無帰還広帯域真空管アンプ(製作編40)

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製作編40

今回の製作のキーポイントの周波数特性の測定をおこないます。

設計のおさらい

周波数特性の測定の前に、今回の設計のおさらいをします。初代ツイーター用アンプは、現行のスコーカー用アンプと同じ設計でした。

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初段は12AX7で終段はEL34のプッシュプル構成です。高域の周波数特性を意識せずに設計しました。二代目(現行)のツイーター用アンプは、回路は変えずに真空管を選定しなおして広帯域化しました。

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初段を12AY7に、終段を6N6Pに変更しています。この結果以下のとおり周波数特性が改善しました。

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音の印象も、特性差以上に変わりました。今回は二匹目のどじょうを狙う事が目的です。真空管の選定は変えずに、初段をSRPP方式の差動アンプに設計変更しています。

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初段の出力インピーダンスを下げて終段入力部のカットオフ周波数を上げる事を狙っています。その特性は以下のとおりです。

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狙い通りの結果となるか測定が楽しみです。

周波数特性の測定

測定は、200mVppの正弦波差動信号を入力して入出力の波形をオシロスコープで観測してゲイン測定を行いました。出力には8Ωのダミー負荷を取り付けています。

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測定周波数範囲は10Hz~1MHzです。最初にRchの測定を行いました。観測波形は以下のとおりです。

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黄色の波形は入力信号で、青の波形が出力信号です。上から10Hz, 1KHz, 20KHzのHot側の観測結果です。10Hzの波形はやや歪んでいますが、採用した出力トランス起因で仕方ありません。可聴帯域内の波形は振幅、波形歪みともに問題ありませんでした。参考に1MHzの観測結果も公開します。

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ゲインは下がり、位相も遅れていますが素直な波形です。Cold側も観測しましたが、Hot側の違いがなかったので省略します。Rchの観測結果をグラフ化してみました。

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グラフはHotとColdに加えて総合の特性の3本です。素直な特性だとおもいます。結果の検討は後回しとして、Lchの測定も同様に行いました。

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上からLchホット10Hz, 20KHz, 1MHzの観測結果です。Rchの結果とほぼ同じです。Lchの観測結果もグラフ化します。

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いい感じの測定結果です。RchとLchの特性比較もしてみました。

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Lchの方がやや特性が良いです。真空管への電源の配線長が短いからでしょうか?続いて現行のアンプと特性比較をしてみました。

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上がRch、下がLchの特性比較結果です。両チャンネルともに現行機に対して特性が良くなっている事が確認できました。特性を正規化してカットオフ周波数の比較をしてみます。

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両チャンネルともに30%以上帯域が延びている事が確認できました。低域の特性も若干改善している事がわかりました。出力トランスの使用したタップの違いによるものでしょうか?設計の狙いの周波数には達しませんでしたが、初段SRPP構成による帯域の改善が達成できました。次回は音を聴いてみます。

 

つづく(製作編41)