真空管HPアンプの製作(製作編15)

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製作編15

製作が完了したので、設計のまとめ、音聴き、測定を行うつもりでしたが・・・。

設計のまとめ

製作の最後で何点か設計変更したので、設計情報をアップデートします。最初にアンプの回路図を更新します。変更点は以下のとおりです。

・帰還回路の追加

・トランス2次の極性変更

・トランス2次のGND接続変更

・電源電圧の変更

・入出力端子に極性追加

・トランス2次側の負荷抵抗変更

カップリングコンデンサの容量変更

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続いて、電源回路を修正します。変更点は以下のとおりです。

・B電源系の電圧測定結果の反映

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発振対策

製作後恒例の周波数特性の測定の測定をする為に、出力へポケットオシロを接続して出力波形を確認したところ、入力のボリューム位置により発振する事がわかりました。具体的にはボリュームを絞った状態では問題ありませんが、、上げていくと発振します。

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発振周波数は167kHzで、レベルは0.5Vppです。先に掲載した回路図を眺めてみると、帰還量がボリューム位置で変化し、ボリュームを上げると、帰還量が100%以上となっていました。取り急ぎ、全ボリューム位置で帰還量が100%以下とならないように帰還抵抗R05とR06を100kΩに変更してみます。まずはL-chのみ改造して効果を確認したところ発振が止まったので、対策として採用しました。ボリューム端子付近に実装された帰還抵抗を4本交換しました。

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これで発振は止まりましたが、アンプのゲインが6dB上がったため、静かな環境でかすかにハムの音がきこえます。ハムの音質はプリウスが低速でモーター走行する際の疑似モーター音のような感じで耳につきにくいですが、この音質から、あまり根拠はありませんが、電源トランスの漏洩磁束をアンプの回路が拾っている感じで、対策のハードルが高そうなので、この状態で一旦様子をみることにしました。

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周波数特性の測定

改めて周波数特性の測定を行います。ヘッドフォンの代わりに47Ωの抵抗を負荷抵抗接続用ラグ端子に追加接続しました。この追加で47Ωの抵抗が3本パラレル接続される事になります。入力信号は、発信器出力をバランス変換アダプタに入力してバランス信号化してヘッドフォンアンプに入力します。入力と出力ともにHotの信号をポケットオシロで観測しました。尚、ヘッドフォンアンプのボリュームはMaxの位置で測定を行います。入力を0.5Vppとして周波数を10Hzから1MHzまで変えて出力波形をモニタしました。アイキャッチ写真がこのf特の測定風景です。

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L-ch、R-chほぼ同じ特性で、ゲインは約6dB、低域は10Hzまでフラットです。段間のカップリングコンデンサを4.7uFとしている事が効いているようです。高域は約40KHzからゲインが上がり、約100KHzでピーク(約13dB程度)となりそれ以上の周波数でゲインが落ち込みます。音を効いた限りでは、高域のピークを感じさせる印象はまったくありませんでしたが、対策を検討してみました。簡単に接続できる事から、終段のグリッドバイアス用端子台にコンデンサを追加で接続してみました。

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下記の特性は150pFを接続したときのものです。

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この対策によってピークは5dB以下に下がりました。但し、ゲインが上昇する周波数も40KHzから30KHzに下がっています。結局オリジナルの状態で、音質上気になる点がなかったので、本対策は保留としてこのまま様子を見ることにしました。今度こそアンプは完成です。次回は改めて設計情報の整理と音聴きを行います。

 

つづく(まとめ編)

真空管HPアンプの製作(製作編14)

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製作編14

ハム対策を継続します。

ハムの原因の特定

ハムの音をよく聴いてみると、低周波成分はL/Rで同レベルで、ジーという高調波成分はL-chの方がやや大きく聞こえます。この状態で各部配線や部品に触ってみてノイズの変化から原因を特定してみます。トランジスタアンプの感覚でいろんな部分に触ると感電するので慎重に行いました。その結果L-chの方がやや大きい高調波成分は、ボリュームと段間のカップリングコンデンサ部で発生している事がわかりました。GNDに落とした銅板をその2カ所に入れるとL-chの高調波成分のレベルが下がり、ノイズがセンターから聴こえるようになりました。ボリュームは、L-chがトランスに近い側にあり、影響を受けやすくなっているようです。一方、L-chの段間のコンデンサのフロント側は、AC電源の1次ラインがトグルSWへ配線されていて、その影響を受けているようです。v

