バランス入力シングルパワーアンプ製作(設計編3)

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設計編3

今回はシャーシ設計を行い、それに従ってシャーシ加工の準備を進めます。

シャーシ設計

設計中のシングルアンプ(S1605)ですが、EL34pp(S1503)と出力トランスを除いてキーパーツが共通です。シャーシ加工図を作成するにあたって、唯一異なる出力トランスの外形および取り付けの確認を行います。ソフトンのRW-20ですが、確認の結果前回EL34pp(S1503)で使用した出力トランスRX-40-5と外形寸法および取り付け寸法ともに共通な事がわかりました。シャーシを前回同様にリードのMK-380を使用すれば、前回の図面をそのまま加工図として使用できます。S1503で配置上問題がないため見栄えはS1503機と変わりませんが、シャーシも共通設計で進める事とします。

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シャーシ加工図

S1503製作時にフリーの二次元CAD AR_CADで作成したデータを引っ張りだします。前回、リアパネル加工図作成後に、シャーシ内部部品との取り合いの関係から土壇場で配置を左右逆転させました。CADのミラー機能を使ってひっくり返し、そのまま加工へ進めたために、XLRパネルコネクタ取り付けのねじ穴が反対側の対角配置となってしまい、リワークをしてしまいました。この時に図面を直せば良かったのですがそのまま放置し、さらにこんな事をすっかり忘れてしまい、S1604(A級 BTL_DCアンプ)でXLRコネクタ加工部分をそのままコピペして加工図面を作ってしまって同じ過ちを繰り返してしまいました。さすがにこの時はメーカーに加工を依頼した物に対してリワークをしたという事もあり、大いに反省をしました。その時の教訓として、たとえ自分の設計でも流用元は信じないこととし、流用時に必ず必要な確認を行う事にしました。

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S1503では、ターミナルガードとして特殊な形状の金具を使用しましたが、フロント側のSWガードに使ったハンドル形状のものに変更します。こちらの金具の方が幅を取らない為部品のクリアランス上メリットがあります。

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正面パネルは、SWガードを含めて配置上特に問題がなかったので、ハンドル固定用の穴を追加だけしてそのまま図面を流用します。

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S1503は電源基板の配置に苦労しました。(写真参照)それを改善するには電源トランスの位置を手前側にずらす必要がありますが、トランスの前側も初段の真空管を挟む形でラグ板を配置したため、余裕がありません。仕方ありませんので、今回も同じ配置で進めることにします。

・S1503(EL34pp機)部品配置

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シャーシ加工の準備

各穴開け加工ごとに部品の取り付けを確認するために、大物部品を準備します。出力トランスは見た目が前回同様ではおもしろくないため、今回はシャーシと同色のシルバーを選択したかったのですが、メーカーへコンタクトしたところ欠品だったため、残念ですが今回も黒を選択しました。

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前回同様に全て部品を通販で準備する予定ですが、支払いはカードが使えるところはカードで、使えないところは銀行振込で処理します。代引は便利ですが手数料がかかります。銀行支払いはネットバンクを利用すると月ごとの回数制限はありますが振り込み手数料がかかりません。購入先が多くなると手数料もばかにならないためささやかながらの工夫です。加工図の印刷はA3横出力します。出力後にそれぞれ外形に沿って切り抜きシャーシに貼り付けます。これで加工準備は完了です。次回は実際に加工を進めていきます。

 

つづく(設計編4)

 

 

バランス入力シングルパワーアンプ製作(設計編2)

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設計編2

前回引いたロードラインに従い、電源から具体的に回路設計を進めます。

電源回路設計

先に行ったロードライン設計から電源回路への要求をまとめます。
・B1電源=215V
・B2電源=225V, Iidel=160mA(ステレオ分)
・C電源=-5V(電圧は5Vでなくても良い)

 

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前回の記事の最後で触れたとおり、EL34pp機(S1503)の電源回路のトランスのタップ切り替えだけで実現できないか考えながらロードラインを引きました。S1503では電源トランスの220Vタップを選択していましたが、本機では180Vを選択します。真空管の構成も同じため、ヒーター回路もそのまま使用できます。プッシュプル機との比較を行う事を考えると共通設計は好都合です。尚、図中の電圧は見込み値のため、完成後に実測値で修正予定です。

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アンプ回路設計

前回記事の基本回路に沿って定数を決めていきます。始めに終段の定数を決めます。ロードラインからアイドル時のIp=40mAを流すためのVgは-15Vとなるので、カソード抵抗Rkは以下となります。(B2=225VではVg=15Vを考慮するとターゲットのVp=220Vを割ってしまいますが現時点では出力トランスの電圧降下を含めて無視します)アイドル電流はVg=0バイアスで最大となるので、調整(Vgをマイナス電位にして電流Ipを下げる事しかできない)を考慮して抵抗値を小さ目にして電流を多めに流す設計としておきます。

