます。

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ステップドリルは、切削油を使うときれいに穴が開けられます。私は中性洗剤の原液を油差しに入れて代用していますが、工作対象を汚さずに切削油の機能も果たしています。

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φ10の穴が開いたら、シャーシパンチの歯をセットします。私のシャーシパンチはホーザン製で、アルミ板であれば1.8mmまで穴開けでき、歯のサイズとしては16/18/21/25/30mmの5種類から選択可能です。

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シャーシパンチは力がいりますが、短時間できれいに穴が開けられます。この後の丸穴の変形加工は金ヤスリで行います。穴の上方は平ヤスリで、残りの3方は丸やすりで現品が収まるように確認しながら削ります。本体が完全に収まるようになったら、取り付け角度を確認し、問題がなければ現物合わせで固定用のねじ穴2個を開けるための目印をつけて、φ3.2の穴を開ければ完了です。

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スピーカーターミナル取り付け穴加工

まずはステップドリルを使ってφ12の穴を開けます。回り止め用のノッチ部分を穴の下方に角形状の金ヤスリを使って削ります。

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ACインレット取り付け穴加工

ACインレットの取り付けには、27x40mmのカク穴の両サイドに固定用のねじ穴が2個必要です。ポンチで固定用のねじ2カ所とカク穴の4角、カク穴の穴開け用にハンドニブラの歯を入れる為の穴用の計7カ所に印を付けます。加工図面を剥がした後でカク穴4角の目印を使ってマジックで切り取り用の線を引きます。

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ハンドニブラの歯を入れる為の穴径はφ10です。ハンドニブラをご存じない方もいるかとおもいますが、形状こそ異なりますが、金属用の爪切りのようなものです。切り取り線にそって1回で約1mmづつカットしていきます。ハンドニブラの製品仕様によると、アルミ板であれば2.0mmまでカットできるとなっていますが、2mm厚のアルミ板の加工には相当な握力がいるとおもいます。今回採用のシャーシのアルミ厚は1.5mmでしたが、穴開け後に暫く手がしびれてました。

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カク穴が開いたら金ヤスリで仕上げます。最後に固定用のねじ穴と位置があっている事を確認します。穴位置がズレていた場合は、カク穴をヤスリで削り位置出しをします。

ヒューズホルダ・ターミナルガード取り付け穴加工

残りは、ヒューズホルダとターミナルガードです。ヒューズホルダはφ12の丸穴なので、ステップドリルで穴開けしました。ターミナルガードは、フロントパネルのSWガードと同じ部品なので、φ6の穴をフロント加工時と同様に穴開けします。最後に、部品を全て仮固定して問題ないことを確認します。(本記事のキャッチ写真参照)次回はシャーシ上面の加工を行います。

 

つづく(製作編3)

 

バランス入力シングルパワーアンプ製作(製作編1)

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製作編1

ざっと部品を集めて、加工図を元にシャーシ加工を進めます。

部品発注

トランスはメーカーダイレクト(ノグチトランス、ソフトン)に、リードのケースは若松通商に、それ以外の部品は秋月電子とマルツオンラインへ発注しました。概ね予定したものが発注できましたが、ヒューズホルダと、リップルフィルタ用のトランジスタが前回買ったもの(2SC3309)が注文できませんでした。ヒューズホルダはほぼ代替品がありましたが、トランジスタは高耐圧品のため、元々選択肢が少なかったこともあり、相当品が見つけられませんでした。仕方ないので、とりあえず電気仕様のみ相当品の面実装タイプ(2SC3631)を注文しました。電源組立時までに対応方法を検討したいとおもいます。

■2SC3631仕様

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シャーシ加工

シャーシ加工は1番気を使い手間のかかる行程です。今回も塗装の予定はないので、加工時に傷をつけないように細心の注意をはらい作業を進めます。作業に入る前に私の作業環境を簡単に紹介します。アマゾンで2500円弱で買った折りたたみ式の作業台を使っていますが、私の行う作業レベルでは強度も十分なレベルです。可動式のワークに加工対象を挟んで固定することもでき、値段のわりには便利に使えています。今回はシャーシ加工をリアルタイムで紹介する初めての機会なので、少し詳しく説明していきます。

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始めにシャーシ正面から加工します。取り付ける部品は、SW、ランプ、SWガード用のハンドルのみで、久しぶりのシャーシ加工に慣れるのには丁度良い作業です。

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前にも説明したかもしれませんが、SWガード用のハンドルはビバホームで売っている建材です。おそらく角材を固定するための金具だとおもいますが、ハンドルとして流用しています。ストッパ用にナットを一番奥まで締め込み、その上でパネルへ差し込みさらにナットでパネルへ固定します。

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加工図は等倍で印刷し、外形に沿って切り抜きます。それをシャーシ外形に合わせて貼りつけます。部品の位置は加工図で決まるため、貼り付けは神経質にならずに概ね外形に合わせれば問題ありません。