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これでL/Rのバランスは取れるものの抜本的な対策とはならないため、この改造は躊躇しました。頭を冷やすために毎週末の定例のポタリングにでかけました。

試しに

いままでの検討で、かなり悲観的な気持ちになってきていましたが、基本方針の変更も含めて最後のわるあがきをする事にしました。音の観点から、今まで無帰還構成で考えていましたが、ゲインを下げる為に負帰還をかけてみる事にしました。試しに、47kΩ抵抗を4本(バランス入力アンプなので)取り付けて、100%帰還をかけてみました。改造はL-chのみで、抵抗をボリュームに取り付けて、配線はワニグチケーブルで仮接続しました。あまり期待せずに電源オンしました。この結果、うそのようにハムが消えました。この状態で音楽を再生したところ、ボリューム位置が10時あたりで通常音量となり、ゲイン設定もよさそうな感じで、対策としていけそうです。無帰還の伸び伸び鳴る感じは捨てがたいですが、いたしかたありません。意を決して正規改造する事にしました。帰還ラインは、ベルデンの2芯シールドケーブルを使用します。シールドラインはトランスの2次側は接続しますが、ボリューム側はカットします。

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帰還抵抗は両チャンネルで合計8本になりますが、ボリュームの端子に取り付ける事にしました。ボリューム端子とボトムカバー間のクリアランスはあまりないので、端子をよけてボリュームのボディー面に取り付けました。見栄えはよくないですが、なんとか取り付けができました。

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この状態で音を聴いてみます。電源オンして無音状態でヘッドフォンを装着しました。先ほどまで、あれほど悩まされていたハムがきれいに消えました。おそらく今回の負帰還で20dB程度フィードバックがかかったため、電圧換算で1/10くらいにノイズレベルが下がったものと思われます。後でアンプの周波数特性の測定をしてみる予定ですが、その際にオーバーオールのゲインから、無帰還時のゲインも算出してみたいとおもいます。

仕上げ

今回のハム対策で、無意味なものも含めていくつか配線変更を行ったため、束線をやりなおしました。最終的には以下のとおりです。

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最後にボトムカバーの処理をします。最後に追加した帰還抵抗とボトムカバーのショートを防止するために、ボトムカバー側に絶縁テープを貼りました。

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見栄えはよくないですが、使用時には見えない為、気にしない事にします。アイキャッチ写真はボトムカバーを取り付けた完成写真です。次回は設計情報のまとめと、音聴き、特性の測定を行います。

 

つづく(製作編15)

真空管HPアンプの製作(製作編13)

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製作編13

動作確認を完了させて、前回の記事の最後で触れたハムの対策をします。

動作確認残り

ハム対策の前に、残り2点の動作確認を行います。最初に入出力の位相確認です。入力をUSB-DACに接続し、ヘッドフォンを接続して電源オンします。EIAJのTEST CDをセットして1KHzの正弦波をリピート再生させます。

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恐る恐る入力のボリュームを上げていきます。装着せずに置いたヘッドフォンから1KHzの音が聞こえます。ポケットオシロを信号の入力と出力のHotラインに接続して、位相確認をしました。下記が観測結果です。

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青が入力信号で黄色が出力信号です。残念ながら逆相となっていました。一旦電源を切って出力トランスの2次配線を逆につなぎ変えました。これで位相は正しくなりました。最後は、完成後まで確認を保留していた出力のHot/Coldバランス信号の確認をします。現状の構成は、トランス2次側の8Ω端子をGNDに接続して、16Ω端子とCom端子をヘッドフォンに接続しています。確認は、GND基準に正しくバランス出力をしている事を波形をモニタします。確認結果は以下のとおりです。

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あれれ?レベルが異なります。青が16Ω端子側波形で黄色がCom側の波形です。しばらく考えて、勘違いをしていた事に気づきました。2次側の各インピーダンスの端子は、伝送される電力が一定となるように巻き線が設定されている事から、今回のアプリケーションの場合、4Ω端子をGNDに落とすべき事に気づきました。下記は、出力トランスの説明書ですが、よく見ると各端子のタップ位置が2次巻き線上にモデル化されて表現されています。(4Ωがセンター)

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早々に、GNDの接続変更を行いました。4Ω用電線(黄色)は不使用電線として短くカットしてしまっていたので継ぎ足して接続しています。

