バランス変換ボリューム2(まとめ編)

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まとめ編

バランス変換ボリュームの改造が完了したので、音を聴いてみます。

音出し

最終改造前に、製作編8で紹介した現行電源+ディスクリートアンプの組み合わせの状態で改めて音を聴きました。その時の音の確認と同様に、ソースはCDで、USB DACのアンバランス出力を使いました。

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製作編8でオリジナルと上記状態の音の比較を行いましたが、それから1週間が経過しています。その間にオリジナル状態の音の印象が薄れ、通常使用状態(フルバランス)の音の記憶が比較元に変わってしまったためか、この状態の音の印象が変わりました。一言で表現すると、まとまった感じの音で、こちらの方が高級コンポの音のように感じました。続いて同日中に最終改造を終えて中間改造状態の音との比較を行いました。

電源の違いによる音

最終改造後の音の印象は以下のとおりです。尚、比較元は上記の中間改造状態です。

・芯のある音
・量感ある低音
・重低音まで伸びている
・華やかな高音

その後、一旦フルバランス状態に戻して比較元をバランス変換ボリューム2として音の比較をしました。下記はフルバランス状態の音の印象です。

・全帯域で素直な音
・低音の量感がやや後退する
・高音の華やかさがやや後退
・音の印象の差は小さい

このよう結果となった事について考えてみました。DACによる反転信号の生成は今まで特性面の検証を行った事はありませんが、常識的に考えると、デジタル信号の遅延やDACの特性差による、Hot/Cold間の波形差は上限周波数20KHz程度の範囲では考えにくいとおもいます。一方、バランス変換ボリューム2を使用した場合は、Hot/Cold間のわずかな信号間の遅延はあるものの、ソースはまったく同一波形(アナログ信号)です。両者の違いの検証方法があれば試してみたいとおもいますが、良い方法がおもいつきません。バランス変換ボリューム2の高域の華やかさは、Hot/Cold信号間の遅延起因からくるものなのでしょうか?低音の量感がバランス変換ボリュームの方が勝る点は、基準電源用のツェナーダイオードに抱かせている電解コンデンサMUSE KZ品に変更したことによる効果かもしれません。

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それでは再度バランス変換ボリューム2に戻していろんな楽曲を聴いてみます。

USB DACアンバランス出力の音

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風の「冬京」のベースの量感は、バランスボリュームに勝っています。惑星では、従来のバランス変換ボリュームでは表現が難しかった奥行き感を感じ、弦楽の響きも美しいです。ケニードリューのピアノは華やかに鳴ってます。「夢見る事を過ぎても」は八神純子のハイトーンも華やかに聴かせます。ベースの量感も印象的でした。

ST-S333ESXの音

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最後に今回の改造の発端となった、チューナーST-S333ESXでFM放送を聴いてみます。私の学生時代とは違い、トーク主体の番組が多く楽曲の音の評価がやりにくいです。好みの楽曲が流れている放送を探し、切り替えて聴いてみました。どの局も100Hzあたりをブースとしているような鳴り方で、小音量で聴く際にはバランス良く聴こえます。流し聴きして、好みの楽曲に巡り会うにはいいですが、学生時代のようにエアチェックしてそれをソースにするまでの事はないとの印象でした。

まとめ

私のシステムはバランス電送・バランス駆動が基本ですが、大半の機器はアンバランス出力しかもたないため、接続の際には必ずバランス変換ボリュームが必要となります。従来は間に合わせと言われても仕方がない状態でしたが、今回の改造で納得できる状態とすることができました。今後はこれを使っていろんなソースを試したいとおもいます。

 

おわり(バランス変換ボリューム2)

 

バランス変換ボリューム2(製作編10)

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製作編10

電源基板の部品実装が完了しましたので、電源基板とトランスを載せ替えます。

バランス変換ボリュームの状態

製作編8で、バランス変換アンプ基板の載せ替えが完了しています。今回は電源基板を取り外し、その代わりに新たに製作した電源基板とトランスの実装を行います。写真は現状(最終改造前)のシャーシの状態です。

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改造開始

基板固定用のねじ4本を外し、基板をフリーな状態にします。電源基板への配線は、全てハンダ面にハンダ付けされているため、基板を裏返して配線のハンダを外していきます。続いて基板固定用のスタッド4本を取り外します。

