終段スイッチング電源検討(製作編61)

製作編61

アンプの低周波ノイズの確認を行います。

周波数特性改善対策フォロー

本題に入る前に、前回の記事で行った周波数特性改善対策に関して追加で1点確認を行いました。対策としてR-ch/Hotのアンプ出力のフェライトコアを取り外した為、出力ノイズへの影響の確認を行います。無信号入力状態でR-chのアンプ出力ノイズをオシロスコープで観測しました。結果は以下のとおりです。

上がフェライトコア有りで、下が外した状態のノイズ波形です。黄色がHot側です。2つを比較すると、スイッチング時のノイズの差はないように見えますが、それ以外のタイミングのノイズがやや悪化しているように見えます。この程度の差であれば無視したいと思います。

低周波ノイズ

今回スイッチング電源を採用した1つの理由は、過去の記事で電源トランスの漏洩磁束によるハムの影響が確認された事から、大型な電源トランスを必要としないスイッチング電源採用の効果を期待した為です。この効果を検証する為に、アンプの低周波ノイズの観測を行います。測定は以下のブロック図の環境で行いました。

ブロック図を簡単の補足します。ノイズの観測はオシロスコープ付属のFFT機能を使用して行います。但しオシロスコープFFTにはアンチエイリアスフィルターが内蔵されていないので、過去に製作したフィルタージグを使用しました。回路図と周波数特性は以下のとおりです。

フィルターはアクティブフィルターを2段接続し、-24dB/Octの特性としています。差動入力し、ジャンパスイッチでHot/Cold/差動の選択ができます。入力段で10倍(20dB)増幅しています。カットオフ周波数は約500Hz(-3dB)です。オシロスコープのサンプリング周波数は、上記フィルターの特性に合わせて設定します。過去の確認によりFFTの0dBは、オシロスコープ感度設定によらず、入力で4Vppに相当する事を確認しています。今回フィルターが20dBのゲインをもっているため、フィルター入力部で0dBは、0.4Vppとなります。

低周波ノイズ測定

初めにR-chから測定を行います。フィルター基板への信号入力は、ノイズの影響を考慮して2芯シールド線を使用しました。

FFTのサンプリング速度は、フルスケールで500Hzとなるように設定しています。信号のアベレージング機能があり、16回平均を選択しました。アベレージングなしの方が聴感の結果と合っているかもしれませんが、結果が安定しないための選択です。結果は以下のとおりです。

結果は上からHot, Cold, 差動の結果です。差動による改善効果が確認できます。差動のピークレベルは、-98.8dB(150Hz)なので正弦波換算すると以下のとおりとなります。

0.4x10^(-98.8/20)= 4.6uVpp

この結果をみる限り、スイッチング電源を採用した効果があったと言えます。参考として過去に測定した他のアンプの結果も掲載します。

上が、High-ch用アンプの結果で、電源トランスを内蔵している為、結果のピークは-82.8dBでした。下はLow-ch用アンプの結果で、電源トランスを別ユニットとしている事からピークレベル-113.6dBと優秀な結果となっています。今回のアンプはその中間に入る結果となっています。同様にL-chの測定も行いました。

R-chと同様に、上からHot, Cold, 差動の結果です。差動時のピークレベルは、R-chよりもやや劣り、-94.0dBでした。スイッチング電源を採用した効果がそれなりに確認できて良かったです。次回は放熱用のファンについて検討を行います。

 

つづく(製作編62)