2017東京インターナショナルオーディオショウ(番外編10)

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番外編10

HPアンプ製作は佳境ですが、昨年に引き続き東京インターナショナルオーディオショウを見学してきましたので、2回に渡ってレポートします。

2017東京インターナショナルオーディオショウ

今回は35回目で、9/29(金)~10/1(日)の3日間、有楽町の東京国際フォーラムで開催されました。私の自宅は小田急沿線ですが、新百合ヶ丘多摩急行に1回乗り換えで日比谷まで行き、そこから5分程で会場につきました。アクセスが良いです。今回は高校時代の同窓の仲間と事前に連絡をとって現地合流していっしょに見学してまわりました。

トライオード

昨年は、山崎社長の講演が大変良かったので、今回も訪れてみました。せっかくなので朝倉怜士先生の講演時間に合わせて入場しました。今回の講演の対象製品はミュージックサーバーcocktail audio X50とX35です。

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フロントには、スロットインのCDプレーヤと、7インチのTFTディスプレイがあり、内蔵するストレージに保存されたオーディオファイルをリモコンとこの表示パネルを使って検索して再生します。背面にHDMI端子を持ち、市販のテレビに接続すれば表示パネルの内容を大画面に写すことができます。

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X50とX35の違いは、X35はオールインワンタイプで100W+100Wのデジタルアンプが内蔵されているため、スピーカーを接続するだけで利用可能です。一方、X50はDACすら内蔵しないため、別途USB-DAC等のD/Aコンバーターが必要となります。無駄なくユーザーのこだわりのDACを使うことができる仕様となっています。価格はX50が380,000円で、X35が280,000円といいお値段です。朝倉怜士先生の講演の紹介の前に、今回デモで使用された機器を確認しておきます。スピーカーはスペンドールのSP200で、パワーアンプはTRX-M845です。昨年の講演で使用されたものと同じです。詳細は2016年10月7日の記事を参照ください。

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デモはX50で行われたため、D/A変換としてDAC212SEが使用されていました。オランダのDiDit High-End社製で、定価は450,000円です。DAC出力でバランス信号を生成するバランス出力タイプのDACで仕様面で好印象です。

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それでは、朝倉怜士先生の講演を紹介します。

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スピーカーやパワーアンプのデモと比べてミュージックサーバーのオーディオ的なデモは難しい面があると思いますが、それをカバーするように冒頭からゲスト紹介がありました。ケンバニストの塚谷水無子さんです。

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9/13(2017年)にキングレコードからリリースされたばかりの新譜BACH ORGAN WORKS2から「トッカータとフーガ」がデモに使用されました。

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このアルバムは、オランダの聖ローレンス協会のパイプオルガンが使用されたとの事ですが、1725年に製作されたもので、ヨーロッパ屈指のオルガンだそうです。小柄な塚谷さんが、大型のパイプオルガン挑むときの苦労話など楽しく聞かせていただきました。音は荘厳な感じで、使われたシステムと良くマッチしていました。その後は通常どおり朝倉先生持参の音楽ソースの演奏となりましたが、その中でStereo Soundが今年(2017年)の8月にリリースした太田裕美「心が風をひいた日」から木綿のハンカチーフが演奏されました。リマスタの際にダイレクトにDSD化されたとの事で、70年代の音源とは思えない鳴りっぷりでした。

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全般的に、パワーアンプTRX-M845とスピーカーSP200の音を聴いた印象ですが、オーディオサーバーX50を印象付ける講演の工夫が感じられました。

リンジャパン

老舗のメーカーなので知っていましたが、ブースを訪れるのは初めてです。写真のとおりすごくシンプルな試聴室です。

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今回聴いたものはEXAKTシステムです。構成としては、ヘッドユニットとEXAKTエンジン搭載のスピーカーです。スピーカーまで音楽信号をデジタル伝送し、スピーカーの中のEXAKTエンジンでデジタル処理で帯域分割して、スピーカー毎にD/A変換するマルチアンプのシステムです。

