安定化電源製作(評価編8)

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評価編8

三端子レギュレータ版の電源実装が完了したので、ジグの動作確認を兼ねてお試しでマイナス出力の負荷試験を行います。

-12V出力お試し負荷試験

先日の記事で安定化電源+12V出力のお試し負荷試験を行いました。今回は三端子レギュレータ版電源-12V出力のお試し負荷試験を行います。ダミー負荷の回路構成は+電源用と変わりませんが部品の極性のみ異なります。

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前回のお試し負荷試験と同様に、三端子レギュレータ版電源にユニバーサル電源のチャンネル1から+/-16.9Vを供給し、ジグにはチャンネル2から+/-6Vを供給しました。安定化電源の-12V出力をジグに接続し、ダミー負荷抵抗印加電圧と、プリアンプで10倍増幅した12V出力をポケットオシロで観測しました。

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前回のお試し負荷試験と条件を揃えるため、ダミー負荷抵抗印加電圧の平均を-2.0V(平均電流=40mA)、印加電圧の振幅を3.0V(電流の振幅=60mApp)に調整しようとしましたが、マイナス側でダミー抵抗印加電圧(電流)がクリップして調整できませんでした。マイナス側ピーク時の各部電圧は以下となるはずですが、ジグへの供給電圧が+/-6Vのためオペアンプの出力がクリップしている事が原因と考えられます。

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オペアンプの出力波形の確認はしませんでしたが、+/-6Vの電源供給時の+側の最大振幅は+4.7Vを越えますがー側の最大振幅は-4.7V以下と考えられます。正規の測定時は、ジグの電源に+/-12Vを供給する予定なのでこのような事は起きません。今回は仕方がないので、電流の振幅を40mApp(印加電圧振幅を2.00Vpp)に抑えて試験をすることとしました。

負荷試験

最初は周波数1KHz、平均電流-40mA、電流の振幅40mAppに負荷電流を調整しました。ダミー負荷抵抗電圧と、-12V出力変動のモニタ結果は以下のとおりです。

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青の波形がダミー負荷抵抗印加電圧で、黄色の波形が10倍に増幅した-12V出力変動波形です。負荷電流変動40mApp時の出力電圧変動は3.6mVppとなっているので、この条件時の出力インピーダンスは以下の様に算出されます。

Z1KHz = 3.6 x 10^(-3) / 40 x 10^(-3) = 0.09Ω

この結果は、正負出力の違いがあり単純比較はできませんが、自作安定化電源測定結果の0.12Ωと比べてやや良い結果となっています。次に周波数を100KHzまで上げてみました。他負荷条件は1KHz時と同じです。観測波形は以下のとおりです。

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負荷電流変動40mApp時の出力電圧変動は18.4mVppでした。同様にこの条件時の出力インピーダンスを計算します。

Z100KHz = 18.4 x 10^(-3) / 40 x 10^(-3) = 0.46Ω

予想よりも健闘しています。最後に周波数を10Hzに下げてみました。

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負荷電流変動40mApp時の出力電圧変動は2.6mVppでした。出力インピーダンスは以下のとおりです。

Z10Hz = 2.6 x 10^(-10) / 40 x 10^(-3) = 0.065Ω

この結果は自作安定化電源の0.053Ωにくらべやや劣っています。正規の測定は、チャンネルデバイダに現在搭載されている定電圧回路方式の電源を加えて3方式の音質比較をした後で、一通りの測定をしたいとおもいます。次回は自作した安定化電源の位相補償コンデンサの容量の見直しをします。

 

つづく(評価編9)

安定化電源製作(評価編7)

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評価編7

比較用に三端子レギュレータを使った安定化電源を製作します。

三端子レギュレータ

ヘッドフォンアンプ用の電源で+/-12Vと+/-9Vを左右独立電源として標準基板に実装するために三端子レギュレータを使用しましたが、標準基板を使って+/-12V左右独立の電源基板を作ったことがありませんでした。今回は同条件で比較をする為に製作を行います。今まで三端子レギュレータのデータシートを真剣に確認した事がなかったので、これを機会に確認してみたいとおもいます。下記はNJM7812FAのデータシートの抜粋です。

