スピーカー周波数特性測定(準備編3)

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準備編3

周波数測定ソフトの動作確認を続けます。

WaveSpectra動作確認

前回、スペクトラムアナライザソフト「WaveSpectra」の動作確認を行いましたが、マイクからの信号がソフト側へ全く入力されませんでした。簡単にできる原因の切り分け方法を考えてみました。PCにミニジャック用のマイク入力が付いていることを思いだし、ここから信号入力をする事でソフト自体の動作確認をしてみる事にしました。しかしミニジャックのマイクがありません。仕方がないのでマイクの代わりにイヤフォンを使ってみることにしました。「設定」を起動し、「再生/録音」Tabから、「録音」のソースをPC内蔵マイク回路にに変更します。

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さっそく確認を行います。イヤフォンに向かってしゃべるたびにグラフが反応します。下記グラフは「peak」モードにして口笛でドミソド(のつもり)を吹いた時の結果です。後で調べてみましたが、ドは1046.5Hzなのでやや低めですが私の音感はそんなにずれていませんでした。

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測定ソフトは正しく動作している事が確認できました。ここでSound Blasterに、いくつかの入力がある事に思い至り、それらの切り替えをまったく考えていない事に気づきました。インストールされたアプリケーションを見ても入力切り替えを行うようなものは見あたりません。しばし考え、そういえばPCの内蔵回路への切り替えを行った方法と同様にできるのでは?と考え、設定画面の「録音」ソースの選択肢を確認してみました。最初の設定時には見落としていましたが、選択肢の中に「マイク(USB Sound Blaster HD)」を見つけました。これを選択すればソフトへの信号入力ができそうです。

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設定を切り替えて、先ほどの確認と同様に口笛を吹いたところ、正しく計測されていることが確認できました。心配していたファントム電源出力とSound Blasterマイク入力間の変換ケーブルも問題なかった事になります。

スイープ音源準備

続いて、スイープ信号の音声データを作成します。測定ソフトと同じ「efu's page」で公開されている「WaveGene」を使って作成します。私がダウンロードしたものはVer1.50です。実行前に一旦解凍します。

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このソフトも事前のソフトインストールが不要で、解凍ファイルの「WG.EXE」のダブルクリックのみで実行します。起動するとHelpファイルの参照方法を説明するダイアログがポップアップするので「OK」を押して閉じます。そうするとHelp画面がポップアップするのでこれも閉じます。下記がWaveGeneのメイン画面です。この画面で生成する音声データファイルの仕様を設定します。

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スピーカー測定に適した信号の仕様に関する見識がないので、「ハウツーIT」の紹介する設定を踏襲します。

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フォーマットは96000s/s, 24bit, 20Hz~40KHzを120秒でスイープさせます。スイープチェックボックス部を右クリックするとスイープのさせ方の設定のプルダウンメニューが表示されます。その周波数行にマウスを移動すると「Log」と「リニア」の選択肢が表示され、デフォルトの「Log」の選択を「リニア」に変更します。

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これで設定は完了です。あとは「waveファイルに出力」ボタンを押すとファイル保存画面がポップアップするので、保存フォルダへ移動し、ファイル名を設定して「保存」ボタンを押すと指定の音声データファイルが生成されます。生成したスイープ音声ファイルをWaveSpectraで再生してみました。図は再生時のスペクトルデータです。200Hz付近で若干のレベル低下がありますが40KHzまでほぼフラットな特性となっています。

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これで測定の準備がほぼ終わりました。次回は準備した環境を使ってスピーカーの周波数測定を行います。

 

つづく(測定編)

スピーカー周波数特性測定(準備編2)

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準備編2

購入したハードウェアのインストールと測定用のソフトウェアの準備を行います。

Sound Blasterインストール

購入したサウンドブラスターには、簡単な取扱説明書が同梱されていて、そこには「接続するだけでも使用できますが、より便利に使用するには付属のドライバーをインストールしてください。」と記載されています。ドライバーはCD-ROMに収められていますが、私のPCには光ディスクドライブが付いていません。過去に仕事で光ディスクドライブ関わった身としては切ない状況です。家族にドライブを借りてインストールを開始します。借りたドライブはI-O DATAブランドのUSB給電のもので、正しく認識されているか確認するためにデバイスマネージャーを起動したところ、懐かしいドライブの型番が表示されました。前職で私の所属チームで初めてレーベルフラッシュ機能(CD盤面にピットで絵を描く機能)を立ち上げたモデルでした。需要が減った上に、ドライブがこんなに長持ちすれば事業として成り立たなくなるのは必然ですね。余談はさておき、インストールを開始します。

