マルチアンプ実験4(修理編2)

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修理編2

A級BTL_DCパワーアンプのヒューズが飛ぶ原因の絞り込みを続け、原因の特定を行い修理をします。

終段用トランスの確認

前回ヒューズが飛ぶ直接の原因として、終段用電源基板またはトランスまで原因の絞り込みを行いました。次はトランスの確認を行うために終段用の電源基板を取り外してトランス単体で電源を入れてみます。狭い空間に基板を詰め込んだため、メンテナンス時の作業性が悪いです。基板への配線も全てハンダ付けされていることも、作業性の悪さに拍車をかけています。それでもなんとか基板を取り外しました。

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この状態でヒューズが飛べばトランスの巻き線の絶縁不良ということになります。ヒューズを交換して確認を行います。コンセントを入れるとLEDが赤く点灯します。SWを入れます。緑のLEDの点灯回路は終段の電源基板上にあり、それを取り外しているためLEDは消えますが、終段用のトランスから軽い唸り音が聞こえています。念のためトランスの2次巻き線の電圧を確認します。出力が確認できてヒューズは飛んでいないため原因は終段用の電源回路と特定できました。

終段用電源

終段用電源は、物量を投入しましたが単純な回路です。

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初めに外観の確認をします。写真のとおりほぼ電解コンデンサ用の基板ですが、外観上は特にショートにつながるような異常は見あたりませんでした。

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故障個所の特定

大容量の電解コンデンサがついているので、テスタで抵抗値を計ってもショートの判断が難しいです。しばし考え、ユニバーサル電源の電流リミッタ機能を利用して電源を入れてみることにしました。手始めに電流制限値を0.5Aとして+/-3Vの電圧を入力してみました。最初にA点に+3V, B点に-3Vを入力してみます。

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電解のチャージアップが完了すると殆ど電流は流れませんでした。念のため定格の電圧(+/-8V)まで電圧を加えてみましたが問題ありませんでした。次に入力を反転させ、A点に-3V, B点に+3Vを入力します。ようやっと現象が再現しました。0.5Aの電流制限が働き、入力電圧は1.23Vまで下がっています。

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この結果から、現象発生時にブリッジダイオード内の4個のダイオードのうち、逆バイアスがかかっている1個ないし2個がショート破壊していると考えられます。早々にブリッジダイオードを交換します。(本記事のアイキャッチ写真参照)

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このブリッジダイオード(D4SBS6)は、ショットキーバリアダイオードブリッジで、フィン無しで2.3Aまで耐えられます。尖頭サージ順電流定格は60Aで、合計100,000uFの電解コンデンサの突入電流に耐えられない可能性を考慮して、製作時に予備と、さらに1サイズ上のものも購入してありました。今回は予備を使って修理を行いました。

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修理後の動作確認をユニバーサル電源を使って行います。方法は先の故障確認時と同様です。念のため+/-13Vまで電圧印加して問題ないことを確認しました。

■確認1

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■確認2

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今回修理はここまでで時間切れです。続きは次回に紹介します。

おまけ

ビバホームでガラス管ヒューズを探していた時に、端末保護キャップというものを見つけたので購入してみました。

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材質は軟質塩化ビニール製で、透明なものと黒の物があります。内径が2.0mmから0.5mm刻みでラインナップされていたので、黒を3種類買ってみました。価格は10個セットでそれぞれ189円です。スタッドを脚代わりにしてネットワークをスピーカーの上に載せていますが、キズ防止のために段ボールを敷いていました。このスタッドのネジ部のカバーとして使用し、キズ防止とできないか確認します。最初に内径3.0mmのものを被せましたが、緩くてはずれてしまいました。次に2.5mmを被せたところいい感じだったので、長さをスタッドのねじ部分に合わせて切断し被せてみました。いい感じに収まりました。これで見栄えに問題あった、スピーカー上の段ボールを取り去ることができます。

