A級バランスHPアンプ製作(製作編4)

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製作編4

トランジスタの実装前の準備が終わったので、基板実装を開始します。初めはプリアンプ基板を製作します。

プリアンプ基板

プリアンプ基板は、ボリュームを低インピーダンスで駆動して所定の減衰量を得ることと、アンバランス入力選択時に、信号をバランス変換するために入れています。回路図を改めて掲載しますが、点線の枠内が基板に実装される片チャンネル分の回路になります。

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回路図内の主要部品としては、オペアンプ2個のみですが、それ以外に信号の入出力および、電源入力用の端子台が必要です。必要な端子台の数は、バランス信号入力用に3極が1個、アンバランス信号入力用に2極が1個、バランス信号出力用に3極が2個、左右独立電源としているため、電源入力用に3極が1個必要です。片チャンネルトータルで3極が4個、2極が1個必要です。1枚の基板に左右分の実装を行うため、さらに倍の数の実装が必要となります。基板に実際に部品を置いて配置の検討を行います。その際の条件として以下の項目を考慮しました。

・左右の信号が平行して流れる

・左右の部品配置が同じ事

・信号の入力が基板の1辺にまとまり、出力が対向する辺にまとまる事

・端子台への配線が他の部品でやりにくくならない事

・基板固定用のナット締め付けが他の部品に干渉されない事

端子台をなるべく多く基板の1辺に並べるために、信号を基板の長手辺から入力します。対向する長手辺2つを使っても、上記で見積もった10個の端子台を並べる事ができません。苦肉の策として、電源入力用の端子台を手前に配置し、信号入力用の端子台をその背後に並べることで入力用の端子台6個を、基板の1辺に並べる事ができました。その対向する辺に出力用の端子台4個を並べます。

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電源パスコン用の電解コンデンサとしてニチコンKZ(MUSE)100uF/50V品を購入していましたが、サイズが大きすぎて実装できなかったため、急遽手持ちのニチコンFG(Fine Gold)100uF/25Vに切り替えました。他の基板でも同様な事が起こるので、FG品を追加発注したいとおもいます。

部品実装開始

大物部品の配置が決まったので、全部品を仮止めします。ハンダ作業中に部品が外れて位置がわからなくなることを防ぐために、各部品の1つの端子をハンダ付けします。次にGNDの配線を行います。信号の入出力用の端子台と電源入力用の端子台のGNDを接続していきます。オペアンプの各電源端子にパスコンとしてフィルムコンを配置しますが、電源端子側と反対側の端子をGNDに接続していきます。基板上では、GNDを含めて左右独立としているので基板内ではGNDラインも2系統となっています。

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つづいて、アンプの回路を作り込みます。使用する部品は10KΩの抵抗のみです。抵抗実装に十分なエリア確保ができなかったため、抵抗は立てて実装しました。実装する抵抗は、1回路当たり入力抵抗1本と反転アンプの場合に抵抗2本が必要です。とはいえ、トータルでアンプが8回路分あるのでそれなりに手間がかかりました。

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ここまでの実装では、配線として被覆電線を使わずに済んでいます。残りは電源の配線および端子台への信号の配線が残っていますが、配線が交差するため、被覆電線を使います。

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電源の配線

電源入力用の端子台とオペアンプの電源端子を接続します。後でわかりやすいように+電源を赤で、マイナス電源を青で配線しました。配線する上で、残りの信号ラインの配線の際のハンダ付けでじゃまにならず、かつハンダ付けの熱で被覆が溶けないような敷線を心がけました。

信号ラインの配線

アンバランス入力、バランス入力、バランス出力用のそれぞれの端子台とオペアンプ間を配線してゆきます。今週は、アンバランス入力用の配線を行ったところで力つきてしまいました。

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次回は配線の続きと、通電確認を行います。

 

つづく(製作編5)

A級バランスHPアンプ製作(製作編3)

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製作編3

hfe測定時の温度上昇が大きかったので終段の放熱の再検討を行い、初段J-FETの変換基板実装を行います。

終段の放熱設計

前回の記事で紹介した2SC3851A/2SA1488Aのhfe測定で、想定よりも高いの温度上昇を確認しました。実使用時の放熱が心配になり改めて検討してみます。hfe測定時のトランジスタの損失は約0.5W(5V x 0.1A)です。実使用時は、電源電圧が9Vでアイドリング電流が70mAのため、トランジスタのアイドル時の損失は0.63Wになります。初めにデータシートを確認してみます。参考となるのはPc-Ta定格ですが、このクラスのトランジスタでは定格に謳われている可能性が高いです。

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今回は放熱器なしで使用する予定なので、グラフ中の一番下のラインを確認します。余裕をみて周囲温度Ta=50℃条件でPcの定格を確認します。2SC3851Aが約1.8W, 2SA1488Aが約1.2Wと読みとれます。この結果から実使用時の条件が十分範囲内に入っているので、放熱器なしで問題ないと言えます。たいした事ではありませんが、このグラフをみると、NPNとPNPでは同一条件時のPc定格値はPNPの方が小さく、グラフの作成仕様自体もなぜか異なる点が気になりました。一応、hfe測定時の損失が0.63WとなるようにIc=130mAとしてhfe測定を行い実際の温度上昇の確認を行ってみました。温度測定はタニタのマルチユースの温度計を使用しました。見た目は調理用の油温計と同じですが、園芸や趣味に幅広く対応する事を謳っています。測定範囲は-50℃~250℃で、センサーは棒状の先端2cmの範囲とのことです。早速計ってみます。放熱器が当たる面にセンサー部分を押し当てますが正確な測定には無理があります。