Rk = 15 / 0.04 = 375(330Ω)

 

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カソード抵抗には交流をバイパスするためのコンデンサを並列接続します。仮に容量を100uF,220uFとした場合のカットオフ周波数fcは以下となります。

fc = 1/(2 x 3.14 x 330 x 100e-6) = 4.8Hz
fc = 1/(2 x 3.24 x 330 x 220e-6) = 2.2Hz

 

両周波数ともに出力トランスの特性を考慮すれば十分ですが、今回は余裕をとって220uFで進めます。さらに音質改善用にフィルムコンデンサを並列接続しておきます。次にバイアス回路ですが、真空管のばらつきを考慮して2本独立調整とします。Vgをマイナス側に振るために5KΩの半固定抵抗で電圧を調整できるようにします。接点不良を考慮して5.1kΩの固定抵抗でGNDへ並列に接続しておきます。この保護ですが、働いた場合にIpが最大になってしまうためあまり良い回路ではありませんが、電圧が不定になるよりは良いと考えてこれで進めます。Rgの値は真空管の仕様上700KΩまで上げられますが、余裕を取って470kΩとしました。初段のロードラインはRL=100kΩで引いているため、2本分の実効グリッド抵抗値を300KΩとする必要がありますが(初段のRL=150kΩ前提)240kΩで我慢しました。このため初段真空管の交流時負荷抵抗RLは92kΩに下がっています。続いて初段の定数を決めます。ロードラインの見直しにより、Ipを0.75mAから0.5mAに下げたたため、定電流ダイオードを1mA品に変更しました。それ以外の定数はS1503を踏襲し、問題があれば後で見直します。これで電源およびアンプ回路がフィックスしました。次回はシャーシ設計および加工準備を行っていきます。

 

つづく(設計編3)

 

バランス入力シングルパワーアンプ製作(設計編1)

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設計編1

前回の記事でまとめた設計構想に沿って設計を進めていきます。

基本回路

入力が12AX7の差動構成、終段がEL34シングルのパラレル構成で基本回路を作成します。初号機(S1503)のEL34pp機と真空管の構成は全く同じですが、終段の回路が異なります。こんな構成にするくらいならば、プッシュプルでいいのではとのつっこみが入りそうですが、今回の目的はプッシュプル機との比較なので、真空管の構成が同じ事は好都合です。終段のVgのバイアス回路はラフに描いていますので、設計の際に見直します。

終段のロードライン

初号機(S1503)のEL34pp設計時は、初めてということもあり、キーパーツの選択をしない状態で設計を進めて、後でパーツとの整合性がとれずに再設計という事を何回も繰り返してしまいました。今回はS1503との比較が目的なので、部品はできる限り共通で設計を進めます。始めに終段のロードラインを引きますが、そのためには出力トランスの選定が必要です。S1503で採用したソフトンのトランスが良かったので、同社の同クラスのシングル用出力トランスRW-20を選定しました。

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■ソフトンRW-20仕様
・出力容量=20W
・1次インピーダンス=2.7K, 5KΩ
・2次インピーダンス=6Ω
・推奨1次DC電流=60mA以下(5kΩ)、80mA以下(2.7kΩ)
・価格=10,800円

(2016.10.26 ロードライン設計の誤りに気づき設計編4で見直します)

 

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私のスピーカーは、1000Mなのでインピーダンスは8Ωです。その場合の出力トランスの1次インピーダンスは、3.6kΩと6.7kΩとなります。まずは適当なバイアス値で2種類のロードラインを引いてみました。6.7kΩの場合は、出力がかせぎずらい上に、最大振幅時に真空管の定格電圧値を越えてしまうため、3.6kΩで検討を進めます。S1503の1次インピーダンスは3.4kΩだったので、ラインの傾きはほぼ同じになり設定値が参考となります。シングルは、この特性がそのままアンプの特性となるため、できる限り特性の良い部分を使いたいと考えて、S1503機のバイアスに比べて、Ipを増やし、逆にVpを下げる方向で検討を行いました。Ip=40mA(S1503は35mA)、Vp=220V(S1503は250V)を仮決定値として他検討を進めますが、その前にこの設定値とした場合の最大出力他必要なパラメーターを計算しておきます。

交流ピーク出力電流は、ロードラインから真空管1本あたり30mAとなり、2本で倍の60mAで、その時の電流の実効値Imaxは以下となります。

Imax = 60/1.41 = 42.6mA

この場合の最大出力Pmaxは以下となります。

Pmax = 3600 x (0.0426)^2 = 6.5W

無信号時の真空管消費電力Pidleは以下となります。S1503とほぼ同じ消費電力なので前回同様の放熱設計で問題ありません。

Pidel = 220 x 0.04 = 8.8W (S1503は8.75W)

