2018オーディオフェスティバル(番外編19)

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番外編19

無線と実験誌が主催するオーディオフェスティバルに行ってきましたので速報します。

2018オーディオフェスティバル

誠文堂新光社が発行する月刊誌、無線と実験主催のオーディオフェスティバルに行ってきました。今回は第3回目で、3月4日に昨年と同様に秋葉原の損保会館で開催されました。入場料は1,000円で、今年は缶バッチが配布されました。これを着けていれば会館への出入りが自由となります。

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昨年は、具体的なプログラムがネット上に掲載されていましたが、今年はそれがなく、代わりに無線と実験3月号で徹底ガイドの特集がされていて、「雑誌を購入して確認してね」とのようです。下記が入場時に配布されたタイムテーブルです。

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今年の目玉は、事前エントリーして選ばれた読者12名による自作作品のデモを含めた紹介です。一人あたり20分の持ち時間で自分の設計および作品をデモを交えてアピールします。今回はこのイベントは横目で流してMJ誌執筆先生方の講演をメインで回りました。

金田先生の講演

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タイトルは「バッテリードライブ半導体DCアンプ vs バッテリードライブNutubeハイブリッドDCアンプ」です。使用された機器は、最近の紙上で発表されたもので、ターンテーブルの電源を除き、DACも含めてバッテリーで駆動されていました。写真はパワーアンプ駆動用のバッテリーです。

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スピーカーは、主催側が準備したもののようですが、3Wayで中域はホーンタイプです。ウーハーはバスレス方式のエンクロージャに納められていました。ツイターは、ホーン用ドライバの位置に合わせて設置されていて、位相を考慮されているようです。

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■バッテリードライブ半導体DCアンプ

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最初に半導体DCアンプをバッテリードライブしたシステムの再生です。12.5WのステレオDCパワーアンプを2台使用してバランス駆動されてるとの事で、出力は丁度50Wとなります。スピーカーはネットワーク方式です。

■はげ山の一夜/展覧会の絵ムソルグスキー

厚い音、中高域の音の抜けがよく、なおかつ奥行きも感じられます。大音量でも全く崩れません。スピーカーの能率も高いと推測します。

1812年/チャイコフスキー

ブラスの音が飛び出します。弦楽器の音が厚く、暖かみがあって好感がもてます。サビの部分の大砲の音は録音が今一つでしたが、どのようにして収録されたのでしょうか?

■CD音源

今回のデモで1曲だけCD音源をレコーダーで収録されたものが再生されました。曲はジャズでしたが、演奏者の熱意が伝わりにくい印象でした。音源(録音)に起因するのか、再生システム(CD)起因なのか判断はつきませんでしたが、学生時代の私はアナログの再生品質に軍配をあげていた事を思い出しました。その後、アナログ関連の機器はレコードを含めて実家の建て替えの際に全て廃棄されてしまい、アナログから遠ざかって今に至っています。もう一度考えるべきかと思いました。

■Nutube 6P1

後半の演奏は、バッテリードライブNutubeハイブリッドDCアンプが使用されました。

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NutubeはKORGノリタケの蛍光表示管技術を応用した新しい真空管です。今まであまり注目してこなかったので、実際の音が聴ける今回のデモは楽しみにしていました。デモの紹介の前にNutube 6P1を簡単に紹介します。

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回路は双三極管と同等ですが、動作電圧や消費電流が半導体パーツレベルに抑えられています。

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例えばフィラメント電圧は0.7Vで電流は1チャンネル当たり17mAです。真空管のプレート電圧に相当するアノード電圧は10Vとトランジスタと同じ感覚で使用できます。気になるお値段は秋月価格で5,400円と手が届くレベルです。使用したアンプの回路紹介は特にありませんでしたが、全て記事で発表済みとの事なので、別途バックナンバーを入手して確認してみたいとおもいました。