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つづく(修理編3)

 

マルチアンプ実験4(修理編1)

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修理編1

実験1で壊してしまったA級BTL DCパワーアンプで1000Mウーファーを鳴らすために修理をします。

実験4

前回実験3でNS-1000Mマルチアンプ駆動して良い結果が得られましたが、ウーファーの駆動にエルサウンドのBTLパワーアンプを使用しました。さらに強力なA級BTL DCパワーアンプで鳴らしてみたいと考え、重い腰を上げて修理をすることにしました。

A級BTL DCパワーアンプ

昨年(2016年)の4月頃に、学生時代から暖めてきた構想を元に設計製作したモノラルパワーアンプです。入力はdual J-FET+カスコード接続の差動方式で、出力はバイポーラトランジスタによるパラレルコンプリメンタリー方式によって低出力インピーダンスを狙いました。出力段電源のトランスはセンタータップ付きのAC12V/5A巻き線を持ち、平滑用コンデンサは10,000uF x10個を搭載し、出力8W/8Ωクラスのモノラルパワーアンプとしては破格の容量となっています。

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症状

実験1でフルレンジユニットを2個使ったネットワーク方式の2wayスピーカーを組み立ててマルチアンプシステムの比較元の音出しを行いましたが、その際に配線がショートしている事に気づかずにこのアンプを接続して出力を上げてしまって壊してしまいました。具体的な症状は電源の大元に入れている2Aのヒューズが飛びます。終段のトランジスタがショート状態で壊れている事が原因と推測しています。終段の電源トランスの2次巻き線は12Vなので、1次側の2Aのヒューズが飛ぶということは、2次側に17A以上の電流が流れていることになります。

故障個所の特定

作業に入る前に終段およびドライバ段のトランジスタを観察します。Hot/Coldチャンネルともに、外観上異常はありませんでした。

■終段のトランジスタ

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■ドライバ段のトランジスタ

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次に終段のパラレルコンプリメンタリトランジスタを切り離して、ドライバ段までの動作を確認します。

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ドライバは基板上に実装され、フィードバックも基板内でかけているので終段を外しても基板単体で動作します。Hot/Coldチャンネルを同時に確認します。終段の切り離しは、各チャンネル共に+/-電源とNPN/PNPのそれぞれベースの入力および出力の5ライン、合計10ラインを外します。早々に終段を切り離した状態で電源オンしてみます。このアンプはコンセントを挿すと初めに電圧増幅段の電源が入り、LEDが赤く点灯します。緊張しながら終段の通電の為にSWをオンしました。ブンというトランスの唸りとともに一瞬にしてLEDが消灯しました。予想に反して、ヒューズが飛ぶ原因は終段ではありませんでした。

ドライバ段の確認

次はドライバ段の確認をします。ドライバ段を切り離して同様に確認をします。

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この状態の終段用の電源の負荷は電源LEDのみです。先ほど同様に確認を行います。コンセントを挿すとLEDが赤く点灯します。今度は大丈夫と思いながらSWをオンしました。またしても悪夢の繰り返し、ブンというトランスの唸りとともにLEDが消灯しました。こうなると、原因は終段用の電源回路もしくはトランス自体ということになります。予備用のヒューズが底をつきそうです。

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次回、さらに原因の絞り込みを行い修理を続けます。

 

つづく(修理編2)

 

マルチアンプ実験3(まとめ編)

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まとめ編

1000Mのセミマルチアンプ駆動暫定環境の構築が完了したので音出しを行い、その音の印象を紹介します。

実験3環境

音出しの前に、改めて構築したシステムの特徴を箇条書きにまとめます。

・NS-1000Mを使用したセミマルチアンプ駆動システム
 ウーファーはチャンネルデバイダー+アンプダイレクト駆動
 ツイーターとスコーカーはネットワークによる帯域分割駆動
・フルバランスシステム(USB-DAC~スピーカーユニット)
ウーファーの駆動はBTL DCパワーアンプ
・ツイーターとスコーカーの駆動はEL34ppパワーアンプ(バランス入出力)
・ベッセル特性アクティブフィルター採用のチャンネルデバダー(バランス入出力)
 Low出力:fc=500Hz, -12dB/Oct
 バッファとアクティブフィルターにMUSES01オペアンプ使用

