音楽の女神への挑戦(製作編8)

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製作編8

残り1チャンネル分の実装完了させ、シャーシ上の基板を載せ換えます。

JRC MUSES

本題に入る前に挑戦相手のJRC MUSESシリーズについて改めて紹介をします。繰り返しになりますがMUSESはギリシャ神話に登場する文芸を司る女神たち(9神)です。文芸の神アポローンが彼女たちを主宰するとのことです。JRCのMUSESシリーズは2017年2月現在、8品種がラインナップされていて、ギリシャ神話に合わせるとなると、もう1品種加わることが期待されます。ラインナップは、高音質オペアンプ、高音質電子ボリュームと昨年(2016年)秋に新登場した高音質オーディオ用sic-SBD(シリコンカーバイトショットキーバリアダイオード)の3カテゴリに分けられます。簡単に8品種についてまとめてみました。

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どの部品も大変良いお値段です。それぞれWeb上の特設サイトから秋月電子通販サイト上の各部品にリンクが張られていて簡単に購入できます。私はこの中で、MUSES01とMUSES8920を今までに使いました。どちらもJFET入力のオペアンプですが、価格差が示すとおり全く別物の音がしました。機会があれば、別の品種も試してみたいとおもいます。

channel-4実装・調整・確認

それでは本題に戻ります。4回路目の実装となると、実装上の注意点やこつが頭に入っていて効率良く実装ができました。記憶に頼った実装がミスの原因となる事も事実なので油断大敵です。尚、channel-3の実装が一番苦痛だった気がします。channel-4の使用トランジスタは以下のとおりです。NPNトランジスタは、考えずに選別用として20個購入しましたが、使用数ピッタリでした。初段の定電流源Q04と2段目のバイアス回路Q07はペアをとる等の特性を合わせる必要がないのでうまく配置する事ができました。

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前の回路同様に、初段が組み上がった時点で通電確認してから、残りを組み立てます。調整の最初にVR2/3をプリセットしますが、誤ってchannel-3の半固定抵抗を回してしまいました。調整はchannel-3からやり直しとなりました。channel-4の調整結果は以下のとおりです。

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調整後に2channel分の消費電流を確認しました。+電源が40mAで-電源が37mAです。この差は、初段のカスコード接続用の基準電圧を+電源から作っていることに起因します。オペアンプ基板の消費電流が8mAなので、5倍の電流を消費していることになります。

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当初基板面積に対して部品実装が厳しくなると予想していましたが、それほどぎっちりという感じにはなりませんでした。結果が良かったら、オペアンプのリファレンス基板としたいと考えています。

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基板の載せ換え

容易に基板の載せ換えができる設計としましたが、何回も交換したくないので、交換前に改めてオペアンプ基板の音を聴いて記憶にとどめます。各基板の3極の端子台3カ所と基板固定のねじを外し基板を交換します。基板上の一部の部品と配線が干渉しましたが、端子台の位置を合わせたので大きな問題はなく配線ができました。

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通電確認

今回組み立てたディスクリート電源と組み合わせての初通電となります。ユニバーサル電源をつかった通電時は、+/-12.1Vを供給していましたがやや低めの電圧となっていました。供給電圧の違いから各チャンネルの出力オフセット電圧が最大で10mVくらいまでずれていたので、出力オフセット電圧のみ再調整しました。

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電源の確認

消費電流がオペアンプ基板の5倍となっているので、念のため電源の出力トランジスタ印加電圧のリップルを確認しておきます。オペアンプ基板接続の際の99mVppと比べ146mVppと約1.5倍となっていましたが、このトランジスタの印加電圧4.4Vに比べて小さいので問題ありません。

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これでやっと組立が完了しました。次回は音だしを行い音楽の女神との勝負を決着させます。

 

つづく(製作編9)

 

音楽の女神への挑戦(製作編7)

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製作編7

ディスクリートアンプの部品実装を進めます。

channel-2実装

製作編5で、channel-1の実装および動作確認まで紹介しました。基板の状態は写真のとおりです。

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その際に、発振対策部品としてセラミックコンデンサを使用しましたが、記事中でコメントしたとおりディップマイカ品に交換しました。セラミックコンデンサ秋月電子で1個5円、ディップマイカコンデンサはマルツオンラインで108円です。検討用にいろんな容量を準備するには、セラミックコンデンサが好都合です。また、今回使用したコンデンサの容量誤差はどちらも+/-5%品で載せ替えに問題ありません。尚、セラミックコンデンサとディップマイカコンデンサの音への影響についていままで確認を行ったことはありません。

