安定化電源製作(評価編1)

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評価編1

安定化電源基板の実装が終わったので性能の評価を行います。

評価構想

電源に要求される性能はいろいろありますが、今回は出力インピーダンスと周波数特性に着目したいと考えています。出力インピーダンスは、負荷電流を変えて出力電圧を観測します。周波数特性は、負荷電流を正弦波としてその周波数を変えて出力電圧を観測します。評価の中で製作編で適当に決めた発振対策の位相補償用のコンデンサの容量の再確認も行いたいとおもいます。これら評価の構想を箇条書きに整理します。

・負荷電流は0mAから150mAまで可変として、その時の出力電圧を測定する

・負荷電流を正弦波として、バイアス電流、ピーク電流、周波数を変えて出力電圧をモニタする

・負荷電流をステップ波形として出力電圧をモニタする

基板単体評価残り

評価用のジグ(回路)製作に入る前に、未評価回路の確認を行います。初めに電源ランプ用の出力確認です。いきなりLEDをつないで点灯確認です。LEDはリードが長い方が+ですが、使う時にはいつも記憶に自信がなく都度調べています。

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問題なく点灯しました。LEDの点灯回路は、全波整流回路の+/-16.9Vから電源供給しています。LED点灯用の電流とはいえ、+/-電源の片側から取ると+/-電源のバランスが崩れ、かつGNDに電流が流れ込みます。消費電力は増えますが、+/-電源から供給しています。LEDのみ点灯させた無負荷時の消費電流は32mAでした。非点灯時が21mAでしたので、点灯電流は約11mAです。

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念のため、ダイオードブリッジに供給する+/-12Vの極性を反転させてブリッジの動作も確認しました。これも問題ありませんでした。

ジグ回路設計

電源の負荷電流は、パワートランジスタのエミッタフォロワ構成で流すことにします。この為、+と-電源用にそれぞれ回路を起こします。パワートランジスタの駆動は、オペアンプを使って簡略化します。負荷電流の制御は、オペアンプで発振器出力とDC電圧を加算して行います。終段のエミッタフォロワの逆バイアス防止用にダイオードで保護します。上記を回路図化してみました。

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エミッタフォロワの負荷抵抗は50Ωとしました。最大電流150mA時の負荷抵抗の消費電力は1.15Wになります。手持ちは1/4W抵抗しかなかったので、100Ωを並列接続してしのぐ事にします。この対応を行っても抵抗の定格いっぱいでも最大電流100mAしか流せません。今回はこの仕様で妥協します。この時のパワートランジスタの消費電力は以下となります。

(12-50Ω x 0.1A)x 0.1A = 0.7W

トランジスタには小型の放熱器をつけることとします。パワートランジスタには手持ち在庫の2SC3851A/2SA1488Aを使用しますが、hfeは100以上あるので、最大負荷電流時のベース電流は1mA以下になります。ダイオードには小信号スイッチング用の物を使えば問題ありません。発振器出力とDC電圧の加算回路は、オペアンプの反転アンプ構成としました。理由は正相アンプ構成の加算回路の場合、発振器出力から見た入力抵抗が、DC電圧の調整値によって変化します。些細な影響しかないかもしれませんが、気持ちが悪いので反転アンプ構成としました。尚、反転アンプのゲインは2.7倍としました。(帰還抵抗1kΩと2.7kΩ)オペアンプ出力とスイッチングダイオード間のSWは、ジャンパーピンとジャンパーソケットで代用します。制御信号を事前に調整してから終段を駆動するための考慮です。

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加算回路へ加えるDC電圧は電源電圧をボリュームで分圧して生成します。オペアンプ用の電源+/-12Vを流用するのでボリュームの定格を考慮して5kΩとしました。この場合、ボリュームには2.4mAの電流が流れます。決定した定数を回路図に反映します。

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次回はオペアンプの選定をしてジグの組立をおこないます。

 

つづく(評価編2)

安定化電源製作(製作編5)

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製作編5

回路2までの動作確認が終わったので引き続き回路3~4の実装を進めます。

回路3実装

回路3は回路1と同じなので、同じように配線します。基板を見ると最初に配線したGNDラインの位置が悪く、回路3用に回路1と同じ実装スペースが確保できていません。今回は最初に配線したGNDラインとその後に配線した出力端子台用のGND配線ともに削除して新たに出力端子台用にGND配線を引き直しました。上の写真が修正前で下の写真が修正後のものです。

