無帰還広帯域真空管アンプ(構想編8)

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構想編8

SRPP回路4も改善効果が大きくなかったので、引き続き改善検討を行います。

SPRR回路4

前回の検討を行ったSPRR回路4の周波数特性のシミュレーション結果を再掲載します。

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上が初段で下がトータルの周波数特性のシミュレーション結果です。両図を見ると出力トランスの周波数特性の影響が大きいように思えます。SPRR回路4では春日無線のKA-5-54Pを採用しています。

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KA-5-54Pの周波数特性は、メーカー資料から-0.5dB/60KHzを元に一次フィルタ前提としてシミュレーションしました。他に候補がないか確認したところKA-3.5-54Pの特性が目に止まりました。

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上記のメーカー仕様から-0.5dB/70KHzとわずかですが周波数特性が良くなっています。この出力トランスに変更できないか改めてSPRR回路4の終段のロードラインを眺めてみました。

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SPRR回路4のロードラインは現行機よりも立っていて直線性がいまひとつです。これをKA-3.5-54Pに変更するとさらにロードラインが立ってしまい、特性が悪くなってしまいそうです。バランス的には現行機のロードラインが一番良さそうです。無帰還方式で特性を維持したままこれ以上の帯域確保は難しいのでしょうか?

SPRR回路4

という事で一旦SPRR回路4について改めて確認をしてみます。周波数特性のシミュレーション結果を再掲載します。

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カットオフ周波数を確認してみました。現行機(シミュレーション結果)がfc=100KHzに対してSPRR回路4がfc=110KHzでした。改善効果がわずかなので想定外の要素が加わると、逆に悪化の懸念もあります。せっかく製作するとなると、他に新たなチャレンジもしておかないと作った意味がなくなってしまいそうです。

電源回路

そこで以前からやってみたいと考えていたチョークインプット電源を検討してみます。学生時代に研究室の教授にそそのかされて、ラジオ技術紙掲載用の終段を含めた電源をチョークインプット方式としたBTL方式のDCパワーアンプの製作を行いました。特注の大型のチョークトランスを搭載しましたが、完成後の音聴きで圧倒的な駆動力に衝撃を受けました。今回の製作では広帯域化に失敗した時のバックアップとして採用検討を行います。

チョークインプット電源

チョークインプット電源の基本回路は以下のとおりです。

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全波整流後にチョークトランスを接続してその出力に平滑用電解コンデンサを接続します。出力部の抵抗は、チョークトランスに臨界電流を流す為の負荷抵抗です。まずはチョークインプット電源用のチョークトランスを確認してみました。ざっと探してみましたが選択肢がありません。見つかったものは、定格電流値が大きく値段が高いもののみでした。

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一方、チョークトランスのラインナップは豊富です。違いはチョークインプット電源用のものは、高リップル電流を流しても唸りが小さく押さえられています。選択肢がないのでうなりに苦労しそうですが、通常のチョークトランスから適当なものを探してみる事にしました。

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写真はゼネラルトランスのPMC-1010Hです。臨界電流をどの程度とればいいかわからないので、実験して決めたいとおもいます。電源トランスは、平滑後の電圧が定格二次電圧より下がり、ざっと回路検討した電圧よりも低くなってしまいますが、ヒーター巻き線等を考慮してゼネラルトランスのPMC-130Mを選定しました。

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次回は構想した仕様をもとに詳細な回路設計を行います。

 

つづく(設計編1)