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つづけて同じ基板にchannel-2を実装します。部品はchannel-1を平行移動した配置に実装しますが、端子台関連回路(電源入力と信号入出力)のみchannel-1/2で共通部品となるので実装に注意が必要です。前回同様、初段の差動回路の実装が終わった時点で通電確認を行いました。製作編5でコメントが漏れましたが、完成後に帰還信号が戻る入力を、一時的に10kΩでGNDに接続して通電確認を行いました。特に問題なかったので、全部品の実装をさらに行います。2段目の発振対策用のコンデンサは、最初からディップマイカ22pFを実装しました。使用したトランジスタは、以下のとおりです。

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channel-2調整と動作確認

channel-1と同様に2段目のバイアス電流を絞り、終段をカットオフさせるように半固定抵抗をプリセットして電源を入れます。調整の手順はchannel-1と同様です。調整後の各部の電圧は以下のとおりです。

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念のため、channel-1と同様に信号を入力して動作確認を行います。本記事のキャッチ写真は、600KHzの正弦波を入力して出力確認を行っているときのものです。特に問題はありませんでした。せっかくなので、100KHzの矩形波も入力してみました。インピーダンスマッチングをとっていないので、入力信号自体の立ち上がりがなまっていますが、出力はリンギング等なく、そのままの波形が出力されています。

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組み上がった基板をオペアンプ基板と比較してみました。写真のとおり実装部品点数、実装面積は大きく異なります。

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記事のまとめ編で紹介するつもりでいましたが、私としても気になるので、ここで紹介します。オペアンプの機能に相当する部品表をまとめました。

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ディスクリートアンプ2チャンネル分で、部品が61点で部品代が1776円でした。MUSES01の値段が3500円なので、部品原価自体は約半額でディスクリートアンプに、実装面積や手間はオペアンプに軍配が上がりました。肝心なのはその音なので勝敗は持ち越しです。

channel-3実装

同じ作業の繰り返しは、作業自体の効率はあがりますが、精神的にしんどいです。同様のステップを踏んで動作確認を行いました。

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今週はここで時間切れとなってしまいました。記事としてまとまりませんでしたが、次回channel-4の実装を完了させて音だしを行いたいとおもいます。写真はここまでの成果です。

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つづく(製作編8)

 

音楽の女神への挑戦(製作編6)

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製作編6

電源基板GND問題を解決し、改めて比較元アンプの音を確認します。

新しい仲間

本題に入る前に先週手に入れた低周波発振器を紹介します。KENWOOD AG-203Dです。10Hz~1MHzの正弦波と矩形波を出力できます。ヤフオクに中古品として出品されていたのを、かみさんに競り落としてもらいました。1万円渡して、落札価格+送料との差額を報酬としました。結果5900円+送料1500円で落札し、報酬は2600円となりました。見た目はそれなりで、動作をしますが、上限周波数1MHzのところ600KHzくらいで出力がダウンしています。機会をみて中を見てみたいとおもいます。新品を入手する場合は、アマゾンで同等品のKENWOOD AG-205が36,833円で購入できます。私は発振器に対してこだわりはないので、これで十分です。製作編5のディスクリートアンプの動作確認の際に早速使用してみましたが、ちゃんと使えました。また、今まで確認できなかった真空管アンプの周波数特性の測定を何れ行ってみたいと思います。

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電源回路GND問題

それでは本題に戻ります。製作編4で作り直したオペアンプ基板の動作確認の際に発覚した電源GND問題(左右独立電源の両電源間のGNDに導通がない件)の検討を行いました。組み上げたバランスボリュームの電源基板を取り外し配線の確認を行います。配線を見たらすぐに原因がわかりました。後から組み上げたチャンネル用の電源回路のGNDがトランスの巻き線の中点に接続されていませんでした。

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かろうじて動作していたのは、回路上+とー電源の中点が仮想GNDとして動作していたためです。早々に接続して音を聴いてみました。