簡単にブロック図を描いてみました。

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実験3システムの狙い

今回音を聴くにあたり、そのポイントを改めて整理します。

・NS-1000Mの重く鳴らしにくいと言われているウーファーユニットを低インピーダンスで駆動することどのように鳴るのか?
・EL34ppアンプの中域の美しい響きと、BTL DCパワーアンプの低域の駆動力の両立
・ツイーター、スコーカー信号伝送経路からウーファーによる逆起電力の影響の排除

このようなポイントを意識して音を聴いてみたいとおもいます。

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音の印象

最初に音を聴いた時の全般的な印象を紹介します。中高域はEL34ppアンプの美しい響きと、低域はBTL DCパワーアンプの駆動力に基づく力強い音がします。中域はEL34ppパワーアンプによる通常駆動時より響きが美しく聴こえますが、ウーファーの逆起電力の影響を受けずにスコーカーとツイーターを駆動している為でしょうか?低音の音の表情は、オリジナル状態とだいぶ変わりました。楽曲によっては低音の量感は後退したように聴こえますが、レベルおよび帯域は十分あります。ウーファーユニットの低インピーダンス駆動により制動が効き余計な共振が押さえられた為と考えられます。アコースティックギターやドラムの胴の部分の響きが聴きとれます。海外のカラっとしたスタジオで録音された楽器の音とでもいいましょうか?NS-1000Mの音の最終調整はネットワーク込みで行われているはずなので、設計者とは違った音を聴いていると思いますが、私はこの音の方が好みです。もしかするとネットワーク設計時にNS-1000Mもマルチアンプ駆動されていたのではとも考えてしまいました。それでは具体的な楽曲の音の印象を紹介していきます。

 ■アズ・ライト・アズ・レイン/BJ2

音の響きが美しく特に中音域の奥行き感をより感じます。ストリングスがきれいに鳴ります。ベースの基音が明瞭に聴きとれます。

■卒業写真/井筒香奈江

ウッドベースのアタック音がリアルで音も明瞭。ボーカルは素直な印象です。

ゴンチチ

アコスティックギターがよく響きます。ギターの胴の響きが感じられ、他弦楽器が響き、奥行き感もより感じられます。

■Highway star/MACHINE HEAD

ベースとドラムが軽快に鳴り、リズムがより安定して聴こえます。

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木星/惑星

ホールの響きがより感じられ、演奏の奥行き感が増して聴こえます。

■冬音/海風

ベースの音がクリアで量感と芯のある音がします。

という事で、いくらでも聴き込んでしまいます。キリがないので一旦まとめます。

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まとめのまとめ

今回聴いた音はよりモニター調の印象で、私の好みの方向に変わりました。今回も実験3という事でまだ試験運用状態でしたが、このシステムを普段使いできる物へとブラッシュアップしていきたいとおもいます。4連ボリューム2個の音量調節は意外と操作性は悪くなかったので、この仕様ままケースに納めて次のステップに進めたいと考えています。

次回は、常時運用できるようにセットアップを進めたいとおもいますが、具体的に何をするのか現時点では未定です。

 

つづく(??編)

 

マルチアンプ実験3(製作編2)

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製作編2

1000M残り1本の改造およびネットワークの配線、チャンネルデバイダのセットアップを行い音出しの準備を完了させます。

1000M改造

前回の記事で紹介しきれなかった部分を改めて紹介します。各スピーカーユニットとターミナルの接続は、イモねじは使わずにハンダ付けします。念のためイモねじを外して、電線芯線をターミナルに差し込みハンダ付けします。配線長に余裕がないので作業性が悪いですが、根気でカバーしました。

