女神たちの争い(製作編3)

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製作編3

前回の通電確認で発覚した周波数特性異常の原因を特定して対策します。

周波数特性異常

前回、組み上がったフィルタ回路の周波数応答を測定し、結果をグラフ化したところ、減衰の傾きが緩く、設計は-12dB/Octのはずが見た目には-6dB/Octくらとなっていました。基板を取り外し、最初にRCの値を確認しましたが問題ありませんでした。次に配線不良や漏れを確認しましたがこれも問題ありません。他に確認のポイントがなくなってしまったので、仕方なく現行の基板を眺めたところ、フィルタ用の2つのコンデンサ(C1とC2)の取り付け位置が逆になっていることに気づきました。改めて基板配線と回路図を比較しましたが、実装に問題はありませんでした。途方にくれて、いつも持ち歩いているネタ帳の当時のメモを見たところ、手書きのフィルタ回路が今回使った物と違っている事に気づきました。

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確認の結果、ネタ帳の手書きの回路図の方が正しい事が判明しました。ご丁寧に、実体配線図(風)の物も描いていました。今回実装に使った分も含めて回路図エディタで作図したもの全てが間違っていた事が誤りの真相でした。幸い現行回路は、手書き回路図を元に実装したため問題ありませんでした。下記が間違った2次のSallen-Keyローパスフィルタです。

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回路図エディタで作図したものが間違えていたと言うことは、今までブログに掲載した回路図も全て間違っていて、そのトラップに自らハマッタと言うことになります。そういえば、フィルタのRC取り付け用のポスト周りの配線時に、以前の作業と異なる様な違和感を覚えたのを思い出しました。直ぐさま公開直前の構想編2と、対象記事の回路図を変更しましたが、思いの外量が多く時間がかかってしまいました。基板の配線を見たところ、比較的簡単に修正できそうです。まずは1系統のみを修正しました。

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左が修正前で、右が修正後です。RC取り付け用ポスト周りの配線を変更しています。それぞれの写真の右側に4つの端子がありますが、これがRC取り付け用ポストの片側です。修正前は4つの端子が接続されていますが、修正により3つの端子のみの接続となり、一番下の端子は、ジャンパを介してGNDに接続しました。写真下の3つの端子はLPF出力用の端子台ですが、ここへの接続も変更しています。

周波数特性の測定

改めて周波数特性の測定を行います。入力信号を2Vppとして、周波数を10Hzから600KHzの範囲で出力レベルを測定します。測定はポケットオシロの電圧モニタ機能を使用しました。写真はカットオフ周波数500Hz時の応答波形です。

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昔、LCRのフィルタのカットオフ周波数の減衰量として1次の場合は-3dB、2次の場合は-6dBと教わった記憶がありますが、上記の結果はそれよりも若干小さく約、-5dBとなっています。測定結果をグラフ化してみます。

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グラフは、今回測定したものと、現行基板の測定結果を重ねています。結果は全く同じとなりました。尚、5KHz以上の結果は、測定レンジの関係で測定誤差が大きくなり、さらに20KHz以上は測定限界のためレベルが下がりません。5KHz以上のf特はあまり当てになりませ。先日作成したプリアンプを使えば20dB程度改善できるはずなので使うべきだったと、記事を書いてておもいました。

残り1系統の修正

同様に、残り1系統の回路を同様に修正して周波数特性の測定を行います。下記は500Hz時の応答波形です。

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結果は、Hot-chと変わりません。Hot-chと同様に結果をグラフ化します。

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今度はHot-chと結果を重ねました。Cold-chの特性も同じになっている事が確認できました。次回、L-chの実装を行い通電確認を行います。

あとがき

発覚したフィルタ回路の誤りは、今回の構想編2公開前に気づいたため「女神たちの争い」は誤った発信をせずにすみました。チャンネルデバイダの回路が掲載された他記事は、現時点では回路図の修正を優先させ、回路変更を入れた注記までできていません。順次入れていきたいとおもいます。

 

つづく(製作編4)

女神たちの争い(製作編2)