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電源回路の音

GNDに問題があった時の音は、中高域はクリアなのに、低音がふわふわした感じで全くバランスがとれていませんでした。GND問題の対策をした後も、低音のふわふわした感じはなくなりましたが、中高域のクリアな再生に低域が負けている感じです。元の回路に戻すことも覚悟しつつ、ダメもとで元の回路に搭載されていた電解コンデンサMUSEを追加してみることにしました。100uF/25V品4個程度であればなんとか実装できそうなので早々に発注しました。結果、写真のとおり電源出力用の端子台の脇に実装することができました。

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さっそく音を聴いてみます。中域が一層クリアな感じになり、さらにうるささもなくなり、通常再生時のボリュームの位置が少し上がりました。それに伴い、低音の躍動感も増していい感じのバランスとなりました。比較用の電源としては十分な状態となりました。参考にオペアンプ負荷時の出力トランジスタ印加電圧とそのリップル波形の確認結果を掲載します。

■出力トランジスタリップル波形

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■出力トランジスタ印加電圧

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出力トランジスタには、約4.4Vの電圧がかかっているので、動作上の問題はありません。ディスクリートアンプの方が消費電力が大きいため、基板交換後に改めて確認をしたいとおもいます。MUSEを追加した現時点の電源の回路図を参考に掲載します

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トランス配置の見直し

基板を3枚実装したため、トランスと電源基板のクリアランスがあまりなく窮屈な感じとなっています。

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見栄えも良くないので、トランスの取り付け位置を変更しました。電源基板取り付けの際に見直ししていれば、より良い配置とすることができた事が少し残念です。

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これで比較のための環境の準備が整いました。次回は、残りのディスクリートアンプ基板の実装を進めます。

 

つづく(製作編7)

 

音楽の女神への挑戦(製作編5)

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製作編5

ディスクリートアンプ基板の部品実装と動作確認を行います。

回路図変更

部品実装前に、回路図を見直しました。抵抗の買い忘れで一部抵抗値を変更しました。入力抵抗は10kΩに変更して、ボルテージフォロワ構成とするために、ー入力端子の入力抵抗を削除しました。2段目のエミッタ接続の半固定抵抗を調整値を考慮して1kΩとしました。

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部品配置

95x72mm基板に2回路分のアンプを実装します。出来合いのシャーシに基板実装するため正面パネルに取り付けられたボリュームの干渉も考慮する必要があります。これらの要求からアンプ2回路を基板の長手方向に並べることにしました。入出力は、+/-電源とバランス信号入出力が必要で、3極の端子台を3個搭載します。+/-電源を信号入力用端子台と並べて配置することとしました。

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初段の実装と通電確認

実装範囲を明確にするために、1チャンネル分の基板領域の両端に+とーの電源ラインを引きます。電源とバランス入力用の端子台を基板の長手方向に均等に並べて実装しました。領域を仕切るための電源線と電源の端子台を接続しパスコン用の電解およびフィルムコンデンサも配線します。電解コンデンサは100uF/25VニチコンFG品です。仕切の電源線を起点として初段の+側から部品の実装を始めます。初段は+からー電源に向けて半固定抵抗、カスコード用のトランジスタ、初段FET、電流源用トランジスタと多くの部品が並びます。基板スペースを有効利用するため、ラジアル品の部品は立てて実装しました。カスコード接続用のトランジスタは、選別No3とNo14(hfe=180)を、定電流源用トランジスタはペアにならなかったNo.17(hfe=181)を、初段のFETは選別No1(Idss=4.5mA)をそれぞれ使用しました。

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初段の実装が完了した時点で通電確認を行います。ユニバーサル電源から+/-12.1Vを供給します。半固定抵抗を中点に調整して電源を入れます。各部の電圧は以下のとおりです。(ソース電位が間違っていましたので修正しました。2017.01.28)

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残り部品の実装

2段目は、初段に比べて実装部品が少ないですが、半固定抵抗がパネルのボリュームと干渉しない配置とする考慮が必要です。差動のトランジスタは、選別No1とNo13(hfe=231)を使用します。エミッタの半固定抵抗は、時計回りで抵抗値が小さくなりバイアス電流が大きくなるように配線しました。出力段バイアス調整用のトランジスタはペアとならなかった選別No18(hfe=169)を使用しました。バイアス調整用の半固定抵抗も時計回りで抵抗値が小さくなり、バイアス電圧が大きくなるように配線しました。2段目の発振対策用のコンデンサは通電してから対策容量を確定させて実装します。終段のコンプリメンタリペアは、NPNを選別No2(hfe=195)、PNPは選別No9(hfe=204)を使用しました。