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今回の用途で最低限必要となるソフトウェアがよくわからないので、フルインストールを選択しました。インストールが完了しましたが、何か変わるわけでもなく、正しくインストールが完了したのかわかりません。Sound Blaster本体正面のボリュームを回すと、PCの画面にボリュームのポップアップが表示されたので、一旦良しとします。

マイクロフォンの接続

次に、マイク本体とファントム電源のinput間を、ファントム電源付属のケーブルで接続します。ここでこの後の接続ができない事に気づきました。ファントム電源出力は3極のXLRコネクタで、サウンドブラスターは標準プラグ用のジャックとなっています。どうしたものか考えたところ、その昔、実家で買ったカラオケセットのマイクロフォンに付属したケーブルがXLR-標準プラグ変換ケーブルだった事を思いだし探してみました。

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物は見つかりましたが、はたして使っていいものかわかりません。ネット検索をすると変換ケーブル販売サイトはたくさんヒットしましたが、ファントム電源出力と標準マイクジャックの変換に使ってもいいかの説明は見つかりませんでした。ネット上の説明が見つからないということは接続問題なしと解釈し、これも一旦使って良しという事として先に進めます。

周波数特性測定ソフトウェア

機材の発注前にあたりをつけていたものをダウンロードします。「efu's page」で公開されている「WaveSpectra」(フリーウェア)です。このソフトウェアの設定方法や使い方は「ハウツーIT」で詳しく説明されていました。周波数特性測定にはスィープ音源も必要ですが、今回は発振器を使わずに、同様に「efu's page」で公開されている「WaveGene」を使ってスィープ信号の音声データファイルを作成して使用する事にします。それではWaveSpectraの設定を行います。

■WaveSpectra

私がダウンロードした物はv1.51です。圧縮されているのでまずは解凍して適当なフォルダにコピーします。

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先にインストールしたSound BlasterをPCに接続し、マイクをSound Blasterに接続して動作可能な状態とします。WeveSpectraはソフトウェアのインストールは不要で、解凍したファイルの中の「ws.exe」を実行するだけで動作します。起動するとHelpの参照方法を説明するダイアログがポップアップするので「OK」ボタンを押すとHelpが表示されるので閉じます。続いて「描画方法の自動設定」の画面がポップアップするので「スタート」ボタンを押して自動設定を実行します。

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この時にSound Blaster等の音声入力機器のセットアップに問題があると「スタート」ボタンが押せないので再確認をします。実行が完了すると画面は以下の状態となります。

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一旦、「描画方法の自動設定」画面を閉じて他の設定をします。設定はメイン画面の上右手のスパナマークのボタンを押します。

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「設定」画面がポップアップします。

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「再生/録音」tabを選択します。ここで「ドライバ」としてWASAPIを選択しました。これはハウツーITの推奨に従いました。「録音デバイス」としてSound Blasterを選択し、「フォーマット」は測定の上限周波数を40KHzとする為に96000s/sと24bitを選択し「設定」ボタンを押しました。

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メイン画面上右手の「Hz dB」ボタンを押すと測定モードとなります。

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画面下の「peak」ボタンを押して画面左寄り上の「●」(録音)ボタンを押すと測定がスタートします。「peak」ボタンを押すと、測定結果のピーク値が結果グラフ上に残ります。再度押すと、ピーク値の結果がクリアされてリアルタイムの表示のみとなります。「■」(停止)ボタンを押すと計測を終了します。が、全くマイクから音が拾えていません。測定システムのほぼ全てが初物なので原因の切り分けが必要です。簡単に原因の切り分けできないものでしょうか?次回は測定システムの動作確認、waveファイル生成を行います。

 

つづく(準備編3)

スピーカー周波数特性測定(準備編1)

