設計編1
前回の記事でまとめた設計構想に沿って設計を進めていきます。
基本回路
入力が12AX7の差動構成、終段がEL34シングルのパラレル構成で基本回路を作成します。初号機(S1503)のEL34pp機と真空管の構成は全く同じですが、終段の回路が異なります。こんな構成にするくらいならば、プッシュプルでいいのではとのつっこみが入りそうですが、今回の目的はプッシュプル機との比較なので、真空管の構成が同じ事は好都合です。終段のVgのバイアス回路はラフに描いていますので、設計の際に見直します。
終段のロードライン
初号機(S1503)のEL34pp設計時は、初めてということもあり、キーパーツの選択をしない状態で設計を進めて、後でパーツとの整合性がとれずに再設計という事を何回も繰り返してしまいました。今回はS1503との比較が目的なので、部品はできる限り共通で設計を進めます。始めに終段のロードラインを引きますが、そのためには出力トランスの選定が必要です。S1503で採用したソフトンのトランスが良かったので、同社の同クラスのシングル用出力トランスRW-20を選定しました。
■ソフトンRW-20仕様
・出力容量=20W
・1次インピーダンス=2.7K, 5KΩ
・2次インピーダンス=6Ω
・推奨1次DC電流=60mA以下(5kΩ)、80mA以下(2.7kΩ)
・価格=10,800円
(2016.10.26 ロードライン設計の誤りに気づき設計編4で見直します)
私のスピーカーは、1000Mなのでインピーダンスは8Ωです。その場合の出力トランスの1次インピーダンスは、3.6kΩと6.7kΩとなります。まずは適当なバイアス値で2種類のロードラインを引いてみました。6.7kΩの場合は、出力がかせぎずらい上に、最大振幅時に真空管の定格電圧値を越えてしまうため、3.6kΩで検討を進めます。S1503の1次インピーダンスは3.4kΩだったので、ラインの傾きはほぼ同じになり設定値が参考となります。シングルは、この特性がそのままアンプの特性となるため、できる限り特性の良い部分を使いたいと考えて、S1503機のバイアスに比べて、Ipを増やし、逆にVpを下げる方向で検討を行いました。Ip=40mA(S1503は35mA)、Vp=220V(S1503は250V)を仮決定値として他検討を進めますが、その前にこの設定値とした場合の最大出力他必要なパラメーターを計算しておきます。
交流ピーク出力電流は、ロードラインから真空管1本あたり30mAとなり、2本で倍の60mAで、その時の電流の実効値Imaxは以下となります。
Imax = 60/1.41 = 42.6mA
この場合の最大出力Pmaxは以下となります。
Pmax = 3600 x (0.0426)^2 = 6.5W
無信号時の真空管消費電力Pidleは以下となります。S1503とほぼ同じ消費電力なので前回同様の放熱設計で問題ありません。
Pidel = 220 x 0.04 = 8.8W (S1503は8.75W)
初段のロードライン
終段のロードラインから、初段に要求される出力は、30Vppでロードライン上では狭い範囲となります。さらに初段は差動構成のため、直線性に関して有利に働きます。このため、設計はシビアに行わずにS1503の回路設計を踏襲して、電源電圧のみを終段のロードラインからの要求に合わせることにしました。設定値は、B1=215V, Ip=0.5mA, Vp=140Vとしました。ここまで一切触れてきませんでしたが、これらロードラインの設計は、S1503電源をそのまま使うべくトランスのタップ電圧とにらめっこしながら決めています。次回は電源から具体的な回路設計を行っていきます。
つづく(設計編2)