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配線にストレスがかからないように補強板の位置を裏板の穴に合わせてターミナルパネルをはめ込みます。補強板のサイズを裏板の穴のサイズから1回りだけ小さくした為、補強板と穴の外形のクリアランスは大きくありません。補強板の取り付け位置がずれるとターミナルパネルがハマらなくなるので要注意です。前回の記事のターミナルパネル取り付け写真(前回記事のアイキャッチ写真)は、パネルをねじ止めしていませんでした。2本目は、ねじ止め後の写真を掲載します。

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ネットワークの配線

ツイーターとスコーカーはオリジナルのネットワークを使用します。取り外したネットワークの4スミの取り付け穴にスタッドを取り付けて脚としました。これでスピーカーの背面に付いていたオリジナルのスピーカーターミナルが使用できます。実際の運用は、このネットワークをスピーカーの上に置いて使用します。ツイーター出力と製作したパネル上のツイーター用のターミナル間を配線します。ネットワーク側はハンダ付けして、ターミナル側は購入したバナナプラグを取り付けて接続します。スコーカーの配線も同様に行います。残ったウーファー用出力には実験2で行ったとおり8Ωのダミー抵抗を接続しました。これでネットワークとスピーカー間の配線は完了です。(本記事アイキャッチ写真参照)スピーカーターミナル側は写真のとおりです。

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実験1で、A級BTL DCパワーアンプを壊してしまった時の教訓から、この段階でアンプ側から見たスピーカーターミナル間の抵抗値を念のため測定します。結果は以下のとおりです。

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ウーファー側の抵抗値が定格インピーダンスに比べて低いですが、どうやらウーファーの特性のようです。写真は取扱説明書に掲載されたインピーダンス特性グラフです。低域は20Hzまでしかありませんが、100Hz近辺のリアクタンス分が0となったポイントのインピーダンスが5.6Ωまで下がっていることからDCの抵抗値は測定結果のとおりと考えられます。他問題なかったので次に進めます。

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アンプの接続

実験2で行った時と同様にHigh側(ツイーターとスコーカー)をEL34ppアンプで駆動します。スピーカーケーブルは通常1000Mを鳴らす際に使っているものを使用しました。ウーファーも実験2と同様にELSOUNDのBTL DCパワーアンプで駆動します。ケーブルは今回購入したバナナプラグを使って新たに作成しました。

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今回の実験では、ウーファーの駆動に自作のA級BTL DCパワーアンプを使用したかったですが、いまだに修理ができていません。ここのところマルチアンプ実験対応だけで目一杯なので、ある程度目処をつけて修理の対応をしたいと思っています。

チャンネルデバイダーのセットアップ

前々回の記事で改造を行ったベッセルフィルター基板を、バラックセットアップ用の段ボールのベースへ取り付けます。この段ボールのベースは強度はありませんが、取り回しが楽になり安全性も高まります。チャンネルデバイター基板ということで入出力が多く、接続に手間がかかりました。基板1枚あたりバランス入力x1, バランス出力x2, +/-電源入力x1を端子台へ全て接続します。

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念のため、無信号状態で出力オセット電圧を確認しました。これで音だしのためのセットアップは完了です。

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次回は音を出しを行い、その音の印象を紹介します。

 

つづく(まとめ編)

 

マルチアンプ実験3(製作編1)