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バランス変換アンプ取り付けの際と同様に、未実装の基板をシャーシに置いて、スタッド固定用の穴を現物合わせで位置出しをします。その隣に、トロイダルトランスの現品を置き、固定用の穴の位置出しも行いました。その固定位置は、無理のない範囲で、バランス変換アンプから遠ざけました。位置出しした8カ所にφ=3.2の穴をあけます。基板固定用の穴4カ所に基板固定用のスタッドを取り付けます。スタッドは電源基板を固定していたものを流用しました。バランス変換基板の固定は、部品クリアランスの関係で10mmのスタッドを使用しましたが、電源基板は流用した為15mmとなっています。

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次はトランスを取り付けます。バランスボリュームの製作で使ったものと同じもので、出力として12V/500mA巻き線を2つもっています。共立エレショップで2057円で購入したもので、型番はHDB-12(L)です。1次巻き線として120Vのタップをもっていますが今回は使用しないため、後の流用を考慮して適当な長さに切断してショート防止の保護をして束ねておきます。全ての配線を流用しようとしましたが、電源LEDと片チャンネル分の電源線が基板端子台の位置が従来の接続位置と変わったため届きませんでした。その2カ所のみ新たに線材を準備し、所定の基板端子台に接続して改造完了です。

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通電と調整

初めに電源部の動作を確認します。実動作時の出力電圧は以下のとおりです。

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続いて動作時の出力トランジスタに印加される電圧を確認します。片チャンネル分のトランジスタ印加電圧波形を+電源とー電源ともにモニターしました。

■+電源Tr印加電圧波形

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■ー電源Tr印加電圧波形

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結果をみると+電源側がVdc=4.16V、Vpp=0.40Vでー電源側がVdc=4.80V、Vpp=0.32Vとそれぞれのトランジスタには、動作のために最低限必要な電圧がかかっていることが確認できました。値は+とー電源間で異なっています。この原因は、アンプの初段のカスコード接続の基準電圧を+電源から作っていて、1つのアンプあたり約1.4mA、片チャンネル分でその倍の2.9mA分+電源の方が余計に電流を流している為に、+電源のリップル電圧Vppが大きくなり、逆に平均印加電圧Vdcが小さくなっています。別チャンネルも同様に確認しましたが、同じ結果なので紹介は省略します。電源か変わったことで電源電圧が微妙に変わるため、改めてアンプの出力オフセットの調整を行います。バランス変換アンプのシャーシ実装時と同様の手順で、非反転出力側から調整します。調整の結果は以下のとおりです。

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これでバランス変換ボリューム2の改造がようやっと終わりました。次回は音を聴いてその印象を紹介します。

 

つづく(まとめ編)

 

バランス変換ボリューム2(製作編9)

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製作編9

アンプ基板のシャーシ実装が終わったので今回は電源回路の実装を進めます。

改造の方針

前の記事でも紹介しましたが、現行電源のトランスは非力なため、バランスボリュームの電源で採用したトロイダルトランスに変更します。電源回路もバランスボリュームのものを踏襲し最低限納得できる状態にします。

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電源回路

簡単に設計をおさらいします。回路はバランスボリュームの電源と同じです。今回バランス変換の設計を途中で変更したことでアンプ部はバランス動作となり、理想的には電源電流は一定(直流)となりました。言い換えると負荷変動がないため、出力電圧のフィードバックはかけていません。一部欲がでてしまい、部品を変えたことで前回と同じ実装ができませんでしたが、詳細は組立の中で紹介します。

電源回路実装

入力側から実装を開始します。全波整流、平滑部までは部品を含めてバランスボリューム電源と変わりません。ハンダ面の作業用に2カ所20mmのスペーサーを2段積みとして取り付けました。ハンダ面の作業時は平滑用電解コンデンサと3点支持となり、安定した作業ができます。

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次にツェナーダイオードを使った基準電圧生成部ですが、バイパス用の電解コンデンサとして、ニチコンFGタイプの代わりにニチコンMUSE_KZを購入してしまいました。どちらも470uF/25V品ですが、ハイグレードを唱うKZ品の方がサイズが大きくなっています。

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下表はKZとFG品の仕様比較結果です。

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仕様の中でtanδについて補足します。KZは、0.12(120Hz)、FGは0.14(120Hz)となっています。これは、規定された周波数における無効電流と有効電流の比率を表し、この値が小さい程理想的なコンデンサの動作をします。図はコンデンサの等価回路で、漏れ電流等の損失分を抵抗で表しています。tanδは電流の虚数部と実数部の比で値が小さいほど損失が小さく、理想コンデンサに近い動作となります。

