スピーカー周波数特性測定(構想編)

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構想編

フルマルチアンプ化を見据えてスピーカーの周波数特性測定機材を揃えましたが、目的を変更して特性測定を構想します。

フルマルチアンプ化構想

現在の常用システムは、3wayのNS-1000Mを改造してセミマルチアンプ駆動しています。具体的には、ウーハーのみA級DCパワーアンプと直結して、スコーカーとツイーターは、NS-1000Mのネットワークおよびアッテネーターを介して接続しています。

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ウーハーに比べ、影響が小さいと考えるスコーカーとツイーターも少なからずネットワークの影響を受けているはずです。常用システムをセミマルチアンプ化して以来、何れはフルマルチアンプ化してみたいと考えていました。その場合の課題は以下の2点です。

1)各チャンネルのボリューム制御をどうするか

2)ウーハー、スコーカー、ツイーターの音量バランスが聴感のみで取れるか

1項は、私のポリシーに起因する課題で、システムのボリュームをラインアンプ後、言い換えるとパワーアンプの入力段に入れています。この構成のメリットは、ラインアンプがボリュームの状態によらず常にフルレベルで動作し、S/N面で有利となるだけでなく音が生き生き鳴るように感じている事です。逆にデメリットは各パワーアンプの入力にボリュームが必要となり、3wayマルチアンプバランスステレオシステムでは、12連ボリュームが必要となります。こんな物はないので、他の方法を考える必要があります。写真は4連ロータリーSWですが、これを3個連動させる必要があります。

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2項は、現行のセミマルチアンプシステムでは、スコーカーとツイーターの音量バランスをNS-1000Mのアッテネーターに頼っていて、ウーハーとスコーカー+ツイーターの音量バランスは聴感で調整できています。3wayが完全に独立になると聴感で調整する自信がありません。そこでスピーカー出力の周波数測定を行い各帯域のレベルバランスをあらかじめ取っておく必要があります。この課題をクリアするために、2017年の年末にボーナスを削って測定用の機材を揃えました。(アイキャッチ写真参照)

安井先生の講演

3月4日に行われた、2018オーディオフェスティバルの安井先生の講演で、ウーハーとツイターのネットワークによるクロスオーバーの位相を正相-逆相から正相-正相に瞬時に切り替えて比較試聴をさせてもらいました。

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正相-正相接続の場合、ウーハーとツイーターのカットオフ周波数を工夫しないと接続帯域でディップが発生するとのコメントがあり、当たり前の事ですが、自分のシステムの確認が必要と強く感じました。NS-1000Mのウーハーとスコーカーはオリジナルで正相-正相接続となっていますが、チャンネルデバイダ設計の際に、ウーハーのカットオフ周波数をカタログスペックの500Hzとして、正相-正相接続の考慮を一切していませんでした。NS-1000Mのネットワークになんらかの工夫がされているとしたら、チャンネルデバイダーも同様の工夫が必要となります。先に紹介したとおり、フルマルチアンプ化のハードルは高いため、測定機材を揃えていながら、なかなか測定に至りませんでしたが、現行システムに関わるとなると俄然やる気が出て、今回の構想編となりました。

ネットワーク

スピーカー用のネットワークを2way用のものでおさらいしてみます。図は-12dB/octウーハー用、ツイーター用のネットワーク等価回路です。

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コイルの抵抗成分や、スピーカーのインダクタ成分等全て無視しています。スピーカーの能率が同じ前提で、この回路で合成される周波数特性を計算してみます。計算には「hashidaの部屋」で公開されているエクセルシートを使用させていただきました。初めに1KHz/-3dBクロスオーバーで、-12dB/oct正相接続時を計算します。

L1=1.8mH, C1=15uF, R1=8Ω, L2=1.8mH, C2=15uF, R2=8Ω

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1KHzで大きなディップが発生します。一般的に行われる正相-逆相接続をするとこの条件では、1KHzが+3dBとなります。さらに一般的には、-6dBクロスをさせて合成ゲインがフラットにさせます。ウーハー用のネットワーク定数を適当にいじってみました。その結果以下の特性まで追い込む事ができました。

L1=0.7mH, C1=5uF, R1=8Ω, L2=1.8mH, C2=15uF, R2=8Ω

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現実的にはこのようにはいかないとおもいますが、調整次第では正相-正相接続でも周波数特性の乱れを実用レベルまで押さえ込む事はできそうな事がわかりました。使用させていただいた計算用のシートは、今回使ってはいませんがウーハーとツイターの距離差が入力可能で、ウーハー、ツイーター、合成の位相特性もそれぞれ出力されます。大変使い勝手が良いシートです。次回は購入機材を紹介して測定準備を行います。

後書き

この記事を書き上げたタイミングで無線と実験の2018年4月号が届きました。安井先生の講演でのアナウンスのとおり、関連記事が掲載されていました。タイトルは「12dB/oct型CR2段3ウエイチャンネルデバイダー[設計編]」です。記事前半は、本ブログ後半で紹介したような内容がより詳しく説明されていますので興味のある方はご覧いただければとおもいます。

 

つづく(準備編1)