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動作確認

いよいよトータルの通電です。2段目のエミッタ接続の半固定抵抗およびバイアス用トランジスタの半固定抵抗ともに抵抗値を大きくなるようセットして電源オンします

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終段のトランジスタがカットオフしていることを確認して、2段目のバイアス電流を調整します。両負荷抵抗4.7kのコレクタ側の電圧が-0.6前後になるように調整します。バランスがとれない場合は、初段の半固定抵抗で調整します。ある程度調整できたら、終段のエミッタ抵抗間の電圧をモニタしながら、2段目のバイアス調整用の半固定抵抗値を小さくしていきます。終段のトランジスタに電流が流れ出したところで、出力に発振波形が観測されました。気にせず終段のバイアス電流を上げていき、調整値の半分の5mA程度の状態で発振対策を行います。2段目に発振対策用のコンデンサを接続して様子をみます。ディップマイカコンデンサは価格が高いので、検討用にセラミックコンデンサを用意しました。10pFでは治まらず、22pFで発振がとまりました。この容量でディップマイカコンデンサを発注します。

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発振が治まったところで、終段のバイアス電流を10mAまで上げて、最後に出力のオフセット電圧を初段の半固定抵抗で調整しました。調整完了時点の各部の電圧は以下のとおりです。

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続けて正弦波による入出力確認をおこないます。本記事キャッチ写真は、1KHz/0.9Vppの信号入力をしたときの入出力波形です。上段が入力、下段が出力波形です。また、下図は周波数を約600KHzに上げたときの入出力波形です。私の発信器の上限周波数ですが、目立った減衰は認められませんでした。

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動作上問題はなかったので、残り3回路分の実装を進めていきます。次回はリピート作業の為、作業量のわりに説明があまりいらないので、記事が薄くなる懸念がありますが、気にせず実装完了を目指します。

 

つづく(製作編6)

 

音楽の女神への挑戦(製作編4)

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製作編4

公平な比較を行う為にオペアンプ基板も新たに作り直しました。

公平な比較

今回電源もディスクリート化しますが、公平な比較をするためには、同じ電源で音を聴く必要があります。意を決して、MUSES01のアンプ基板も新規に作り直して、新たに作る電源と組み合わせて比較評価することとしました。作り直す基板は、ディスクリートアンプ基板と簡単に交換できるように、電源および信号入出力用の端子台の位置を合わせました。このため写真のとおり、スカスカの実装基板となりました。実は、端子台の位置出しのために、ディスクリートアンプ1チャンネル分の実装を事前に行いました。ディスクリートアンプ基板実装については次回に紹介します。

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シャーシの改造

MUSES01が乗った基板を取り外します。初めに信号の入出力および電源線のハンダ付けを外します。基板固定用のネジを外し、シャーシに固定されたスタッド4本も外します。このシャーシは今回で2回目の改造となります。組立直後にハムのトラブルが発生し、トランスの配置起因と判明して、基板とトランスの位置の入れ替えを行いました。このため、シャーシには使用していない穴がいくつか開いていますが、今回の改造でさらに穴が増えてしまいます。本体にゴム足がついていますが、基板固定用スタッドのナットと干渉するため、変則的な位置としていましたが、今回もさらに変更が必要となりました。写真は基板取り付け用のスタッドを取り付けた状態のシャーシ下面です。ちょっと痛々しいですが、普段は見えないため気にしない事にします。

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組立

信号ラインは、入力端子から出力端子へL/Rチャンネルを平行して無理なく配置すべきですが、今回はL/Rチャンネルの平行配置ができませんでした。実装スペースの制約のためあきらめました。入出力用のシールド線とトランスの電源線および電源ランプ用の電線全てを現状のものを使い回しました。2芯シールド線が固く、背面側の信号入力用の端子台に負荷がかかっていますが、様子見とします。一方、電源基板は比較的無理なく実装できました。