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準備編1

スピーカーの周波数特性測定に必要な機材を準備しましたので紹介します。

ハードウェア準備

■マイクロフォン選定

スピーカーから再生された音を拾うためのマイクロフォンが必ず必要となります。その条件は、測定帯域の周波数特性ができる限りフラットな事です。マイクロフォンの購入は中学生時代以来で、その時に買ったものはSONYの1ポイントステレオ方式のエレクトリックコンデンサーマイクECM-99Aでした。

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それ以来、マイクロフォンを買おうとした事がなく、必然的にマイクに関する知識を得る事がなかった為に何を買ったらいいかわからない状況で選定を行いました。マイクロフォンにはダイナミック型とコンデンサー型の2種類に大別でき、ダイナミック型はコンデンサー型に比べて頑丈で、ライブ等に向いていると言われます。一方、コンデンサー型はダイナミック型に比べて繊細な取り扱いが要求されますが特性がフラットでスタジオ録音に向いていると言われます。今回の用途ではコンデンサー型が適していると考え、アマゾンで検索をかけてみました。比較的手頃なものとして、下記の2品種がヒットしました。

・Marantz Professional MPM-1000 \5,810円

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audio-technica AT2020 \10,584円

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どちらも送料込みの価格(2018.3時点)です。気になる周波数特性ですが、AT2020は20KHzまで特性が公開されていますが、MPM-1000の特性はメーカーHPには掲載されていませんでした。少し高くつきますが、その特性から結果の補正ができる事からAT2020を選択しました。下記がHP掲載の周波数特性図です。

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箱はシックで高級感があります。

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早速開けてみます。

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マイクロフォンはウレタンのクッションに守られて納められています。袋の中にはシリカゲルが入っていましたが、衝撃や湿気に弱いと言われるコンデンサーマイクならではの梱包でしょうか?中身を取り出してみます。

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マイク本体はずっしりした感触で高級感があります。しっかりした保管用の袋とマイクスタンド用のマウントが同梱されていました。

■ファンタム電源

エレクトリックコンデンサーマイクロフォンは、通常乾電池での動作が可能ですが、コンデンサーマイクロフォンは、48V電源(ファントム電源)が必要です。これもいままで購入した事がありませんでしたが、アマゾンを検索したところ、比較的安価で購入できる事がわかりました。私が購入したものは、NEEWERというもので\1,999円でした。

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開けてみます。

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ウレタンのクッションの中に、本体、ACアダプター、XLRケーブル1本が入っています。本体を取り出してみます。

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しっかりしたアルミケースの本体で、このセットを1,999円で販売できるのは驚きです。リアパネルには、XLR3極の入出力コネクタ、ACアダプタ(18V)用ジャックと正面パネルにはSWとパイロットランプが付いています。

オーディオインターフェース

アナログ出力だけであれば、常用システム中のUSBDACを使用すればいいですが、マイクで拾った信号の入力ができません。私のパソコンにはマイク用のジャック(ミニプラグ用)が付いていますが、測定に耐えうる周波数特性が確保されているかわかりません。何かいいものがないか、アマゾンで検索をかけたところよさそうな物が見つかりました。

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creative USB Sound Blaster Digital Music Premium HD r2 \8,136円です。Phono/Line入力、toslink、USB、HP出力、マイク入力と多彩な入出力を持っています。今回の用途には少し贅沢かとの思いましたがこれに決めました。そういえば、前職でパソコンが音声を扱い始めて間もない頃に、シンガポールにあるcreativeに出張して打ち合わせをしてきた事を思い出しました。打ち合わせの内容は全く覚えていませんが、夕飯にゆでたカニをたらふくごちそうになった事だけは良く覚えています。写真は届いた梱包です。

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あいかわらずの梱包との印象です。それでは開けてみます。

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ダンボールの梱包に本体のみが納められています。中身を取り出します。

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中身は、本体、USBケーブル、オーディオ用変換ケーブル、インストールCD2枚、説明書2部です。USB給電の為、ACアダプターはありません。

ハードウェア準備まとめ

これでパソコンへの音声信号の入出力がハードウェア面で可能となりました。総額約2万円と安くはないため、ねらいどうりの機能が実現できるか心配な状況です。次回は購入した機器のインストールとソフト面の準備を行います。

 

つづく(準備編2)

スピーカー周波数特性測定(構想編)