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デモされていたのは、フラグシップのKILIMAX EXAKTで、ヘッドユニットが機能により1,600,00~2,800,000円です。

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EXAKTエンジン搭載スピーカーは350/1でペアで7,500,000円もします。スピーカー内には6チャンネル分のアンプを内蔵しています。非常に高額なシステムですが、音は色付けがなく、こんな高いシステムに対しておこがましいですが、私のシステムの狙う音の方向と同じ様な印象で好感がもてました。

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フォステクス

オーディオ製作を行っている人にはこのブースは外せません。このコマのデモ対象は、先月発売された20cmフルレンジユニットFE208-Solとその関連製品です。その本題に入る前にYT88-Sol+FE88-Solのデモが行われました。

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従来のエンクロージャはYK-88-Solで、塗装色がパーシモンオレンジで好き嫌いが出そうな仕様でした。YT88-Solはショウ開催時点では公式発表されていないようですが、写真のとおり落ち着いた色の仕上げになっています。

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デモは永井龍雲のギターの弾き語り曲で、このスピーカーにマッチした選曲でした。ボーカルが明瞭で、フルレンジならではの定位感がよかったです。それでは本題のFE208-Solのデモを紹介します。20cmフルレンジユニットですが、-Sol型番が示すとおり、2層抄紙ESコーン、大型フェライト外磁型磁気回路、銅キャップが使用されています。マグネットは通常使用される物を2段重ねされていてユニット重量が8.7kgもあります。

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マグネットの内側には銅キャップが挿入されて低歪みの磁気回路に仕上げられています。

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この強力な磁気回路と軽量な振動系により、Q0=0.15の特性となっていてバックロードホーン用としてまとめられています。今回のデモでは、いっしょに製品化されたバックロードホーン型スピーカーボックスに取り付けられていました。ホーン長は190cmでこの組み合わせの際の能率は100dBを越えるとのことでした。ユニットが35,000円でスピーカーボックスが1台200,000円と1本あたり235,000円といい値段になっています。

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音は中域が明瞭で、低音はふっくらした感じで鳴ってました。合わせて製品化されたホーンツィーターT90A-Superが途中から追加されました。

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内磁型のマグネットが採用されていますが、最初はアルニコマグネット3個で企画スタートしましたが、価格が10万円を越える状況となり、2個に見直された経緯が説明されました。それでもオリジナル製品T90の2倍となっています。ネットワークは0.68uFのコンデンサ一発で接続され、その際のクロスオーバーは30KHzとの事でした。こんな高いクロスオーバーで有無の違いがでるか疑問でしたが、付けた時は低音も生き生きなっているように感じました。ツイーターの定価が39,000円なので、組み合わせ価格は274,000円となり、私の使っているNS-1000Mの2倍以上の価格になります。昔の感覚では高級スピーカーとなります。製品によらず1980年代の常識で考えると製品価格はありえない程高くなっています。売れる数を考えたら仕方ないでしょうか?少し残念だった点は、技術系の方の説明に共通している言えるようにおもいますが、せっかく部品等の現品を持参されて手に持つのであれば、もっとしっかり見せて欲しいとおもいました。部品現品を見られるのはこのような講演の魅力の1つだと思います。次回、つづきのレポートをします。

 

つづく(番外編11)

A級バランスHPアンプ製作(製作編20)

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製作編20

残りの配線を行い通電確認を行います。

ヘッドフォン出力配線

残った配線は、ヘッドフォンアンプ出力とヘッドフォンジャック間です。ヘッドフォンジャックへの配線仕様を確定させるため、インターネットで3.5mm3極と2.5mm4極のヘッドフォンプラグの接続仕様を検索してみました。その結果、以下の写真の仕様となっていることが解りました。

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念のため、ヘッドフォンを着けて対応する端子をマルチメータで抵抗測定してみました。測定用の電圧でヘッドフォンから微かにノイズが聴こえます。極性まではわかりませんが検索した仕様とこの確認結果は一致していました。