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改めて出力波形を確認しました。

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正しくバランス出力している事が確認できました。二次側はGND接続せずに浮かせておいても問題ないかもしれませんが、拘わりです。組立前に2次巻き線の抵抗値測定を行いましたが、Hot-GND間とCold-GND間の抵抗値のバランスが崩れていた事に改めて納得しました。その際におかしなコメントをしてしまった事をお詫びします。これで全ての動作確認が完了しました。

音出し

ハム対策に進むまえに、現状を確認しておきます。ボリュームを絞り電源オンしてヘッドフォンを装着します。酷いハムです。L-chの方が大きく発生していますが、R-chも発生しています。各ボリューム位置のハムの発生状況は下記のとおりです。

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実際に信号を入力して普通に音楽再生をすると音楽でハムはマスクされる状況です。音はいい感じで鳴っています。但し、アンプのゲインが高すぎて、ボリュームを8時の位置までさえも上げられません。アイキャッチ写真が音楽再生時のボリュームの位置です。ハムの一因は、このゲイン設定にもある事もわかりました。

ハム対策

ボリューム位置MidのR-chは、ボリュームのノブに触れるだけでレベルが高くなります。そう言えばシャーシGNDをとっていない事に気づき、ノイズが発生している状態でワニグチジャンパ線でシャーシをGNDに落としてみました。この対応によってボリュームのノブに触れる事によるノイズレベルの悪化は解消しました。具体的なシャーシGND接続はラグ端子を使って電源端子版のスタッド部分で行いました。

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次に負荷抵抗を変えてトータルのゲインを下げます。具体的には、現状は出力トランスの2次側に、47Ωとヘッドフォン(インピーダンス45Ω)を並列接続しています。負荷抵抗は、約23Ωとなり16Ωよりもやや高い値となっていました。そこへさらに47Ωを並列接続する事で負荷抵抗は15.4Ωとなります。この変更でアンプのゲインが15.4/23=0.65(-3.7dB)下がり、ヘッドフォンに並列に47Ωが接続される事で、入力パワーが1/2から1/3に下がります。ゲイン換算すると-1.8dBとなり、トータルで約5.5dBゲインが下がるはずです。この変更によってヘッドフォンのA級動作範囲が0.3Wまで下がるはずですが、目をつぶります。計算は自信がありませんが、回路変更してみます。先に掲載した2次側のGND接続変更の写真には、すでに47Ωが1本追加されています。結果は、音楽再生時のボリューム位置はやや上がりましたが、抜本的な対策にはなりませんでした。次回は泥沼にはまる予感を感じつつハム対策を継続します。

 

つづく(製作編13)

真空管HPアンプの製作(製作編12)

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製作編12

配線が完了したので、通電確認から再開します。

通電確認

まずは、終段の真空管を装着せずに通電確認を行います。確認ポイントは終段真空管用のソケットの各端子電圧です。その際に終段のIpバランス調整機能の動作確認も合わせて行います。それでは早速確認を開始します。電源オンして、まずはB電源とC電源の電圧が正しく出力されているか確認します。

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次に、確認済みの初段の状態を再確認します。確認は各プレートの電圧測定です。初段の通電確認結果と比較しましたが特に問題ありませんでした。続いて本題の終段真空管用のソケットの各端子電圧を確認します。確認結果は以下のとおりです。

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グリッド端子はハイインピーダンスの為、測定値が安定しませんでしたが、センター値は概ね設計値となっていた為問題なしと判断しました。カソードは、定電流回路がカットオフしている為、値が安定しませんでしたが概ね0Vなのでこれも問題ありません。続いてグリッドバイアス調整回路の確認を行います。ボリューム位置Min/Max時の各グリッドピン電圧を確認しました。確認結果は以下のとおりです。

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L-ch/R-chともに値が安定しませんでしたが、センター値が設計どおりなので問題なしと判断しました。

L-ch通電確認

一旦電源を切って、L-chの終段用真空管を装着します。少し力がいりましたが、なんとか装着できました。

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入力ボリュームを絞り、グリッドバイアス調整用ボリュームをセンターに合わせて電源オンします。ヒーターが音を立てて発光を始めます。ヒーターが暖まると定電流回路に電圧がかかり、定電流回路の基準電圧生成用のLEDが点灯します。