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Quiescent Currentはレギュレータ自体の消費電流です。自作した安定化電源は設計時に消費電流を意識しませんでしたが、10~11mAとなっていました。それと比較すると4.3mAと半分以下です。Load regulationはDC状態の出力インピーダンスと等価と考えられ、このデータから出力インピーダンスを算出すると以下のようになります。

Zdc = 25 x 10^(-3) / 1.5 = 16.7mΩ

出力の周波数特性に関するデータは掲載されていませんでした。出力に大容量のケミコンを接続しても安定に動作することから周波数特性は抑えられているように考えられますが、測定が楽しみです。

回路設計

設計と言えるほどではありませんが、製作前に回路図を起こします。+/-12Vの左右独立電源として、出力には100uFの電解コンデンサと0.47uFのフィルムコンデンサを接続します。レギュレータの入力側にもそれぞれ専用に0.47uFのフィルムコンデンサを接続しました。

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三端子レギュレータ電源実装

ディスクリートの安定化電源と同様に三端子レギュレータに放熱器を付けます。ヘッドフォンアンプの+/-9V電源に使ったものと同じものを選択しました。

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安定化電源の出力トランジスタに使用したものよりもやや大きく、熱抵抗は20.0℃/Wです。30℃環境で1W消費しても温度上昇は問題ありません。最初に放熱器4個を基板実装できるように基板を加工します。その4個の放熱器に三端子レギュレータを取り付けていきます。今回も放熱器への取り付けはプラネジを使用しました。

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次は放熱器の背面に電圧出力用の端子台を取り付けました。

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AC入力から全波整流回路も、安定化電源のレイアウトを踏襲しました。最初にGNDの配線をします。全波整流回路のGNDと出力端子台のGNDを最初に配線します。このGND配線を基に電源回路の実装を進めます。最初にRチャンネル分の実装を行います。

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Lチャンネルは最初に実装したRチャンネルの配線をまねて実装します。

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ディスクリートの安定化電源よりも大きな放熱器を使いましたが、それでも実装はスカスカでいまいち格好が悪いです。

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通電確認

過去の経験を生かして1チャンネルごとに確認を行います。具体的には三端子レギュレータの入力配線を確認のチャンネルごとに行っていきます。はじめにRチャンネルの+12V出力の確認を行います。

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ユニバーサル電源から+/16.9Vを供給して確認を行います。無負荷時の供給電流が5mAとデータシートどおりの結果となっています。

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同様に各チャンネルごとに確認を進めていきます。

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最後のチャンネルの確認です。被覆電線の使用が抑えられてまずまずの実装ができました。出力電圧も問題ありません。これで比較用の三端子レギュレータ版の電源が完成しました。次回はジグの動作確認をかねて三端子レギュレータ版電源の-12V出力のお試し負荷試験をおこないます。

 

つづく(評価編8)

安定化電源製作(評価編6)

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評価編6

ポケットオシロ用プリアンプが完成したので、これを使って安定化電源負荷時の電圧変動がモニタできるか確認してみます。

プリアンプ評価残り

電圧変動モニタの前に、前回の記事で確認が漏れてしまったプリアンプの入力保護機能の動作確認を行います。保護はダイオードの順方向電圧を使った簡単なもので、+/-0.6Vで入力をクリップさせます。

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プリアンプの電源に+/-12Vを供給して、正弦波を入力し、入出力の波形をポケットオシロで観測しました。上の写真は1KHz/8.4Vpp出力時のもので正しく増幅されています。下の波形はさらに入力電圧を上げていった結果です。出力が12Vppで制限されていて入力保護が働いている事が確認できました。入力波形が歪んでいますが、入力信号の絶対値が0.6Vを越えた時点で発振器の負荷が重くなっている為と考えられます。良い保護方法ではありませんが、簡易保護なのでこのままとします。