■Nutube 6P1の音

初めの印象は、「ちゃんと真空管の音が出ている」でした。楽器の音の響きが美しく、奥行きも表現できています。

■ボディーランゲージ/カウントベーシー

最初の曲では、少し線が細いかとの印象でしたが、大音量部分の堂々とした鳴りぷりと、ブラスの音が耳につきささるような事がなく、好感が持てる再生でした。

■アイアンサイド/クインシージョーンズ

もともとはアメリカのTV番組の主題歌だったとの事ですが、スリリングな感じのジャズ曲です。TVウイークエンダーのジングルに使われていたのでご存知の方も多いとおもいます。ソロの響きが美しく、ベースの音も厚く迫力がありいい感じで鳴っていました。

まとめ

今回は、ほぼ金田先生のデモの紹介となりましたが、後半で使われたNutubeは機会があれば使ってみたいとおもいました。欲を言えば、AC電源とバッテリードライブの比較もあれば尚楽しめたと感じました。次回も引き続き、オーディオフェスティバルをレポートします。

 

つづく(番外編20)

実験バッテリードライブ(評価編1)

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評価編1

バッテリーを最低限安全に使える環境を整えて、バッテリーの特性測定を行います。

環境構築

今回は音質比較のための実験を想定していて、今のところ常用する事は考えていません。とは言え、ショートのリクスを極力減らす必要があり、電力供給用のSW基板を作成する事にしました。配線の順番を決めることでショートのリスクを減らします。回路はいたって簡単で、バッテリー2個接続用に2極の基板端子台を2個と、2回路のSWおよび、アンプへの電源出力用に3極の端子台を取り付けます。平行して本格運用のために、バッテリー用のXLRコネクタのオスメスを2組と、ヒューズフォルダ付きの電線の手配を念のためしています。

電力供給用基板

標準基板に2回路SWの取り付け用の穴を開けます。最初にドリルの刃で4mmの穴を手作業で開けて、その後ステップドリルの刃で穴径を広げます。最後にヤスリで整えます。

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SWおよび基板端子台を取り付け、最初にGNDラインを配線します。バッテリーの性能を生かすために、GND配線にはφ1.0mmのポリウレタン線を使用しました。

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この電線はポリウレタン被覆を剥がさなくてもハンダ付けできるとの触れ込みですが、私の使っているコテでは、容量が小さく長時間炙らないと被覆が溶けず、ハンダがうまくつきません。仕方がないので事前に被覆をヤスリで削ってハンダつけしています。

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簡単な基板ですが、こんな感じに仕上がりました。

バッテリーの充電

ネット上の商品説明には、到着後にすぐに使えると記載されていましたが、お客様のレビューには充電しないとセルモーターが回らなかったとの書き込みもあったので、使用前に念のため充電することにしました。車のバッテリー充電用にチャージャーを持っていたので、それを使います。

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2個供に充電を行いました。比較的短時間で充電器のパイロットランプが消灯したので商品説明のとおり充電された状態で出荷されたと考えられます。充電前後の解放電圧は以下のとおりです。

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特性測定

「安定化電源製作」記事で紹介した方法でバッテリーの特性測定を行います。測定用のジグもその際に製作したものを使用します。参考に回路図を再掲載します。

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■負荷電流vs出力電圧特性

初めに、負荷電流vs出力電圧測定を行います。測定条件は「安定化電源製作」で行った方法および条件に合わせて、現行のチャンネルデバイダーに搭載されている安定化電源の特性と比較します。先に紹介したジグを使って負荷電流を0~50mAの範囲を5mA間隔で測定しました。測定結果は以下のとおりです。

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上記結果から出力変動電圧を算出してグラフ化してみます。安定化電源の測定結果も重ねてみました。

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予想以上に電圧変動しています。流れ出しは、負荷電流が増えると電圧が上昇していますが、電流を流すことで化学反応が活性化するためでしょうか?傾きから出力抵抗を算出してみます。グラフの直線領域からデータを拾って計算してみます。

等価抵抗 = (20 + 80)/(45 - 15) = 3.3Ω

定電圧電源の測定結果1.1Ωに比べても悪い値となっています。1Aの電流が流れると、3.3Vも電圧がドロップしたらセルモーターは回せるのでしょうか?それとも充電直後の電圧が落ち着く前に小電流側から測定したからでしょうか?別途改めて確認してみたいとおもいます。