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製作編1

部品および工具の準備が整ったのでNS-1000Mをマルチアンプ対応に改造します。

ターミナルパネルの加工

t=0.8mm 300 x 400mmのアルミ板から2本分のターミナル用のパネルを作ります。

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面積的にはだいぶ余裕があります。いつものように加工図面を等倍に印刷し、外形図に沿って切り取ります。切り取った加工図を、アルミ板の2辺にそって貼り付け、穴位置にポンチで印を付けます。力を加減しないと板厚が薄いので歪んでしまいます。続いてカット用に残り2辺に切取線を引きます。加工図を剥がして2辺を金切り鋏でカットしてゆきます。安物の金切り鋏なので、鋏の連結部に加工板が当たってしまい簡単には切り進めません。こんな事なら多少高くても加工対象の板を逃げる構造のものを購入すべきでした。多少歪んでしまいましたが、なんとか2辺のカットができました。次に穴を開けてゆきます。最初に2mmのドリルで穴をあけ、3.2mmのドリルで穴径を広げます。ターミナル固定用の穴は、さらに6mmのドリルで穴を広げて、残りはリーマーで11mmまで穴を大きくします。バリがでるのでヤスリで仕上げます。だいたい11φ1穴の作業時間は5分でした。ターミナルパネル1枚分の6穴を広げるために約30分、好きじゃないとできません。最後に取り付け部分の形状に合わせて4スミを切り落とし、ヤスリをかけてR形状に仕上げました。

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補強板の加工

120 x 600mm t=14mmのラワン材をカット加工のみしてもらいました。120 x 160mmを予備を含めて3枚分です。この板のセンターにターミナルを逃がす角穴を開けます。ターミナル用アルミ板加工図面を準備した板の中心を合わせて置き、ターミナルを逃がすことができる長方形の4スミにキリで目印を付けます。この4スミに合わせてカット線を引き、押引鋸の刃を入れるために対向する2スミにφ6mmの穴を開けます。この穴から、カット線に沿って切っていきます。久しぶりの木工加工と、t=14mmの厚みのため押引鋸のカットは予想以上に苦労しました。正直なところ2枚の加工が限界です。

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ターミナルの加工

ターミナルは、バナナプラグ対応のものを購入しました。今回は左右分で計12個必要なので、従来アンプの出力に使用したものよりも価格が安い物を選定しました。それでも単価560円で、合計で税込み7,257円となりました。写真のとおり、樹脂部品2個でパネルを挟み込んで固定し、パネルとの絶縁が保たれます。回り止めの機構がないので、バナナプラグのみで運用した方が良さそうです。

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スピーカーユニットとの配線接続は、イモねじによる締め付けです。強く閉め込むとマイナスドライバを噛み込む部分から割れてしまうことがわかりました。仕方がないのでハンダ付けして使用します。ついでに配線側のターミナルも紹介します。金メッキバナナプラグ12本セットで1,123円と破格のお値段です。こちらはアマゾンで購入しました。決め手は今回必要な12本セットだった事です。プラグからの線の引き出しは直角方向となります。ターミナルと壁の隙間がない場合は重宝しそうです。

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加工済みの板金にターミナルを取り付けていきます。6個並んでも配線用のイモねじにアクセスできるように取り付けの向きを考慮しましたが、結局ハンダ付けすることになったので意味がなくなりました。

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最後に補強板をねじ止めします。合計10本のねじを打ちましたが予想以上に頑丈に仕上がりました。

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完成したターミナルパネルをスピーカーに取り付けますが、その前に各ターミナル上からツイーター、スコーカー、ウーハー用の配線をハンダ付けします。パネルを所定の位置にはめ込み、元々のパネルを固定していた木ねじで固定します。なかなかいい感じに仕上がりました。ターミナルの金色とパネルの銀色が成金仕様のように見えてしまいますが、設置後は見えなくなるのでそのままとします。(本記事アイキャッチ写真参照)

次回はもう1組のスピーカー改造と、ネットワークへの接続、チャンネルデバイダーのセットアップと音だしの為の最終セットアップを行います。

 

つづく(製作編2)

 

マルチアンプ実験3(設計編)

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設計編

NS-1000Mをマルチアンプ駆動するための改造設計をします。

チャンネルデバイダー改造設計

fc=500Hz, K=1.4(ベッセル特性)前提でCRの定数を決めます。基板は今までの実験で使用した暫定仕様のもの改造して使います。

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フィルター用コンデンサの接続に誤りがあり、回路図を修正しました。詳細は、2018-02-09「女神たちの争い(製作編3)」を参照ください。