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プリアンプを使ったモニタ準備

前回の確認時と同様に安定化電源をユニバーサル電源環境で動作させて電圧変動がモニタできるか確認をしてみます。安定化電源はユニバーサル電源のチャンネル1から+/-16.9Vを供給します。ジグ基板にはチャンネル2から+/-6Vを供給します。プリアンプのオペアンプの動作に問題ない事を念のためデータシートで確認します。

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データシートから推奨動作電圧の最小値が+/-3.5Vなので動作自体は問題ありません。また、供給電圧+/-15V時の最大出力が+/-14Vなので+/-ともに1Vの電圧ドロップが発生します。今回の供給電圧は+/-6Vなので出力を+/-5Vに押さえて使用すれば問題ないと考えられます。安定化電源出力をジグの負荷電流インとプリアンプのAC入力に接続します。ジグに発振器を接続し、ポケットオシロで負荷抵抗にかかる電圧とプリアンプの出力をモニタします。

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お試しのモニタ結果

波形は1KHz正弦波状に負荷電流を振って流した状態のモニタ結果です。

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青の波形が負荷抵抗にかかる電圧で、黄色がプリアンプで10倍に増幅した安定化電源出力変動波形です。負荷抵抗は50Ωなので波形から平均電流が40mAで、60mA振幅(10mA~70mA)で正弦波状に電流が増減しています。このときのオシロ上の安定化電源の出力電圧変動は70mVppに見えていますが、プリアンプで10倍に増幅してるので実際は7mVppとなります。前回の確認時よりも負荷電流の変動量を上げていますが、全く観測できなかったものが観測できるようになりました。たかがオペアンプを使った10倍のアンプですが、あなどれません。この結果から周波数1KHz時の出力インピーダンスは以下のとおり算出できます。

Z1KHz = 7 x 10^(-3) / 60 x 10^(-3) = 0.12Ω

それらしい、まずまずの結果が得られました。正しく測定されている事を確認するために、負荷の変動周波数を10Hzに下げてみました。モニタ波形は以下のとおりです。

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1KHz時と同様に出力インピーダンスを算出します。

Z10Hz = 3.2 x 10^(-3) / 60 x 10^(-3) = 0.053Ω

1KHz時と比べて約半分の出力インピーダンス値が算出されました。安定化電源に使用したトランジスタのhfeの周波数特性起因と考えられます。せっかくなので10KHz変動の結果も確認してみます。発振器の周波数を10KHzに上げたときのモニタ波形は以下のとおりです。

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他の周波数の時と同様に出力インピーダンスを計算します。

Z10KHz = 8.2 x 10^(-3) / 60 x 10^(-3) = 0.14Ω

1KHzの結果と比べて出力インピーダンスがやや高くなっています。これらの結果から測定は出来ていると考えられ、絶対値はともかく電源性能の比較測定には使えそうです。測定は安定化電源の位相補償コンデンサの容量を見直し、トランス環境で改めて行います。次回は比較用の三端子レギュレーターを使った電源を製作します。

 

つづく(評価編7)

安定化電源製作(評価編5)

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評価編5

ポケットオシロ用プリアンプの回路定数を決めて、実装を行います。

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プリアンプ定数決定

前回の記事で回路を決定しましたが、定数を決定して実装を開始します。

AC入力のカットオフを10Hz以下とするため、手持ちの部品在庫を見ながらCRフィルタをC=0.47uF, R=100KΩに決めました。カットオフ周波数は以下のとおりです。

f=1/(2 x π x 0.47 x 10^(-6) x 100 x 10^(3)) = 3.4 Hz

保護用のダイオードはジグ回路製作用に購入した1N4148を使用します。オペアンプは在庫の中からFET入力で特性が良好なMUSES8920を選択しました。後段のアンプは10倍のゲインとするために、1KΩ, 8.2KΩの抵抗と, 2KΩ/B半固定を組み合わせます。決定した定数を回路に反映しました。