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製作編2

片チャンネル分のフィルタ基板の実装が完了したので通電確認を行います。トラブル多発でめげそうになりました。

通電確認

初めに、オペアンプを実装せずに電源を入れて各部の電圧確認を行います。電源にはユニバーサル電源を使用し、+/-12Vを供給します。いつものとおり念のため、100mAで過電流保護を設定しました。楽勝とおもい電源オンしたところ、+電源側で過電流保護が働きました。写真は、撮影用に保護の電流値を50mAに下げて撮影したものです。

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左が通電前の設定状態で、出力12Vで過電流保護設定50mAとなっています。右が出力をオンし、過電流保護が働いている状態です。右上のボタンのランプが赤で出力状態を示し、その隣に2つのボタンがありますが、右が+出力用で赤く点灯していて過電流保護が働いている事を示しています。表示は、電流が49mA流れていて出力が0.01Vまで下がっている状態です。基板を取り外し、ハンダ面の配線を何度も見直しましたが、+電源系の配線に異常は見つかりませんでした。一旦休憩をとろうかとおもいつつ部品面を眺めたところ、原因がわかりました。今回、被覆電線の使用を削減するためにジャンパを多用しましたが、そのジャンパとハンダ面の配線固定用に基板に挿した電線がショートしている部分を見つけました。(写真中央)

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ジャンパ線が+12V電源ラインで、ハンダ面から突きでている電線がGNDラインです。GNDライン側をカットしてここからGND電線が出ないように対策しました。この対策で+電源系のショートは直りました。このトラブルでかなり時間をとってしまいましたが、気を取り直して続きの確認を行います。

通電確認つづき

今回の基板上の半導体オペアンプ3個のみです。従って電圧の確認はオペアンプ用のソケットの各端子の電圧が主なポイントとなります。1難去ってまた・・・。MUSES01用のソケット4pinは-電源端子ですが、何故か+12Vが供給されています。さらに2つのMUSES03用ソケットの4pinも-電源端子ですが、オープン状態の電圧表示となっていました。基板をはずしてハンダ面を確認したところ、-電源系が一切接続されておらず、おまけにMUSES01の-電源端子に+電源が配線されている事がわかりました。自分の注意不足を反省しつつ配線修正および追加を行いました。写真右が修正前で左が修正後です。

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写真右上に電源用の3極の端子台があり、その左側が-電源端子ですが、電解コンデンサの配線しかされていませんでした。(写真左)この修正で被覆電線が2本追加となりましたが、3個のオペアンプ用ソケット各端子の電圧は想定値となりました。

オペアンプの実装

前回の記事で紹介したとおり、今回からオペアンプをソケットに挿した状態で基板ソケットに実装します。基板実装時は、ソケット2段積みとなります。

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初めにMUSES01のみを実装して、通電確認します。各端子の電圧に問題ありませんでした。次にMUSES032個を実装して、同様に通電確認します。

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全ての端子の電圧に問題はありませんでした。強いて言えば、出力のオフセットが少し大きめな点が気になりましたが、調整のしようがないので気にしないことにしました。それぞれの電圧値は、Hot-chが約2mV、Cold-chが約5mVでした。出力オフセット電圧は、正規の電源に接続した状態で改めて測定したいとおもいます。

周波数特性の測定

この測定で、今回最大のトラブルが発覚しました。このため測定の詳細は別途とし、発覚したトラブルのみ紹介します。測定は10Hzから600KHz周波数応答を確認します。結果は順調にとれたとおもいつつ、グラフにしたところ減衰の傾きが設計よりもなだらかとなっていました。オペアンプの変更だけで傾きが変わる?わけはありません。今度はなにをやらかしてしまったのでしょうか?次回は、このトラップの真相を明らかにし、通電確認の続きを紹介します。

 

つづく(製作編3)

女神たちの争い(製作編1)