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次にヘッドフォン側の接続を外してケーブル単品状態として反対側の端子をヘッドフォンジャックに差し込み、上記確認した接続仕様を元にヘッドフォンジャック側の端子接続仕様を確認しました。その仕様に従いヘッドフォンアンプ出力とヘッドフォンジャック間の接続を行います。R-channel側は配線長が短いため、2芯シールド線の信号線を取り出して配線しました。L-channelのバランス出力は、基板側はGNDを含めて接続しますが、ジャック側はGND線をカットし、信号線2本のみを接続しました。

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L-channel側のアンバランス出力は、2芯シールド線のGNDラインをカットして使用せずに、2本の信号線を使って配線しました。

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これで全ての配線が終わりました。写真は通電確認前の状態で配線が束線していないため、ごちゃごりゃしています。

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通電確認

いつもは、ステップを踏んで通電を行いますが、全ての基板の通電が単体で完了しているため、今回は一気に通電をします。とは言うものの、ヘッドフォンアンプの終段に+/-9Vを印加するのは初めて(単体確認時は+/-6V)なので気はゆるせません。ヒューズホルダに2Aのヒューズをセットして通電を開始します。電源を入れて初めに確認をしたのは、電源ランプの点灯、+/-12V, +/-9V電源出力の確認です。問題なかったので、ヘッドフォンアンプ出力のオフセットと終段のバイアス電流の確認を行います。その間、電源の放熱器の温度およびヘッドフォンアンプ終段のトランジスタの温度を手で触って確認しました。終段のバイアス電流が100mA近くまであがっていたため、所定の70mAまで下げました。+/-9V電源用の三端子レギューレータ用の放熱器の温度が触わり続けるのが辛い状況まであがってしまったので、急遽終段のバイアス電流値を70mAから60mAに下げる事にしました。これに伴い、ヘッドフォンアンプの終段のトランジスタの温度と電源の9Vの三端子レギュレータ放熱器の温度が下がり、触り続けられる程度になりました。この状態で、ヘッドフォンアンプの調整を全てやり直しました。この結果、電源の放熱器、ヘッドフォンアンプの終段ともに温度は高いですが、触れない程ではなく寿命面で心配ないレベルとなりました。このように写真が撮れない程に慌ただしい状態となってしまい、次に同様の通電確認を行う場合は基板1枚づつ通電を行うことにしたいと思います。

動作確認

動作確認はいきなり信号を入力して音を聴いてみました。初めにバランス出力の音を確認します。とんでもなく変な音です。続いてアンバランス出力の音を確認します。

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ハムが聴こえますがいい感じで鳴ってます。ここまでの確認結果を箇条書きします。

・バランス出力はとんでもなく変な音

・アンバランス出力にはハムが聴こえる

・ゲインが高すぎて、ボリュームのコントロール範囲が著しく狭い

完成が見えてきたとの想いもつかのま、まだまだ手がかかりそうです。次回、上記の不具合について1つづつ検証を行い、対策をとっていきます。

 

つづく(製作編21)

A級バランスHPアンプ製作(製作編19)

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製作編19

電源系の配線が終わったので、信号系の配線を行います。

信号入力ラインの配線

本機には、アンバランス入力とバランス入力の2系統あります。どちらもリアパネルの端子からプリアンプの入力用端子台に配線します。アンバランス入力はRCAピンジャックで入力しますが、この配線にもベルデン1503A2芯シールド線を使用します。2芯は束ねて信号線として使います。

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プリアンプ側への配線は、解りやすいように正面から見て右側に右チャンネルを配線しました。次にバランス入力ラインを配線します。XLRコネクタにはHotとColdの接続仕様に2通りあり、一部の市販のアンプでは、スイッチでHotとColdの入れ替えができる製品が販売されていますが、私の製作では全て以下の仕様に統一しています。

