無帰還広帯域真空管アンプ(製作編35)

f:id:torusanada98:20210525075509j:plain

製作編35

引き続きL-ch初段がバランス動作をしない原因の検討を行います。

初心に立ち戻り

前回の検討でL-chのCold側のゲインが小さい原因は、初段の差動アンプが正しくバランス動作をしていない事に起因する事がわかりました。たいそうなサブタイトルを付けてしまいましたが、一番の疑問点はなぜL-chの初段のみが狙った動作をしないかです。L-ch初段の真空管を新規に購入したものと交換して確認しましたが、状況に変化はありませんでした。この症状が真空管の特性に違いに起因するか、ダイレクトに確認するには、L-chとR-chの真空管を入れ替えてみる事が一番単純で明快な方法です。まずは、初段差動入力用の真空管を入れ替えてみました。入力は従来の確認のとおり200mVppのバランス信号です。

f:id:torusanada98:20210524072651j:plain

f:id:torusanada98:20210524072705j:plain

黄色が入力信号で、青が差動真空管Cold側のVpです。上がL-chで下がR-chですが、症状に全く変化がありませんでした。次に終段の真空管の影響を確認します。交換した初段差動真空管は元に戻して、終段の真空管を左右チャンネルで入れ替えました。

f:id:torusanada98:20210524072731j:plain

f:id:torusanada98:20210524072745j:plain

測定条件は初段差動真空管交換時とかわりません。上がLchで下がR-chです。残念ながら症状は全く変化しませんでした。この状態で念のためR-chのHot側の確認も行いました。

f:id:torusanada98:20210524072808j:plain

R-chはHot側も状態に変化はなく、問題なく動作している事が確認できました。さらにこの状態で初段の等価抵抗動作している真空管を左右チャンネルで入れ替えてみます。結果は以下のとおりです。

f:id:torusanada98:20210524072832j:plain

f:id:torusanada98:20210524072845j:plain

2つの波形は初段差動真空管のVpで黄色がHot、青がColdです。写真上がL-ch下がCold側で症状に変化はありませんでした。ここまで確認して症状に変化がない事から、本現象は真空管の特性のばらつきによるものではなく、他の要因起因と考えざる得ません。

初段SRPP等価抵抗回路確認

改めて初段のSRPP回路の確認を行います。等価回路を描いてみました。

f:id:torusanada98:20210524074356p:plain

計算を簡略化する為に終段の入力抵抗RL=∞とします。

V = rp x Ip + μ x Vg + rk x Ip

Vg = rk x Ip

上記の2つの式から

V = rp x Ip + μ x rk x Ip + rk x Ip

V = Ip x ( rp + μ x rk + rk )

等価抵抗Zは以下のとおりです。

Z = V / Ip = rp + ( μ + 1 ) x rk

ここでμ=40, rp=28k, rk=2kを代入するとZ=108kΩとなります。終段入力側から見た出力インピーダンスは、等価回路からrp = 28kΩとなります。上記の結果を頭に入れて200mVpp入力時のRkの両端電圧をモニタしてみました。

f:id:torusanada98:20210524072952j:plain

f:id:torusanada98:20210524073256j:plain

黄色がSRPP真空管カソード側で青が差動真空管プレート側です。上の波形がHotで下がColdです。この結果を見る限りSRPP等価抵抗回路は正常動作しているように見えます。前回確認した差動アンプのカソード電圧が振れる事によりHot/Coldの実質の入力電圧に差が生じてその結果差動アンプのIpがアンバランス動作をしていると考えられます。本日の結果は前進が全くない事から、泥沼に足を突っ込んでしまっているように思えてきました。次回も検討の続きを行いますが、本件解決できるか自信がなくなってきました。

 

つづく(製作編36)