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初段のロードライン

終段のロードラインから、初段に要求される出力は、30Vppでロードライン上では狭い範囲となります。さらに初段は差動構成のため、直線性に関して有利に働きます。このため、設計はシビアに行わずにS1503の回路設計を踏襲して、電源電圧のみを終段のロードラインからの要求に合わせることにしました。設定値は、B1=215V, Ip=0.5mA, Vp=140Vとしました。ここまで一切触れてきませんでしたが、これらロードラインの設計は、S1503電源をそのまま使うべくトランスのタップ電圧とにらめっこしながら決めています。次回は電源から具体的な回路設計を行っていきます。

 

つづく(設計編2)

 

バランス入力シングルパワーアンプ製作(構想編)

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構想編

製作済みのプッシュプルアンプと聴き比べをしたいとおもい、シングルアンプ製作に向けて設計構想を開始しました。

シングルアンプ

今回のオーディオフェアの中で真空管アンプはシングルに始まり、シングルに終わる方が多いとの話を聞き、さらに実際にプッシュプルアンプとの聴き比べも体験して、シングルアンプは改めて真空管の個性の出る方式であることを実感してきました。シングルアンプの基本は終段の1本の真空管が負荷を駆動する方式です。公表されているVp-Ip特性を眺めると、ロードライン上のVgをパラメータとしたIpのラインが非等間隔にならんだ状態を見ると、その特性が再生波形にダイレクトに反映されるため、「いい音がするはずがない」というのが過去の私の考え方でした。今年(2016年)のはじめに「真空管なんて」と思いながら製作した真空管アンプ1号機の中音域の響きの美しさを体験してからは、実際につくって聴いてみなければ解らないことがあると思うようになりシングルアンプの設計を行う決心をしました。

真空管の選定

シングルアンプの電力増幅用真空管選定の王道はオーディオ電力増幅用3極管です。どんなものがあるか調べてみました。300B, 2A3, 6B4G, 6A5Gなどが候補でしょうか?これら3極管の特徴を整理してみます。
・Ip-Vp特性が5極管3結の特性に比べて良い
図は2A3とEL34の3結時のIp-Vp特性です。2A3の方が各Vgの値のラインが均等に並んでおり、波形再現性が高いと言えます。

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・出力抵抗rpの値が3極管の方が小さい
・6A5Gを除き直熱管で使いにくい
・電力増幅用3極管は価格が高い

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出力抵抗rpの特性への影響ですが、ソフトンのシングル用出力トランスRW-20の特性が公開されていますので参考として転載します。この違いを見てしまうと、rpの小さい物を選択したくなります。さらに製作済みのEL34pp機の低音が、再生するソースによっては完全にBTL A級DCアンプに負けてしまう現実を考えると、できるだけrpの小さな球で駆動したいと欲が出てしまいます。逆にEL34pp機の中音域の響きの美しさを考えると残念でなりません。

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バランスシステムとの整合

私のシステムは、USB-DACでバランス出力をしてから、スピーカーの駆動までフルバランス構成となっています。せっかくアンプを設計するのであればこのシステムへ無理なく入れられるようにしたいと考えました。当初のオーソドックスで超シンプルなシングルアンプの音を聴いてみたいとの考えが完全に吹き飛んでしまってます。無理なく組み込む為にはバランス入力仕様となりますが、この場合ステレオアンプの片chの位相を反転させて動作時の電源に対する負荷の軽減策を試してみたいとおもいます。

設計構想まとめ

いままで考えた事を総合して設計構想としてまとめました。
真空管はEL34の3結のパラレル駆動とする
真空管の入手性を考慮しつつ、コストを押さえてrpを下げるための選択です。また製作済みのEL34pp機との比較を考えると公平な仕様だと考えました。
・入力は12AX7の差動構成としてバランス入力とする
無理なくバランス入力を実現できるうえ、この選択もEL34pp機との比較時の公平性も確保できると考えました。そんなのはシングルアンプじゃないとの指摘もありそうですが、せっかく自前設計しますので、私のシステムにマッチしたこの構成で設計をスタートさせたいとおもいます。

 

つづく(設計編1)

 

2016真空管オーディオフェア(番外編3)