■出力抵抗周波数特性

安定化電源評価時と同様に、負荷電流の平均値を40mAとして10mAから70mAの範囲で正弦波状に振って電圧変動を観測しました。測定周波数範囲は10Hzから100KHzです。参考として10Hzと1KHz時の観測波形を掲載します。

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黄色のラインが電圧変動波形ですが、プリアンプで10倍しています。定電圧電源評価時と同様に、結果をグラフ化してみます。

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この結果を電流の変化量60mAで割って、等価抵抗に変換します。

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結果を見ると、60Hz以上の領域は、安定化電源の特性とほぼ同等です。低周波数領域では、安定化電源より等価抵抗が大きくなっています。それでも先ほどのDC出力抵抗3.3Ωまで悪い値になるようには見えませんが、バッテリーが本領発揮するのは、もっと大電流領域でしょうか?正直なところ、安定化電源の特性に対して圧倒的なアドバンテージがあると考えていたので、出鼻をくじかれた感じです。今回測定は行っていませんが、ノイズ特性はバッテリーの方が有利と考えられ、その差が聴きとれるか音質比較の中で確認してみたいとおもいます。

 

つづく(評価編2)

実験バッテリードライブ(構想編)

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構想編

勢いでバイク用バッテリーを買ってしまったのでアンプのバッテリー駆動を構想します。

バッテリー

学生時代、電子工学科に所属し、4年生になってノイズを研究対象とする研究室を選択しました。実験に使用する測定系は低ノイズが要求され、当時測定に使用したアンプの電源に自動車用のバッテリーを使っていました。あるとき、研究室の先輩が誤ってバッテリーをショートさせてしまい、一瞬にして電線の被覆が黒こげになり、電線が溶断しました。その時に、バッテリーは危険だけども、電流の供給能力が高い事を思い知らされました。たった12Vでエンジンを始動させる為にエンジン内の駆動系を回す電力を供給する為の物なので、あたりまえのことですが・・・。当時の研究室の教授がオーディオ好きで、バッテリードライブのパワーアンプを組み上げましたが、その音がダイナミックで、いつか私もやってみようと考えていました。オーディオ趣味復帰後、ホームセンターでバッテリーが目に入ると価格を確認していましたが、自動車用の一番安いものでも、約4,000円程度する上に重くかさばるので躊躇していました。バイク用のものはサイズは小さくなりますが、価格が逆に高く、購入には至りませんでした。(写真は自動車タイヤ用電動ポンプを駆動する為に買ったバッテリー)

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鉛蓄電池

鉛蓄電池をネット検索すると下記の長所が列記されていました。

・エネルギーコストが比較的安い

・大電流から小電流まで安定して供給可能

・メモリー効果がない

逆に短所として以下が上げられていました。

・他二次電池比で、体積エネルギー密度、重量エネルギー密度が低い

・過放電に弱く、起こしてしまうと性能が低下し回復しない

・電解液に硫酸を使用するため破損時に危険

電流が流れる仕組みは簡単な化学式で表されます。

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数年前に2年かけて電験三種を取りましたが、その時に通勤電車の中で勉強した化学の記憶を引っ張り出してみます。電流の定義は以下となります。

A = Q / t(Qは電荷クーロン, tは時間)

先の化学式から1つの硫酸鉛分子が生成されるごとに電子2個が生成されます。また1モル(原子量にグラムをつけた量)の分子数はアボガドロ数NAとなり、電子の電荷量(電気素量)が1.602x19^(-19)クーロン、硫酸鉛の分子量が約303gなので、約303gの硫酸鉛が生成される際の総電荷量は以下のとおり計算できます。

アボガドロ定数 x 2 x 電気素量

= 6.022 x 10^23 x 2 x 1.602 x 10^(-19)

= 1.93 x 10^5

これを3600で割ると硫酸鉛約303gが生成されるときの電気容量が53.6A/hと算出できます。はたしてこの計算で合っているでしょうか?電子の電荷はすごく小さいものですが、それにも増して分子の数の威力を思い知らされます。鉛蓄電池放電時の電極付近でこんなドラマが起こっていると思うと不思議な感じがします。