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これで回路3、4共に実装済みの回路と同等のスペースを確保することができました。出力端子台の脇に出力電圧調整用のボリュームを配置していますが近くにGNDおよび出力の配線がされているために思いの外シンプルな配線ができました。基板の中程に実装する事も考えましたが、現状の実装の方が良かったと思います。回路1の実装をお手本にして回路3の実装はすんなり完了しました。

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回路3通電確認

通電確認の前に、改めて現状の基板の回路を説明しておきます。チャンネルデバイダ用の電源の置き換えのため、説明を省略していましたが、いままでの通電確認の説明を疑問に思っていた方もいたかとおもいます。図が最終的な電源回路です。

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通電確認の際には、トランスの代わりにユニバーサル電源からダイオードブリッジに+/-の直流電圧を印加しています。脱線しましたが、回路3の通電確認に戻ります。回路1、回路2と同様に回路3の通電確認を行います。ユニバーサル電源の過電流保護は前回同様に+/-100mAのままとします。

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電源オンしますが、特に異常はありません。出力波形も問題ないので出力電圧を12Vに調整します。その時のユニバーサル電源の+16.9V出力の電流値は21mAと回路1のみの時のほぼ2倍となっています。

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続いて各部の電圧を確認しました。確認結果は以下の通りです。

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回路1の結果とほぼ同じですが、供給電流が増えたことでユニバーサル電源の供給電圧が微妙に下がり、それに引きずられて各部の電圧も微妙に下がっています。

回路4実装

4回路目ともなると実装もかなり慣れてきます。思いこみによる実装で今までも足をすくわれてきたので気を引き締めます。ツェナーダイオードに並列にノイズ吸収用の1uFを実装しますが、実装スペースが少ないことから基板上で両者が接触しています。趣味ならでは許される実装です。

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回路4は、GND配線に挟まれていないため、出力の位相補償用の抵抗のGND配線が他回路とは異なりますが、他はほぼ同様に実装が完了しました。

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回路4通電確認

最後の回路の通電確認となります。今までの回路同様に確認を進めます。問題ないと思いながらも出力の波形は念のため確認します。

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電源オンしてポケットオシロの画面を確認しますが発振はしていません。出力電圧を-12Vに調整してユニバーサル電源を見ると、-20mAを表示しています。回路2動作確認時の2倍となっていて問題はありません。

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他回路と同様に各部の電圧の確認を行います。

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回路3の確認結果と同様に回路2の電圧に比べて微妙に下がっていますが問題はありませんでした。これで4回路分の安定化電源回路実装が完了しました。次回はトランスと組み合わせて製作した電源回路の評価を行います。

 

つづく(評価編1)

安定化電源製作(製作編4)

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製作編4

正電圧安定化電源回路の実装が完了したので通電確認を行います。

通電準備

通電確認にはトランスの代わりにユニバーサル電源を使用します。供給電圧はトランスの出力電圧AC12Vのピーク値に相当する+/-16.9Vとしました。念のため過電流保護も設定しておきます。1回路のみの無負荷の通電なので正負ともの100mAに設定しました。出力電圧調整用のボリュームをやや絞り(100Ω:400Ω)ドライバに十分な電圧がかかる設定としました。

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通電開始

電源オンし、基板に異常がないことを確認してからユニバーサル電源の出力電流値を確認しました。11mAを表示しており問題ありません。

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次に出力電圧を確認したところ、約10Vとなっていたため、VR1を調整して出力電圧を12Vに合わせました。正常に動作しているように見えますが、念のため出力をポケットオシロで確認をしました。結果は以下のとおり発振を確認しました。

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発振周波数は約500Hzで振幅は0.32Vppです。中途半端な発振です。まずはフィードバックトランジスタの位相補償用のコンデサの容量アップをしてみます。現在1000pFがついているものを0.01uFに変更しました。ハンダ面に直か付けしているので変更は容易です。(写真は変更前の1000pF)

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交換後、早々に通電してみます。出力波形をポケットオシロで確認したところ発振が止まっていることが確認できました。位相補償の容量については完成後の試験にて改めて見直します。下記は変更を反映した回路図です。

