安定化電源製作(設計編)

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設計編

安定化電源回路の動作の理解ができたので、設計を行います。

設計仕様

今回は、チャンネルデバイダー用の電源の載せ替えを前提に設計を行います。図はチャンネルデバイダーの回路図です。

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フィルター用コンデンサの接続に誤りがあり、回路図を修正しました。詳細は、2018-02-09「女神たちの争い(製作編3)」を参照ください。

オペアンプを使ったベッセル特性のアクティブフィルターとその前段にオペアンプを使ったボルテージフォロワで構成されています。この現行の電源は、ツェナーダイオードトランジスタで構成した定電圧回路で構成しています。

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左右独立で、+/-12Vを供給します。片チャンネルあたりオペアンプ2個の負荷なので負荷電流は片チャンネルあたり20mA程度です。トランスはトロイダル方式で12V/500mA x2で、全波整流後の電圧は16.3Vくらいになります。電圧にあまり余裕がないので設計で考慮が必要です。これら要求を設計仕様として整理します。

・左右独立電源

・出力電圧:+/-12V

・出力電流:100mA

・入力電圧:16.3V

定数設計

初めに正電圧安定化電源回路の定数を決めます。改めて正電圧安定化電源回路図を掲載します。前回の記事に掲載したものに対して、出力電圧の調整用のVR1を追加しています。

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トランジスタのVbeは約0.6VなのでTr1のベース電圧は13.2Vになります。Tr1とTr2のhfeをそれぞれ200と50と仮定すると、最大負荷(100mA)時にTr1のベース電流は0.01mAとなります。ベースのバイアス電流として1mA流せば十分なので、CRDを1mAとします。入出力間の電圧差があまりないので、CRDに大きな電圧をかけられません。図はCRDのV-I特性です。

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選定した1mA品(E-102)の特性は仕様書から肩特性電圧1.7Vとの事なので、R1を1KΩとしてCRDに2.1Vをかけることとします。次にZD1の定格を決めます。Tr3のコレクタ電圧13..2VをTr3とZD1で半分づつ印加することとしてZD1を6.2Vにします。次にR3, R4とVR1を決めます。この部分の電流を3mAとすると、抵抗値の総和は4kΩとなります。Tr3のベース電圧を6.8Vとする必要があるので抵抗の比率は5.2:6.8となります。具体的な抵抗値は1.7KΩ:2.3KΩとなります。これをR3, R4, VR1で構成すると総抵抗値はやや増えますが、R3=1.5KΩ, R4=2.2KΩ, VR1=500Ωとなります。次にZD1に流すバイアス電流を決めます。図はZD1の特性図です。(6.2V品は図中の5.6V品と6.8V品の間のライン)

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ツェナーダイオードの定格電圧はId=5mAで唱っているので、電流を5mA以上流したいと考えて、R2=1KΩとしました。トランジスタは、在庫をもっているため、Tr1とTr3をそれぞれ2SC1815GR、Tr2を2SC3851Aとします。各コンデンサの容量は、ネット上の設計事例を参考に適当に決めました。上記で決めた定数を回路図に反映しました。

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熱設計

ドライバの放熱設計をします。最大負荷100mAのときのトランジスタの損失は、

Pmax = (16.3 - 12) x 0.1 = 0.43W

このレベルであれば、放熱は不要と考えられますが気休めに小型の放熱器をつけることにします。秋月電子で販売されているW15xH25xD11のサイズの物で、熱抵抗は37.9℃/Wです。

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最大負荷時の損失0.43Wで約16.3℃(37.9x0.43)温度上昇します。室温が30℃としても放熱器温度が46.3℃と放熱としては十分です。同様に負電圧安定化電源回路の定数も決めました。図は定数を反映した回路図です。

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部品発注

回路図を元に部品表をまとめました。部品のラインナップは、秋月電子よりもマルツオンラインの方が豊富ですが、ディスクリート部品の価格は、総じて秋月電子の方が安いため、部品表のショップ欄はすべて秋月電子としています。

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一部コンデンサは、回路図にないものもリストされていますが、調整用に購入をかける分です。次回は製作に入ります。

 

つづく(製作編1)