バッテリー購入

先日、別の買い物をするためにアマゾンにアクセスしている時に、試しにバイク用の12Vバッテリーを検索すると価格も含めて手頃なものがあったので2個注文してしまいました。

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送料込みで1個1,500円です。鉛蓄電池を宅配便で輸送する事は問題ないかと思いつつ待っていると届きました。

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バッテリー自体の梱包箱に直接「天地無用」のラベルが貼られた状態で届きました。開けてみると簡単な説明書と現品が入っています。

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容量は2.6Ahと表示されています。先ほどの計算結果から比例計算すると、硫酸鉛約15g生成に相当する容量です。ターミナルはファーストンで、輸送時のショート防止の為に+電極に透明なビニールチューブが被せてありました。

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シールドタイプで使い勝手も良さそうなので、先日安定化電源に載せ替えたチャンネルデバイダの電源と置き換えて音質の比較をしてみたいとおもいます。

後書き

その後、秋月電子で多くの種類の鉛蓄電池を販売されている事を知りました。例えば、12V/7.2Ah品が1,600円等です。説明には、通信工業用バッテリーで自己放電を抑える為にカルシウムが添加されているため、内部抵抗が比較的高く(22mΩ@1KHz)エンジンのスターター用には適さないとコメントされています。その他、いろんな容量のものが比較的安価で販売されているので今後の参考としたいとおもいました。

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つづく(評価編1)

アンプ修理その後と非接触温度計(番外編18)

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番外編18

EL34ppパワーアンプ修理記事でアドバイスいただいた真空管ソケットハンダ付け確認を行い、新規に導入した非接触温度計を紹介します。

経緯

番外編17でバランス方式EL34ppパワーアンプの修理を行いました。原因が完全に特定されない中、終段の真空管EL342本を交換して様子を見ていましたが、現象が真空管が十分暖まってから発生する事から、「真空管ソケットのハンダ付けを確認してみては」とのアドバイスをいただき、確認をしてみました。

真空管ソケットハンダ付け

真空管はアンプの電源を入れる度に、カソードをヒータで熱するため発熱します。今回の設計ではそこそこのプレート損失によりさらに発熱します。トータルの損失は1本当たり約18Wになり、その熱がソケットの端子にも伝わってハンダ付け部は毎回ヒートショックを与えられているとも言えます。この事からも今回のアドバイスは理にかなっている上に、私が使用しているハンダの特性も少し気になったので確認をする事としました。

ハンダ

私が使っているハンダは、HAKKO HEXSOLのFS408-01です。近くのスーパービバホームで調達しています。

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HEXSOLシリーズは多様で、小分けされたホビー用のものでも以下の表のラインナップがあります。

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表を見ると、私の使用しているものは融点が比較的低く183℃となっています。同等品で融点を190℃に上げるには、FS407-02の選択となりますが、今まで特に問題がなく、熱に弱い部品への影響を考えて融点183℃品を使ってきました。

真空管ソケットハンダ確認

久々にEL34ppアンプのシャーシ内を確認します。こんな時、ボンネット付きのケースは便利です。

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ボトムパネルを外します。

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オーディオ趣味復帰後の大型製作1号機のため、今の製作とだいぶ異なっています。配線が全体的にごちゃごちゃしているのと、基板への配線は全てポストへのハンダ付けの方法をとっています。右チャンネルEL34用のソケットのハンダ付けを確認します。

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見た目には、ハンダフラックスが茶色く変色していますが、異常はありませんでした。さらに各端子のハンダ付けをピンセットを使って確認しました。

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怪しげな部分はあるものの、ハンダ不良となっている部分は見つかりませんでしたが、念のため全端子のハンダをやり直しました。引き続き当面このまま様子をみたいと思います。

端子の使用時の温度

普通に使っている時に、ソケットのハンダ付け部分がどの程度の温度になっているのか、気になり測定できないか検討してみました。「バランスA級HPアンプ製作編3」で、終段のトランジスタ温度上昇の見込みを立てるために、接触式のマルチユース温度計を購入していましたが、使い勝手があまり良くなく、高圧がかかっている部分には使用できません。