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番外編3

10/9~10/10に真空管オーディオフェアーが開催され、見学してきましたので感想を含めて紹介します。

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真空管オーディオフェア

今年(2016年)の開催は第22回になりますが、開催場所はJRのお茶の水秋葉原の丁度中間にある損保会館でした。今年の2月に開催されたMJ誌主催のオーディオフェスティバルと同じ会場です。主催は真空管オーディオ協会で協賛にはオーディオ雑誌を扱う主要5社が並びます。今回近隣ホテルに第二会場が設定されましたが、そちらは1日では回りきれませんでした。損保会館内を回った中から印象的なデモについて紹介します。

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幻の銘球GEC DA100と東芝813シングルアンプ聴き比べ

5Fのイベントルーム開催の第1弾のデモとなり、進行はライターの柳沢正史先生でした。タイトルとなっている真空管はどちらも送信管で、印加電圧が通常の真空管に比べ、2~3倍(1000V~1500V)まで、Ipは2~5倍程度(100mA~300mA)まで流すことができます。音の傾向は雄大かつ音の抜けが良いと言われています。GEC DA100は(写真一番手前と一番奥)Ep=1000V, Ip100mA, Po=30Wのスペックを持った送信管です。一方東芝813は(写真中側の2台)、Vp=1500V, IP=300mA, Po=260Wの送信管です。

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デモに使用されていたスピーカーは、JBLS3900BGで、3Way 4Speakerでスコーカーとツイーターにはピュアチタンダイアフラムが採用されています。価格は1本49万円です。見た目とは異なり、私には往年のJBLサウンドにつながる音を感じとる事ができました。

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デモは、CD, LP, EP, SPをとりまぜ、洋楽のクラッシックが中心でしたが、今回のデモの目玉として、デッドストックされていた青江三奈の「伊勢佐木町ブルース」が準備されていました。過去にデモで選曲した事もあったそうですが、その際はLPを音源に使っていたそうです。EPは回転速が早い分だけ良い上に、板の状態が良いうちに聴いてもらいたいと考えて持ってこられたそうです。1968年に発売されたものなので、約50年前の録音になりますが、青江三奈のため息を含めてすばらしい鳴りっぷりでした。このデモで印象的だった事は、柳沢先生が1曲かけるごとに会場の後ろまで行って必ず再生音を確認されていたことです。自分が紹介する音への責任の現れでしょうか?印象に残りました。

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株式会社サンバレー

所在地は愛知県刈谷市で、「ザ・キット屋」という通信販売専門店を運営しています。中心は、キット販売の真空管アンプですが、真空管アンプの完成品、スピーカー完成品のラインアップもあります。キット中心は、電安法対応のコストと工数対策のためでしょうか?商品の価格は比較的リーズナブルだと思います。このコマで今回のイベントの中で一番参考になった聴き比べをさせていただきました。曲を含めてシステムを変えずにパワーアンプのみを切り替えての試聴です。聴き比べたアンプは以下のとおりです。

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・SV-S1616D/EL34(シングル)
・SV-S1616D/300B(シングル)
・SV-P1616D/EL34(プッシュプル)
・SV-P1616D/300B(プッシュプル)
・SV-S1628D/845(シングル)
・SV-S1628D/211(シングル)

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使用された音源は、井筒香奈江さんの「リンデンバウムより」から「無意識と意識の間で」です。このアルバムは、この曲を含めてすべてがカバーされたもので、この曲のオリジナル歌手は斉藤和義さんです。録音およびアルバム内の選曲がよかったので帰宅後にCDを注文してしまいました。

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スピーカーは同社のフロアー型システムLM69(写真右から2番目)です。スピーカーユニットは今では珍しい楕円形状で15x22cmのフルレンジユニットが使われています。価格はペアで37.8万円です。同社のネット上の解説では、60~70年代のヨーロッパサウンドを目指したとのことです。

比較試聴の結果

EL34シングルと300Bシングルの比較では、中音域の艶と響きはさすがに300Bの方が魅力的でした。全体的なバランスという観点ではEL34もそんなに悪くはないとおもいます。プッシュプル機は、それぞれのシングルの球の印象を残しつつ全体的に駆動力が上がっているように聴くことができました。私が使っているNS-1000Mの駆動を考えるとプッシュプルに分があるように思いました。最後に送信管845と211のシングルアンプの聴き比べです。両送信管は構造が同じで捺印以外見た目には区別ができませんが、211は845のEp、Ipのスペックをグレードダウンさせたものとの事でした。送信管のシングルアンプは、今まで聴いてきたのもと比べスケールの大きさを感じました。485と211では、211はボーカル等の中音域を明瞭に鳴らす際には真価が発揮されると思いました。進行される方もおっしゃってましたが、使用されるスピーカーによって選択を変えると良い結果が得られると思いました。

