製作編26
前回発振対策が終わったので、残るハム対策を含めて完成度を上げます。
ハムの状況
バランス出力はまったくハムが聴きとれません。アンバランス出力は聴きとれるレベルのハムが出ています。アンバランス系で気になる点は、ヘッドホン出力でL/RチャンネルのGNDが接続される点です。電源はL/R用のGNDが1点アースされていて、そこから各アンプのGNDに独立して配線しています。何も考えずに信号の入力から出力までのGNDを接続すると信号入力部のGNDが電源1点アースを介してアンバランス接続されたヘッドフォンのGND間で大きなループができてしまい、ハムの発生面で不利になります。
GNDの配線
GNDの接続状況は文章では解りにくいので図示してみました。
図中の赤の楕円は2芯シールド電線のシールドラインを示しています。図中には記載していませんが、各アンプのGND(GND1~GND4)は電源の1点アースに独立して接続されています。アンバランスヘッドフォンに対応するためヘッドフォンアンプの各GND(GND2とGND4)はヘッドフォンジャックで接続しています。現状、信号系のGNDループを避けるために、入力切り替え用のロータリーSWの配線部分で各配線のシールドを接続せずに裸状態で放置してあります。(回路図上の①~④)
入力から出力までGNDを接続する場合は、図の①と②、③と④を接続することになります。この場合は信号入力部のGNDが電源1点アースを介してアンバランスヘッドフォンジャックのGND2+4間で大きなループを構成してしまいます。裸シールド線状態で放置した①~④を適当に接続してハムの状態を確認してみました。その結果②と④を接続した状態が一番レベルが低くなる事がわかりました。理由は良くわかりませんが、ループが比較的小さくなる事と、ヘッドフォンアンプ入力のGND電位が揃うことでハムレベルにとってバランスが良い状態となる為と推定しています。不要となった①と③のシールド線はカットし、②と④はハンダ付けして端末キャップを被せてインシュロックで固定しました。
ハムの状況2
上記のシールドラインの処理でアンバランス出力時のハムレベルは大きく改善しました。しかし、ボリュームを上げていくとまだハムが聴こえます。ボリュームが3時の位置あたりからハムがわずかに聴こえ初め、フルボリュームではハッキリ聴きとれます。これ以上、簡単には対策できないため、前向きな対策ではありませんが、トータルのゲインを下げる事としました。ボリューム3時の位置の減衰両は、約0.4倍(830Ω/2KΩ)です。この結果を目安に、フルボリューム時に減衰量が0.4倍程度に下がるようボリュームへ直列に2.2KΩを接続しました。この場合のフルボリューム時の減衰量は約0.48倍(-6.4dB)です。
2.2KΩは手軽に実装するために、ボリュームの端子へ直付けしました。
この対応によって、アンバランスヘッドフォン使用時にフルボリュームにしてもハムはほぼ聴きとれない状況になりました。この結果、バランスヘッドフォン使用時のボリュームの位置はおよそ10時の位置に、アンバランスヘッドフォン使用時のボリュームの位置はおよそ12時の位置となりました。
■バランスヘッドフォン使用時のボリューム位置
■アンバランスヘッドフォン使用時のボリューム位置
仕上げ
アイドリング、出力オフセットが問題ないことを確認して最終の仕上げに入ります。シャーシ内の配線をインシュロックを使って束線します。
安物ですが、添付のゴム足を接着して完成です。最後に念のため、出力にオシロスコープを接続し、発振していない事を確認しました。ボリュームをぐるぐる回したり、ヘッドフォンを抜き差ししてショックを加えましたが問題ありません。トップカバーを被せて今度こそ完成です。次回完成したヘッドフォンアンプの音を聴き、まとめを行います。
つづく(まとめ編)