無帰還広帯域真空管アンプ(構想編6)

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構想編6

前回の記事で設計したSRPP回路は改善量が今一つだったので、回路変更により改善量アップを検討します。

SRPP回路2

カットオフ周波数は、終段のミラー容量の影響を大きく受けるため、初段と終段のゲインバランスを見直してみます。終段のゲインを下げる為に、出力トランスの二次タップの接続を変更して、終段の負荷抵抗を下げます。代わりに初段のゲインを上げる為に初段の真空管を12AX7に変更してみます。プッシュプル用の5kΩの出力トランスを普通に(8Ω端子に8Ω負荷を接続)使用する事により、終段のロードラインの負荷抵抗は2.5kΩとなります。現行アンプよりもロードラインの傾きがきつくなるため、動作領域の直線性が下がりますが、バイアス電流を15mAとしてロードラインを引いてみました。

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この場合のプッシュプル時の出力は以下となります。

Po = (15mA / SQRT(2))^2 x 5k

= 0.57W

次は初段のロードラインを引いてみます。初段負荷の真空管回路はSRPP回路1と同じ(12AY7使用)とします。

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ロードラインは構想編5で引いたものと同じです。初段管は12AX7に変更してゲインアップを図ります。負荷抵抗はSRPP回路1と同様に90kΩなので、ロードラインは以下のとおです。

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上記設計を回路図に反映してみました。

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初段の電源電圧は240Vに上がってしましました。上記のとおり出力トランスの2次巻き線は8Ω端子を使用しています。

SRPP回路2ゲイン計算

上記の初段管のロードラインからrp=70kΩと読みとれるので、初段ゲインに影響する抵抗値をまとめてみました。

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表中にはありませんが、初段の等価負荷抵抗は120kΩ || 390kΩなので約90kΩとなります。従って初段のゲインは以下のとおりです。

初段ゲイン = 100 x 90k / ( 70k + 90k )

      = 56.3(35.0dB)

続いて終段のゲインを計算します。上記の6N6Pのロードラインの動作点における接線の傾きからrpを求めます。

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上図からrp=2kΩとなっているので終段のゲインは以下のとおりとなります。

終段ゲイン = 22 x 1.25k / ( 1.25k + 2k )

      = 8.5(18.5dB)

最後に出力トランスの減衰量を計算します。電圧比は巻き数比に比例します。巻き数比は定格抵抗の平方根で求められます。

出力トランスゲイン = SQRT( 8 / 5k )

          = 0.04(-28.0dB)

上記で計算したゲインをまとめてみました。

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この結果を見ると出力トランスを含めた終段のゲインは変わらずに、初段ゲインが増えた分、トータルゲインも増えています。

初段出力終段入力部fc

SRPP回路2の初段出力と終段入力部で構成される一次フィルタのカットオフを試算してみます。初めにカットオフに関連する容量値をまとめてみます。変化点は終段のゲインが下がった事でミラー容量が小さくなります。

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回路変更の結果カットオフ周波数を決めるCiを53.7pFから42.9pFに小さくする事ができました。初段ゲインを計算するためにまとめた抵抗一覧表からカットオフ周波数を決めるインピーダンスZoは25.8kΩとなっています。この結果からカットオフ周波数fcを計算してみました。

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結果は容量値は下がったものの抵抗値が上がってしまったためfcは逆に下がってしまいました。なかなかうまくいかないものです。次回はさらに回路検討を行ってみます。

 

つづく(構想編7)