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構想編

フルマルチアンプ化を見据えてスピーカーの周波数特性測定機材を揃えましたが、目的を変更して特性測定を構想します。

フルマルチアンプ化構想

現在の常用システムは、3wayのNS-1000Mを改造してセミマルチアンプ駆動しています。具体的には、ウーハーのみA級DCパワーアンプと直結して、スコーカーとツイーターは、NS-1000Mのネットワークおよびアッテネーターを介して接続しています。

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ウーハーに比べ、影響が小さいと考えるスコーカーとツイーターも少なからずネットワークの影響を受けているはずです。常用システムをセミマルチアンプ化して以来、何れはフルマルチアンプ化してみたいと考えていました。その場合の課題は以下の2点です。

1)各チャンネルのボリューム制御をどうするか

2)ウーハー、スコーカー、ツイーターの音量バランスが聴感のみで取れるか

1項は、私のポリシーに起因する課題で、システムのボリュームをラインアンプ後、言い換えるとパワーアンプの入力段に入れています。この構成のメリットは、ラインアンプがボリュームの状態によらず常にフルレベルで動作し、S/N面で有利となるだけでなく音が生き生き鳴るように感じている事です。逆にデメリットは各パワーアンプの入力にボリュームが必要となり、3wayマルチアンプバランスステレオシステムでは、12連ボリュームが必要となります。こんな物はないので、他の方法を考える必要があります。写真は4連ロータリーSWですが、これを3個連動させる必要があります。

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2項は、現行のセミマルチアンプシステムでは、スコーカーとツイーターの音量バランスをNS-1000Mのアッテネーターに頼っていて、ウーハーとスコーカー+ツイーターの音量バランスは聴感で調整できています。3wayが完全に独立になると聴感で調整する自信がありません。そこでスピーカー出力の周波数測定を行い各帯域のレベルバランスをあらかじめ取っておく必要があります。この課題をクリアするために、2017年の年末にボーナスを削って測定用の機材を揃えました。(アイキャッチ写真参照)

安井先生の講演

3月4日に行われた、2018オーディオフェスティバルの安井先生の講演で、ウーハーとツイターのネットワークによるクロスオーバーの位相を正相-逆相から正相-正相に瞬時に切り替えて比較試聴をさせてもらいました。

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正相-正相接続の場合、ウーハーとツイーターのカットオフ周波数を工夫しないと接続帯域でディップが発生するとのコメントがあり、当たり前の事ですが、自分のシステムの確認が必要と強く感じました。NS-1000Mのウーハーとスコーカーはオリジナルで正相-正相接続となっていますが、チャンネルデバイダ設計の際に、ウーハーのカットオフ周波数をカタログスペックの500Hzとして、正相-正相接続の考慮を一切していませんでした。NS-1000Mのネットワークになんらかの工夫がされているとしたら、チャンネルデバイダーも同様の工夫が必要となります。先に紹介したとおり、フルマルチアンプ化のハードルは高いため、測定機材を揃えていながら、なかなか測定に至りませんでしたが、現行システムに関わるとなると俄然やる気が出て、今回の構想編となりました。

ネットワーク

スピーカー用のネットワークを2way用のものでおさらいしてみます。図は-12dB/octウーハー用、ツイーター用のネットワーク等価回路です。

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コイルの抵抗成分や、スピーカーのインダクタ成分等全て無視しています。スピーカーの能率が同じ前提で、この回路で合成される周波数特性を計算してみます。計算には「hashidaの部屋」で公開されているエクセルシートを使用させていただきました。初めに1KHz/-3dBクロスオーバーで、-12dB/oct正相接続時を計算します。

L1=1.8mH, C1=15uF, R1=8Ω, L2=1.8mH, C2=15uF, R2=8Ω

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1KHzで大きなディップが発生します。一般的に行われる正相-逆相接続をするとこの条件では、1KHzが+3dBとなります。さらに一般的には、-6dBクロスをさせて合成ゲインがフラットにさせます。ウーハー用のネットワーク定数を適当にいじってみました。その結果以下の特性まで追い込む事ができました。