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続けて各部の電圧を確認します。回路図上、入力電圧を+16.3Vとしていますが、測定結果はやや高い16.6Vでした。今回使用したダイオードブリッジにショットキーバリヤダイオードが採用されているため順方向電圧が低くなっていることが原因を考えられます。

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測定結果を確認していきます。CRDには2.3Vがかかっており、ほぼ狙いどおりです。ツェナーダイオード印加電圧が6.12Vとやや低いですが、誤差範囲と考えます。負荷をかけた動作確認は後に回します。

負電圧安定化電源回路実装

次に-12V用の安定化電源回路を隣に実装します。正電圧回路で適用した発振対策を反映させた回路図は以下のとおりです。

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部品の極性が違うだけで回路自体は正電圧回路と共通です。正電圧回路と同様にフィードバック用のトランジスタから実装を開始します。

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写真のとおり、PNPトランジスタはテーピング品の為リードがフォーミングされています。気をつけないとリードの根本まで基板に入ってしまうため、基板を立てて(トランジスタを寝かせて)丁度良い位置で仮止め(ハンダ)して対応しました。部品の極性にのみ注意すれば、最初に実装した回路とほぼ同じになるので効率的に作業が進みました。平滑出力、安定化電源出力部の配線が異なりますが、ほぼ同じ配線で仕上がりました。

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回路2通電確認

回路1と同様にユニバーサル電源を使って通電確認を行います。前回同様に+/-12Vで過電流保護を+/-100mAに設定します。出力電圧調整用のボリュームも前回同様にプリセットします。(100Ω:400Ω)負電圧回路の通電は前回以上に慎重に行いました。

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電源オンした瞬間のユニバーサル電源の電流値が99mAとなり、過電流保護が働いています。すぐに電源を切って基板を確認しましたが特に異常は見つかりませんでした。電流のモニタを+電源に切り替えて電源を入れてみましたが、同様に99mAとなっています。今回の回路実装では、+電源に関係する部分はいじっていないでおかしいと思ったところで気がつきました。これは入力段の平滑用の電解コンデンサのチャージ電流と考えて、改めて電源を入れ直したところすぐに電流値が10mA程度まで下がりました。やれやれ。初期電圧出力は約-10Vで、ボリュームを調整して-12Vに合わせました。回路1と同様に各部の電圧を確認しました。

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結果は、回路1とほぼ同じ電圧となっていました。次回は引き続き回路実装を行います。

 

つづく(製作編4)

安定化電源製作(製作編3)

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製作編3

正電圧安定化電源の回路実装を先行して行います。

正電圧電源回路実装

初めての安定化電源の設計製作なので、念のため正電圧電源回路の実装を先行し、動作確認を行い、問題なければ他回路の実装を行いたいとおもいます。最初にフィードバック用のトランジスタを配線がシンプルになる事を考慮してドライバと垂直となる向きに実装します。続いてエミッタGND間に6.2Vのツェナーダイオードを実装しますが、後の配線を考慮してトランジスタを実装したため、シンプルに配線ができます。次にツェナーダイオードのノイズ吸収用の1uFのフィルムコンデンサを実装します。4.7uFのフィルムコンデンサーほどではありませんが、残り実装スペースを考えると大きな部品です。

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事前検討で出力端子台の脇に配置することにしていたボリュームですが、実装スペースがあれば、基板の中程へ持ってくることも考えていましたが、このコンデンサ実装時点で残りのスペースが少なくなった事からあきらめる事にしました。次にツェナーダイオード用のバイアス電流を流す抵抗を出力に接続します。この抵抗のリードを使って出力端子台までの配線を行う事にしました。そのラインの途中にドライバのエミッタを配線しました。次はドライバのバイアス電流を流すCRDと抵抗を配線します。今回購入したダイオードは小信号用ダイオード(別の製作で使用します)とこのCRDの2種類ですが、CRDと思われる部品の小袋には何の記載もありませんでした。

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念のためCRDの捺印を確認してから実装したいとおもいます。図はCRD仕様書の抜粋です。定格電流値とロット番号が記載されています。今回使用するCRDは1mA品(E-102)なので、「10」の捺印がされているはずです。