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PHILIPS4624単段シングルパワーアンプ

ライターの新忠篤先生が設計製作してみずからデモを行ってました。デモの中でも紹介されていましたが、ラジオ技術11月号に投稿されているとのことで、出版社連動企画かと思っていましたが、記事によると、隣に展示されていたトランスメーカー橋本電気のデモという事でした。このモノラルアンプは単段ということで真空管1本で構成されていますが、そのかわりにチョークコイルを含めてトランスが5個も搭載されており、その全てが橋本電気製でした。実は12時台のデモが終わったタイミングで入室し、アンプを見てどうしても音を聴いてみたいと思い、他のブースで1時間あまりデモを見て時間調整して2時のデモを聴くために戻ってきました。

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PHILIPS4624は戦後生まれの直熱3極管でEp=800V, Ip=35mA, 出力=9Wでフィラメント電圧が変わっていて7.2Vとの事です。このアンプのもう1つの特徴がアンプ回路系に一切ケミコンを使っていない事です。新先生は他アンプも含めてできる限りケミコンを排除してみたいと仰ってました。デモは、ONKYODAC-HA300 DSDプレーヤーをソースとしていましたが、さらにその元はLPレコードとSPレコード真空管フォノイコライザで再生したものをDSD化したものとのことでした。

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スピーカーはfostexのGX250MGが組み合わせられていました。先週のインターナショナルオーディオショウでスピーカーシステムの紹介をしていた方が会場につめていてケアをされていました。ツイーターがマグネシウムリッジドーム、ミッドレンジはマグネシウムHR形状振動板、ウーハーも25cmHR形状振動板が採用され、価格は1台56万円です。

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再生される音はというと、生き生き鳴り気持ちのいい音です。「真空管1本でここまで鳴らすことができるのか?」というのが正直な感想です。組み合わせて使用されたトランスの性能によるところもあるとおもいます。計画中のシングルアンプですが、考えれば考える程凝った構成になりがちですが、この音を教訓に程々に押さえたいとおもいました。

まとめ

今回の真空管オーディオフェアは、2月に開催されたオーディオフェスティバルよりも年齢層が広く、女性も会場で見受けられました。入場料は500円でしたが、高校生以下は無料という事で若者の取り込みに苦労している状況も伺えました。2週連続でオーディオショウを見学していろいろと刺激を受けましたが、次回から紹介予定のシングルアンプ設計へ有形無形の影響があるとおもってます。引き続きよろしくお願いします。

 

おわり

 

2016インターナショナルオーディオショウ(番外編2)

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番外編2

9/30~10/2国際フォーラムで開催された2016インターナショナルオーディオショウの見学報告をします。今回はアンプメーカー3社の展示について感想を含めて紹介します。

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株式会社トライオード

実はこの会社、私は良く知りませんでした。昨年末(2015年)に初めて真空管アンプの設計製作を行った際に、「真空管アンプ」でネット検索するとたくさんの製品がヒットしました。価格もそれほど高くなく気になっていました。たまたまfostexの隣にブースを構えていたことからのぞいてみることにしました。デモの紹介の前に、ネットで確認したことを書き出します。設立は1994年です。私がオーディオから遠ざかっていた時期なので知らないのも無理はありません。本拠地は埼玉県越谷市です。トライオードの製品は一部トランジスタアンプも扱っていますが真空管アンプが中心です。それ以外に、英国スペンドール(スピーカー)、カナダクロノス(ターンテーブル)の日本総輸入代理店としてブランドを持っています。

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デモの状況

私が参加したのは、アナログ試聴クロノスProのコマでした。とはいえ、このアナログプレーヤーが特別にフォーカスされていた印象ははなく、トライオード社が扱う製品の音を印象的に聴かせるスタイルのデモとなっていました。クロノスはカナダのターンテーブルのブランドで、写真の棚の上段に2台設置されています。双方向二重回転板ターンテーブルを特長としていて、見た目のインパクトは強烈でした。上下2段のターンテーブルが逆方向に駆動されており、パンフレットによるとターンテーブルの回転によって生じる捻転力を上下2段のターンテーブルを逆方向に同じスピードで回転させることで打ち消すことができるとのことです。

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アンプは同社のフラグシップTRX-M845が使用されていました。バランス入力モノラルパワーアンプで、出力段は845のパラシングル構成となっており、純A級で50Wを出力します。発売は2011年で価格は1台約80万円です。

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スピーカーはスペンドールSP200が使われていました。30cmウーハー2発の密閉型のフロアータイプで、発売は今月(10月)との事です。価格はペア240万円と値段もなかなかのものです。デモは、クロノスのコマということで、LPを聴かせるスタイルで曲間の曲の説明や説明者ご自身の趣味の話など、直接オーディオに関係ない話も含めて楽しく曲を聴くことができました。