1pin:GND

2pin:Hot

3pin:Cold

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アンバランス入力と同様にバランス信号もプリアンプ基板の端子台へ配線しました。2芯シールド線の端子台への接続は、被覆を長めに剥いてGND線を端子台に接続した時に根元まで入る位置でカットし、2本の信号線は長さに余裕をもって皮むきをします。2本の信号線は線径が細く容易にフォーミングできるので、ループ状にして先端を端子台に差し込みました。

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ヘッドフォンアンプ入力ラインの配線

ボリュームでレベル調整した信号をヘッドフォンアンプの入力用端子台に接続します。4連ボリュームの手前側の2つをR-channel用とし、一番手前をHot、隣をColdとして使用しました。GNDはHot/Coldで共通なのでボリュームの端の2端子を単線を使ってショートさせました。L-channelも同様に配線します。

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ここで気づきましたが、現状ヘンドフォンアンプへのGNDの配線は、入力用シールド線のGNDのみです。さすがにアンバランスヘッドフォン駆動時の戻り電流を、シールド線のGND配線で電源に戻すのは無理があるので、電源基板のGNDとヘッドフォンアンプのGNDをダイレクトに接続する事にしました。電源基板側は+/-9V出力端子台のGNDターミナルが空いているので、ここを使用しました。

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ヘッドフォンアンプ側は、+/-12V電源入力用端子台のGNDターミナルへ接続しました。

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このため、シールド配線側(信号線)のGND接続を途中で切ってGNDループを回避することにします。このあたりも動作確認の中でハムのレベルを確認して最終仕様を決めたいとおもいます。

入力切り替え回路接続

プリアンプ出力を、ロータリースイッチで切り替えて、選択した信号をボリュームに入力します。ロータリースイッチは3ポジションありますが、この段階ではアンバランス-バランス変換出力と、バランス入力のプリアンプ出力の2種類のみ配線する事にします。途中で仕様追加したバランス入力のダイレクト接続のポジションは配線せずにオープンとしておきます。ロータリースイッチは、切り替え入力用の端子が外側に12個と、切り替え出力用端子がその内側に4個が花びら状に並んでいます。ハンダ付けの順番を考えないと、配線済みの配線の被覆を、ハンダ付けの際に焦がしてしまいます。少々配線の被覆を焦がしましたが、なんとかハンダ付けを完了しました。

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プリアンプ出力の端子台の処理は写真のとおりです。

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ロータリースイッチの配線時に信号線のみ接続し、GND配線は接続せずに裸のまま放置してあります。ここでGNDループを切ることを考えていますが、結果が良くない場合を考慮して、GND線はカットせずにそのままむき出しとしています。問題なければ後でカットします。最後にロータリースイッチで選択した信号をボリュームに入力するための配線を行います。装置内を空中で横切る配置となり、見栄えが良くないですが仕方ありません。

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次回は、ヘッドフォンジャックへの配線をし、通電確認を行います。

 

つづく(製作編20)

A級バランスHPアンプ製作(製作編18)

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製作編18

前回、シャーシへの基板とトランスの取り付けが終わったので配線を行います。

配線

配線の種類を分類すると、電源の1次配線、電源の2次配線、信号の配線、電源ランプの配線があります。電源の2次配線にはトランス-電源基板間と電源基板-アンプ間に分類できます。最初に電源基板-アンプ間の電源線の配線を行います。

アンプ基板電源配線

この部分の配線には、古川電工のBX-S0.75sqを使用しました。被覆はポリエチレンで高周波特性が良く、柔軟性と機械的強度もあります。BX-Sのポリエチレンは電子線で照射架橋した耐熱電線で、320℃のハンダ槽に1分浸しても溶融しないとの事です。オヤイデで購入しましたが、100円/mとそれなりの価格です。

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初めに、ヘッドフォンアンプの終段の+/-9Vラインの配線をします。左右独立電源なので各ヘッドフォンアンプ基板に独立して配線します。GNDラインはループを避けるため配線をしません。