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現品を直に見ても見ようとする気持ちに目がついてきません。口外していませんが、通勤鞄にいつも忍ばせているルーペを使いなんとか確認することができました。

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CRDは大物の4.7uFフィルムコンデンサと電源の平滑出力に接続します。平滑出力は他にダーリントントランジスタのコレクタとそこにつながるパスコンがありますが、一つにまとめて、被覆線で平滑出力から1本で配線する事にしました。できる限り被覆線の使用を抑えて、配線をすっきりさせる事が狙いです。被覆線の使用を抑える為に、今回手製のジャンパを使用しました。部品のリードの切れ端をコの字に曲げてジャンパーに加工して部品面からGNDラインをスキップさせました。

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フィードバックトランジスタの位相補償用のコンデンサは、部品面に実装せずにトランジスタのリードにダイレクトに接続します。このため実装は後に回します。次に出力回路の配線を行います。出力電圧調整用のボリュームは、使い勝手を考慮して時計回しで電圧が上がる用に使用します。具体的には、時計回しでGNDに接続された抵抗側端子と摺動子端子間の抵抗値が小さくなる用に配線します。

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最後に出力位相補償用のCRを接続し、平滑出力と安定化電源入力を配線して1回路分が完成です。実装パターンを良く見ると出力端子台用GND配線と最初に引いた回路2用GND配線が平行して配線されていて、回路2を回路1と同じ部品配置ができない事がわかりました。仕方がないので最初に配線した回路2用GND配線を削除して、回路2のGNDは出力端子台用GND配線を流用することにして、回路2の実装エリアを拡大しました。最初の写真がGND配線削除前で、次の写真が回路2用GND配線を削除した完成配線です。

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次回は完成した正電圧安定化電源の通電確認を行います。

 

つづく(製作編4)

安定化電源製作(製作編2)

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製作編2

トランジスタのhfe測定が終わったので、部品レイアウトを検討して実装を開始します。

部品のレイアウト

私の使用する標準基板(95 x 72mm)に回路を納めるために部品レイアウトの検討を行います。+/-合わせて安定化電源回路が4回路が実装され、さらにそれぞれのドライバには小さいながらも放熱器がつきます。4回路を並列に実装するには、基板の長手方向に4つ並べるのが得策です。この構成は、三端子レギュレータを使っていますが、ヘッドフォンアンプ用の電源基板のレイアウトが参考になります。

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この電源は、出力段に+/-9Vの三端子レギュレータを使用していますが、さらに電圧増幅段用に+/-12V電源(三端子レギュレータ)を実装しているので実装難易度は今回と同じくらいと考えられます。部品が届いてみて思いの外大きかった物が、入力段に使用する4.7uFのフイルムコンデンサです。

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あまりの大きさに、使用をあきらめようかとの思いましたが、価格も比較的高く(@150円)せっかく買ったので、なんとか押し込む事を考えたいとおもいます。基板に刺してみたところ基板の長手方向に丁度4個並ぶ事が解りました。

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後は残りの部品の実装スペースが確保できるかがポイントです。放熱器と出力用の端子台をヘッドフォンアンプの電源を参考にして基板の長手方向に並べます。

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平滑用の電解コンデンサは出力側と反対の辺にできる限り寄せてに配置します。

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出力電圧調整用のボリュームの配置ですが、出力用端子台の両脇の空きスペースを使用する事とします。後は残ったスペースへいかにTr, ZD, CRD等を実装していくかになります。ここからは、部品を実装しながら考えたいと思います。

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実装開始

配置の微調整の余地のない大物部品を初めに取り付けます。出力用の端子台をボリュームの実装スペースを意識して取り付け、次に放熱器+トランジスタを取り付けます。放熱器には足が1本出ているのでこれとトランジスタの3本の足で固定します。放熱器の足は太いので、基板のホールを広げて取り付けます。

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トランジスタは意味はありませんがプラネジで固定しました。

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放熱器が外れないようにトランジスタの足をハンダで仮止めします。

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順番が前後しますが、トランジスタは今後の追加購入の際に、コンプリメンタリペアになりにくい物から選択しました。在庫は全般的にNPNのhfeが高くPNPのhfeが小さいため、2SC3851Aはhfeの大きなものから、2SA1488Aはhfeの小さな物からそれぞれ2個を確保しました。