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入力には3極の端子台を使い、CRフィルタをバイパスしたDC入力端子も設けます。

プリアンプの実装

先に製作したジグ基板の右半分へ実装します。大物部品の0.47uFフィルムコンデンサオペアンプ用のDIPソケットの位置を決めてから配線を進めます。後段の帰還ループ内に半固定抵抗が入りますが、帰還ループが大きくならない様に実装を行いました。電源は先に実装したジグ回路と共用します。

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プリアンプ通電確認

先のジグ回路通電時と同様に、まずはオペアンプを刺さずに確認を行います。オペアンプ用ソケットの各端子電圧に問題無いことを確認しますが、なぜかDC電位がおかしいです。配線を確認したところ、GND配線がされていない事に気づきました。早々に、ジグ用電源の端子台のGNDからプリアンプ入力端子台のGNDへ配線を追加しました。今まで電源系の配線忘れのミスは比較的多く、注意していきたいとおもいます。

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次はオペアンプを刺して改めて電源を入れます。

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各端子電圧に問題ない事を確認したら、ゲイン調整を行う為に入力に発振器を接続して入出力波形をポケットオシロで観測します。周波数を1KHzに設定して入出力波形を比較しますが、ゲインが想定よりも低くなっています。不思議に思い基板を確認したところまたもやミスが発覚しました。帰還抵抗として8.2KΩを実装すべき所に1KΩが実装されていました。(上記の写真)今回はミスが多い事を反省しつつ抵抗を載せ替えて改めてゲイン調整を行います。入力を0.8Vppとして出力が8Vppとなるように帰還ループの半固定抵抗を調整しました。

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プリアンプ周波数特性

念のためプリアンプの周波数特性の確認を行います。初めにAC入力の特性確認を行います。グラフはAC入力とDC入力の周波数特性の測定結果です。

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結果を見ると10KHz以上の帯域でゲインがやや上がっていますが、オペアンプの裸位相特性による影響と考えられます。低域はAC入力のカットオフ周波数が設計値よりもやや高くなっているようです。実装を再確認しましたが、ミスも見つからず原因がわかりません。入力保護に入れたダイオードの特性が気になり外して確認してみました。結果は以下のとおりです。

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10Hzで0.76dBの差があり、原因は保護用ダイオードと特定できました。この程度であれば影響は小さいので影響を理解した上で保護を元通り戻すこととします。せっかくなので影響の仕組みについて考えてみたいとおもいます。グラフはダイオードのデータシートからの抜粋です。

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このグラフからダイオードカットオフ時の等価抵抗を読みとると以下のとおりです。

ZR = 10V / 15nA = 670KΩ

ZF = 0.5V / 0.1mA = 5KΩ

この結果からはもっと大きな影響が出るように思えますが、なぜかそこまでの影響は出ていません。影響は1dB以下なのでこれ以上深追いしない事にします。次回は、作成したプリアンプを使って安定化電源負荷時の電圧変動がモニタできるか確認してみます。

 

つづく(評価編6)

安定化電源製作(評価編4)

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評価編4

ジグが完成したのでお試しで製作した安定化電源にジグで負荷をかけてみます。

お試し負荷試験準備

負荷試験は使用環境であるチャンネルデバイダに製作した安定化電源を組み込み、トランスから電力供給した状態で確認すべきですが、その前にお試しでユニバーサル電源環境で確認を行います。前の記事でも書いたとおり、私のユニバーサル電源は+/-それぞれ各2チャンネルの出力を持っていますが、2チャンネル目の仕様が変わっています。

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+/-電源1チャンネル目はそれぞれ0~18V/1.8A出力ですが、2チャンネル目は+電源が0~8V/2Aで、-電源は0~6V/1Aです。製作した安定化電源を正しく動作させるためには+/-16.9Vが必要なので1チャンネル目を使わざる得ません、仕方がないのでジグ回路を2チャンネル目を使って+/-6Vで動作させる事にしました。半固定抵抗のDC調整感度が半分になりますが、幸いオペアンプもエミッタフォロワも正しく動作します。