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次に+/-12Vラインの配線をします。配線先は、プリアンプ基板とヘッドフォンアンプの電圧増幅段と2つの端子台になります。電源基板側の端子台は、左右アンプ用にそれぞれ1つづつしかないので、分岐電線をつくりました。ハンダ付けした部分は熱収縮チューブで処理しています。

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GNDラインは、ループを避けるためにプリアンプの電源端子台へのみ配線しています。このあたりは、実際に動作させて決めたいとおもいます。写真はここまでの作業を終えた状態です。

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さらに配線を進めるために、フロントパネルとリアパネルを取り付けました。(本記事アイキャッチ写真参照)

1次側配線

1次側に関係する部品は、ACインレット、ヒューズホルダ、電源スイッチとトランスです。トランスは今までの製作と同様にトロイダルトランスを選択していますが、今回は従来の物に比べて1サイズ容量の大きな物を使っています。

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従来使ってきたものは、2次巻き線として12V/500mA x2でしたが、今回は12V/1A x2の容量をもっています。これでヘッドフォンアンプの終段のA級動作も余裕で対応できます。ラベルからもわかるとおり、1次側に120V用のタップを持っていますが、今回は使用しないためこのタップ用の電線は処理をします。2.5mmの端末保護キャップを被せてインシュロックで縛りました。

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トランスの1次100V入力を電源スイッチ、ヒューズホルダ、ACインレットに配線します。電線はトランスの1次入力電線の切れ端を流用しました。1次電源線の2本の線のループ面積を小さくするように2本の電線はできる限り平行して配線しました。

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2次側配線

トランスの2次巻き線を電源基板に配線します。トランスのラベルに印刷されているとおり、2次巻き線は2巻き線独立となっています。黄と白の電線を束ねてGNDとし、灰と橙を逆相のAC出力として電源基板に接続します。

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最後の信号線以外の配線となりますが、電源ランプの配線をします。ランプからは細い足が出ていて、直接電線を接続するとショートする心配があるので、小さくカットした基板で足を一旦受けて、その基板へ電線を接続しました。これで少々電線を引っ張られてもショートの心配はありません。

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信号線の配線

信号配線用の電線にはベルデンの1503Aを使います。この電線は2芯シールド線で外形が3.6mmと比較的細く、機内配線に適しています。この電線の一番の特徴はDuofoilシールドです。

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外側の被覆の内側にアルミ箔テープが貼られていて、そこにドレインワイヤーが接触しています。配線時に外側の被覆をカットするとアルミ箔テープは被覆とともにカットされてドレインワイヤーと2本の芯線のみ残ります。メーカーの説明によると網線によるシールドよりも効果が高く、なにより一番良い点は配線時に3芯の電線のように扱える点です。

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この電線ですが、アマゾンでも買えます。10mで1550円でした。

次回は、この電線を使って信号線の配線を行います。

 

つづく(製作編19)

A級バランスHPアンプ製作(製作編17)

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製作編17

フロント・リアパネルの加工が終わったのでボトムシャーシの加工を行います。

ボトムシャーシ

ボトムシャーシの基板取り付け面のサイズはW314xD230です。初めに加工完了したフロントパネルとリアパネルを取り付けて基板の配置検討を行いますが、その前にボトムシャーシの前後を決めます。寸法が前後非対称となっているのは、フロントとリアパネル取り付け用のネジ穴の位置です。一方はパネルを取り付けた際に、シャーシ端とパネルの面がほぼ一致する位置にねじ穴が開いています。反対側は、シャーシ端から少し入った位置にパネルが固定される様にネジ穴が開いています。過去の製作合わせて、正面パネルが少し奥に入る向きにシャーシの前後を決めました。