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次に配置の微調整の必要がない大物部品として平滑用の電解コンデンサを事前検討したとおり基板の端にできる限り寄せて取り付け、さらに4.7uFのフィルムコンデンサを平滑コンデンサ側に寄せて取り付けました。

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最初にGNDの配線をします。ループが発生しない様に一部効率を無視して配線しています。次に全波整流回路の配線を行います。なるべく配線が交差しない事を考慮しました。

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次にドライバと組み合わせるダーリントン接続用のトランジスタを実装します。実装用にフィードバック用も含めてNPNとPNPを各4個づつ選定します。どちらもhfeが大きくコンプリメンタリペアにならず、かつ単純なペア品にもならない物を選択しました

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ダーリントンペアとなる2つのトランジスタの端子の配列は異なります。

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図のとおり、センターのコレクタは共通でベースとエミッタの配置が逆となっています。これがダーリントン接続には好都合で2個を前後に並べて配置するとシンプルに配線できます。

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次回は続きの実装を行います。

 

つづく(製作編3)

安定化電源製作(製作編1)

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製作編1

製作編恒例のトランジスタのhfe測定からスタートし、部品を揃えます。

トランジスタ準備

今回の安定化電源は、ヘッドフォンアンプで使用したトランジスタと同じものを使用します。具体的にはサンケンの2SC3851A/2SA1488Aと東芝の2SC1815GR/2SA1015GRです。初めに現状の在庫の確認を行います。最初は2SC3851A/2SA1488Aの在庫表です。

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ヘッドフォンアンプ製作で使用した部分が空欄となっています。今回はそれぞれ2個づつしか使用しないため、追加購入をせずに在庫で対応することとします。次に、2SC1815GR/2SA1015GRの在庫を確認します。

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使用量が多かった為在庫が少なく、東芝製の物がいつ購入できなくなるかわからないので追加購入します。

部品の購入

前回の記事で紹介したとおり、部品は秋月電子の通販で購入しました。部品表には抵抗を入れていませんでしたが、全て在庫で対応する予定です。商品は中1日で到着しました。段ボールをあけると、秋月の社名の入ったチャック付きの大袋に各部品が小分けされて入っています。

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念のため部品の確認をしてから製作の準備に入ります。

hfe測定

2SC1815GR/2SA1015GR共に各20個購入しました。それでは他製作での使用を考慮してfhe測定を行います。測定は回路と条件共に在庫測定時と同じにしています。図はNPNの測定回路です。

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Ic=10mAに調整してその時のベース電流を測定してhfeを算出します。最初に2SC1815GRの測定を行います。Ic調整用のテスタはアナログ式が、Ib測定用のテスタはデジタル式が適しています。

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測定時のトランジスタの損失は30mWなのでトランジスタの温度上昇もほとんどなく各部電流はすぐに安定するので、測定時間は短くて済みます。結果は以下のとおりです。

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結果はhfeを昇順でソートしています。編みかけの物が今回購入分ですが、見ての通りhfeの分布は全て在庫よりも高くなっています。前回までは、hfeが小さくコンプリメンタリの確保に苦労しましたが、今回は逆に高すぎて従来在庫を対象とした場合、コンプリメンタリの確保には寄与しません。(2SA1015GRの在庫の分布の上限はhfe=230)今回はコンプリメンタリ選別が不要なので、これから行うPNP品の測定結果にもよりますが、hfeの大きな物から使っていくことにします。続いて2SA1015GRの測定を行います。ジャンパーケーブルを組み替えてPNPの測定回路に変更をします。

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測定条件はNPNと同様にIc=10mAで測定します。結果は以下のとおりです。

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NPN同様に結果はhfeでソートしています。2SC1815GRとは異なり、今回測定分はhfeが満遍なく分布しています。残念ながら今回入手した高hfeの2SC1815GRとコンプリメンタリになるもは1つもありませんでした。今後の事も考慮して、2SC1815GRはhfe大きな物(303~315)の物を、2SA1015GRはhfe=227~230のものを今回使用する事とします。測定したトランジスタは、従来どおりナンバリングした小袋に入れて管理します。在庫が増えるとなんとなく安心します。