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最初に定電流回路の動作を確認します。カソードの電圧は4.6Vで定電流回路に必要な電圧がかかっています。次にエミッタ電圧を測定します。1.24Vなのでエミッタ抵抗57Ωから電流値は21.8mAとなります。基準電圧回路の電流が10mAと想定すると、プレート電流の和は31.8mAと算出できます。ほぼ設計値どおりの結果となります。

L-ch_Ipバランス調整

本アンプの唯一の調整項目の終段Ipのバランス調整を行います。参考に改めて回路図を掲載します。

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調整方法は、終段双三極管のグリッドバイアスをバランス調整します。各回路のIp値は、あらかじめ測定した出力トランスの1次巻き線の抵抗値と巻き線のドロップ電圧から算出します。

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調整は正規の姿勢に置いてシャーシに取り付けたチップジャックを使って行います。

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一旦ラフに合わせてから微調整を繰り返してIpバランスを追い込みます。調整結果は以下のとおりです。

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念のため出力をポケットオシロでモニタして、発振していない事を確認しました。

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最後に各部の電圧を測定しました。結果は以下のとおりです。

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これでL-chの製作は完了しました。

R-ch通電確認

R-chも真空管を装着して同様に確認を進めます。

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定電流回路の電流算出値は32.1mAでした。続いてIpバランスを調整します。調整結果は以下のとおりでした。

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L-ch同様に出力をポケットオシロでモニタしました。発振はしていませんでした。

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調整後のR-chの各部電圧は以下のとおりです。

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電源動作確認

アンプの各部電圧の確認が終わったので、電源の確認もしておきます。各部電圧は以下のとおりです。

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B電源は想定よりも9V下がっていますが、アンプの動作への影響はないとおもいます。念のためB電源のリップルフィルタ用トランジスタ印加電圧をポケットオシロで確認しておきます。

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最低でも13Vかかっているため動作上の問題はありません。続いてC電源の三端子レギュレータ印加電圧も波形確認します。

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動作に十分な電圧がかかっている事が確認できました。電源も設計どおり動作しています。今回の記事では触れませんでしたが、調整後に無音時の音を聴いたところ、酷いハムが発生していました。次回はハム対策を行います。

 

つづく(製作編13)

真空管HPアンプの製作(製作編11)

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製作編11

終段の配線から再開します。

終段の配線

前回実装した基板のカソード、-5V、GNDの配線を行います。L-chは電源ターミナルが基板の脇にあるので5VとGNDの配線は容易です。

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カソード配線は、終段の2つのカソードを接続して、その一方に配線しました。次は出力トランスの配線をします。プレート配線は近くにチップジャックがありターミナルとして流用しましたが、他端子の配線用にLラグ端子板を取り付けました。他の部品を取り付けた状態での穴開けなので慎重に行います。

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続いてトランスの2次配線を行います。comと16Ω用電線を出力用に、8Ω電線をGNDに接続します。私が使用しているヘッドフォンのインピーダンスは45Ωと高いため、負荷抵抗を下げる為に、出力に47Ωの抵抗を並列に接続しています。

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トランス2次巻き線の4Ω用の電線は使用しない為、端末キャップを被せて他の電線といっしょにインシュロックで結束しました。次はトランスの1次配線を行ったチップジャックと終段のプレートの配線を行います。真空管ソケットの橙と灰色の電線です。真空管ソケット端子配線が混んできたので運用中にショートしないように電線の被覆の剥きしろの長さに気を使いました。

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続いて基板に実装したグリッドバイアス回路と終段のグリッド抵抗間の配線をします。あまり美しくありませんが、最短の配線をしました。写真の黄色と白の配線です。

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もう一方のチャンネル(R-ch)も同様に配線します。R-chは電源用の端子板と離れているので、GNDと-5Vの配線の取り回しに気を使います。

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出力トランス配線用のLラグ端子板は勘違いしてL-ch用に取り付けたものより1端子多いものを取り付けてしまいました。体勢に影響ないのでそのまま進めます。

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ヘッドフォン出力配線

ヘッドフォン出力配線は、入力配線にも使用したベルデンの2芯ケーブルを使用しました。出力トランスの巻き線の極性はよくわからないので、com側をHotに、16Ω側をcoldに、8Ω端子をシールドに接続しました。動作確認時に極性チェックを行い、間違っていたら繋ぎ直す予定です。