■シャーシ前

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■シャーシ後

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この状態で部品の取り付け位置を検討します。

ボトムシャーシ設計

ボトムシャーシに取り付ける部品は、ヘッドフォンアンプ基板が2枚、プリアンプ基板と電源基板がそれぞれ1枚と、電源用のトロイダルトランス1個です。それぞれの部品を実際に置いて配置を考えてみます。考慮するポイントは以下のとおりです。

・信号の流れ

トロイダルトランス漏洩磁束による影響

・各基板の端子台への配線

基本的な配置は、正面から見て左に電源基板を置き、その右にプリアンプ基板を、一番右側にヘッドフォンアンプ基板を前後に2枚並べたいと思います。その際の電源基板とトロイダルトランスの前後方向の配置として2通りありますが、具体的に並べて検討してみます。

配置案1

トロイダルトランスを前側に配置します。この場合の特徴は、信号が「電源」→「入力信号」→「プリアンプ出力」→「ヘッドフォン出力」と素直に流れます。気になる点としては、トロイダルトランスと4連ボリューム間の電磁気的な干渉です。

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配置案2

配置案1とは反対に、トロイダルトランスを後ろ側に配置します。この配置はステレオプリメインアンプに多いパターンです。アンプ基板への電源供給を少し離れた位置から行う点が特徴です。懸念事項は、トロイダルトランスと隣接するプリアンプ基板間の電磁気的な干渉です。

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配置の決定

判断のポイントは隣接するトロイダルトランスの影響をボリュームとプリアンプ基板のどちらの方が受けやすいかという点です。ボリュームの抵抗は2kΩ、プリアンプの入力抵抗を10KΩとしている事から、プリアンプへの影響の方が大きいと考えて配置案1で進める事とします。

基板の固定

基板の向きは、信号が自然に流れる観点で決めます。固定は10mmの金属スタットを使いますが、スタッドの位置を未実装基板を使って現物合わせで決めます。未実装基板をボトムシャーシに置いて、取り付け穴のセンターにマジックで印を付けていきます。基板4枚ともに印を付けたら、次にトロイダルトランスの取り付け穴4点のセンターにも印を付けます。次に、マジックで印を付けた位置をポンチで叩きドリルで穴開けします。最初に2mmの穴を開け、3.2mmに広げます。合計20箇所に3.2mmの穴を開けました。

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スタッド取り付け

基板1枚ごとにスタッドを取り付けて正しく基板が固定できることを確認していきます。スタッド4本を緩く取り付けて、その状態で基板固定用のネジ4本が締められるかを確認します。基板4枚の固定確認で、そのまま4カ所ねじ締めができたのは1枚で、残り3枚は4本中の3本のみ締めることができました。締めることのできたスタッドをしっかりと固定し、締めることができなかったスタッドは外して、穴をヤスリで削ってスタッド位置をずらします。

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3枚の基板のスタッド位置の調整を行い、全てのスタッドを固定しました。

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トロイダルトランスの固定も3mmのネジを使いますが、固定用の板金の穴径が大きいため丸座金を使います。

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全ての部品の取り付け準備が終わったので実際に基板を取り付けてみます。ケースサイズを大きくした為、余裕のある実装となりました。手前側のセンターに空きスペースがありますが、フロントパネルに取り付けた4連ボリュームがここに入ります。

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次回、取り付けた基板およびトランスの配線を行います。

 

つづく(製作編18)

A級バランスHPアンプ製作(製作編16)

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製作編16

前回、フロントパネルの加工が終わったので今回はリアパネルの加工を行います。

リアパネル

リアパネルには、RCAジャック、XLRパネルコネクタ、ロータリースイッチ、ヒューズホルダとACインレットを取り付けます。この中でXLRパネルコネクタ、ヒューズホルダとACインレットが丸穴以外の加工が必要となり、フロントパネルに比べて格段に手間がかかります。加工の準備として加工図面をカットして貼り付けます。