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お試し負荷試験

上記のとおり安定化電源およびジグをユニバーサル電源と接続します。評価対象の安定化電源+出力をジグの負荷電流インに接続します。念のためユニバーサル電源の過電流保護を全出力ともに100mAに設定しました。さらにジグへ発振器を接続します。緊張しながら電源オンしました。ユニバーサル電源の表示を安定化電源供給電流に切り替えます。ジグの半固定を回し負荷電流を上げていきます。50mAまで上げたところで発振器の周波数を100Hzにセットして出力を上げていきます。その時の50Ωの負荷抵抗にかかる電圧と安定化電源の出力電圧をポケットオシロでモニタしました。

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波形は負荷電流が平均52mAで正弦波状に36.4mA~67.6mA変動している事を示しています。青のラインは安定化電源出力をACモード最大感度でモニタしていますが、電圧変動が確認できません。周波数を上げていくと100KHz付近で電圧変動が観測できました。低周波数域の電圧変動観測にはプリアンプが必要です。

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本記事のアイキャッチ写真はさらに周波数を300KHzまで上げた状態です。負荷変動に制御が追従できずに電圧変動が起こっています。続いて方形波応答を見てみます。発振器の周波数を1KHzにセットしました。

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負荷電流の立下がりで電圧変動が発生しています。この部分を拡大してみました。

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この波形を見ると、負荷が軽くなった事に過剰にフィードバックがかかっている様に見えます。この応答波形については別途考えたいとおもいます。念のため負荷電流の立ち上がり部分も拡大してみました。

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出力電圧に若干の変動が見えますが、いい感じでフィードバックがかかっています。ここまでのお試し負荷試験を整理します。

・ジグで想定どおりの負荷試験ができる事が確認できた

・安定化電源周波数特性を見るためには、ポケットオシロの感度アップが必要

・方形波応答負荷電流立下がりで過剰な応答をしている

一旦負荷試験を中断してポケットオシロの感度アップの為のプリアンプを作ります。

ポケットオシロプリアンプ設計

私のポケットオシロはDSO203という機種で、購入して1年程度たちます。

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価格は2万円でお釣りがきますが、趣味の範疇ではそこそこ使えています。なにより、波形が見える事は、精度はなくても見えない事と比べて大きなメリットがあります。1年間使用して一番不満な点は、最大感度が50mV/Divという点です。かねがねこのポケットオシロ用のプリアンプを作りたいと考えていましたが、今回必要に駆られて重い腰を上げる事にしました。早速、設計構想を整理します。

・ゲインは10倍の正相アンプとする

・今回の用途からAC入力モードを設ける

・最低限の入力保護を付ける

上記を回路化していきます。AC入力モードは単純なCRの1段フィルタで構成します。カットオフは低い程使い勝手が良いです。CRフィルタ出力をオペアンプを使ったボルテージフォロワで受けてCRフィルタへの次段の影響をなくします。ボルテージフォロワへのダイレクトな入力端子も別途設けて、DCアンプとしても使えるようにします。このボルテージフォロワ出力をオペアンプを使った正相アンプで10倍に増幅します。ゲインは10倍に調整できるように帰還ループに半固定抵抗を入れます。アンプの保護としてボルテージフォロワの入力にダイオードを2個入れて絶対値で0.6V以上の入力が入らないようにします。本当はこの保護ダイオード自体の保護も考える必要がありますが、運用でカバーする事にします。図はこれを回路化したものです。

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次回はこの前段アンプの定数を決めて実装を進めます。

 

つづく(評価編5)

安定化電源製作(評価編3)