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基準電源バイパス用コンデンサは、+/ーの各電源に1つ必要なため、トータル4個を実装します。基板上に並べてみたところ、なんとか実装できそうなのでこの選択で進めます。バランスボリュームでは、出力のバイパス用のコンデンサとしてあとからMUSE KZ 100uF/25V品を追加しましたが、今回は最初から実装します。悪い癖で、リピートの製作ごとに部品をごてごてと追加してしまいます。シンプルな方がいい場合もある事を、肝に銘じておきたいとおもいます。この変更の結果出力段のトランジスタの向きを変えざる得なくなり、バランスボリュームの電源部品実装と大きく変わってしまいました。

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通電確認

全波整流回路の評価にはなりませんが、トランス出力のピーク電圧に相当するDC電圧(+/-16.8V)をユニバーサル電源を使って入力して動作確認を行います。その際の各部の電圧は以下のとおりです。

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別チャンネルの回路実装

引き続き残りのチャンネルの実装を行います。見栄えを考慮して基板上の配置が均等になるように位置出しをしました。バランスボリューム時の電源実装と比較のために両実装の写真を掲載します。ご覧いただくと、これ以上実装サイズが増える変更はできない状態となったことがわかります。

■バランスボリューム電源実装

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■バランス変換ボリューム2電源実装

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参考としてハンダ面の写真も掲載します。

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残りのチャンネルの通電確認

先のチャンネルと同様にDC電圧を供給して通電確認を行いました。確認結果は以下のとおりです。

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先のチャンネルとほぼ同等の結果となっていました。これで基板の製作が全て完了しました。次回はこの基板とトランスをシャーシへ実装して音の確認を行います。

 

つづく(製作編10)

 

バランス変換ボリューム2(製作編8)

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製作編8

アンプ基板の実装が完了したので、シャーシに実装して現行の電源と組み合わせて音を確認します。

オリジナルのバランス変換ボリューム

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写真のとおり基板は2枚構成で、大きな方が電源、小さな方がバランス変換アンプです。電源は左右完全独立で、基板上に非力な電源トランス(出力60mA)2個を搭載しています。電源の安定化は3端子レギュレータを使った簡単なものですが、今回はこの電源と組み合わせて音を確認します。バランス変換のためにチャンネル当たり3回路のアンプ(オペアンプ2個)を使用しています。写真は完成直後のもので信号線に通常の電線が使われていますが、この後ベルデンの2芯シールド線に変えています。

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写真のとおり、入力段のボルテージフォロワをMUSES8920、バランス変換をMUSES01で構成しています。この変則的なオペアンプの組み合わせは、MUSES01が高くて(@3500円)2個しか買えなかった為です。記事を書いていて思いだしましたが、今年(2017年)最初の製作記事「音楽への女神への挑戦」の改造で、MUSES01が2個余ったので、基板交換前にMUSES89202個を載せ替えて音を聴いてみるべきだったと後悔しています。

基板の搭載

シャーシへ基板実装を行いますが、その前に基板の比較をしておきます。写真のとおりオペアンプを使うと左右分が余裕をもって1枚の基板に実装できますが、ディスクリート化すると、まるまる2枚の基板が必要となります。

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初めに基板端子に接続された配線を外します。この当時は基板端子台を使用していなかったため、全てハンダ付けされています。次にアンプ基板を取り外し、固定用のスペーサー4本も外します。

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未実装の基板をシャーシに置いて、現物合わせでスペーサー取り付け位置に印をつけます。φ=3.2で合計8カ所穴をあけて、そこにスペーサーを取り付けます。取り付けたスペーサーに手前側の基板を取り付けようとしたところ、ボリューム駆動モーターギア部とアンプ初段の定電流源用のエミッタ抵抗とクリアランスが1ミリ程度しかないことに気づきました。正面パネルがリジッドに固定されていれば問題ないのですが、ボトムカバー、トップカバーそれぞれにねじ2本で固定されているため、トップカバーを外してしまうとフロントパネルは容易に傾き、接触してしまいます。スペーサーは元々使用していた15mmの物を流用していましたが、短いものに変えざる得ません。手持ちの在庫を確認したところ、幸い10mmのものがあったためこれを使用し、クリアランスを5mm以上確保することができました。

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電源線を含めて配線は、現行のものを流用しましたが。問題なく実装が完了しました。