上記の回路で最初にC1とR1を決めます。入手性を考慮してC1=0.033uF前提で計算してみます。fc=1/(2πC1R1)からR1が決まるので下記の結果から一旦、R1=10kと仮決めします。

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続いてC2とR2を決めます。K=1.5となってしまいますがC2=0.022uF前提で計算します。関連する式はR2=kR1, C2=C1/k, fc=1/(2πC2R2)です。

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上記表の計算結果から、fc=483Hz, K=1.5のパラメーターで改造を進める事にします。下記が定数を反映した回路図です。

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チャンネルデバイダーの改造

fcを決定するCR類は全てポストにハンダ付けしてあるので容易に改造ができます。最初に現状のfc=2kHz前提のCRを取り外します。代わりに上記で決定した定数のCRをハンダ付けします。見た目はあまり代わり映えしません。

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動作確認

最初に無信号入力状態で出力オフセット電圧の測定を行いました。

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続いて周波数特性の測定を行います。前回同様に1Vppの正弦波を入力して測定を行いました。

■ch1周波数特性

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■ch2周波数特性

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前回同様に、10kHz以上の結果は出力信号が小さく信頼性はありません。グラフは青がHotで紫がColdです。ch1は減衰領域でHot/Cold間で特性差がありますが、測定誤差でしょうか?念のため100Hzの矩形波応答も確認しました。k値がベッセル特性のk=1.4からK=1.5とずれていますがリンギングはありませんでした。

■100Hz矩形波応答

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■100Hz矩形波応答(拡大)

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所望の特性となっていることが確認できたので次に進みます。

NS-1000Mの改造設計

裏板にねじ止めされているターミナルパネル兼ネットワークの代わりにターミナルパネルを製作します。オリジナルターミナルパネルの図面はないので現物を測定して図面を作成します。測定の為にネットワークを取り外しました。部品はきれいな状態です。(本記事アイキャッチ写真参照)密閉型なので、吸音材がふわっと目一杯つまっています。学生時代に内部配線を日立電線のSX-104に変更し、オリジナルのコンデンサに高域特性改善目的で小容量のフィルムコンデンサが取り付けていました。(本記事アイキャッチ写真参照)写真には写っていませんが、基板のパターンに沿ってφ1.0の無酸素導線が配線されていました。

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ターミナルパネルの設計

加工性を考慮してt=0.8のアルミ板で製作します。強度が不足するので、14mm厚のラワン材を裏側にねじ止めします。製作したパネルのスピーカーの裏板への取り付けは、位置も含めてオリジナルのねじをそのまま流用します。この対応によりオリジナル状態へいつでも戻すことができます。取り外したパネル兼ネットワークの取り付け用のねじ穴の位置を測定してアルミパネルの加工図を作成しました。取り付け穴以外にはターミナル3組用のφ11mmと、ラワン材固定用のねじ穴10個です。

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図面上の取り付け用のねじ穴の間隔は46としていますが、縦方向(図面上は横方向)については、センターの穴位置合わせで間隔を46.5として現物との位置あわせしました。アルミ板とラワン材は、いつものようにビバホームで購入しました。価格はそれぞれ948円と398円です。ビバホームでは有料のカットサービスがありますが、アルミ板は扱っていませんでした。仕方がないのでラワン材の外形カットのみを依頼しました。1カット29円です。ラワン材の加工図は作成していませんが、外形は120mm x 160mmです。ターミナルを逃がすための角穴をあけますが、穴開けのカットサービスも扱っていません。仕方がないので、アルミ板のカット用に金切りはさみと、ラワン板の穴開け加工用に押引鋸を購入しました。価格はそれぞれ648円と680円でした。