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評価編3

+電源用ジグ回路実装が終わったのでジグ回路の通電確認を行います。

ジグ回路おさらい

製作したジグ回路は、評価用電源から任意に一定電流および、発振器からの入力に従った波高値の電流を流すことができます。ジグ自体は+/-12Vの電源が必要です。私のユニバーサル電源は+/-ともに2電源を持っているので、この電源を使って負荷電流が意図どおりに制御できるか確認を行います。

+電源用ジグ回路通電確認

最初にジグ用の電源端子に+/-12Vを配線します。オペアンプとエミッタフォロワを切り離す為にジャンパーソケットを刺さずに電源を入れます。この状態でオペアンプ用のソケットに所定の電圧がかかっている事を確認します。ー入力端子および出力端子に中途半端な電圧が観測されますが、これは半固定抵抗から-12Vが分圧された電圧が供給されている為です。半固定を回すと時計回しで電圧の絶対値が大きくなる事を確認しました。半固定抵抗を反時計回しで分圧出力をゼロにして一旦電源をオフしてオペアンプをソケットに差し込みます。

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改めて電源オンしてオペアンプの各端子が所定の電圧となっていることを確認しました。DC電圧供給用の半固定を回して、オペアンプ出力が+側に振れる事を確認します。次に評価用電源端子にユニバーサル電源から+8Vを、最後に負荷電流制御用にSig_In端子に発振器を接続し、エミッタフォロワをオペアンプ出力と接続するためにジャンパーピンを刺しました。半固定抵抗を回して、それにつれて負荷電流が変化する事を確認しましたが、負荷抵抗の電圧とユニバーサル電源に表示される負荷電流のつじつまが合っていないことに気づきました。基板を見ると、100Ω抵抗2本付けたつもりが、10Ω抵抗が2本ついていました。一旦電源を切って負荷抵抗を付け変えます。

■変更前

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■変更後

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気を取り直して、動作確認を続行します。負荷電流を50mAに調整して、発振器の周波数を100Hzにして出力を上げてゆきます。写真は電流の振幅の波高値が30mAppとなるように調整した状態です。

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出力はそのまま周波数を1KHzに上げてみました。負荷電流は正しく制御されている事が確認できました。

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ー電源用ジグ回路実装

中途半端に実装済みのー電源用のジグ回路を完成させます。最初にエミッタフォロワのベース回路の実装を行います。逆バイアス保護用のダイオードは極性に注意して実装します。

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次に入出力用の基板端子台を使い勝手は良くないですが、基板センターに+電源用と対象に並べます。

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続いて負荷電流を消費させる抵抗をポストに取り付けます。今度は正しい抵抗値のものを選択しました。

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これでジグは完成です。完成時の配線はこんな感じになりました。ジグなのでいきあたりばったりで配線していったので他の製作物と比べて被覆ジャンパー線が多いです。

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今回は事前に部品配置を決めずに部品実装ごとに位置を決めていきましたが、それなりにまとまったとおもいます。写真には参考として各基板端子台の説明を入れました。

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ー電源用ジグ回路通電確認

エミッタフォロワ回路を切り離し、半固定抵抗絞って電源を入れます。オペアンプの各端子が所定の電圧となっている事を確認します。半固定抵抗を回してDC電圧をオペアンプに印加して出力を確認しました。問題なかったので評価用電源端子に電圧印加します。なぜか、私のユニバーサル電源のマイナス電源の2チャンネル目は最大-6Vなので、最大の-6Vを印加してエミッタフォロワ接続用ジャンパーピンを刺しました。+電源用ジグ回路確認と同様に一定負荷電流および正弦波制御の負荷電流を確認しました。写真のとおり問題ありません。

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最後に方形波を入力してみました。

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問題なく制御できています。立ち下がり波形を拡大してみましたが、素直な波形です。

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次回はこのジグを使って製作した電源に負荷をかけて様子をみたいとおもいます。

 

つづく(評価編4)

安定化電源製作(評価編2)