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デモの中で一番印象に残ったのは、因幡晃の「わかってください」です。丁度40年前の録音ですが、彼曰くアナログが一番のハイレゾとの説明どおりすばらしい鳴りっぷりでした。おそらく、ターンテーブル、アンプ、スピーカーの組み合わせが良く、敢えて言えば密閉型フロアータイプのスペンドールの音が私好みだったのかもしれません。このデモを聴いて、改めて真空管シングルアンプを設計製作したいとおもいました。このようなデモをされてしまい、私の中でのトライオードのポジションが大きなものとなりました。まさに私が考えるオーディオショウのデモというような構成で、楽しい1コマでした。

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ラックスマン株式会社

私が参加したコマは、オーディオ評論家の角田先生の講演によるものでした。講演の中で本人も言ってましたが、ハイレゾを今まで推進してきたとのことですが、電子書籍同様、実体のない物は広まりにくいとおっしゃってました。デモの中心は、同社のトランジスタアンプの最高峰M-900uです。このアンプをBTL接続でモノラルアンプとして使用し、B&Wの802 D3をドライブしていました。ソースはLPとCDの両方が使われていました。

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このアンプは超弩級で、ステレオ時150W+150W(8Ω)と普通ですが、ひとたびBTL接続で負荷2Ωとなった場合2400Wの出力が出せる(瞬間最大)と唱われています。発売は2013年末で定価は110万円です。

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回路も超弩級で4パラプッシュプルの終段をさらにパラレル接続し、スピーカーの駆動力を上げています。さらにこれをBTL接続とした場合、1個のスピーカーを16組の終段のコンプリメンタリペアが駆動することになります。

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組み合わせて使用されていたスピーカーは、英国のB&W社の802 D3です。ネットで確認してみると、英国の有名なスタジオにも導入されているとのことですが、価格は1本180万円もすることがわかりました。デモは、角田先生による選曲と思われますが、CD, LPを織り交ぜて行われました。音の印象は、明るい感じの音でスピーカーの個性なのかアンプの音なのか判断できませんでした。アンプのデモは、スピーカーのデモに比べて難しいとおもいます。アンプはいかにスピーカーを鳴らすかがポイントとなりますが、鳴らしこまれたスピーカーの個性も音に現れます。そのスピーカーの音の傾向がわかっていないとアンプの評価は難しいのではないでしょうか?

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角田先生の曲間の解説ですが、とにかくこのアンプはまじめに作られていて、コストパフォーマンスが高い事を強調していました。設計者と社長との音とコストに関するしのぎあいに関する内情を暴露し、CPの高さの裏付けとしていました。さすがに講演慣れしているので、トークは安心して聞くことができましたが、立場上ラックス押しをしなければならない事と、公平な評価をしなければならない事が、メーカー関係者による進行と大きく異なる点だと感じました。個人的には、思い入れのあるメーカー関係者の話の方が聞き応えがあるようにおもいました。講演の最後で、「オーディオ趣味の方はのめり込み過ぎて周りとの関係を軽視するきらいがあるので、たまには他の事もやりましょう!」とアドバイスしていました。心にとめておきたいとおもいます。

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アキュフェーズ株式会社

最後は、日本のトランジスタアンプメーカーの王者(と私がおもっている)アキュフェーズ株式会社です。デモは再生中心で進行は会社関係者が行っていました。パワーアンプ中心の展示となっており、正面にA-70とM-6200が設置され、スピーカーはB&W, YAMAHA, TADが選択可能となっていました。王者の展示とでもいいましょうか、お客様の要望でその場で使用機器を切り替えて再生デモを行っていました。私が聴いていたときは、M-6200とTADの組み合わせで、お客様が持参したSACDの曲を演奏していました。機器の選択状態は、正面のディスプレイに表示されます。

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M-6200はAB級のモノラルパワーアンプで、150W(8Ω)、1200W(1Ω)と先ほど聴いてきたラックスマンのM-900uのモノラル版とも言えるような構成です。逆にラックスマンがこのアンプの構成のままステレオ化したと言うべきでしょうか。但し終段の構成はモノラルアンプで16パラレルプッシュプルとなっており、チャンネルあたりM-900uの2倍のトランジスタが終段で使われています。価格は90万円です。電源のケミコンは48,000uFx2個と唱われており、先日メンテナンスした私のアンプの47,000uFx2は贅沢な部品選定と改めて感じました。

