まとめ編
やっと完成したので、設計のまとめと音を聴いた印象を紹介します。
設計まとめ
HPアンプ回路は当初の設計から下記3点を変更しました。
・ゲインを約9.2倍(19.3dB)から2倍(6.0dB)に下げた
・終段のアイドリング電流を70mAから60mAに下げた
・出力抵抗を2Ωから12Ωに変更
上記を反映した回路図に、amp4安定時の各部電圧を記入したものを掲載します。
次に改めて終段アイドリング電流の温度補償の状況を確認します。以前の測定は、終段の電源としてユニバーサル電源を使っていたため、+/-6Vを供給した状態の結果でした。今回は正規の電圧(+/-9V)で再測定をします。終段のエミッタ抵抗の両端電圧を測定して終段の電流を算出します。
結果を見ると各アンプの初期電流値が異なりますが、測定を朝から行い1つのアンプの測定後に十分な冷却時間を取ったため各アンプの測定開始時の室温が徐々に上がった事が原因と推定しています。アイドリング電流の調整値を70mAから60mAに下げましたが、それでも終段のトランジスタ温度は高く(60℃くらい)温度補償トランジスタの動作が安全な温度キープの要となっています。最後に各ヘッドフォンアンプの出力オフセットを測定します。
ヘッドフォンアンプのゲインを2倍に押さえたため、ヘッドフォンアンプとしては十分なレベルに抑えられています。
音聴き
普段音楽はヘッドフォンで聴かないため試聴が楽しみです。それではいつもはスピーカーで聴いているCDをヘッドフォンで聴いてみます。初めにバランス接続で聴いて、その後でケーブルを交換してアンバランス接続で聴きます。
■BJ ONE/Bob James 展覧会の絵
バランス接続ですが、ベースの音が明快に聴こえます。トランペットの音が軽々伸びます。全身で感じるスピーカーに比べて耳からのみなので物足りない感じがしますが、環境を含めたS/Nは格段に良いので、音楽に集中できます。アンバランス接続に切り替えます。音が幾分センターよりに聴こえます。ハイハットの音がやや沈んで聴こえました。
■LINDEN BAUM/井筒香奈江 氷の世界
バランス接続では、ピアノの音が自然に広がります。ウッドベース胴鳴りがリアルに再現されます。前半のささやくような歌声もリアルです。アンバランス接続に切り替えますが、悪くはないですが、幾分こじんまりした印象の音です。
■惑星/木製
バランス接続時は、オーケストラのスケール感が再現されます。音はマイルドな鳴り方をします。出だしの部分で、いままで気づかなかった音に気づきました。曲の調子に合わせて呻きのような音です。バランス接続固有の問題かとおもい、アンバランス接続で聴いてみましたが、やや印象は後退しますが、音は聴きとれました。何の音でしょうか?アンバランス時は、ややスケール感が後退して聴こえます。
■Swing Jaz Swing Life/SHARP & FLATS TAKE THE "A" TRAIN
バランス接続は、ブラスが突き抜ける感じで鳴ります。ドラムの音に張りが感じられます。アンバランス接続に切り替えると、演奏が中音域にやや寄ったように聴こえました。
まとめ
最後に、終段のアイドリング電流を70mAから60mAに下げたことと、出力抵抗を2Ωから12Ωに変更したことの影響を計算しておきます。条件は今回使用したパイオニアのヘンドフォンのインピーダンス45Ω前提です。出力にA級動作時のIpeak=60mAが流れた場合、Hot/Coldアンプ間のVpeak=4.1Vとなり終段電源電圧+/-9Vは十分マージンがあります。その場合のヘッドフォン出力は約80mWとなります。改めて最終回路図を掲載します。
今回、アンバランス入力とバランスダイレクト入力のチェックを行っていませんが、機会を見て確認したいとおもいます。途中番外編が入り中断がありましたが、7月11日から約4ヶ月の長い間お付き合いいただきありがとうございました。
PS
書斎の机にデスクトップのビデオ再生環境があり、その音を10インチモニター内蔵のヘッドフォンアンプ+ゼンハイザーのイヤフォン式ヘッドフォンを使って聴いていました。この用途に今回のアンプを使ったところTV放送の音を格段に良い状態で聴けるようになりました。音は静かでかつダイナミックで広帯域です。信号は、2017年1月3日の記事「自作アンプで年末を聴く」で紹介したシステムを使ってバランスアナログ信号に変換してヘッドフォンアンプに入力しています。(写真はHDMIから光デジタル信号分離用コンバーター)これで今回製作のヘッドフォンアンプが棚のこやしにならずに済みました。
おわり(まとめ編)