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何か良い物がないかとアマゾンを検索してみると、多く非接触式温度計がヒットしました。

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写真は検索結果のほんの一部ですが、価格は1500円くらいからラインナップされていたので、試しに1つ買ってみることにしました。注文したものは、下段の真ん中のものです。

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送料込みで2,999円なので仮に失敗でもあきらめられます。

非接触温度計

私はアマゾンのプライム会員ではありませんが、注文の翌日に商品が届きました。

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箱を開けると、簡単な日本語の取扱説明書と本体のみが入っていました。

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値段の割には、見た目の作りは悪くありません。電源は単四電池2本です。測定は被測定物が放射する赤外線を受光してその量から温度を算出しています。ある温度の物体から放射される赤外線の量は物質およびその表面処理により異なりますが、その表面温度により一義に決まります。物質による放射量の違いは放射率の差として表されますが、おおよそ0.95との事です。表は説明書に掲載された主な物質の放射率一覧です。

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この測定器には、放射率0.95がプリセットされていますが、測定対象によってマニュアルで設定を変更する事ができます。温度の測定範囲は、距離係数として規定されています。図は取り扱い説明書に掲載された距離係数の仕様です。

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簡単に言うと、測定時の被測定物との距離の1/12が測定範囲となります。また測定位置を合わせるために、測定時にレーザーポイントされるので便利です。測定自体は、いたって簡単でピストルの要領で引き金を引くと、レーザーポインターが照射されるので、測定ポイントに合わせるだけです。測定結果はリアルタイムでLCDに表示されますが、引き金を戻すと、そのときの計測値がホールドされます。それでは実際に測定してみます。

非接触温度測定

アンプのボトムカバーを外したまま、ラックに戻します。置く位置は、棚板から真空管のソケット分はみ出すように手前側にずらします。

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アンプの電源を入れる前に初期温度を測定します。

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初期温度は17.2℃でした。この状態でひとしきり音楽を聴いてから改めて温度測定を行いました。

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結果は52.4℃で温度上昇値としては、35.2℃でした。思った程の上昇値ではありませんでしたが、夏の使用時の温度としては、70℃くらいまで温度上昇する事が想定されます。せっかくおもちゃを買ったので、他の機器の動作時の温度を測定してみました。

バランス方式A級HPアンプ各部温度

製作編3で、接触式の温度計で使用時42℃程度を想定していましたが、非接触温度計での測定値はどんなものか測定してみました。写真は、終段用-9V電源のヒートシンク部の温度を測定しているところです。

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レーザーポインタがヒートシンクに当たっています。ポイントをずらしながら、一番温度の高い部分をさがします。各ドライバの測定結果は以下の通りとなりました。

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想定していたとおり、接触温度計よりもやや高い値が測定されました。測定誤差はなんとも言えませんが、それなりに使えそうな事が確認できました。ホビーユースであればこれで十分だとおもいます。

 

おわり(番外編18)

女神たちの争い(製作編5)

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製作編5

2枚のフィルタ基板の通電確認が終わったので、チャンネルデバイダのシャーシに載せ替えて現行基板との音質比較を行います。

基板載せ替え準備

現行のチャンネルデバイダは、電源を定電圧方式から安定化電源に載せ替えて日がまだ浅いため、交換前に改めてじっくり音楽を聴きました。

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ひとしきり聴いたところで載せ替え作業開始です。

基板載せ替え

初めに、基板端子台への配線を全て外します。つづいて、基板を固定しているネジを外して基板を取り外します。通電確認を終えた2枚の基板をスタッドの上に置き、ネジ止めしますが、やらかしてしまいました。ボリュームと実装部品のクリアランスの考慮をしなかったために一部部品がボリュームのボディーと干渉しています。1点目は、フィルター用RCのコンデンサです。

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かろうじて実装時のフォーミングを変える(垂直に立てる)ことで、接触を回避できました。クリアランスは数ミリ程度です。2点目は在庫消化で使用した電解コンデンサMUSEです。

