オシロFFT活用検討(運用編4)

運用編4

真空管ヘッドフォンアンプのノイズ特性の測定を行い、今まで測定した結果のまとめを行います。

真空管ヘッドフォンアンプ

バランス入出力専用で、回路は以下のとおりです。

アンプ回路は初段双三極管差動方式で、終段も双三極管A級プッシュプル回路構成としています。負帰還をかけていますが、入力段のボリューム位置によって帰還量が変わります。実仕様上問題なかったのでこのような仕様になっています。電源回路も他パワーアンプ電源と同一構成のトランジスタを使用したリップルフィルタを採用しています。このアンプはハムに苦しめられて、完成後にいろんな対策を行いました。当初このアンプは無帰還構成でしたが、ハム対策の為NFBをかけました。出力トランスの向きが悪く電源トランスの漏洩磁束を拾っていたので、出力トランスの取り付け変更を行いました。完成直後は以下のとおり取り付けていました。

それを以下のとおり変更してノイズを減らしました。

この状態では格好が悪いため、さらにカバーを取り付けて見た目を改善させました。

さらに入力ボリュームの本体に銅箔テープも貼り付けました。これも僅かながら改善が確認できました。

これら対策でなんとか聴感上のハムは無くす事はできましたが、ノイズスペクトラムの結果が気になります。測定用のフィルター基板との接続は、シャーシを開けて出力トランス用の端子台へシールド線をハンダ付けしました。

フィルター入力端子台には、BTL_A級トランジスタ方式ヘッドフォンアンプ測定時と同様に47Ωのダミー抵抗を取り付けています。まずはボリュームをミニマム状態で測定してみました。結果は以下のとおりです。

上からHot, Cold, Balance出力のノイズスペクトラムです。ピークレベルはそれぞれ-91.2dB, -99.6dB, -88.0dBでした。他真空管アンプと同様にBalance出力のノイズピークレベルが大きくなっています。続いてボリュームをセンターとして同様に測定しました。

結果は上からHot, Cold, Balance出力の結果で、ピークレベルはそれぞれ-92.4dB, -98.8dB, -98.4dBとなっていました。結果はボリュームミニマム時よりも改善していますが、この状態の方がよりNFBがかかりアンプ自体のゲインが下がっている事に起因すると考えられます。ボリューム位置の違いによるBalance出力のノイズスペクトラムを比較してみます。

これで一通りの測定が終わりましたが、測定した中で現行マルチアンプシステムのLow-ch用のアンプ(大容量平滑コンデンサ採用)が一番低ノイズでした。万が一測定間違い等あると今後の方針をミスリードしてしまうので、L-ch用アンプの測定を追加して行ってみました。

Low用L-chアンプ測定

結果は以下のとおりです。

上からHot, Cold, Balance出力の結果です。それぞれのピークレベルは-113.6dB, -111.2dB, -113.6dBでした。L-ch用のアンプのノイズ特性も良好でした。参考としてBalanceモードノイズスペクトラムをL/R chで比較してみます。

ほぼ同等の結果となっています。

結果のまとめ

今回測定した全結果のピークレベルを表にまとめてみました。

上記の表からわかる事を箇条書きしてみます。

・Low-ch用アンプの結果が一番良い

 終段用電源大容量平滑コンデンサのノイズへの影響はない?

 電源トランス外だしの効果?

・私のイヤホンでノイズ確認ができるレベルは約-100dB(4uVpp)程度

・今後の製作にてノイズ確認できる

・High L-chは再測定したい

・Mid-ch用アンプの改善検討をしたい

以上が今回のテーマの結論となります。オシロスコープFFT機能は今まで活用できていませんでしたが、これで1つの用途を見いだす事ができました。今回もおつきあいいただきありがとうございました。

 

おわり(運用編4)