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動作確認

初めにオペアンプなしで、電源を入れて各ピンが所定の電圧となっていることを確認します。片方のオペアンプの+/-電源電圧が基板単品確認時とは異なり、+/-ともに0.5V程度シフトしていました。さらに確認すると、左右独立電源のそれぞれのGND電位が違っていることがわかり、測定するオペアンプに合わせてGNDを取り直すと正しい電圧になることがわかりました。左右電源のGND間の抵抗値を測定しましたが、なぜかつながっていない状態となっていました。トロイダルトランスは、LRチャンネルの電源で共通の巻き線を使用しているので、どこかがおかしいです。今週の作業時間切れが近づいているため、原因の特定を後回しとして音だしをしました。改造前と比べて音が違います。音の違いは、電源のGND問題を確認した上で、改めて紹介します。

意外なところに音楽の女神が

取り外した現行基板をなにげなく眺めていたところ、レギュレーター出力用の電解コンデンサ(100uF/25V)に目がとまりました。MUSEです。一昨年(2015年)に部品選択しましたが、意識せずに、HiFiオーディオ用ということで選定していたようです。今回は同じカ所の電解コンデンサをFG(Fine Gold)と1ランク落としているので、結果への影響が気になります。

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次回はディスクリートアンプ基板の部品実装を紹介します。

 

つづく(製作編5)

 

音楽の女神への挑戦(製作編3)

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製作編3

電源基板の実装を行います。

2SC3422/2SA1359

電源回路実装に入る前に、出力トランジスタについて紹介します。東芝製のコンプリメンタリ品で、データシート上に用途として「電力増幅用」、「低速スイッチング用」と記載されています。秋月電子の在庫の中で見た目と価格(40円)が手頃のため選択しました。40V/3A, Pc=1.5W(Ta=25℃)hfe=80min, ft=100MHzと今回の用途としては十分な特性です。代表して2SA3422のデーターシート抜粋を掲載します。

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実装方針

左右独立電源の実装可否を検討します。+/-の2電源を左右独立とするには、大きく回路系は4ブロックとなります。これ以外にトランス出力を全波整流するブロックも必要です。基板の長手方向に4ブロックを並べ、その4ブロックの手前側に全波整流ブロックを実装することとします。

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部品実装

シングルアンプの電源基板で使用して大変重宝した基板端子台を今回も使用します。実装スペースを取ってしまう事が欠点ですが、それを差し引いても採用のメリットが大きかったからです。基板の長手側の端に入力用の端子台、全波整流用のブリッジと電解コンデンサを配置しました。現行の電源では、一般品の4700uF/50V品を計4個搭載していますが、今回は実装スペースの関係からニチコンのオーディオ用4700uF/50V品を2個としました。続いて、基板の短辺にそって+電源回路を実装します。アンプ片チャンネル当たり、約34mAを消費します。電源回路放電用に1mAを流しているので、トータル35mAが電源回路出力トランジスタに流れます。トランジスタの印加電圧は約5Vなので、トランジスタの消費電力は175mWとなります。このレベルであれば、トランジスタの放熱は不要です。続いて、ー電源回路をその隣に実装します。電源入力部と反対側に電源出力用に3極の基板端子台を実装し、片チャンネル分が完成です。

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ここにも音楽の女神が

製作から話が脱線しますが、今回電源基板にはニチコンのオーディオ用標準品電解コンデンサKWとオーディオ用ハイグレード標準品FG(Fine Gold)を採用しました。KWは黒のスリーブに金文字で、FGは金スリーブで黒文字と、どちらも高級感のある外観です。ニチコンには、さらにハイグレード品としてミューズを唱うKZとES(両極性)電解コンデンサがあります。このミューズは挑戦相手のオペアンプのミューズ(MUSES)と綴りが異なり、単数形の「MUSE」です。いまさらですが、記事のネタとしてKZ品を採用すべきだったと少し後悔しています。ニチコンHP上には、オーディオ用電解コンデンサとして11品種が本記事公開時点で掲載されていますが、ミューズシリーズの2品種を含めて8品種(下図型式脇に※表示のあるもの)が生産終息予定品種となっており、ここでもオーディオパーツ不遇の時代を実感させられました。

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動作確認

話を戻します。本来であれば、トランスのAC出力を基板に入力して動作確認をしますが、改造予定のバランスボリュームは、まだ運用中のためトランスを接続することができません。仕方ないので、AC12Vのピーク電圧約+/-16.8Vをユニバーサル電源から入力して動作確認を行いました。確認のポイントがあまりないので、いきなり出力電圧を確認します。+側が12.1V、ー側が-12.1Vでした。ユニバーサル電源の電流表示値は5.5mAとなっていて設計どおりの値です