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製作編1

フィルタ回路基板の部品を準備して実装を開始します。

部品の調達

製作用の部品の調達は、全て通販で対応しています。送料はかかりますが買い物に行く時間とコスト、探す時間を考えると高くはありません。今回もいつもお世話になっている秋月電子で必要な部品を準備しました。ここは価格がリーズナブルで配送も安定しているため常用しています。MUSES製品は、ネット上の特設ページから秋月電子の対象製品へリンクが貼られていることもあり、安心して購入できます。今回のメインは、MUSES01を2個、MUSES03を4個ですが、MUSES03の在庫が2個と足りませんでした。仕方がないので2個だけ注文し、残り2個を他で探すことにしました。検索したところ、共立電子に在庫がある事がわかり無事調達する事ができました。写真は秋月電子共立電子のMUSES03のパッケージです。

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秋月電子のパッケージは個装で、データシート、丸ピンdipソケット、出力電流制限用抵抗が付属します。対して共立電子のパッケージは注文分2個のみが入ったそっけない物となっています。価格は秋月電子が、2,500円で共立電子が2,900円でした。価格も含めたサービスでは秋月電子が圧勝です。入手できない事を考えたら共立電子の在庫もありがたいとおもいました。尚、秋月電子のパッケージに付属するdipソケットは、無酸素銅リードフレームの強度不足を補う為にソケットに差して使用し、交換時もソケットごと交換をするためのものです。今まで購入したMUSES01にも付属されていましたが使った事がありませんでした。抜き差しを繰り返す中で必要性を痛感したので、今回から使用してみる事にしました。

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実装開始

いつものとおり、安定した作業ができるように、部品面とハンダ面の両方にスタッドを取り付けます。今回部品単体で一番背の高いものは、在庫消化のために使用する電解コンデンサMUSE 100uF/50V品です。この高さを考慮して部品面側に取り付けたスタッドの種類を選びました。

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続いて現行基板に合わせて、4角に3極の基板端子台を取り付けます。

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次に、電源入力用の端子台の脇に電解コンデンサMUSE 100uF/50V品を2個取り付けます。

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次は、大物部品の配置を決めるために、ソケット、パスコン、RC取り付け用のポストを基板において配置バランスを取ります。MUSES03+RCのフィルタ部は、配置を共通にして配線も共通にします。写真は少しづつ位置をずらして決定した大物部品の配置です。

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決定した位置で、ソケット3個を仮ハンダします。これで全体の位置を確定できます。続いてGNDの配線をします。各端子台のGND端子間をループにならないように接続します。

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GND配線とオペアンプの電源端子に相当するソケットの端子間にパスコンを取り付けます。

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パスコンに使用したフィルムコンデンサは、SUNTAN TECHNOLOGY社製の0.47uF/100V品です。サイズも大きくなく1個30円と手頃なのでいつも使用しています。次に、フィルタのRC取り付け用のポストを取り付けます。ポストはタイコエレクトロニクス製の2極の基板コネクタを流用しています。いつものとおり、背面のモールドを少しカットしてRCのハンダ付けをやりやすくしています。

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このポストだけは、いつもマルツオンラインで購入しています。同等仕様のものを秋月電子で探しましたが販売されていないため、やむおえずの購入です。価格は5個で140円で送料が486円です。コストを考えると同等仕様のものを秋月電子で取り扱って欲しいとおもます。最後に、フィルタ用のRCをポストにハンダ付けして完成です。

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今回の実装では、できる限り被覆電線を使用せずに配線を行いました。

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被覆電線の使用は、Hot-chとボルテージフォロワ入力間だけですみました。この実現のために、今回はジャンパ線を多用しています。

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ジャンパ線多用による被覆電線の使用削減は、いい頭の体操になりますが、その分実装に時間がかかってしまいました。次回はトラブル多発の通電確認を紹介します。

 

つづく(製作編2)

女神たちの争い(構想編2)

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構想編2

前回紹介したMUSES03を使ったチャンネルデバイダを具体的に構想します。

チャンネルデバイダ

今回の製作も、前回の「安定化電源製作」と同様に基板載せ替えの改造となります。安定化電源製作では、チャンネルデバイダの電源基板を載せ替えましたが、今回はフィルタ基板を載せ替えて、音質の比較を行います。現状のチャンネルデバイダの回路は以下のとおりです。

