アンプ修理その後と非接触温度計(番外編18)

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番外編18

EL34ppパワーアンプ修理記事でアドバイスいただいた真空管ソケットハンダ付け確認を行い、新規に導入した非接触温度計を紹介します。

経緯

番外編17でバランス方式EL34ppパワーアンプの修理を行いました。原因が完全に特定されない中、終段の真空管EL342本を交換して様子を見ていましたが、現象が真空管が十分暖まってから発生する事から、「真空管ソケットのハンダ付けを確認してみては」とのアドバイスをいただき、確認をしてみました。

真空管ソケットハンダ付け

真空管はアンプの電源を入れる度に、カソードをヒータで熱するため発熱します。今回の設計ではそこそこのプレート損失によりさらに発熱します。トータルの損失は1本当たり約18Wになり、その熱がソケットの端子にも伝わってハンダ付け部は毎回ヒートショックを与えられているとも言えます。この事からも今回のアドバイスは理にかなっている上に、私が使用しているハンダの特性も少し気になったので確認をする事としました。

ハンダ

私が使っているハンダは、HAKKO HEXSOLのFS408-01です。近くのスーパービバホームで調達しています。

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HEXSOLシリーズは多様で、小分けされたホビー用のものでも以下の表のラインナップがあります。

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表を見ると、私の使用しているものは融点が比較的低く183℃となっています。同等品で融点を190℃に上げるには、FS407-02の選択となりますが、今まで特に問題がなく、熱に弱い部品への影響を考えて融点183℃品を使ってきました。

真空管ソケットハンダ確認

久々にEL34ppアンプのシャーシ内を確認します。こんな時、ボンネット付きのケースは便利です。

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ボトムパネルを外します。

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オーディオ趣味復帰後の大型製作1号機のため、今の製作とだいぶ異なっています。配線が全体的にごちゃごちゃしているのと、基板への配線は全てポストへのハンダ付けの方法をとっています。右チャンネルEL34用のソケットのハンダ付けを確認します。

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見た目には、ハンダフラックスが茶色く変色していますが、異常はありませんでした。さらに各端子のハンダ付けをピンセットを使って確認しました。

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怪しげな部分はあるものの、ハンダ不良となっている部分は見つかりませんでしたが、念のため全端子のハンダをやり直しました。引き続き当面このまま様子をみたいと思います。

端子の使用時の温度

普通に使っている時に、ソケットのハンダ付け部分がどの程度の温度になっているのか、気になり測定できないか検討してみました。「バランスA級HPアンプ製作編3」で、終段のトランジスタ温度上昇の見込みを立てるために、接触式のマルチユース温度計を購入していましたが、使い勝手があまり良くなく、高圧がかかっている部分には使用できません。

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何か良い物がないかとアマゾンを検索してみると、多く非接触式温度計がヒットしました。

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写真は検索結果のほんの一部ですが、価格は1500円くらいからラインナップされていたので、試しに1つ買ってみることにしました。注文したものは、下段の真ん中のものです。

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送料込みで2,999円なので仮に失敗でもあきらめられます。

非接触温度計

私はアマゾンのプライム会員ではありませんが、注文の翌日に商品が届きました。

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箱を開けると、簡単な日本語の取扱説明書と本体のみが入っていました。

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値段の割には、見た目の作りは悪くありません。電源は単四電池2本です。測定は被測定物が放射する赤外線を受光してその量から温度を算出しています。ある温度の物体から放射される赤外線の量は物質およびその表面処理により異なりますが、その表面温度により一義に決まります。物質による放射量の違いは放射率の差として表されますが、おおよそ0.95との事です。表は説明書に掲載された主な物質の放射率一覧です。

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この測定器には、放射率0.95がプリセットされていますが、測定対象によってマニュアルで設定を変更する事ができます。温度の測定範囲は、距離係数として規定されています。図は取り扱い説明書に掲載された距離係数の仕様です。

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簡単に言うと、測定時の被測定物との距離の1/12が測定範囲となります。また測定位置を合わせるために、測定時にレーザーポイントされるので便利です。測定自体は、いたって簡単でピストルの要領で引き金を引くと、レーザーポインターが照射されるので、測定ポイントに合わせるだけです。測定結果はリアルタイムでLCDに表示されますが、引き金を戻すと、そのときの計測値がホールドされます。それでは実際に測定してみます。

非接触温度測定

アンプのボトムカバーを外したまま、ラックに戻します。置く位置は、棚板から真空管のソケット分はみ出すように手前側にずらします。

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アンプの電源を入れる前に初期温度を測定します。

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初期温度は17.2℃でした。この状態でひとしきり音楽を聴いてから改めて温度測定を行いました。

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結果は52.4℃で温度上昇値としては、35.2℃でした。思った程の上昇値ではありませんでしたが、夏の使用時の温度としては、70℃くらいまで温度上昇する事が想定されます。せっかくおもちゃを買ったので、他の機器の動作時の温度を測定してみました。

バランス方式A級HPアンプ各部温度

製作編3で、接触式の温度計で使用時42℃程度を想定していましたが、非接触温度計での測定値はどんなものか測定してみました。写真は、終段用-9V電源のヒートシンク部の温度を測定しているところです。

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レーザーポインタがヒートシンクに当たっています。ポイントをずらしながら、一番温度の高い部分をさがします。各ドライバの測定結果は以下の通りとなりました。

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想定していたとおり、接触温度計よりもやや高い値が測定されました。測定誤差はなんとも言えませんが、それなりに使えそうな事が確認できました。ホビーユースであればこれで十分だとおもいます。

 

おわり(番外編18)