L1=0.7mH, C1=5uF, R1=8Ω, L2=1.8mH, C2=15uF, R2=8Ω

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現実的にはこのようにはいかないとおもいますが、調整次第では正相-正相接続でも周波数特性の乱れを実用レベルまで押さえ込む事はできそうな事がわかりました。使用させていただいた計算用のシートは、今回使ってはいませんがウーハーとツイターの距離差が入力可能で、ウーハー、ツイーター、合成の位相特性もそれぞれ出力されます。大変使い勝手が良いシートです。次回は購入機材を紹介して測定準備を行います。

後書き

この記事を書き上げたタイミングで無線と実験の2018年4月号が届きました。安井先生の講演でのアナウンスのとおり、関連記事が掲載されていました。タイトルは「12dB/oct型CR2段3ウエイチャンネルデバイダー[設計編]」です。記事前半は、本ブログ後半で紹介したような内容がより詳しく説明されていますので興味のある方はご覧いただければとおもいます。

 

つづく(準備編1)

実験バッテリードライブ(評価編5)

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評価編5

チャンネルデバイダーのバッテリー駆動通電確認が終わったので、音質比較をおこないます。

バッテリードライブ音質比較

普段聴いているCDの楽曲を聴いて、安定化電源ドライブ時の音との印象の違いを書き出してみます。再生は常用のシステムで、チャンネルデバイダーのみバッテリードライブしています。

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最初に全般的な音の印象を箇条書きして、その後で各楽曲の音の詳細な印象を紹介します。

・中域が静かに聴こえます

・中域の余韻が消えるまで聴きとれます

・厚い低音ですがやや重たい印象です

■TAKE ME TO THE MARDI GRAS/Bob James(BJ TWO)

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打楽器のアタック音がリアルです。弦楽器の余韻が美しく、ブラスの音が際だって聴こえます。

■FARANDOLE/Bob James(BJ TWO)

低音が厚く迫力があります。中音の余韻が消えるまで聴きとれます。聴きやすい音です。

■あんたのバラード/井筒香奈江(RINDEN BAUM)

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ハスキーなボーカルが素直に再生され、マイルドな感じがします。ピアノの音が厚く再生されます。

■When you wish upon a star/Kenny Drew(SPECIAL)

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ピアノの響きが美しいく、厚みのあるベースが印象的です。迫力がありますが静かな印象を受けます。

■断頭台への行進/小林研一郎幻想交響曲

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ホールの奥行き感の再現性が高く聴こえます。低音がやや重たく感じました。

■海風/風(海風)

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中域が静かに聴こえます。余計な音が鳴っていない印象です。

■夢見る頃を過ぎても/八神純子(THE BEST SELECTION)

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静かな印象で、透き通るボーカルが際だちます。

音の印象の考察

一番大きな音の印象は、ダイナミックに鳴っているにもかかわらず、中高域が静かに聴こえる点です。グラフは、以前測定した電源インピーダンスの周波数特性です。

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100Hz以上の帯域は、安定化電源とほぼ同じ特性を示しています。それにもかかわらず、音が静かに聴こえるのは、測定結果には現れない動特性の違い起因でしょうか?。安定化電源は、フィードバックループによる制御の為、動特性面で不利と考えられますが、なんらかの方法で動特性比較をしてみたいものです。今後の課題としたいとおもいます。余韻が聴きとり易い点は、上記の静かに聴こえる事と関係していると考えられます。静かな印象なので、レベルの低い余韻が聴きとりやすくなっているのではないでしょうか?次に、低音が厚く、やや重い印象ですが、70Hz以下の電源インピーダンスの特性差起因と思われますが、10Hzのインピーダンスの測定結果は、安定化電源が約0.008Ωに対して、今回使ったバッテリーは約0.02Ωです。扱いに手が掛かりますが、より高性能なリチウムイオンバッテリー等を試してみたいと思いました。

常用化にむけて

■バッテリー容量

今回は実験としてバッテリーから電源供給をして音を聴いてみましたが、常用化の検討をしてみました。今回使用したバッテリーの容量は2.3Ahです。一方、フィルター基板1枚当たりの消費電流は21mAで、2枚合わせても42mAにしかなりません。単純計算で、フルチャージした状態で、50時間以上動作させる事ができるので、今回の用途ではバッテリー容量はあまり問題になりません。