■フィルタ回路

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■電源回路

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フィルタ回路は、入力をボルテージフォロワで受けてその出力をベッセル特性のアクティブフィルタへ入力します。バランス方式を取っているので片チャンネル当たりHotとColdの2系統で、現行の回路は2回路入りのMUSES01を2個で構成しています。構想編1でも紹介しましたが、MUSES01のオペアンプとしてのスペックは今一つなので、アクティブフィルタ用途としてはどうかと?考えていました。今回はボルテージフォロワ部はそのままMUSES01とし、アクティブフィルタのみ、MUSES03に変更した基板を製作します。あまり代わり映えしませんが、オペアンプを変更した回路図も参考に掲載します。

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セミマルチアンプシステム

アクティブフィルタ回路のおさらいの前に、このチャンネルデバイダが組み込まれるシステムについて簡単に説明します。スピーカーはヤマハのNS-1000Mをマルチアンプ対応に改造しています。具体的には、ネットワークと一体になったオリジナルのターミナルを取り外し、代わりにウーハー、スコーカー、ツイーター専用のターミナルをもうけています。

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現行のシステムは、ウーハーのみパワーアンプと直結し、スコーカーとツイーターは取り外したオリジナルのネットワーク回路を介して接続しています。下図はこのシステムのブロック図です。

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ウーハーの駆動は、モノラルA級バランス方式DCパワーアンプを、スコーカーとツイーターの駆動には、バランス方式EL34プッシュプルパワーアンプを使用しています。従って、チャンネルデバイダの出力は、LPF出力とスルー出力2系統となります。

アクティブフィルタ回路

NS-1000Mのウーハー駆動用なので、オリジナルのネットワークに合わせて、カットオフ周波数を500Hzとしています。下図がこのチャンネルデバイダで採用したSallen-Key2次のアクティブローパスフィルター回路です。

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フィルター定数は、K=1.4としてベッセル特性としていますが、定数の決定には以下の式を使用しました。

fc = 1 / (2π x C1 x R1)

R2 = K x R1

C2 = C1 / K

fc = 1 / (2π x C2 x R2)

選定した定数でカットオフを計算し直すと、カットオフ500Hzに対して若干周波数が低くなっていますが、目をつぶっています。

フィルター回路基板

写真は、現行のフィルター回路基板の片チャンネル分です。

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3極の基板端子台が4個搭載されていますが、左上が電源入力で、その右が信号の入力、左下がLPF出力で、その右がスルー出力です。今回製作する基板の端子台もこの配置に合わせます。オペアンプが2個実装されていますが、写真上がボルテージフォロワ用で、下がアクティブフィルタ用です。どちらもMUSES01が実装されていますが、下側のオペアンプをMUSES03x2個で置き換えます。アクティブフィルタ用のCR実装は、定数の変更を考慮して基板ポストに取り付けています。1系統当たりCが2個、Rが2個ですが、この実装方法も踏襲します。本記事のアイキャッチ写真が現行のチャンネルデバイダですが、3枚の基板のうちフィルタ回路基板2枚を載せ替えて音質の比較評価を行います。次回は部品を揃えて実装を開始します。

 

つづく(製作編1)

女神たちの争い(構想編1)

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構想編1

昨年(2017年)に発売された高級オーディオ用オペアンプMUSES03を使ったチャンネルデバイダを構想します。

MUSES03

ミューゼスはギリシャ神話で文芸を司る女神(ムーサ)達の事です。このMUSESを使った製作なので大層なタイトルを付けてしまいました。以前、MUSES01にデスクリートアンプで挑みましたが(2017-01-06「音楽の女神への挑戦」)今回はMUSESシリーズ同士の勝負となります。MUSES03については2017-08-08の記事「A級バランスHPアンプ製作(製作編5)」で簡単に紹介しましたが、このオペアンプを使ったチャンネルデバイダを構想するにあたり、改めて紹介します。MUSES03は、2017年3月24日に販売開始のプレスリリースが行われました。このプレスリリースの中では、「MUSESシリーズの新しいフラグシップモデル」と唱われていて、下記の用途を想定されています。

