終段スイッチング電源検討(構想編1)

記憶

高校入学前後の頃、近所の同級生が親のおつき合いの関係でソニー製のフルコンポーネントステレオを買ってもらいました。当時の総額で100万円近くしたとおもいます。そのフルセットのプリメインアンプがTA-F6Bでした。

当時の私は小遣いを貯めて、コンポーネントを1つづつ揃えていた状況なので、すごく羨ましく思い、毎週聴かせてもらいに行ってました。スピーカーはSS-G7で躍動感のある音を奏でていました。

このシステムのアンプのカタログには、聞き慣れない「パルスロック電源採用」と謳われていて、当時の私には仕組みが正しく理解できていなかったとおもいますが、すごい電源が採用されていると思った記憶があります。

パルスロック電源

ネット検索して改めて調べてみました。その結果、この電源は発振周波数20KHzのスイッチング電源で、PWB方式のフィードバックをかけてレギュレーションを上げている事がわかりました。当時のこのプリメインアンプには、MCカートリッジに対応したPhono入力も備えていて、電源のノイズ対策の為に、この電源をアルミボックス内に入れて密封に近い状態で搭載されています。製品内部は、大型の電源用トランスと平滑コンデンサが無い為、大変スッキリしていますが、見方によれば入門機の構造のようにも思えてしまいます。

NEC A-10

当時大学の所属する研究室を決めようとしている時期に採算度外視のアンプA-10が発売されました。このアンプはリザーブ電源が搭載されていましたが、この電源はスイッチング電源の一種と言えます。通常のスイッチング電源との違いは、スイッチング周波数が商用電源周波数と同じで低い事と、スイッチング波形を商用電源と位相を変えて、そのスイッチング波形を全波整流し、通常の全波整流波形と加算後に平滑する構成となっています。前置きが長くなってしまいましたが、今回のテーマは過去に幾度となく採用されて消えたパワーアンプ用スイッチング電源です。

現行パワーアンプ終段用電源

私の2台のトランジスタパワーアンプは、どちらもBTL構成でA級動作をさせています。この結果、パワーアンプの出力電力によらず、終段の電流は一定となっており、大電力出力時に電源電圧が下がる事はありません。欠点は常に最大出力時の電力をアンプ終段が消費し続ける事と、その理論上の最大効率は50%である事です。また、終段の電源を全波整流回路とした場合、常に大電流を供給する為電源リップルが大きくなってしまい、逆に小出力時の電源リップルが相対的に悪化してしまいます。まずは製作したアンプの終段用電源のリップル波形を確認してみます。最初はマルチアンプシステムのLow-ch用アンプの確認を行います。最初に回路図を掲載します。

このアンプの終段はパラレルプッシュプル構成となっていて、アイドリング電流はドライバ段と合計で約0.8Aとしています。電源の負荷としては、BTL構成なので2倍の約1.6Aとなります。それでは実際の電源のリップル波形を確認してみます。

確認波形は以下のとおりです。

上の波形が+電源で下がー電源です。リップルの振幅は232mVとなっています。このリップルは出力レベルに依存せず、小信号出力時もこのレベルとなっています。リップルの周波数は電源が全波整流方式となっている為、100Hzです。次にHigh-ch用アンプの測定を行います。回路図は以下のとおりです。

終段はシングルのプッシュプル構成で、アイドリング電流はドライバ段込みで約0.5Aです。電源の負荷は2倍の約1.0Aとなります。同様に電源のリップル波形を確認します。

上が+電源で、下がー電源のリップル波形です。偶然にもリップル電圧はLow-chアンプと同じ232mVとなっていました。電源の平滑用電解コンデンサーの容量がLow-ch用アンプに比べて小さいですが、その分アイドリング電流も小さい為一致したと考えられます。このリップル電圧をスイッチング電源を採用する事で小さくする事が今回の製作のテーマです。次回はスイッチング電源を検討します。

 

つづく(構想編2)