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■接続

チャンネルデバイダーを電源とフィルター基板の2ユニットに分けて、電源の外部給電方式にすれば、バッテリーへの切り替えが簡単にできます。安定化電源使用時も、ノイズの原因となる電源1次側を別シャーシとすることのメリットがあります。電源ユニットの共通化により、コストと手間が押さえられます。電源供給はXLRコネクタを使えば、接続の信頼性が確保でき、コネクタ自体も安価で購入可能です。写真はアマゾンで購入したものですが、入手までにかなり時間がかかったものの、US$15と安価でした。

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■充電

鉛蓄電池は、過充電と過放電に注意すればメモリ効果もないため比較的管理は容易です。市販のチャージャーとタイマを組み合わせれば、手間がかからずに運用できそうです。

まとめ

バッテリー電源の常用化の予定は現時点ではありませんが、また機会があれば検討してみたいとおもいます。今回は確認はしていませんが、安定化電源が使いにくい電源、たとえばトランジスタパワーアンプの終段の電源供給を機会があれば試してみたいとおもいました。

 

おわり(評価編5)

実験バッテリードライブ(評価編4)

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評価編4

念のためL-ch基板の通電確認を行い、シャーシに基板を搭載して修理を完了させます。

L-ch基板通電確認

誤配線時、L-ch基板の電源は正しく接続されていましたが、入出力端子のGND電位がR-ch誤配線の影響により異常値となったはずです。念のためダメージを受けていないか確認を行います。前回の記事で、R-ch基板の消費電流値と比較するために、基板単体の通電は終わっています。続いて、R-ch同様に周波数特性の測定を行います。

L-ch基板周波数特性の測定

R-ch同様に10Hz~600KHz、2Vppの正弦波を入力して出力をモニタします。遮断帯域で出力レベルが下がったタイミングで20dBのプリアンプを挿入してモニタを続けます。初めにカットオフ周波数(500Hz)の入出力を確認しました。

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500Hzの減衰量は、Hot/Coldそれぞれ-5.4dBと-5.2dBとなっており、正しく動作しています。引き続き周波数特性の測定を行います。測定結果は以下のとおりです。

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ネット上の情報で、オペアンプを使用したアクティブLPFの特性は、使用するオペアンプオープンループ特性により、遮断帯域で理想通りゲインが減衰しない場合があるとの書き込みを読んでいましたが、少なくともCDの帯域ではほぼ理想どおりの特性となっていて、それ以上の帯域でも63dB以上の減衰量の確保ができている事が確認できました。

シャーシへの再搭載

確認が終わった基板を一旦、元通りチャンネルデバイダーのシャーシに組み込みます。シャーシは、2週間写真のような残念な状態となっていました。

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手前のR-ch用の基板の取り付けは、ネジ1カ所がボリュームで隠れるため、正面パネルを外す必要があります。リアパネル側の基板は、同様に取り付け用ネジ1カ所がXLRパネルコネクタで隠れるため、リアパネルを一旦外して取り付けました。基板の交換に手間がかかる設計となってしまっていますが、次回設計時には配置を考慮したいと思います。R-ch基板は、電源用の電解コンデンサとボリュームの干渉の対策を行ったのでクリアランスの確認をしました。

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写真のとおり、十分なクリアランスの確保ができました。各基板端子代への配線を行い修理完了です。

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音出し

2週間ぶりに常用システムに火を入れました。音だし前に出力オフセットの確認を行います。

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R-chは入力段のMUSES01を交換したため、修理前後でオフセット電圧が違っています。それでは音を聴いてみます。久しぶりに聴いた為か、いい感じい聴こえます。音が厚く、低音も素直に伸びてます。この後、バッテリードライブとの音の比較を行うので、この音に馴染むためにしばらくこの状態で音楽を聴きました。

バッテリードライブ

ショートさせたバッテリーの電圧がやや下がっていたので、念のため充電しました。しばらく放置してから電圧を測定しましたが、12.77Vと12.57Vで充電した方が高くなってしまいましたが、気にせずにこのまま進めます。前回通電時に間違えてしまったSW基板の配線を忘れずに直して、バッテリーをフィルター基板に接続します。

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前回トラブルを起こしてしまったので、緊張しながらの電源オンとなりました。即座に出力オフセット電圧を確認します。結果は以下のとおりです。

