無帰還広帯域真空管アンプ(構想編1)

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構想編1

期待通りの性能を実現する設計できるかわかりませんが、無帰還広帯域真空管アンプの構想をします。

無帰還アンプ

アンプを簡単に広帯域化するには、アンプの裸利得を稼ぎ、帰還をかける事で広帯域化できます。私が最初に製作したEL34ppA級パワーアンプも当初は帰還をかけていました。完成後、しばらくしてせっかくの真空管アンプなので無帰還の音を聴いてみたくて、帰還を試しに外してみました。帰還をかけていた時の音は緻密な感じがしましたが、帰還を外すと薄いベールをつき破ったかのようにはつらつと音楽が鳴りました。それ以降は一部を除き差動&プッシュプル構成のA級無帰還真空管アンプをつくり続けています。

現行High-ch用アンプ

初代のHgih-ch用アンプは初段12AX7の差動方式で、終段はEL34のプッシュプル構成でした。回路図は以下のとおりです。

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このアンプを広帯域化するために真空管を選定し直して製作したものが現行のHigh-ch用アンプです。初段は12AY7に、終段を6N6Pに変更しています。回路図は以下のとおりです。

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両アンプの周波数特性は以下のとおりです。

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現行アンプが完成し、システムに組み込んで音出しした時に予想以上の変化に驚きました。この驚きを再びという事で改めて無帰還広帯域真空管アンプの設計検討を行います。

現行アンプ周波数特性

現行アンプの周波数特性を決めているパラメータは、初段の出力インピーダンスと終段の入力部容量によるポールが支配的でした。簡単にモデル化してみます。

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モデルの初段の出力インピーダンスは、初段の負荷抵抗RLと初段真空管のrpと終段の入力抵抗の並列接続Roと考えられます。前提条件は、初段は差動構成としている事で真空管のカソードが仮想接地されているとしています。ポールを決定する容量は、終段の入力容量Cgと終段のミラー容量Cgp x (A - 1)です。Cgpは終段のグリッドとプレート間の容量で、このCgpにかかる電圧は終段の入力電圧のA-1倍となるため、チャージ電流もA-1倍になります。この結果初段出力から見た容量はCgp x (A-1)となります。ポールを決める容量Ciは2つのコンデンサの並列となるため、Cg + Cgp x (A-1)となります。従って、この部分のカットオフ周波数は以下のとおりとなります。

fc = 1/(2π x Ci x Ro)

Ci = Cg + Cgp x (A-1)

Ro = RL || rp || Rin (||は並列接続を意味する)

現行のHigh-ch用アンプ(本記事のアイキャッチ写真)は真空管の選定し直しによって、Cg、Cgpとrpを小さくして初代High-ch用アンプに比べてfcを高くしました。今回は、初段をSRPP(Shunt Regulated Push Pull)構成として、等価RLをさらに下げて広帯域化ができるか検討をしてみます。

SRPP回路

SRPP回路は、負荷抵抗RLを真空管で置き換えた構成です。

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効果としては、RLから置き換えた真空管の両端間のインピーダンスをRLに比べて下げる事ができ、その結果初段の出力インピーダンスも下げる事ができます。引き替えに必要な真空管が増え、電源電圧の見直しも必要となります。次回はSRPP回路による具体的な効果を推定し、効果が期待できる結果となったら、回路設計を進めていきます。

 

つづく(構想編2)