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再調整

電源電圧が微妙に変わるため、シャーシ実装後に出力オフセットの再調整を行います。反転出力の出力オフセットは、ボルテージフォロワの出力オフセットの影響を受けるため、最初にボルテージフォロワを調整し、次に反転アンプの調整を行います。再調整結果は以下のとおりです。

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音の比較

改造の発端は、アンバランス出力のチューナーをよりよく再生するために製作着手しましたが、音の比較用のソースには不向きです。今回の比較には、USB DACのアンバランス出力を使い、ソースにはいつも聴いているCDを使用しました。アンプ基板の載せ替えの前に、普段聴いているCDをざっと聴きました。尚、今回の比較にはBTL方式A級DCパワーアンプを使いました。フルバランス時の音と比べた印象は以下のとおりです。

■オリジナルの音の印象
・低音は締まっている。
・重低音の量感が乏しい
・中域の弦楽器に音量感がある
・高域はきらきらしが感じで明るい音色

表現が悪いですが、高級なシステムコンポのようなまとまった明るい音色の印象です。続いて、製作完了したばかりのディスクリート基板に載せ替えて音を聴きます。今回はオリジナルの音と比べた印象です。

ディスクリートアンプの音の印象
・重低音まで素直に伸びている感じ
・アコスティックギターの中音の響きがいい
・明るい音色
・中高域に比べてやや低域が負けている感じ
・音量を上げてもうるさくならない

上記の結果の優劣は、音の好みの点で微妙な部分はありますが、電源をディスクリート化した後の低域、中高域のバランスの改善を期待して聴いてみたいとおもいます。改造の都合上、新電源+オリジナルアンプの組み合わせの音の評価はできませんが、今考えると先に電源を載せ替えた方がオペアンプvsディスクリートアンプの比較としては良かったと記事を書いていて思いました。その代わりに今回の手順では、電源回路の音への影響の確認ができます。

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写真は現時点のシャーシへの実装状態ですが、次回は電源回路の実装を進めます。

 

つづく(製作編9)

 

バランス変換ボリューム2(製作編7)

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製作編7

本題の製作に戻り、もう1チャンネル分の回路実装を進めます。合わせてサブタイトルも元に戻しました。

反転アンプの実装

実装の手順は同じなので、詳細の説明は省略します。先の基板は、バランス出力アンプから改造を行ったため、基板上に不自然な空きエリアができてしまいましたが、新たに実装するこの基板は、気にせず普通に実装を行います。

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いつもの手順どおり、初段実装後に通電確認を行いましたが、その確認結果の紹介は省略します。2段目以降の実装を行い調整を行いました。下記が調整後の各部電圧です。

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動作確認も兼ねて周波数特性の測定を行います。写真は測定時の入出力波形で、正しく反転動作していることが確認できました。

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グラフは周波数特性測定結果ですが、確認を行った範囲ではフラットな特性です。

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ボルテージフォロワの実装

このアンプの実装も、今までどおりということで詳細を省略しようと考えていましたが、予想外に手間をかけてしまいましがので、状況を簡単に紹介します。いつもどおり、初段を実装し通電確認を行ったところまでは問題ありませんでした。

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2段目以降を実装し、調整をおこなったところ、終段の電流がうまく調整できません。各部の電圧を確認するために、テスタのリードを2段目の負荷抵抗部分に当てた際に時々動作モードが変わるようです。ユニバーサル電源の電流値表示が目にとまり、通常40mAとなっているところ、動作モードが変わるタイミングで70mAに跳ね上がる現象を確認しました。このように大きな電流が流れる原因は、終段くらいしか考えられず、通常よりも30mA余計に流れた事になり、その時の消費電力は12V x 40mA = 480mWとなって、終段のトランジスタの絶対定格400mWを少し越えてます。最後の最後で・・・、なかなかうまくいかないものです。ハンダ不良や、部品の実装ミスは見あたらないため、次に原因として考えられるのは発振ですが、出力をオシロスコープでモニタしていましたが、発振波形はみられませんでした。その代わり、動作モードが変化した時にDCが出力されるため、発振起因のラッチアップが疑われます。発振対策は、いままでどおり2段目のトランジスタに22pF + 10pFをつけていますが、手始めに 22pF + 22pFに変更してみました。この対策により、終段の電流が正しく調整できるようになりました。調整結果は以下のとおりです。

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短時間とはいえ、絶対定格を越えた電流を流してしまいましたが、正しく動作しているようなので、特性を確認した上で終段のコンプリメンタリペア交換の判断をしたいとおもいます。