下穴開け

リアパネルには角穴を含めて合計で14個の穴を開けます。このうち部品固定用のビス穴が6個ありますが、現物合わせで後で開けるためこのタイミングでは下穴は8個開けます。ACインレットは角穴が必要ですがカット線を引くために四隅に印を付けます。穴のセンター8カ所と合わせて合計で12箇所にポンチで印をつけました。加工図面を剥がし、角穴用の四隅の印を使ってカット線をひきました。

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XLRパネルコネクタ用のφ21の穴はシャーシパンチで開けるため下穴径は10mmとします。ACインレット用の角穴はハンドニブラを使うため、この下穴径も10mmとしました。他丸穴はドリルの刃が適合するサイズで下穴を開けました。

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RCAジャック取り付け

下穴はφ8で開けました。RCAジャックは本体が入るだけではだめで、取り付け時外側の白い絶縁板の内径側の凸部が穴に収まるサイズにする必要があります。リーマーで様子を見ながら穴を広げていきます。絶縁板が収まったらもう1つも同様に加工します。

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XLRパネルコネクタ取り付け

下穴をφ10で開けています。φ21の穴はシャーシパンチを使用しますが、加工用の板金をはさみ込む様に内側に刃を、外側に押さえ用のコマをφ10のネジが切られたシャフトにセットします。

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軸にセットしたハンドルをテコの原理で回していきます。最初は容易に回りますが、刃が入っていくと、簡単には回らなくなります。休み休み、なんとか刃が全部入りました。同様にもう1つの穴も開けます。この作業が全工程の中で一番辛い気がします。もっと楽に穴を開けられる方法はないでしょうか?

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ここからはヤスリを駆使して必要な形状に加工します。φ21ではボディーが微妙に入らないため、全体的に穴径を広げます。続いて、パネルコネクタのロック機構を逃がす為に穴の上部を長方形状に削ります。最後に左右と下の3方向に円形のデッパリを逃がす加工をして完了です。どうしてこんな形状となっているか理解できませんが、セットするためにとにかくもう1つ分同様に加工します。

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ロータリースイッチ取り付け

下穴はφ8と回り止め用にφ3で穴開けしています。ボリュームの軸の穴をリーマーで1mm広げます。軸が入る用になったら回り止め用のボスが入るようにφ3の穴を少しづつ広げてゆきます。ボスが入るようになったらバリを取って完成です。

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軸のカットは、リアパネル完成時に行います。試しに回したところ、3接点以上にグルグルまわり、また発注を間違えたかとおもいましが、確認したところ、取り付け時にストッパの位置がずれただけでした。正しくセットしなおして、3接点に対応した動きとなりました。

ヒューズホルダ取り付け

下穴はφ12で開けてあります。上下にφ12.78の半円を付けた形状まで、ヤスリで削っていきます。それっぽい形状になったところで試しにセットして様子をみます。この作業を繰り返しセットできる形状まで追い込みます。

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ACインレット取り付け

下穴はφ10で開けてあります。そこへハンドニブラの刃を入れて、先に引いたカット線にそって切っていきます。爪切りのような仕組みなので、21x12の角穴を開けるだけでもかなりの回数のカット動作が必要です。切り終わったら、平ヤスリで形状をならします。

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固定用ビス穴あけ

最後にXLRパネルコネクタとACインレット取り付け用ネジ穴を現物合わせで開けます。部品をセットしてビス穴の中心にマジックで印をつけて、ポンチで叩きます。合計6カ所をφ3.2のドリルで穴開けします。穴開け後、部品を付けてネジを入れますが、現物合わせしたにもかかわらず、そのまま入る箇所は半分もありません。仕方がないのでヤスリで穴位置のズレを加工します。写真は、ACインレット取り付けをパネル裏から写したものです。

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リアパネル完成

全部品を取り付けて、ロータリースイッチの軸をカットします。軸はモールド製で、糸ノコでカットしようとしましたが、刃が入っていきません。全周にキズを付けた状態で、ニッパで切ってしまいました。ツマミを付けてしまえばカットの状態は気になりません。本記事のアイキャッチ写真が完成時のリアパネルを正面から見たものです。右側のXLRパネルコネクタをあと5mm~10mm左に寄せた方がバランスが良かった気がします。下の写真は、リアパネルを裏側から見たものです。ようやく完成が見えてきました。