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私が参加したコマのデモで選択されていたスピーカーはTAD-E1でした。価格は1本約110万円です。このスピーカーのトゥイーターには、蒸着法で加工したベリリウム振動板が使われていることが本記事を書いていてわかりました。ベリリウムを使った製造工程は現在労働法の制約があると考えられますが、TADの音への拘りからその制約を乗り越えて実現していると考えられます。トゥイーターとスコーカーは同軸構成で3way 4スピーカーです。インピーダンスは、めずらしく4Ωとなっています。高級アンプと組み合わせて大電力を入力する為の仕様と思われます。デモの音ですが、国内メーカートップクラスのアンプとスピーカーの組み合わせでもあり艶もあり美しい音でした。他メーカーが自社のデモでアキュフェーズのアンプを選択している事が理解できます。TADのスピーカーですが、デモ時点でトゥイーターがベリリウム振動板ということが解っていたらそれなりの聴き方していたとおもいますが、それができずに残念に思ってます。ラックスマンのデモの音よりもこちらの方が私にはしっくりきましたが、ベリリウム振動板が採用されたスピーカーが選択されていたことに一因があるかもしれません。

まとめ

TADブースのデモも聴いてみたかったのですが、入場が整理券制の為に断念しました。音をじっくり聴かせるための仕組みだとおもいますので仕方ありません。入場無料でこれだけ楽しめましたのでオーディオに興味がある方にとっては良いイベントだったとおもいます。実はこの翌週(10月9日、10日)は真空管オーディオフェアが開催されますが、これも見に行ってしまいそうです。おもしろいものがあればまた紹介したいとおもいます。

 

おわり

 

2016インターナショナルオーディオショウ(番外編1)

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番外編1

次はシンプルなシングルアンプの製作を検討していますが、充電期間を設けることもかねて、9/30~10/2の3日間国際フォーラムで開催された2016インターナショナルオーディオショウの見学報告をします。

東京インターナショナルオーディオショウ

1983年に輸入オーディオショウとして初回開催され、その後1997年に開催場所を東京国際フォーラムに移して日本のオーディオブランドも加わり東京インターナショナルオーディオショウに改定されて開催されているとのことです。昔は日本のオーディオブランドの展示の担い手としてエレクトロニクスショーがありましたが、2000年に家電だけでは集客が見込めなくなったことからCOM JAPANと統合されて現在CEATEC JAPANとして開催されています。現在、CEATEC JAPANには大手家電メーカーの出展がされておらず、オーディオ製品の展示は東京インターナショナルオーディオショウが担っている状況です。その昔、私もオーディオメーカーの一員としてエレクトロニクスショーのメーカー展示を行ったことがありますが、準備および開催当日を含めて学園祭のような雰囲気で、まさに年に1度のお祭りの様相でしたが、1点大きな違いとしてそれなりの予算があり、そこからコンパニオンのお姉さま方も雇われたりと、大変きらびやかな思い出になっています。

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展示

開催案内からフロアマップを転載しました。各部屋ともに50名程度のお客様が入ると満杯の状態となります。どの部屋も入るのがやっとの状態でしたが、まずは入室して気長に説明やデモを聴きます。そのうちに人の入れ替わりによって徐々に良いポジションに移動できました。その為各ブース30分以上は滞在し、最長FOSTEXのブースには1時間15分くらいいました。ということで、私が気になった5社を回るのがやっとでしたが、それらのイベントの状況を感想を含めて2回に分けて紹介します。初回はスピーカーのデモを行っていた2社です。

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ヤマハミュージックジャパン

今年(2016年)の7月に発売されたNS-5000のデモが行われていました。NS-1000Mを意識したスピーカーということで、発売情報が出たときから気になっていた製品です。一番の特長はZYLONという高強度繊維糸100%で作られた振動板をもつユニット群です。各ユニットの口径は3cm, 8cm, 30cmということで、1000Mと似ていますが、唯一スコーカー径が1000Mの8.8cmより小さくなっています。ZYLONですが、入手したカタログによると「ベリリウムに匹敵する音速と情報量を有しながら固有の音色的キャラクターを持たない」と説明されていますが、この表現からはベリリウムを使いたいが使えないジレンマを感じます。エンクロージャーはどちらもブックシェルフタイプですが、1000Mが密閉型なのに対しバスレフ型が採用されています。なぜかカタログ中にはバスレフポートに関する記述がなく、仕様一覧にのみ記載されている状態でした。不思議におもいネットで調べたところ、一般的なバスレフ効果を狙ったものではなく、ウーハーの振動による背圧を逃がすために設置されたとの説明がありました。塗装は6面ともにグランドピアノ同等の黒鏡面ピアノフィニッシュが採用されて見た目は美しいです。1000Mの背面は他の5面とは異なり塗装は手抜きとなっています。価格はというと、1本75万円とのことで、私が1000Mを購入した価格10.8万円に対して数段高価なものとなっています。