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ボリュームのモータ駆動用のギア部分のボディーに電解コンデンサが接触しています。クリアランスを取るには実装を変更する必要があります。但し、接触している電解コンデンサーは+電源用のもので、そのケース電位はー端子電位だとすると、電解コンデンサの被覆チューブが破れてショートしても問題はありません。という事で測定してみました。最初は700mV程度ありましたが、測定しているうちに見る見る下がっていき200mVを割りました。ずっとテスタのリードを当てているのは大変なのでその先は確認しませんでしたが、0V近くまで下がりそうな感じでした。電解コンデンサのケース部の等価回路はどのように考えたらいいかネットで調べてみたところ、いくつかのサイトに情報がありました。下記が縦型電解コンデンサのケース部の等価回路です。

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マイナス端子とケースは不安定な抵抗分(酸化皮膜や電解液等)で接続されているとのことでした。被覆チューブは絶縁目的ではないので、実装の際には接触しないように注意もありました。他の方から質問されたら実装変更すべきと答えますが、今回の場合の接触のリスクは低いと考えて自己責任でこのままとする事にしました。

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通電確認

基板単体で確認済みなので心配はありません。正規電源との組み合わせで再確認するとしていたオフセット電圧を確認しました。参考に交換前の測定結果も掲載します。

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スルー出力(MUSES01出力)のオフセットは総じて基板載せ替え前後であまりかわりませんが、LPF出力は全般的にやや大きくなっていました。数値をじっと眺めてみて初段のMUSES01を入れ替えてみる事にしました。結果は以下のとおりです。

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LPF出力のオフセット電圧の絶対値はあまり変化はありませんが、出力の差を減らすことができました。LPF出力はDCパワーアンプに入るため、出力オフセット電圧差が減る事でスピーカーにかかるDCオフセットを減らす効果が期待できます。

音質比較

早々に音を聴いてみます。システムは、マルチアンプ対応改造したヤマハのNS-1000Mを先日修理したEL34ppアンプでスコーカーとツイーターを、バランスA級DCパワーアンプでウーハーを鳴らします。ソースはCDで、USB-DACでバランス信号を出力しています。

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■Take Me To The Mardi Gras/Bob James(BJ TWO)

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最初の印象は、中低域の音の厚みです。それでいてベース、ドラムの音が重たくありません。中域の弦楽器の分離もいい感じです。

■卒業写真/井筒香奈江(LINDEN BAUM)

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ボーカルとウッドベースのシンプルな楽曲です。ウッドベース低域までナチュラルに伸びていて、オリジナルよりも迫力が増したように聴こえます。

■月が射す夜は/風(moony night)

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風の楽曲は厚いベースの音が特徴です。先に聴いた音の印象から、このCDを選択しました。ベースの音が重たくならずに迫力を増して鳴っています。

■Let's gloove/EARTH WIND & FIRE(天空の女神)

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本記事のタイトルに合わせて、聴いてみることにしました。このアルバムは、CDプレーヤーの発売を翌年に控えた1981年に発売されたものです。CD化前提でCDの特徴をアピールする事を意識した独特な音づくりで録音されている印象です。久々に聴きましたが、ベース・バスドラが重くならずに素直に低域まで伸びでいて、躍動感があり楽しく聴く事ができました。

まとめ

音の印象をまとめると、中域楽器の音の分離の良さと響き、低域が重く鳴らずに厚く鳴る事です。これはMUSES03のオペアンプとしての基本性能の高さおよび、2チップ構成としたことによる駆動能力の高さから、今回のアプリケーション(LPFアクティブフィルタ)にマッチしている為と思いました。値段は2,500円(秋月電子価格)と高く、ともするとディスクリートで組み上げた方が安上がりかもしれませんが、それなりの能力を持っている事が確認できました。MUSES03、また機会があれば使ってみたいと思います。

 

おわり(製作編5)

女神たちの争い(製作編4)