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次回はボトムシャーシへ基板を取り付けていきます。

 

つづく(製作編17)

A級バランスHPアンプ製作(製作編15)

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製作編15

ケースの加工図面が完成したので、それを使って加工に着手します。

ケース

前回の記事で紹介したとおり、今回選択したケースはタカチ電機のUS-320LHです。アマゾンのマーケットプレースに出店しているストアから購入しました。日曜発注で、翌週の月曜日着と少々時間がかかりました。購入価格は8,340円でした。梱包はタカチ電機の物そのもので、US-260LHの梱包よりも数段大きなものでした。

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開けてみます。中にはUS-260LH購入時と同様のコンパクトな梱包が入っていました。

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中には分解された各部品がビニールに入れられて詰まっています。フロントとリアパネルを内部に収めることで梱包容積を小さくしています。

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フロントパネル加工

久々の板金加工なので、慣れることも考慮して加工が単純な正面パネルから始めます。とは言え、正面パネルはキズ付けには細心の注意が必要なので気は抜けません。加工は丸穴のみで合計6カ所です。いつものように加工図をパネルの輪郭に沿って切り取ります。

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穴の位置関係は加工図面で決まるため貼り付けは、神経質になる必要はありません。2次元CADを導入して一番楽になった作業です。

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穴開け位置の中心にポンチで位置出しをします。その際にパネルのフランジを逃がす為と、ポンチを叩いた際の板金の歪みを防ぐ為にパネル内に収まり、フランジ長よりも厚い木板を敷きます。合計6カ所の穴のセンターに印を付けます。

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小径の丸穴は、ドリル、ステップドリル、リーマーで開けます。

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写真は常用している穴開け用のツールで左から2mm, 3mm, 3.2mm, 4.2mm,7.5mmのドリルと次がステップドリル、右端がリーマーです。はじめに2mmのドリルで穴を開け、ドリルの刃を太くして必要な穴径まで広げます。初めに6穴をドリルの刃が適合するサイズであけます。

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次に各穴に部品が入る様に加工していきます。まずは電源ランプと電源スイッチを取り付けます。下穴はφ6で開けてあります。電源ランプはφ7なのでリーマーで1mm穴径を広げます。スイッチはφ6ですが、微妙に穴径を広げなければスイッチが入れられませんでした。

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次にボリューム取り付け用の穴を開けます。下穴はφ8とφ3で開けています。軸の入る穴径をリーマーで1mm広げて軸が入るように加工します。この状態では回り止め用のボスが刺さらなかったのでリーマーで少し広げては入るかの確認を繰り返しました。回り止め用の穴がボスに対して緩くなるとボリュームを回しきった時の感触が格段に悪くなります。正しく装着できるようになったらヤスリでバリを取り完了です。

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最後にヘッドフォン出力用のジャックを2個取り付けます。下穴をφ8で開けたので、そのままの状態で部品が入りました。この部分はヤスリを使ったバリ取りのみです。

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フロントパネルへのジャックの取り付けは初めてなのでデザインが気になります。2つのジャックで色が違う事も気になっていましたが、こんな感じになりました。

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一通り加工が終わったので、全ての部品を取り付けてデザインを確認しました。

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せっかくなのでボリューム用のつまみも取り付けてみました。ツマミは価格は高いですが、見栄えも大事なのでφ45アルミ削り出しのものを今回も購入しました。共立エレショップで1,902円のものです。全てを取り付けたらこのようなデザインとなりました。

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フロントパネルが完成すると、完成間近の実感が高まります。次回はリアパネルの加工をおこないますが、複雑な穴加工が多いので気合いを入れて臨みます。

 

つづく(製作編16)