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もう片チャンネル分の実装と確認

基板上に回路ブロックが均等に配置されるように残りのチャンネル分の回路を実装します。最初に実装した配線を参考にするため、短時間で実装が完了しました。懸念していた、左右独立電源実装は写真のとおりきれいに納めることができました。

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先の回路と同様に動作確認を行います。電源自体が消費する電流値は先の動作確認時の倍の、11mAとなっています。出力電圧は+が12.3Vでーが11.9Vでした。+/-のばらつきが大きいですが、ツェナーダイオードのばらつき起因と考えられます。今回の用途では影響がないのでこのまま進めます。リップル特性等の評価は、トロイダルトランス接続時に改めて実施します。

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次回はアンプ回路の実装を行います。

 

つづく(製作編4)

 

音楽の女神への挑戦(製作編2)

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製作編2

アンプ基板製作の初めに、初段用のdual FETを変換基板実装します。

初段用Dual JFET

DCアンプの初段に使用するDual JFETについて改めてネットで調べてみました。ありました。同じような事に興味を持って、調査した結果を公開しているページを見つけました。「new_western_elec」の2015年10月4日の記事です。この記事によると、記事公開当時に製造中のDual JFETはこの2SK2145しかないとの事です。特性はすでに生産中止となっている2SK117と同じで、一部特性が違うとのことですが、昨年オーバーホールしたDCパワーアンプの初段に使ったDual JEFT 2SK150相当とのことです。この記事を読んで、2SK2145に対して親近感がわきました。唯一入手可能なこのDual JFETを継続して入手できることを切に願います。

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2SK2145GR

Dual JFETは選択の余地がない事が改めて確認できたのでの今回もこれを使用します。チップパッケージの為、DIPへの変換基板と両オスの連結ソケットを使って、DIP用のソケットに実装します。Idss分類は3種類(Y:1.2~3.0mA、GR:2.6~6.5mA、BL:6.0~14.0mA)ありますが、初段のバイアス電流を1mAとしたため、GR品を選択しました。

JFETの実装

変換基板は秋月電子で購入しました。型番はSOT23で10枚で150円です。それでは罰ゲームの時間の始まりです。机に両面テープを貼り、その両面テープにハンダ付けで温度が上がらない部分選び基板を貼りつけて固定します。

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基板の片側の3端子用のランドにハンダを付けて、端の1端子を除き吸い取り線でハンダを吸い取ります。端の1端子を他の端子の位置を合わせてハンダ付けします。次に、反対側の2端子をそれぞれハンダ付けします。端子が両端の2本のみなので、こちらの方がやりやすいです。3端子側に戻り、ハンダ多めで残り2端子を固定します。端子間がショートするので、吸い取り線で余分なハンダを吸い取ります。続いて実装確認をします。ソースと2つのドレイン端子間を基板のスルーホール部分で抵抗値を測定します。約100Ω~1KΩくらいであれば正しく接続されています。抵抗値がそれよりも高い場合は、もう1度ハンダをやり直します。ゲート側は、連結ソケット用のスルーホールとチップの足の間の抵抗値を測定します。0Ω近い値であれば問題ありません。

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連結ソケット接続

変換基板をDIP用ソケットに差し込む為の足となります。BTL DCパワーアンプ製作時は、連結ソケットを目一杯変換基板に差し込み部品実装面上に連結ソケットの足が立ち上がっていましたが、チップの実装修理時に連結ソケットの足がハンダ処理のじゃまになるため、今回は差し込みを浅くしました。

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ハンダ付けの際には、チップ基板実装時と同様に熱を加えない端子を両面テープで固定してハンダ付けをしました。

実装の確認

正しく実装されていることを確認するために、それぞれのJFETのIdssの測定を行います。トランジスタ選別で使用したジグに、8pinDIPのソケットが実装されているので、それを利用して測定します。測定回路は以下のとおりです。

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各基板のそれぞれ2回路を1回路づつ測定していきます。

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測定結果は以下のとおりです。Idss自体のばらつきはあるものの、Dualの2回路間のばらつきはほとんどありませんでした。4個ともに正しく実装ができていることが確認できたため、No.1,2とNo.3,4をそれぞれのチャンネルで使用することとします。

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次回は電源回路から実装スタートします。

 

つづく(製作編3)