・高級オーディオ機器

・プロ用オーディオ機器

パッケージはDIP8ピンのみで、今ではめずらしい1パッケージに1回路仕様です。従って、従来のMUSESシリーズのオペアンプとの差し替えはできませんが、最良の状態で動作をさせるための仕様と理解しています。ピンアサインは以下のとおりです。

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MUSES03特長

プレスリリースの中で、3つの特長が説明されています。それぞれについて紹介します。

■高音質回路

高音質回路として説明されているのは、「フルバランス型差動増幅回路」の採用です。バランス型差動増幅のメリットは本ブログの今までの製作の中で何度も紹介してきましたが、プレスリリースの中では、「応答性、ダイナミックレンジ、歪率の特性向上」と説明されています。

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■高音質組立技術

この具体的な対応は、「入力段と出力段をそれぞれ別チップとした2チップ構成」です。メリットとして「入力と出力を分離し相互干渉を低減」と説明されています。この構造に伴うスペックに関しては後で確認してみたいとおもいます。

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■高音質素材

これは「リードフレームに高純度の無酸素銅を採用(MUSES01/02と同様)」です。メリットとして「最小限の劣化で信号を伝達」と説明されています。

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今まで同素材が使われたMUSES01を使用してきて、無酸素銅リードフレームの大きな欠点は強度です。ソケット使用時の装着の際に、慎重に差し込まないとあしを曲げてしまいます。

MUSESシリーズオペアンプ仕様比較

2017-08-08の記事に掲載した比較表を再度掲載します。

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比較の対象は、MUSESシリーズのオペアンプの中でJ-FET入力のMUSES01とMUSES8920としています。以前のフラグシップMUSES01は、音質重視の観点からかスペックにはこだわないように見えます。この結果殆どの項目でMUSES03の数値が上回っています。特に今回のチャンネルデバイダ用途で考えると、GB積の値が気になりました。チャンネルデバイダのアプリケーションは、アクティブフィルタとして動作させているため使用帯域で理想オペアンプ動作する事が前提となります。データシートに掲載されたGB積はf=10KHz時のゲインとの積で、MUSES01の3.3MHzに対してMUSES03は12MHzとなっています。言い換えると、10KHz時の裸ゲインは、MUSES03の方が3.6倍高い事になります。次に目につく項目は、全高調波歪です。MUSES01の0.002%に対して0.00003%と圧倒的に低歪率となっています。これはフルバランス型差動増幅の恩恵でしょうか?

負荷電流仕様

MUSES03の大きな特長は、その負荷電流仕様と考えます。前出の3種類のMUSESシリーズオペアンプの負荷仕様について整理してみました。

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上記の比較を見ると、MUSES03のドライブ能力の高さがわかります。ディスクリート構成のラインアンプに見劣りしないスペックと言えます。ひとえに、「入力段と出力段の2チップ構成」がこのドライブ能力に寄与していると考えられます。この仕様にともなって、データシートに以下の注意事項が追加されていました。

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仕様の詳細を確認した事で、このオペアンプへの期待が高まりましたが、チャンネルデバイダへの適用の構想は次回とします。

 

つづく(構想編2)

安定化電源製作(評価編12)

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評価編12

電源の特性測定および結果の比較の続きを行います。

矩形波応答観測条件

ダミー負荷ジグへの入力信号を正弦波から矩形波に切り替えて、波高値が矩形波状の負荷電流時の出力変動をオシロで観測します。負荷電流は平均値を40mAとし、波高値を10mAと70mAで矩形波状に振っています。矩形波の周波数は1KHzです。被電源基板は前回紹介の測定条件と同様にチャンネルデバイダに搭載し、負荷電流は測定電流以外、電源ランプのみとしています。

ディスクリート安定化電源矩形波応答

位相補償コンデンサ値の決定をした際に観測済みなので簡単におさらいします。写真は+12V電源の矩形波応答5周期分の観測結果です。青のラインがダミー負荷の印加電圧で、負荷抵抗50Ωで表示電圧を割ると負荷電流となります。黄色のラインが電源出力変動をプリアンプで10倍に増幅した波形です。

