High-ch用アンプ製作(設計編1)

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設計編1

構想編で構想した方針に沿って設計を進めてみます。

終段設計

終段には6N6PをA級プッシュプルで使用します。一旦出力は1W/8Ωを仕様とします。真空管アンプの設計経験が少ないのではたして構想どおりの設計が成立するか自信がありません。出力トランスには、真空管ヘッドフォンアンプで使用した春日無線のKA-X-54Pを使用します。出力タップとして16Ω、8Ω、4Ωをもっているため、下図のとおりバランス出力をさせたいとおもいます。

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図中には記載が抜けていますが、二次巻き線の黄色配線は4Ωタップです。KA-X-54Pシリーズには下記品種があります。

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巻き数比のみ自前で計算した値です。KA-8-54P2のみ周波数特性が拾えませんでした。KA-8-54P2は、KA-8-54Pの改良版で特性改善の為に、巻き線の線径を細くして巻き数を増やしているとの説明がありました。この表を見ると巻き数比を上げる(=巻き数を増やす)程、高域特性が下がっている為、今回の用途では、KA-3.5-54PまたはKA-5-54Pを選択したいと思います。初めにKA-5-54Pを16Ω出力タップ前提でロードラインを引いてみます。8Ω負荷を16Ωタップに接続する為、終段の真空管から見た負荷抵抗値は以下となります。

負荷抵抗値 = 5K/2/2 = 1.25KΩ

出力1Wを得る為のA級動作バイアス電流値は下式で算出できます。

バイアス電流値 = 1 / SQR(2500) x 1.41 = 28.2mA(SQRはルートを示す)

終段の電源電圧は、ヘッドフォンアンプの電源の流用前提として166Vとしました。166V&28.2mAの動作点から、負荷抵抗1.25kΩでロードラインを引くと以下となります。

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図中の一点鎖線が6N6Pの許容プレート損失を示しますが、電流が増える方向ですぐに許容値を越えてしまいました。16Ωタップの使用(二次巻線のバランス接続)をあきらめて8Ωタップ接続で設計しなおしてみます。各パラメータは上記の計算から以下のとおりとなります。

負荷抵抗値=2.5kΩ、バイアス電流値=20mA

このパラメータを使って再度ロードラインを引いてみました。

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ぎりぎり許容プレート損失以下に入っていますが、見るからに直線性の悪そうな特性です。次はKA-3.5-54Pを4Ωタップ接続前提で検討してみます。各パラメータは以下のとおりです。

負荷抵抗値=3.5kΩ、バイアス電流値=17mA

この時のロードラインは以下となります。

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許容プレート損失にはだいぶ余裕がとれましたが、直線性はあいかわらず良さそうには見えません。続いて、KA-5-54Pを4Ωタップ接続前提としてロードラインを引きます。各パラメータは以下のとおりです。

負荷抵抗値=5kΩ、バイアス電流値=14mA

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だいぶいい感じになってきましたが、プレート損失に余裕が取れてきたので、出力を2W前提で再度引き直してみます。

負荷抵抗値=5kΩ、バイアス電流値=20mA

この時のロードラインは以下となります。

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さらにいい感じになりました。一旦この条件で設計を進めます。

終段入力容量

6N6Pの入力容量算出に必要なパラメータは以下のとおりです。

Cgk=4.4pF, Cgp=3.5pF, μ=22, rp=1.8kΩ

初めにミラー容量算出に必要な裸利得を計算します。負荷抵抗値=5kΩ時の裸利得は以下となります。

裸利得 = 22 x 5k / (1.8K + 5K) = 16.2倍

この結果から終段の入力容量値は以下の通り計算できます。

入力容量値 = 4.4 + (16.2 + 1) x 3.5 = 64.6pF

ほぼ、EL34ppアンプと同じ容量値となっていますが、トランスまで含めた裸利得が上がっていれば、その分初段の利得を下げる事ができ、初段の出力インピーダンスを下げられる余地が生まれます。

終段と出力トランスの裸利得

出力トランスの減衰量は巻き数比で決まります。各段の裸利得を現行のEL34ppアンプと比較してみました。。現行アンプの各段のゲインは記事「EL34ppパワーアンプ製作2設計編1」(2019-11-29)で計算した値を記載しています。

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アンプのトータルゲインを合わせると初段のゲインを現行のアンプ比で約6dB下げる事ができ、その分初段の出力インピーダンスを下げられる余地がある事を確認できました。次回は初段の設計を行い、終段入力部のカットオフ周波数を算出してみます。

 

つづく(設計編2)