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次回は準備した部材と工具を使ってターミナルパネルを製作します。

 

つづく(製作編)

 

マルチアンプ実験3(構想編2)

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構想編2

今回の実験の中で1番の暫定項目のウーファーを中心にマルチアンプ用のスピーカーを検討します。

はじめに

16cmフルレンジをウーファーとして使った実験用スピーカーであの迫力ある音が再生できたので、本来のウーファーをマルチアンプ駆動したらと思うと気持ちがはやります。今回は本格運用に向けてマルチアンプ用のスピーカーを検討します。

ウーファーの選定1

まずは定番のFostexのラインナップを確認してみます。PW、FW、Wの3つのシリーズがあります。PWはカンスピと呼ばれている入門用のものなので対象外とします。Wシリーズはアルニコマグネットを使用した高級なシリーズで30cmと40cmの2機種がラインナップされています。値段が高いことと口径が自作するには大きいのでこれも除外します。そうすると残りはFWシリーズになります。FWシリーズは10cmから80cmまでの7機種がラインナップされています。今回の対象としては、20~25cm口径のものを考えていたので、対象は1モデルしかありませんでした。FW208HSです。簡単に仕様を転記します。

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外観はまずまずですが、残念ながら仕様の1点が希望にマッチしません。それは能率87dB/Wです。現状のシステムは能率90dB/Wのスピーカーを部屋で十分に鳴らす前提で出力を決めています。3dBの差は倍の出力が必要となりますので影響が大きいです。価格も私の希望よりも少し高めです。仕方ないので他をあたってみます。

ウーファーの選定2

つづいてスピーカービルダーのメッカ、コイズミ無線の商品をあたってみます。海外製の私の知らないメーカーのユニットが多数ラインナップされています。価格は3,000円くらいから高額のものまで多様です。いくつか目についた物をピックアップしてみます。

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この中では、20cmのSPH-200KEが使いやすそうです。ここまで調べて改めて考えてみましたが、実は一番の問題は、これ以上スピーカーをどうやって置くかです。この問題を後回しにしてでも使ってみたいユニットが見つかったのであれば話は別ですが・・・。これは簡単に解決できる問題ではありません。とはいえマルチアンプの実験をさらに1歩進めることはあきらめられません。しばらく考えた結果方針を決めました。

実験3用スピーカー

置き場所がないのであれば、今あるものを使うしかありません。お気づきの方もいるかとおもいますが、私のメインスピーカーのNS-1000Mをマルチアンプ駆動してみる事にしました。ネット検索をしてみると、少なからず先人がいました。参考にさせてもらいつつ検討をしてみます。実験を進める上での構想を整理します。

・元の状態に戻せるように進める

・スコーカーとツイーターは、オリジナルのネットワークを使用する

具体的な対応

NS-1000Mの裏板には、ターミナルのパネルと兼用のネットワークがねじ止めされています。(本記事のアイキャッチ写真を参照)これを外して、自前でターミナルパネルを作ります。このターミナルパネルには、ウーファー、スコーカー、ツイーター接続用に3組のターミナルを取り付けます。このうちスコーカーとツイーターのターミナルは取り出したネットワークのそれぞれの端子と接続します。ネットワークのウーファーの出力端子は、実験3構想1で行ったように8Ωのダミー抵抗を接続します。残りのウーファーのターミナルは、BTLアンプとダイレクトに接続します。

NS-1000Mのネットワーク

久しぶりにNS-1000Mの取扱説明書を引っ張り出しました。

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クロスオーバー周波数は500Hzと6kHzで減衰特性は-12dB/Octです。まだ具体的な作業を進めていないので、ネット上にアップされたネットワークの外観写真を転載させていただきます。

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今回のマルチアンプはウーファーのみダイレクト駆動なので、クロスオーバー周波数500Hzの定数検討を行う事になります。

次回は実験3として具体的な設計を進めていきます。

 

つづく(設計編)