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次は4極のヘッドフォンジャック配線です。トランジスタヘッドフォンアンプ製作の際に、配線間違いをしたので、確実に配線を行いたいとおもいます。私の使用するパイオニアのバランスヘッドフォンケーブルを未配線のジャックに差して端子の確認を行います。以前に確認したヘッドフォンケーブルの仕様を再掲載します。

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ヘッドフォン側(右)とアンプ側(左)の端子の並びが異なっていて、前回は思いこみで同じ並びと考えてしまい、間違った配線を行ってしまいました。確認結果を反映して配線を行いました。

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尚、シールド電線は被覆を剥いた点でカットしています。これで全ての配線が完了しました。この状態で配線をインシュロックで束線します。

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ヒータ配線の処置に迷いましたが、他の電線と一緒に束線してしまいました。

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束線すると配線がだいぶすっきり見えます。束線完了後のシャーシ内部はこんな感じです。

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次回は終段の通電から全体の通電確認および音だしを行います。

 

つづく(製作編12)

真空管HPアンプの製作(製作編10)

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製作編10

初段の配線が終わったので、終段用のバイアス基板の実装を行います。

バイアス基板

バイアス基板には2つの回路を実装します。1つ目は、終段のIpのバランス調整用の回路です。終段の2つのグリッド電圧のバランスをボリュームとC電源を使ってとります。2つ目は終段のプッシュプル回路の電流の和を一定にする定電流回路です。下記の点線枠内の回路を実装します。

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基板上には3極(GND, -5V, カソード)と2極(2つのグリッド抵抗)の端子台を実装します。

バイアス基板実装

最初に端子台の位置を決めます。配線の取り回しを考慮して、グリッド抵抗接続用の2極の端子台は終段の真空管側に、3極の端子台はアンプのリア側の位置に配置しました。

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端子台を仮留めしたら次はボリュームの位置出しをします。ボリュームは運用状態でボンネットだけ外せば調整できるように端子台と反対面に実装します。基板のスルーホールの数の関係でボリュームのセンターが基板のセンターからずれてしまいました。

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シャーシのボリュームアクセス用の穴位置をそこまで考慮しておくべきでした。基板を取り付けるとこんな感じになります。

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それでもシャーシ外からボリュームへのアクセスができ調整は問題ありませんでした。グリッドバイアス回路から実装を行います。ボリューム以外は抵抗のみですが、全て端子台取り付け面に実装します。いまひとつすっきり実装できませんでしたが、完了しました。続けて定電流回路を実装します。エミッタバイアス用の2Vのツェナーダイオードの購入が漏れていました。在庫を確認したところ3.6V品があった為、定数変更して実装を続ける事にしました。回路は以下のとおりです。

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なんとか実装完了しました。

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続けて2枚目の実装を行います。アンプのレイアウトは左右対称の為、基板の部品実装も左右対称とします。

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最初に実装した基板を見ながら実装を進めましたが、左右対称の為に頭が混乱します。

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通電確認

通電確認前に、シャーシに実装してみました。

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他の実装部品との干渉もなく問題なく取り付けができました。一旦基板を取り外して通電確認を行います。電源はユニバーサル電源から供給しました。初めに定電流回路の動作を確認します。終段真空管のカソードの想定電圧が6Vなので、カソード接続用の端子台に6Vを印加しました。ユニバーサル電源の電流の読み値は約28mAでした。ほぼ設計どおりの結果です。続いて、グリッドバイアス回路の動作確認をします。ユニバーサル電源から-5V端子に電源を供給します。一部ハンダ不良があって手直しをしたものの動作上は問題ありませんでした。ボリュームセンター位置でグリッド抵抗用の端子台電圧が2つともに約-3,8Vで、ボリュームを回すと各端子電圧は対称に動作し、0Vまで変化します。ここではたと問題に気づきました。バランス調整用のバイアス回路が約-3.8Vとなるので、この時のカソード電圧は約2.2Vまで下がり、定電流回路のトランジスタに電圧がかかりません。もっと考えてから定数変更をすべきでした。

バイアス回路設計変更

バイアス回路と定電流回路ともに定数の見直しをしました。

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ツェナーダイオードの代わりに、LEDの順電圧(約1.8V)を使用する事にしました。定電流ダイオードと併用なので、実用になると考えます。グリッドのバイアス回路は分圧抵抗を4.7KΩから47KΩに変更しました。この変更で調整の範囲は小さくなりましたが、ボリュームセンター時のグリッド電圧が約-1.2Vとなります。見直した回路に従い実装を変更しました。

