構想編2
SRPP回路の特性について考えてみます。
SRPP回路
構想編1で描いたとおり初段の差動アンプをSRPP構成としてアンプの広帯域化を検討してみます。回路は初段の負荷抵抗を真空管回路で置き換えた構成となっています。最初に負荷抵抗を置き換えた真空管回路を見てみます。
図は初段の負荷抵抗RLを置き換えた真空管回路とその等価回路です。まずは出力電流Io=0(次段の入力インピーダンス無限大)としてI/V特性を考えてみます。真空管を流れる電流をIpとすると真空管回路の両端電圧Vlは以下のとおりとなります。
Vl = Ip x Rk + μ x Vg + Ip x rp
= Ip x Rk + μ x (Ip x Rk) + Ip x rp
この回路の等価抵抗ZlはVl / Ipなので、
Zl = Rk + μ x Rk + rp
= Rk x (1 + μ) + rp
となります。rpが小さければ等価負荷抵抗Zlは約Rkの約μ倍となります。この時の出力インピーダンスを考えてみます。出力インピーダンスZoはΔVl / ΔIoです。下側の真空管でIpは一定と仮定して等価回路を眺めると、Zoはrpと考えられます。以上を整理すると、μの大きな真空管を選び、Rkを適当な値とすると、等価負荷抵抗Zlを大きくとる事ができ、初段のゲインを上げる事ができます。尚このときの後段から見た初段の負荷インピーダンスはrpとなると考えられます。
SRPP回路特性
真空管を12AY7としてSRPP回路の特性を考えてみます。わかりやすくするためにRk=2kΩとしてみます。
動作点を仮にIp=1mAとするとRk=2kΩなので、Ip=1mAとVg=-2Vの交点が動作点となり、その時のVpは108Vになります。Rk=2kΩを前提にIpとVgのポイントをさらにマーキングします。
Ip=0.5mA Vg=-1V
Ip=1.5mA Vg=-3V
この3点を結ぶとほぼ直線となります。
この図から上記3点の真空管にかかる電圧Vpを読みとります。
Ip=0.5mA Vp=45V
Ip=1.0mA Vp=108V
Ip=1.5mA Vp=165V
上記の3点からΔIpとΔVpを計算します。
ΔIp=0.5mA ΔVp=63
ΔIp=0.5mA ΔVp=57
上記の2セットのパラメータから等価インピーダンスを計算すると以下となりました。(電圧値にRk印加電圧も加算する必要がありますが、小さいので無視しています)
Zl1=126kΩ
Zl2=114kΩ
上記からこの回路の等価インピーダンスは約120kΩと考えられます。
抵抗に比べて非直線な特性ですが、差動方式でどこまで打ち消す事ができるか気になります。動作点におけるrpですが、動作点Vg=-2V, Ip=1mAのVp-Ip曲線の傾きと考える事ができますので、おおざっぱに接線を引いてみました。直性の傾きから動作点におけるrpは38kΩと読みとれました。上記の結果を整理すると以下となります。
・本回路の等価インピーダンスZlは約120kΩ
・本回路の出力インピーダンスZoは約38kΩ
いくつか仮定を設定している為、実際の状況と異なるかもしれませんが、概ねこんな感じかとおもいます。この結果初段のゲインを上げるために等価インピーダンスを大きくとっても、初段の出力インピーダンスはその約1/3とする事ができ、初段出力部と終段入力部で構成されるLPFのカットオフ周波数を高くする事ができると言えます。次回はSRPP方式の初段用差動アンプを設計してみます。
つづく(構想編3)