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写真のとおり、負荷電流の立ち下がりで大きなオーバーシュートが発生している点が特徴です。立ち下がり、立ち上がりをそれぞれ拡大してみます。

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負荷電流立ち下がり時のオーバーシュートのレベルは約72mVppです。逆に立ち上がり時は7.4mVpp程度で良好です。紙面の関係で-12Vの波形は省略します。

三端子レギュレータ電源矩形波応答

電源基板を三端子Reg.仕様に載せ替えて同様に矩形波応答波形を確認しました。写真は+12Vおよび-12V電源の矩形波応答1周期分です。

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等価出力インピーダンス特性と同様に+12Vと-12Vで応答波形が大きく異なります。+12V電源はレベルが静定するまでに矩形波半周期まるまるかかっています。次の写真は立ち下がり部の拡大波形です。負荷電流の立ち下がり、立ち上がり共にほぼ同等の波形です。

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変動量は上記2枚の写真からは読みとれませんが約30mVppです。立ち上がり時の応答波形も拡大してみます。

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写真から変動量のトータルレベルは約33mVppです。続いて-12V電源の負荷電流変化時の応答波形を拡大してみます。

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変動量のトータルレベルは立ち下がり時が40mVppで、立ち上がり時が約33mVppです。矩形波の応答波形としては、今まで確認した中で一番良好です。

定電圧電源矩形波応答

最後に定電圧電源方式の物に載せ替えて矩形波応答を確認しました。

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定電圧電源は、ドライバ段のトランジスタで負荷インピーダンスをhfe倍とした1次フィルタなので、1次フィルタのステップ応答波形となっています。変動量は47mVppとなっています。-12V電源も同じ応答をするので紹介は省略します。

特性と音の考察

オリジナル電源から三端子レギュレータ電源に載せ替えたときの音の印象は、派手な感じで高音の抜けが良く、低音は基音が明瞭と言うか、芯のある鳴り方でした。定電圧方式の電源に比べて少なくとも10KHz以下の領域のインピーダンスは圧倒的に低くなっています。低音の鳴り方の違いと、高音の抜けが良く派手な鳴り方の違いは、この特性差に起因していると推察しています。さらに電源をディスクリート方式の安定化電源に載せ替えた時の音の印象は、低音の鳴り方はそのままで、中域の響きがより美しく、鳴り方に奥行きが感じられました。三端子レギュレータ電源に比べてインピーダンスはやや高くなるものの可聴帯域の特性がフラットな事に起因しているのかもしれません。機会があれば、この比較の中にバッテリーも加えてみたいと思いました。ディスクリート電源の矩形波応答が良くなかった点は、ドライバで採用したトランジスタのCob特性に関連していると考えています。スペックは以下のとおりです。機会があればこれを定電圧方式電源で使用した2SC3422/2SA1359やさらに高速スイッチング用途のものに変えて確認してみたいとおもいました。

・2SC3851A:Cob=60pF → 2SC3422:Cob=35pF

・2SA1488A:Cob=90pF → 2SA1359:Cob=35pF

まとめ

現時点は、チャンネルデバイダの電源をディクリート方式のものにしています。音の評価の記事でも紹介したとおり、今まで気に留めなかった楽器の音がきれいに聴こえたり、低音が素直に伸びていることが新鮮で、普段聴かないCDをいろいろ引っ張り出して聴きまくっています。些細な変化かもしれませんが、オーディオ製作止められません。

 

おわり(評価編12)

安定化電源製作(評価編11)

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評価編11

3種類の電源の特性を測定して、結果を比較します。

概要

電源の特性測定は、製作済みのダミー負荷用のジグを使用して行います。測定項目は以下の3点です。それぞれの項目ごとに結果の比較を行い、最後にまとめとして音質の評価結果と特性の比較結果の関連について考えてみます。