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加工図の上から穴を開けるポイントにポンチで目印をつけていきます。シャーシの下側は、ねじ穴用のフランジ構造となっているため、厚さ5.5mmの合板を幅40mmでカットしてパネル正面の裏側をこの合板で受けてポンチを当てました。

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加工図を剥がし、まずは2mmのドリルで下穴を開けます。

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徐々にドリルの歯を太くし、全て6mmの穴を開けます。ランプのみさらに歯を変えて6.5mmの穴を開けます。後はリーマーで必要なサイズまで穴径を拡大し、最後にヤスリで仕上げました。

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各穴は、それぞれの部品が問題なく取り付くことを確認します。穴は小さめに開けているので、リーマーで広げて取り付けの確認を繰り返します。リーマーで一度に削れる量は少ないため、何度も繰り返し根気のいる作業です。全て取り付けの確認(本記事のキャッチ写真参照)ができたら、部品を取り外し、次の加工に備えます。次回はリアパネルの加工を行います。

 

つづく(製作編2)

 

バランス入力シングルパワーアンプ製作(設計編4)

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設計編4

終段ロードライン設計の誤りに気づき、設計を全て見直しました。

設計の誤り

パラレル駆動の設計は今回初めてという事もあり、通勤電車の中で真空管の動作をつらつらと考えていたところ、先に行ったロードライン設計に重大な誤りがあることに気づきました。先日行った設計は、真空管1本の動作前提でロードラインを引き、最大出力のみを2本分の考慮をしました。しかし、実動作はVg変動に対するIpの変化は真空管2本分(2倍)となり、負荷インピーダンス3.6kΩにかかる電圧は真空管1本時の2倍となります。言い換えると、真空管1本前提でロードラインを考える場合は、負荷インピーダンスを2倍の7.2kΩとする必要がありました。このため、急遽設計を全て見直しました。

終段ロードライン再設計

前回設計に比べて、ロードラインが寝てしまい、設計の条件が悪くなります。すでに電源トランス、出力トランスを発注したこともあり、この条件で設計を進めます。検討の結果、S1503(EL34pp機)のバイアス値に近い、Ip=33mA, Vp=255Vとしました。この条件にて前回同様に最大出力とアイドル時の真空管1本あたりの消費電力を計算しておきます。交流最大出力電流Ippはロードラインから約27mAと読みとれます。真空管2本で倍の54mAです。最大出力時交流実効電流値Irmsは以下となります。

Irms = 54 / 1.41 = 38.3mA

 

この時の最大出力Pmaxは以下となります。

Pmax = 3600 x (0.0383)^2 = 5.28W

 

アイドル時の真空管1本あたりの消費電力Pidleは以下となります。

Pidel = 255 x 0.033 = 8.4W

 

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初段ロードラインの再設計

見直しの結果、S1503(EL34pp機)とほぼ同等のロードラインとなりました。Ip=0.75mA, Vp=155V, Vg=-1.4Vです。終段から初段に要求される出力電圧は+/-20Vなので、ロードライン上狭い範囲となります。初段の回路構成が差動なので、前回同様シビアな設計は行わずに周りの設計に合わせてロードライン引いています。

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回路の見直し

見直しの結果、電源回路はS1503と同じ設計に戻しました。唯一B2の消費電流が、140mAから132mAに下がっていますが誤差範囲です。

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アンプの終段回路を見直した点は、カソード抵抗を330Ωから510Ωに、交流をバイパスする電解コンデンサを220uFから100uFに変更しました。初段はIpの変更に伴い、定電流ダイオードを1mA品から1.5mA品に変更しています。

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シャーシ加工の準備

ここから前回の続きに戻ります。シャーシ加工に入る前に、ざっと部品を発注します。前回使用した部品が今回も手に入る保証がないからです。シャーシ加工に関わる部品が入手できない場合は、部品再選定、必要があれば加工図の修正を行います。送料を考慮すると1店舗あたり1回の発注で済ましたいところですが、製作初期は買い残しをしてしまい、現実的にはせめて2回で収めることを目指します。

部品表

部品発注の為に、作成した回路図、シャーシ加工図を元に部品表をまとめます。前回同様にアンプ部と電源部に分けて作成しました。今までの製作の残部品をチェックしてから発注を行います。上記の設計見直し前に部品表の作成まで行っていましたが、幸い大物部品以外の発注は行っていなかったため実害は発生しませんでした。

■アンプ部部品表

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■電源部部品表

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上記の部品表の価格は、S1503製作時(2016年1月頃)のものなので現在の価格とは違っている部分があるとおもいます。ご了承ください。

今回、恥ずかしいところを晒してしまいましたが、引き続きおつきあいいただけると幸いです。次回は今度こそ部品の収集からシャーシ加工を進めていきます。

 

つづく(製作編1)