ボルテージフォロワ動作確認

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終段トランジスタへのダメージ有無の判断も含めて周波数特性の測定を行いました。手順は今までと同様です。

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測定の範囲ではフラットな特性を確認しました。発振対策で容量変更した影響はありませんでした。残りのダメージ確認は全回路(バランス変換)の動作確認で行います。

バランス変換動作確認

ボルテージフォロワの出力を反転アンプの入力に接続し、全回路の動作確認を行います。初めに1KHzの矩形波を入力しバランス出力波形を確認しました。

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上段が非反転出力で、下段が反転出力ですが正しく出力されています。つづいて先の基板と同様に反転アンプのディレイ量の確認を行います。入力500KHzに上げて確認を行いました。先の基板と同様に反転出力でリンギングが観測されます。

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掃引速度を上げて反転アンプのディレイ量を確認します。先の基板よりもやや大きく0.056uSの遅れが観測されました。ちなみに、この波形ですが入力を1KHzの矩形波に変えてもまったく同じ波形が観測されます。考えてみればあたりまえですが。

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まとめ

ようやっと2枚の基板が完成しました。写真のとおり、反転アンプの部品実装が異なっていますが、次回現行の電源と組み合わせて比較の第一弾を行いたいとおもいます。

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つづく(製作編8)

 

バランス変換ボリューム2(番外編8)

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番外編8

設計変更により進行が思わしくないことと、回路について何れ触れておきたかったため番外編を入れさせていただきました。

使用回路について

私の手がけたアンプは、基本差動2段構成ですが、その2段目に良く使われるカレントミラー負荷を使っていません。音を聴いて決めたわけではなく、私のトランジスタアンプのバイブル金田明彦先生著作の「最新オーディオDCアンプ」を参考にさせてもらった結果です。この本については、BTL方式A級DCパワーアンプ(構想編)で紹介しましたが、大学生の時に購入して以来手放さずにもっています。簡単にその内容について紹介します。

カレントミラー回路

図は抵抗負荷の差動2段アンプと、2段目の負荷をカレントミラー回路としたものです。

■抵抗負荷の差動2段アンプ

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■カレントミラー負荷の差動2段アンプ

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初めにカレントミラー負荷の動作原理を簡単に説明します。2段目の反転側負荷のベースとコレクタが接続されたトランジスタは、ベースエミッタ間のPN接合と等価となり、ダイオードとして動作します。このダイオードの特性は非反転側のトランジスタのBE間特性と選別により合わせることができます。この等価ダイオードに流れる電流をIc1とすると、カレントミラー回路の反転側のトランジスタのベース電位は、

Ic1 x 220 + 0.6 V となります。

一方、非反転側のカレントミラー回路のトランジスタに流れる電流をIc2とすると、その時のトランジスタのベース電位は、

Ic2 x 220 + 0.6 V となります。

トランジスタのベース電圧は同じなので、

Ic2 = Ic1 となります。

名前のとおり、非反転側の電流が反転側の電流を鏡に写したように同じとなります。この結果、差動アンプの非反転側が、コンプリメンタリの様な動作となり、この時の2段目差動アンプのゲインは、

k x RL x hfe x 2 となります。

ここで各パラメーターは、RL=次段の入力抵抗、hfe=差動アンプTrの直流電流増幅率、k=アンプの使用環境で決まる定数です。RLは抵抗負荷の差動アンプのコレクタに接続される負荷抵抗(回路図では5.6kΩ)よりも大きくなります。また、カレントミラー負荷は電流源のため理想的には内部抵抗は無限大となり無視することができます。さらに、疑似的なコンプリメンタリ動作によってゲインは2倍となるため、カレントミラー負荷採用によりアンプの裸ゲインをより高く設定する事ができます。アンプのオーバーオールのゲインを一定とした場合、より深く負帰還をかけることができ、アンプの周波数特性や歪率特性面で有利となります。これがカレントミラー負荷回路が採用される理由です。

カレントミラー回路を採用しない理由

いいことずくめに思えるこの回路をなぜ使わないかというと、前出の私のバイブルに掲載された差動2段アンプの歪率測定結果を参考とさせてもらったからです。

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抵抗負荷の差動2段アンプに比べてカレントミラー負荷を採用した差動2段アンプの歪率が遙かに悪い結果となっています。理由として説明されているのは、2段目の差動アンプの両トランジスタのバランス動作が崩れることによって、偶数次歪みの発生量がアンバランスとなり、その抑圧量が減ったためと説明されています。悪くなった特性を、より深く負帰還をかけて改善させることは合理的ではありません。