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次回は部品のレイアウトを決めて、製作に着手します。

 

つづく(製作編2)

安定化電源製作(設計編)

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設計編

安定化電源回路の動作の理解ができたので、設計を行います。

設計仕様

今回は、チャンネルデバイダー用の電源の載せ替えを前提に設計を行います。図はチャンネルデバイダーの回路図です。

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フィルター用コンデンサの接続に誤りがあり、回路図を修正しました。詳細は、2018-02-09「女神たちの争い(製作編3)」を参照ください。

オペアンプを使ったベッセル特性のアクティブフィルターとその前段にオペアンプを使ったボルテージフォロワで構成されています。この現行の電源は、ツェナーダイオードトランジスタで構成した定電圧回路で構成しています。

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左右独立で、+/-12Vを供給します。片チャンネルあたりオペアンプ2個の負荷なので負荷電流は片チャンネルあたり20mA程度です。トランスはトロイダル方式で12V/500mA x2で、全波整流後の電圧は16.3Vくらいになります。電圧にあまり余裕がないので設計で考慮が必要です。これら要求を設計仕様として整理します。

・左右独立電源

・出力電圧:+/-12V

・出力電流:100mA

・入力電圧:16.3V

定数設計

初めに正電圧安定化電源回路の定数を決めます。改めて正電圧安定化電源回路図を掲載します。前回の記事に掲載したものに対して、出力電圧の調整用のVR1を追加しています。

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トランジスタのVbeは約0.6VなのでTr1のベース電圧は13.2Vになります。Tr1とTr2のhfeをそれぞれ200と50と仮定すると、最大負荷(100mA)時にTr1のベース電流は0.01mAとなります。ベースのバイアス電流として1mA流せば十分なので、CRDを1mAとします。入出力間の電圧差があまりないので、CRDに大きな電圧をかけられません。図はCRDのV-I特性です。

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選定した1mA品(E-102)の特性は仕様書から肩特性電圧1.7Vとの事なので、R1を1KΩとしてCRDに2.1Vをかけることとします。次にZD1の定格を決めます。Tr3のコレクタ電圧13..2VをTr3とZD1で半分づつ印加することとしてZD1を6.2Vにします。次にR3, R4とVR1を決めます。この部分の電流を3mAとすると、抵抗値の総和は4kΩとなります。Tr3のベース電圧を6.8Vとする必要があるので抵抗の比率は5.2:6.8となります。具体的な抵抗値は1.7KΩ:2.3KΩとなります。これをR3, R4, VR1で構成すると総抵抗値はやや増えますが、R3=1.5KΩ, R4=2.2KΩ, VR1=500Ωとなります。次にZD1に流すバイアス電流を決めます。図はZD1の特性図です。(6.2V品は図中の5.6V品と6.8V品の間のライン)

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ツェナーダイオードの定格電圧はId=5mAで唱っているので、電流を5mA以上流したいと考えて、R2=1KΩとしました。トランジスタは、在庫をもっているため、Tr1とTr3をそれぞれ2SC1815GR、Tr2を2SC3851Aとします。各コンデンサの容量は、ネット上の設計事例を参考に適当に決めました。上記で決めた定数を回路図に反映しました。

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熱設計

ドライバの放熱設計をします。最大負荷100mAのときのトランジスタの損失は、

Pmax = (16.3 - 12) x 0.1 = 0.43W

このレベルであれば、放熱は不要と考えられますが気休めに小型の放熱器をつけることにします。秋月電子で販売されているW15xH25xD11のサイズの物で、熱抵抗は37.9℃/Wです。

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最大負荷時の損失0.43Wで約16.3℃(37.9x0.43)温度上昇します。室温が30℃としても放熱器温度が46.3℃と放熱としては十分です。同様に負電圧安定化電源回路の定数も決めました。図は定数を反映した回路図です。

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部品発注

回路図を元に部品表をまとめました。部品のラインナップは、秋月電子よりもマルツオンラインの方が豊富ですが、ディスクリート部品の価格は、総じて秋月電子の方が安いため、部品表のショップ欄はすべて秋月電子としています。

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一部コンデンサは、回路図にないものもリストされていますが、調整用に購入をかける分です。次回は製作に入ります。

 

つづく(製作編1)