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説明が長くなりましたが、デモは女性のコンパニオン+操作員による、再生中心のものとなっていました。一般的にデモ会場の音響条件は良くないため聴いた音の印象は考慮する必要があります。中高域は落ち着いた音の印象でした。低域は部屋の処理が悪く、ブーミーぎみとなっていて思慮のないお客様にはバスレフの弊害のように聞こえてしまわないか心配で、スピーカーがかわいそうに思いました。音量の割にはウーファーの振動板のストロークが大きく、背圧を逃がすバスレフポートによるものと思われます。写真のパネルにもあるとおり、アンプはアキュフェーズが使用されていましたが、後で訪れたアキュフェーズのデモ会場にはNS-5000も設置されていました。(デモのメインはTADのスピーカー)デモの印象ですが、今回私がみたデモ5社の中で一番残念に感じました。お金をかけてやるからには展示のコンセプトを実現させるだけの準備をしないと逆効果となってしまいもったいないです。たとえば今回の場合であれば、「部屋の環境を整える」、「ブーミーが目立たないソースを選択する」、「事前に部屋の調整状況説明した上で聴いてもらう」、「説明中心のイベントにする」等やりかたはいろいろあったのではとおもいました。

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フォステクスカンパニー

毎時、0分から40分間デモが行われました。私は1.5コマ滞在しました。最初のコマは途中からでしたが、スピーカーシステム(既製品)のもので、次のコマがスピーカーユニットのものでした。説明および操作は会社関係者が行っており、再生中心のデモですが、合間合間に技術説明や営業トークが入り好感がもてる内容でした。入室した時は、GX100Basicのデモが行われていました。10cmウーハー+2cmツイーターの2Wayバスレフ方式の小型スピーカーです。見た目とは異なり悠々と鳴ります。低音もフラストレーションをあまり感じません。ツイーターはマグネシウムリッジドーム、ウーハーはアルミニウム合金の振動板が使用されています。さすがに能率は低く82dBです。そこは組あわせられて使用されていたアキュフェーズのアンプがカバーしていました。数曲聴いた後で、アンプ内蔵のアクティブサブウーハーCW200Bを組み合わせての試聴です。(写真下に半分だけ写っているもの)パイプオルガン曲をまずは無しで聴き、その後追加して違いを楽しませてもらいました。最後に同社フラグシップのG2000a(写真の右奥)で同じ曲を聴いてこのコマは終了となりました。普段なかなかできない比較試聴を短時間でできたことと、説明者の製品の良さを伝えたい気持ちがこもったトークがなかなか良かったです。部屋のセッティングも良かったとおもいます。

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次はスピーカーユニット紹介のコマです。最初に発売となったばかりのFE83-Solのデモです。SolのシリーズはFE103から始まり、数量限定で発売されることが1つの特徴ですが、FE83-Solも限定3000台とのことでした。またSol共通の特長として説明があったのは、2層抄紙ESコーンが採用され、その構造は表層と基層の配合するパルプの材質を変えている事と、磁気回路のポールピースに銅キャップをかぶせて電流歪を低減させて中高域の明瞭間を上げている点でした。

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デモは、違いを聴いてもらうために最初は標準のFE83En+バスレフボックスで(写真参照)、つづけてFE83-Sol+バスレフボックスのデモが行われました。音の厚みの違いが聴きとれました。デモのソースはオーストラリアのアカペラグループのCDで、このユニットのボーカルの再生はフルレンジの定位の良さも相まって、すごく良かったです。長所を活かす考え抜かれた選曲だと感じました。

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次に発売発表されていない(発表は近々)専用のバックロードホーンのボックスに入れての試聴(写真参照)です。最初の曲はマドンナの曲でバックロードホーンとはいえさすがに低音が寂しい感じを受けましたが、実力をありのまま聴かせる姿勢は好感が持てました。尚、このFE83-Sol用のバックロードエンクロージャーは今月(10月)発売予定とのことでした。

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最後はFE108-Solx2個+BK1082バックロードホーンボックス+T90Aホーンスーパーツイーターの組み合わせのデモです。FE108-SolはFE103-Solをベースにバックロード用に進化させたユニットとの事です。m0が2.5gから2.9gに上がり、それに伴いf0が85Hzから70Hzに下がっています。このユニットを2個使用し、T90Aを上に載せて試聴です。大型ブックシェルフに匹敵するパフォーマンスの確認ができました。但しお値段は、FE108-Solが1個19,000円、エンクロージャーボックスが1台113,000円、スーパーツイターが1個23,000円と高級ブックシェルフスピーカーに勝るお値段(購入当時のNS-1000Mよりも遙かに高い)となっています。デモ自体は決してなめらかな進行ではありませんでしたが、お客様へ商品の長所を伝えたい気持ちがわかり満足できる内容でした。

次回はアンプ3社の展示・デモについて紹介します。

つづく(番外編2)