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製作編4

L-ch用基板を実装して通電確認を行います。

実装開始

2枚目基板実装は、1枚目の実装のまねをするだけでいいので気が楽です。但し、忠実に実装位置を同じにしないと、実装が異なる部分の配線検討が必要になるだけでなく、左右チャンネルの特性差の原因となります。これを避けるために、違った部分に気をつかいますが、実装の効率は1枚目の実装に比べて圧倒的に高くなります。1枚目と同様に4スミにスタッドを取り付け、端子台、電解コンデンサーを取り付けます。

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次に、オペアンプ用ソケット、GND配線とオペアンプ電源のパスコンを取り付けます。

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オペアンプ用ソケットは、基板を立ててソケットを基板に差し込み、その状態で1つの端子のみ仮ハンダします。この状態では、ソケットが基板から浮いた状態なので手で押さえながら、仮ハンダした端子に再度コテを当てます。ハンダが溶けるとソケットは正規の位置まで差し込まれます。続いて、フィルター用RC取り付け用ポストを実装します。前回同様にRCのハンダ付けを楽にするようにポストの背面板をカットします。

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カットはニッパで無理して切っている事と、気温が低い中の作業でいくつもモールドを割ってしまいました。辛うじて予備分で数の確保ができました。加工が終わったポストを基板に実装しますが、ハンダには工夫が必要です。ポストのモールドが熱に弱い事と、基板穴径に対してポストの端子径が小さいため、逆さにするとハンダが固まる前にポストが落ちてしまいます。そこで、基板を立てて置き、ポストを挿して1極のみをハンダします。この状態ではポストが傾いているので、モールドを押さえながら先ほどハンダした部分を再加熱してポストを規定の状態に実装しなおします。オペアンプ用ソケットの実装と同じ要領です。

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モールドを押さえるときに、誤って端子に触っていると火傷します。なんとか8個取り付けが完了しました。次にボルテージフォロワに入力抵抗を取り付けて部品の実装は完了です。

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続いて、ジャンパー線を使った配線を行います。2枚目は1枚目のまねするだけではつまらないので、複数のジャンパを使って配線していた部分を長い電線で1本で配線しました。最後にフィルター用RCをポストに取り付けて完成です。

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通電確認

1枚目と同様に、最初はオペアンプを挿さずに各部の電圧確認を行います。1枚目の様に過電流保護が働くことなく順調です。次にMUSES01を実装して電圧確認を行います。これも問題ありません。残りMUSES032個を実装して電圧確認を行いましたが、特に問題ありませんでした。

周波数特性の測定

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前回同様に2Vppの正弦波を入力し、出力をポケットオシロで観測します。写真はHot-chの500Hz(カットオフ周波数)入力時の観測波形です。

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水色が入力信号で黄色が出力信号です。この時のゲインは約-5dBで1枚目の基板と同等で問題ありません。測定結果を先に測定したR-chの結果と比較します。

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誤解のないように、1枚目の測定結果公開じと同様にコメントを入れさせていただきますが、5KHz以上はポケットオシロのレンジの関係で誤差が増え、20KHz以上は測定限界により、ゲイン曲線が下がりません。従って、5KHz以上の結果は当てになりませんが、設計どおり動作していると考えられます。続いてCold-chの測定を行います。同様にカットオフ周波数入力時の観測波形を掲載します。

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R-ch同等で問題ありません。最後にCold-chの周波数特性をグラフ化します。

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設計どおり動作している事が確認できました。1枚目の多発したトラブルで学習させていただいたことで、2枚目の通電確認は順調に終わりました。次回は、チャンネルデバイダのシャーシに載せ替えを行い、現行基板との音質の比較を行います。

 

つづく(製作編5)

バランス方式EL34ppアンプ修理(番外編17)

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番外編17

予定を変更して、セミマルチアンプシステムのスコーカー&ツイーター駆動に使っているEL34ppパワーアンプの修理を行ったので紹介します。

きざし

昨年末(2017年12月中旬頃)にいつもの様に音楽を聴いていたところ、右チャンネルから「がさがさ」というノイズが聴こえました。すぐさまアンプの電源を切ったので原因の特定まではできませんでした。ノイズの帯域からしてスコーカーとツイーターを駆動しているEL34ppアンプが原因の可能性が高いと考えられます。しばらくして、電源を入れ直したところ特に問題はなく、その後1ヶ月以上、異常は発生していませんでした。