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結果を見ると、安定化電源の際の結果とほぼ同じで正常に動作しているようです。結構な遠回りをしてしまいましたが、次回バッテリードライブの音質比較を行います。

 

つづく(評価編5)

実験バッテリードライブ(評価編3)

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評価編3

基板修理が完了したので、通電確認を行います。

通電確認

ユニバーサル電源を使って基板単体で通電します。オペアンプ故障の可能性もあるので、過電流保護設定を小さめ(50mA)に設定しました。緊張しつつ電源オンしましたが、異常は見あたりません。まずはユニバーサル電源供給電流を正常基板と比較しました。写真左が修理基板(R-ch)、右が正常基板(L-ch)です。

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写真は+電源側ですが、ー電源もほぼ同等値で問題なさそうです。次に出力オフセット電圧を測定しました。比較用の定電圧電源使用時の結果は、バッテリー駆動前に念のため測定したものです。

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供給電源が違うため、微妙に数値が異なりますが傾向は同じと判断して次の確認に進めます。

周波数特性測定

オペアンプのダメージの判断の一環として周波数特性の測定を行います。せっかく測定を行うので、今回は遮断領域の応答確認時に20dBのプリアンプを使ってみます。他の測定条件は、製作時と合わせて、2Vppの正弦波を10Hzから600KHzの範囲で入力して出力のレベルを観測します。上記の単体通電確認環境にジグ基板を追加して配線しました。

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早速電源を入れたところ、ユニバーサル電源の過電流保護が働きました。基板単体では問題なかったと思いつつ、配線を見直しましたが異常は見あたりません。仕方ないので追加したジグ基板の+/-電源線のみ外して再度電源を入れてみました。結果は変わりませんでした。追加したジグの配線の残り(LPF出力とプリアンプの入力接続線)を外して電源を入れたところ、過電流保護は働かなくなりました。どうして?とおもいつつ回路を見直しましたが原因がわかりません。

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試しにジグのAC入力端子を使用したところ問題ありませんでした。今回ジグ基板のDC入力端子は初めての使用となりますが、ここから信号入力した場合、ジグの入力保護用に入れているダイオード部分でラッチアップが発生しているのかもしれません。今回の測定は、遮断領域のみプリアンプを使用するので、AC入力を取り急ぎ使用し、原因の特定は後回しとしました。早速信号を入力してみます。まずは300Hzの正弦波を入力して波形を確認します。

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一難去って・・・。出力波形が歪み、回路は正常動作していません。THR出力を確認したところ同様に歪んでいる事が確認されました。試しに入力バッファのMUSES01を交換したところ症状は改善しました。誤配線時に初段のバッファ用オペアンプの入力にマイナス電位が入力された事でダメージを受けた可能性があります。一方、2段目のオペアンプの入力は初段オペアンプ出力でマイナス電位の入力が打ち消されて保護されたと考えると辻褄があいます。この状態で改めて波形のモニタをしてみます。下記は500Hz(カットオフ周波数)入力時の入出力波形です。

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左がHotで右がColdです。正しく動作している事が確認できました。この時の減衰量は、Hot/Coldそれぞれ、-4.5dBと-4.4dBとなっていました。これでようやく周波数特性の測定ができます。2Vppの正弦波を10Hzから入力し、出力波形をモニタします。通過領域は、出力信号レベルが高いのでダイレクトに信号をポケットオシロでモニタします。遮断領域に入り、出力レベルが下がったところでプリアンプを挿入します。図は、この手順で測定したR-chの周波数特性です。

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以前行ったプリアンプ無しの特性測定では、減衰量-42dB程度まで確認できましたが、今回は約-63dBまで確認できました。遮断領域で使用した20dBプリアンプを使った結果と言えます。今回の測定は20KHzくらいまでは誤差を考慮しても正しく測定ができていると考えられ、CDの帯域の測定はできた事になります。次回は念のため、L-ch用フィルタの通電確認と周波数特性測定からスタートします。

おまけ

久しぶりに中国広州と上海に出張してきました。どちらも2000年初めの頃は月に2回くらい飛んでいましたが、当時と比べて格段に進んでいました。スマホさえあれば、財布がなくとも便利な生活ができる事が驚きでした。

■広州番禺市街

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■広州空港国内移動時

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つづく(評価編4)