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評価編2

評価用ジグ回路設計が終わったので部品を選定して組立を行います。

オペアンプの選定

手持ちのオペアンプの在庫を確認したところ4種類ありました。全て8pin dipの2回路入りです。「MUSES8920」「NJM082BD」「NJM4556ADD」「NJM2904D」ですが、型番が示すとおり全てJRC製です。最初のMUSESはオペアンプの交換で余ったものですが、それ以外は何れ使うだろうと以前購入しておいたものですが、全て単価50円以下のものです。私が学生時代には考えられない値段ですね。2つめのオペアンプの型番からTL072から派生したものと思われますが、学生時代当時、FET入力のオペアンプLF356やTL072が現役で、今の様に使い捨てができるような代物ではなかった事を思い出しました。最後のNJM2904Dは単電源用なので選択から除外してそれ以外のものについてスペック比較をします。

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単純なスペック比較では、総合的にMUSES8920が性能が良いです。値段も一番高いため相応の結果だといえます。今回はFET入力の必要はないためNJM4556ADDを採用することとします。

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トランジスタの選択

負荷電流を流すパワートランジスタですが、手持ちの在庫から2SC3851A/2SA1488Aを使用します。在庫のhfe測定一覧から2SC3851AをNo.26, 2SA1488AをNo.21を選択しました。後で買い増しした際に、コンプリメンタリペアになりにくいものとして選定しました。

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スイッチングダイオード

今まで小信号用スイッチングダイオードを購入した事がありませんでした。秋月の商品を検索すると安いものがありました。フェアチャイルド製の1N4148で50本100円です。Vr=100V, Io=200mA, Po=500mWと今回の用途には十分です。

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放熱器

負荷電流を流すパワトランジスタの放熱用です。ヘッドフォンアンプの電源に使用したものと同型を使う事にします。熱抵抗は20.0℃/Wなので30℃環境前提でも1W程度の消費電力でも問題ありません。

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ジグ基板の組立

ジグは私がいつも使用する標準基板(72 x 95mm)に実装します。+/-電源用回路を基板の半分を使って実装します。残り半分は波形観測用にアンプが必要になると考えて温存しておきます。私のポケットオシロの最大感度は50mV/Divのため、増幅しないと電源出力変動が観測できないと考えています。初めに大物部品の放熱器を基板の端に並べて実装します。放熱器には2つの固定用のボスがついています。ピッチは2.54の倍数でユニバーサル基板の穴の間隔にフィットしますが、径が太くてそのままでは刺さりません。ドリルの刃を使って穴径を広げて入る用に加工しました。

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固定はトランジスタのリードで行うので少々緩くても問題ありません。

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負荷抵抗は流す電流に応じて交換可能とするために、基板用コネクタヘッダを使って容易に交換できるようにしました。以前、マルツオンラインで購入したタイコエレクトロニクス製のものだと記憶しています。抵抗のハンダ付けを容易にするために、ポスト背面の樹脂の立ち上がり面をカットして使用しました。(写真左)

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基板への取り付けは、パワトランジスタの手前に、ラジアル形状の抵抗がハンダ付けできる間隔をとって対抗して取り付けました。樹脂製のコネクタヘッダは熱に弱くハンダ付けの際には注意が必要です。

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さっそく抵抗を取り付けてみました。これで容易に抵抗の交換ができます。

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その手前に、パワトランジスタ切り離し用のヘッダを取り付けました。4極タイプを使用していますが、+と-電源用に2極づつ使用します。

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さらにその手前にオペアンプ用の8pinソケットを取り付けました。

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加算回路構成用の抵抗は、実装スペースがないので立てて実装しました。最後にDC電圧供給用の半固定抵抗を一番手前に取り付けます。時計回しでGND間の抵抗値が大きくなる端子配列で接続して電圧の増減と人の感覚を合わせています。これで+電源用ジグ回路実装は完了です。ー電源用のジグ回路は、2回路入りのオペアンプの保護に必要な配線のみ行っています。次回は+電源用ジグ回路の動作確認およびー電源用の回路実装を完了させます。

 

つづく(評価編3)