(1)負荷電流(DC)と出力電圧変動特性

(2)交流負荷(正弦波)と出力変動特性

(3)矩形波応答

測定システム

すでに紹介済みですが、測定システムのおさらいを簡単にします。希望の負荷電流を流す為にジグを製作しました。回路は以下のとりです。

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+電源、ー電源用が独立していますが、回路構成は同じです。ジグ中のVRでDCの負荷電流を設定できます。Sig-Inに信号入力すると、その信号で波高値を制御する事ができます。測定システムのブロック図は以下のとおりです。

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早速測定を始めます。

DC負荷電流特性

測定は5mA刻みで、0~50mAのレンジで行いました。各負荷電流を流した際の電源出力電圧はマルチメーターで測定しました。測定時の被評価電源は、チャンネルデバイダに搭載し、電源の負荷は測定電流以外、電源ランプのみとしています。各電源の測定結果は以下のとおりです。

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フィードバックがかかっている2種類の電源は、さすが測定した負荷電流の範囲では電圧変動しません。結果をわかりやすくするため、電圧変動量をグラフ化してみました。

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この結果から等価出力インピーダンスを算出します。安定化電源は出力が50mAの範囲ではほぼ電圧変動がしなかったため以下のとおり計算できます。

測定限界10mV / 50mA = 0.2Ω以下

定電圧電源の等価出力インピーダンスも算出します。電流の流れ初めの出力変動が大きいので、上記のグラフから傾きが安定する領域として15mAと50mAの差分で算出しています。

+12V定電圧電源:40mV / 35mA = 1.1Ω

-12V定電圧電源:40mV / 35mA = 1.1Ω

DCの等価インピーダンスでは、フィードバックがかかっている三端子レギュレータを含めた安定化電源方式が圧勝となりました。

正弦波負荷電流特性

各電源は上記のDC負荷電流測定時と同じ条件で動作させています。負荷電流は、平均値を40mAとして10mAから70mAの範囲で正弦波状に振っています。測定周波数範囲は10Hzから100KHzとしました。写真は+12Vディスクリート電源の100Hz電流負荷時の観測波形です。

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青のラインがダミーの負荷抵抗にかかる電圧です。負荷抵抗は50Ωなので、この電圧を50で割ると負荷電流となります。黄色のラインが出力電圧変動をプリアンプで10倍に増幅した波形です。それぞれの波形の振幅は3Vppと2.4mVpp(24/10)となっています。この測定を3種類の+/-電源に対して10Hzから100KHzの範囲で行いました。それぞれの出力変動レベルをグラフ化してみました。出力電圧変動が聴感と合うように縦軸も対数表示としています。

■+12V電源出力変動

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■-12V電源出力変動

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興味深い結果がとれました。せっかくなので縦軸を等価インピーダンス表示に変換します。計算の方法は、電圧変動ピーク電圧を負荷電流変動ピーク値の60mAでわり算します。結果は以下のとおりです。

■+12V電源等価出力インピーダンス

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■-12V電源等価出力インピーダンス

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一番の特徴的な結果は、三端子レギュレータの+12V電源の等価出力インピーダンスが200Hz付近から上昇を始め、約3KHz付近でピークに達し、さらに周波数が上がると逆に下がっている点です。参考に+12Vディスクリート電源と+12V三端子レギュレータ電源の10KHz負荷電流時の観測波形を掲載します。(左右で測定レンジが異なります)

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一方、三端子レギュレータの-12V電源はこのような現象は観測されず、素直な特性となっています。次に目につくのが、+/-12V定電圧電源は、低周波数領域で等価インピーダンスが高く、200Hz付近がら下がり始め、可聴帯域外では3種類の電源の中で一番低インピーダンスとなっています。写真は100KHz時の-12Vディスクリート電源と定電圧電源の波形観測結果です。

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それぞれの電源の特性には一長一短がありますが、ディスクリート方式の安定化電源が可聴帯域内で比較的等価インピーダンスが低く、且つ一番フラットな特性となっています。特性測定は途中ですが切りがいいので続きは次回に紹介します。

 

つづく(評価編12)