High-ch用アンプ製作(設計編3)

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設計編3

前回までで基本設計が終わったので回路図を作成します。

設計おさらい

Hi-ch用にアンプの高域特性を改善させる為に初段の真空管を12AX7からrpの小さな12AY7に変更します。初段のゲインが下がるのを補うために終段の真空管をヘッドフォンアンプで使用した6N6Pに変更します。回路は特段の工夫をせずに真空管HPアンプのものを流用します。(下記)今回は真空管の選定だけでどこまで性能改善できるかがポイントです。

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電源も真空管選定に合わせて真空管ヘッドフォンアンプのものを流用します。

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設計編2までに決めた設計方針を一旦整理します。

・初段は12AY7を差動構成で使用

・初段のバイアス電流は1回路あたり1mAで初段トータル2mA

・初段のDC負荷抵抗は100KΩ

・終段入力部ののIpバイアス調整用抵抗は400KΩとする

・上記の結果、初段のAC負荷抵抗は約80KΩ

・終段は6N6Pをプッシュプルで使用

・A級動作2W/8Ω出力とする

・出力トランスは春日無線のKA-5-54Pの4Ωタップを使ってバランス出力する

・上記の設計でカットオフ周波数140KHz、裸利得23dB以上を目指す

この目標特性を、EL34ppA級アンプの周波数特性上に追記してみました。はたして目論見どおりの性能が実現できるでしょうか?

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アンプ回路設計

上記の方針を真空管HPアンプ回路図に反映させてHi-ch用の回路図を作成しました。

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出力は設計編1で検討したとおり、2次巻き線を使ったバランス出力をあきらめてEL34ppアンプで採用している中点接地方式としています。大きく変更した部分は、終段のIpバランス調整用の入力バイアス回路です。終段の定電流回路を余裕を持って動作させるために、カソード電位を可能な限り下げないように、グリッドバイアス調整範囲を決めました。この結果、バイアス調整範囲は0V~-0.24Vとなり、ボリュームセンター時のグリッド電位は-0.17Vと押さえる事ができました。この変更によりカソード電位は5.5Vとする事ができそうです。参考として終段のロードラインを再掲載します。

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終段の定電流用トランジスタへの印加電圧を確保するために、真空管HPアンプと同様に電流源の基準電圧源としてLEDの順電圧を使用します。HPアンプ製作時の実績から基準電圧は1.8Vとしています。初段の定電流源はCRD1mA品を並列接続ます。2mA品もメーカーラインナップにはありますが、秋月電子で取り扱いがない事と、並列接続しても特性上の悪化は少なさそうなので採用しました。段間のカップリングコンデンサですが、海神無線にCross Capの0.47uF品の在庫が復活したため、採用方針としました。あとは回路番号を振りなおして完成です。

電源回路

真空管HPアンプ用の電源回路をHi-chアンプ用に見直しました。見直し結果は以下のとおりです。

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基本はそのまま流用です。変更点は電源トランスを東栄変成器のものから春日無線のKmb100F2に変更しました。真空管HPアンプ電源で採用したPT-22Nとの比較表を再掲載します。

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今回採用のトランスの方が、電流容量が大きいにもかかわらず価格が安いです。はたしてこの判断は間違っていた事にならなければいいとおもいますが?ヒーター回路はそのまま置き換えが可能か、比較表を作成しました。

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表の結果から、回路図は初段の真空管名称のみ変更しました。細かな変更ですが、C電源用の三端子レギュレータ出力部の電解コンデンサを削除しました。安定化電源の検討の中で、出力部の電解コンデンサが電源の高域特性を悪化させる事を確認した事から削除しました。後は回路番号を振りなおして完成です。次回は部品表を作成し、部品発注を行い、シャーシの設計に着手します。

 

つづく(設計編4)