EL34の購入

念のため、EL34のペア品を購入しておく事にしました。現象が再現していない中、購入する事にした理由の1つは、昨年(2017年)の真空管オーディオフェアの新忠篤先生の講演です。先生が昔、レコード会社に勤めていた時に、カッティングルームのモニター用アンプとしてEL34パラレルプッシュプル構成のモニター9というアンプが使われていて、毎週末ごとにEL34を4本交換されていたとのお話をされていました。使い方によっては、EL34の寿命はこんな物かと思ったのを思い出したからです。いつものとおり、アマゾンで購入しました。購入時にいつも思いますが、アマゾンの真空管のラインナップは多彩です。今回購入したJJ Electronic社のEL34も2ペアから8ペアまで用意されています。

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各組数の単価を見ると、4本組が一番高く、2本、8本、6本の順番になっています。これは需要の順になっているのでしょうか?また、JJ以外のEL34もいくつが取り扱われています。

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掲載した中では、Mullard製が一番高価格となっていますが、ブランドのネーム以外にも差があるものなのでしょうか?一度、価格の高い真空管に差し替えて音を聴いてみたいとおもいました。私の購入したものは、購入後90日間の製品保証なので、購入してほったらかしにしておく事もリスクがありますが、高額ではないので気にしない事にしました。現品はこんな感じで届きました。

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ペア品に伴う取り扱い注意文が貼られています。緩衝材を外すとこんな感じです。

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外箱には、測定結果が貼られています。Ipを含む測定条件とGmの測定結果です。私の使用条件はIp=35mAなのでほぼ同じ条件で測定されている事になります。Gmの誤差は約0.15%とペア特性としては良好です。

再発

ノイズ発生を忘れかけていた時、チャンネルデバイダのオペアンプ変更の音質比較をするため、オリジナル状態で音楽を聴いていたところ、「がさがさ」ノイズが再発しました。今度は先にEL34ppアンプの電源を切ったところ、ノイズが消えた事から原因はEL34ppアンプと特定されました。前回現象が出てから、約1.5ヶ月が経過しています。重い腰を上げて修理をする事にしました。

EL34ppパワーアンプ

このアンプは、オーディオ趣味復帰後の大型製作1号機となります。それまで真空管アンプの設計を行った事がなかったため、参考書を購入して理解してから設計に取りかかりました。回路は以下のとおりです。

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差動2段構成のシンプルな回路ですが、真空管の安定性を生かして差動入力差動出力構成としています。この回路図ではNFBがかかっていますが、現在は帰還回路を外して無帰還として使っています。各段ともに半導体定電流源を採用し、オートバイアスとしています。従って、初段・終段の真空管を交換しても終段Ipのオフセット調整のみですみます。

終段管の交換

原因は終段管のEL34と特定できていませんが、決め打ちで交換してみることにしました。久しぶりにボンネットを開けると、普段未使用時にシートを被せているとは言え、埃が積もっています。交換前に現状の終段の終段Ipのオフセットを計ってみました。測定はシャーシにテスタリード用のチップ端子を付けたので便利です。

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結果は約0.8Vもあり調整時から真空管の特性が変化している可能性が高い状況です。この部分の等価回路は以下となり(63.5Ωは出力トランス巻き線の直流抵抗値)、測定結果からIp電流の差は12.6mAと算出できます。終段のIpを35mAとしていますので、無視できないレベルの差となっていました。

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早速、終段のEL342本を交換しました。

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新品のEL34は美しいです。ドキドキしながら電源オンし、オフセットを調整します。オフセット調整もシャーシ上からできる様に半固定抵抗を取り付けています。

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安定を待ってから調整し、おおよそ10mV以下に調整しました。

これで交換作業は完了です。重い腰をあげた割には、交換作業はあっけなく終わりました。前回のノイズの不再現期間が1ヶ月以上あったので、当面様子を見ながらの使用となります。万が一不調となっても修理が自前でできるのは、自作ならではのメリットだと改めて思いました。

 

おわり(番外編17)