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改めて通電確認を行います。初めに定電流動作の確認をします。電流値は31mAで問題ありません。

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ユニバーサル電源から供給する電圧を下げてゆき、動作限界を確認しました。その結果3.5Vまで印加電圧を下げても動作する事を確認しました。もう1枚の基板も同様に実装変更を行い動作確認を行いました。最近ミスが多いので、気を引き締めねば!次回は終段回路の配線を行います。

 

つづく(製作編11)

真空管HPアンプの製作(製作編9)

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製作編9

電源基板の実装と通電が完了したので、初段から配線を再開します。

電源ライン配線

初段の配線前に、電源系ラインの残りを配線します。具体的には、電源用ラグ端子板へB電源の配線と、電圧モニタ用のチップジャックへB電源とGNDの配線です。初めに電源基板B電源出力とラグ端子板間の配線をします。空中の配線は、後で束線しやすい用に位置を決めています。続けてB電源とGNDのチップジャックへの配線をします。電源・GNDと配線済みのラグ端子板と接続します。

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これで電源系の配線は完了したので本題の初段の配線を行います。

初段配線

過去の製作では、初段部の配線用にラグ板を使用しましたが、今回は初段の真空管ソケットに直接部品を取り付けて、ラグ板を使用しませんでした。初段に取り付ける部品は以下のとおりです。

・グリッド入力抵抗2.7kΩ2個

・定電流ダイオード1mA1個

・負荷抵抗120kΩ2個

・出力カップリングコンデンサ4.7uF2個

一番大物部品のカップリングコンデンサの実装からスタートします。使用するコンデンサは、以前のネットワークの実験で購入したCross Capです。容量は0.47uFでも十分ですが、在庫の有効利用するために4.7uFとしています。実装は初段真空管のプレート端子と終段真空管のグリッド抵抗間に接続します。他の部品の実装の妨げにならないようにポジション決めをしました。

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ポジションが決まったら、終段のグリッド抵抗(2.7kΩ)も合わせてハンダ付けします。

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次は負荷抵抗120kΩ2個を実装します。上記で実装したCross Capが接続されているプレート端子とB電源間です。プレート端子と反対側の端子は2本を接続して、B電源へは1本の電線で配線します。

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続いて定電流ダイオードを実装します。2本のカソードをショートしてそこからC電源に配線します。

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初段の最後は、グリッド抵抗を実装します。接続先はボリュームです。それぞれのグリッド端子に2.7kΩを実装します。ここで合わせて入力信号配線と、GND配線を行います。入力信号配線は、いつも使用しているベルデンの2芯シールド線1503Aを使用します。初めにパネルコネクタ側を配線します。

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続いてボリューム側の配線をします。ボリュームはフロントパネル側をR-chとしました。

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ボリュームと真空管のグリッド間の配線も2芯シールド線を使用します。Hot/Coldともにグリッド抵抗に接続し、シールド線にGND配線します。GNDラインはこのルートの配線でループの発生はありません。

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これで片チャンネル分の初段の配線が完了しました。残りのチャンネルも同様に配線を行います。真空管の配置が左右で異なるので配線時に混乱します。とはいえ、配置が決まっているので気分的に楽に配線できました。初段配線完了時は写真のとおりです。

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これで両チャンネルともに初段の配線が完了しました。

初段通電確認

初めに真空管を挿さずに通電確認を行います。確認は初段真空管ソケットの各端子の電圧を観測します。電源コードを繋ぎ電源オンしますが、電源電圧が高いため、トランジスタアンプ以上に緊張します。

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結果は以下のとおりです。

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特に問題はありませんでした。次は真空管を装着して確認します。まずは1本のみ装着します。

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電圧確認は逆さの状態で行います。ネットで検索したところ、傍熱管の動作時の姿勢は寿命に影響を与えないとの事でしたので、配線時と同様に電源トランスで支えた状態で通電確認を行いました。差動回路のIpにやや差はありましたが、特に問題はありませんでした。残りの1本も装着して同様に確認を行いました。以下が確認結果です。

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カソード電圧がやや低いですが、大きな信号入力をしない前提でこのまま進めます。初段までの確認が完了しました。次回は終段の配線を行います。

 

つづく(製作編10)