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高校生のときにTRIOのKA-8100というアンプを使っていましたが、カタログにはハイスピード回路採用と唱われており、すばらしい歪率特性と周波数特性が載っていました。カレントミラー回路が使われていたか定かではありませんが深い負帰還で特性改善していたものと思われます。このアンプ、外観のデザインはすばらしく、電源の設計方針も悪くありませんでしたが、音が平面的で生々しさが感じられないつまらないものでした。こんな経験を経て裸ゲインを稼ぎ、深い負帰還をかけるよりも裸の歪み特性の方が大事と考えるようになり、以来カレントミラー回路を使っていません。この結論は、音を聴いてきめたわけではないので、機会があればカレントミラー負荷回路の有無の違いを聴いてみたいとおもいます。次回は本題の製作に戻ります。

 

つづく(妥協編2)

 

バランス変換ボリューム2(妥協編1)

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妥協編1

バランス変換アンプの設計ミスのため、製作の方針を見直します。

妥協編

前回、格好良く「復活編?つづく」としましたが、1週間考えましたが妥協解しかみつからなかったため、サブタイトルを変更しました。

対策案

対策案として以下の2案を検討しました。

案1)反転アンプと非反転アンプのみをディスクリート化し、入力段のボルテージフォロワをオペアンプとしたハイブリッド構成とします。入力段のボルテージフォロワの実装スペースを確保するために、電源を3端子レギュレータ構成として、電源基板空いたスペースにボルテージフォロワを実装します。

案2)入力段のボルテージフォロワと出力段の非反転アンプを兼用し、チャンネル当たり2つのアンプですませます。

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2つの案の特徴と製作の方針

案1)電源が3端子レギュレータ構成、入力段がオペアンプを使ったボルテージフォロワとなり全回路をディスクリート化する事ができません。入力段のボルテージフォロワがアンバランス動作となり、電源に信号電流が流れます。

案2)反転出力と非反転出力信号にディレイが生じます。そのかわりディレイがあるものの回路はバランス構成となり、電源に信号電流が流れません。当初の予定どおり、電源も含めた全回路がディスクリート化できます。

暫く考えた結果、今回はディスクリート化が1つの目的なので、反転アンプのディレイを確認した上で案2で製作を再開することとします。

基板改造

初めに実装済みのバランス変換アンプを反転アンプに改造します。改造する反転アンプの回路は以下のとおりです。

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反転出力側の出力段およびそのバイアス回路、帰還回路を削除します。基板上には不自然な空白エリアができましたが、気にしないこととします。

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部品削除したハンダ面は、ハンダ吸い取り網で余分なハンダを取り除きます。改造基板ですが、見栄えも最低限整えられたとおもいます。

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動作確認

改めて調整をやり直します。手順はボルテージフォロワと同じです。調整結果は以下のとおりです。

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念のため、反転アンプの周波数特性の確認も行いました。測定した範囲では特性はフラットです。

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次に回路全体の動作確認を行います。ボルテージフォロワ出力を反転アンプに入力して、バランス変換動作を確認します。1KHz/1Vppの正弦波を入力して反転・非反転出力をモニタしました。写真のとおり正しくバランス変換されています。

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反転アンプのディレイ

バランス信号合成後の反転アンプのディレイの影響は、下記の2点です。

1)周波数が高くなるに従い位相が遅れる

2)偶数次歪みの抑圧量が下がる

測定は、500KHzの矩形波を入力し、反転アンプの入出力波形の比較を行いました。写真はバランス出力波形です。

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反転アンプ出力にリンギングが観測されますが、測定した範囲(600KHz)よりも高い周波数にピークがあると推定します。信号の変化点を拡大してディレイを確認します。

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写真からは0.039uS程度の遅れが観測できました。この遅れ時間は、25.6MHzに相当し、20KHzに対する位相に換算すると約0.3°となります。この数値の影響度はわかりませんが、この特性を理解した上で音を聴いてみたいとおもいます。リンギングの影響を確認するために、20KHzの矩形波を入力してみました。(キャッチ写真参照)この写真にはリンギングが確認できませんが、掃引速度を上げて観測すると、上記の写真のリンギングが確かに観測できました。この結果から影響は小さいと考えられます。参考としてボルテージフォロワのディレイも測定してみました。誤差かもしれませんが、ディレイ量は反転アンプより小さい事が観測されました。

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次回はもう1チャンネル分の実装を進めます。

 

つづく(妥協編2)