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最高で42℃の測定結果を確認しましたが、熱の伝導効率が悪く、センサー部分からの放熱も無視できないことから、実際には50℃くらいになっているものと思われます。熱容量および表面積が小さい物の温度計測には、熱電対を使うか、非接触測定をしないと正確な温度測定は難しい事を改めて感じました。ともかくこの結果から放熱器無しでいけると判断しました。

J-FET変換基板実装

それではHPアンプの製作に戻ります。次は初段のJ-FETを変換基板に実装します。東芝の2SK2145ですが、表面実装チップパッケージ品しかないため、いつものとおり変換基板に実装し連結ソケットを使い8pin dipソケットに挿して使用します。J-FET現品はこんな感じで提供されます。

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最初の頃は見るからに実装に不安がつのりましたが、今では慣れてしまい、変換基板へ実装後にIdss測定を行えばその後はノントラブルとなっています。そうは言うものの変換基板への実装は手間がかかります。最初にゲート端子1カ所を変換基板のパターンに合わせてハンダ付けします。次に反対側の3つの端子(ドレインとソース)ベタっとハンダ付けして吸い取り線で余分なハンダを取り除きます。最後に残ったゲートをハンダ付けして終了です。この段階で、各端子と基板の端子間の導通と、隣接端子間のショートの確認をテスタで行います。

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続いて連結ソケットへをハンダ付けします。Idss測定後のハンダ付けの修正を考慮して連結ソケットの差し込み量は最小とします。

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今回必要な4セットの実装が完了しました。

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次に実装完了したJ-FETのIdssの測定を行います。当初はIdssのペア特性の確認を行う事を目的としていましたが、今までの経験から確認が不要な程、値が揃っていることから、「正しく実装されている事」の確認が主目的となっています。測定回路は以下のとおりです。

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トランジスタのhfe測定で使用したジグにdipソケットも実装済みで、ジャンパワイヤの組み替えでIdss測定にも対応できます。

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実装した4セット分の測定結果は以下のとおりです。

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内蔵された2チャンネル分の偏差は小さく、大きなものでも約1.7%でした。Idssの大きな順に左右チャンネル分の初段に使っていきます。これで実装部品の前準備が完了したので、次回はプリアンプから実装を進めていきます。

 

つづく(製作編4)

A級バランスHPアンプ製作(製作編2)

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製作編2

引き続きトランジスタのhfe測定を行い、その結果からコンプリメンタリペアを選別します。

終段のトランジスタのhfe測定

終段にはサンケンの2SC3851A/2SA1488Aを使用します。このトランジスタBTL A級DCパワーアンプのドライバ及び終段に使ったもので、Pc=25W, Icmax=4A, ft=15MHzと特性上、特に目を引く点はありません。パッケージはTO-220タイプで、フルモールドされている点は使いやすいと思います。

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しいて言えば、このクラスのトランジスタとしては比較的安価(50円/60円)で選別して使用することを考えるとメリットがあります。DCパワーアンプを作った際の余りがありますが、当時はパワーアンプの終段で使用することから、選別時のIcを0.5Aとしてhfe測定しました。測定時の電源電圧は6Vでその際のトランジスタの発熱は無視できず、小型の放熱器を取り付けて測定を行いました。測定の効率が悪いため、在庫も含めてIc=0.1Aで測定し直します。PNPトランジスタから測定を行います。測定回路は以下のとおりですが、ジグはジャンパワイヤで組み替えて前回の記事で使用したものを流用してます。

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測定時のトランジスタには約5Vの電圧がかかり、Ic=0.1Aなのでトランジスタの損失Pcは約0.5Wになります。測定開始から1分くらいで温度が上がり、指でつまんだままでいると触っていられない程ではありませんが、かなり熱くなります。50℃は越えていると思われます。これら確認から測定時の安定待ち時間を約1分としました。(本記事キャッチ写真参照)残りの在庫を含めた測定結果は以下のとおりです。

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No.21以降が再測定を行った残りのトランジスタですが、こちらの方が全般的にhfeが高くなっています。続けてPNP品の測定を行います。測定回路は以下のとおりです。

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こちらも同様にNo.21以降が在庫の再測定品です。結果に偏りが感じられませんが、コンプリメンタリペア選別時にhfe順に並べ替えたら何か傾向が解るかもしれません。

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コンプリメンタリペア選別

今回製作するHPアンプのドライバには、2SC1815/2SA1015のコンプリメンタリペアを、終段には2SC3851A/2SA1488Aのコンプリメンタリペアを使用します。

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ヘッドフォンをバランス駆動するため、それぞれのトランジスタが片チャンネル当たり2ペア、ステレオ分で4ペア必要となります。初めに2SC1815/2SA1015のコンプリメンタリペアを選別します。選別しやすいように、それぞれの測定結果をhfeの値で昇順に並べなおしました。

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全般的に2SC1815のhfeの方が小さめですが、2SA1015のhfeの結果とオーバーラップしているため、4ペアの選別は問題ありません。2SC1815の網かけ品が今回購入したものですが、この結果からも前回購入品がはずれであった事がわかります。選別した4ペアは以下のとおりです。

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同様に終段用の2SC3851A/2SA1488Aのコンプリメンタリペア選別を行います。それぞれの測定結果を同様にhfeの値で昇順に並べなおします。

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こちらの結果も全般的にNPN品の方が小さな値となっていますが、幸い、2SA1488Aのhfe値とオーバーラップしていましたので、コンプリメンタリペア選別ができました。選別した結果は以下のとおりです。

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今回はわざわざhfe測定を行った甲斐があり、hfeパラメータによる理想的なコンプリメンタリペア選別ができました。

トランジスタの保管

前に一度紹介しましたが、測定済みのトランジスタの保管は、封止可能な部品用の小袋に1から40までナンバリングして、それぞれのトランジスタを該当するNoの小袋に入れます。それを4つに仕切られたプラケースにナンバー順に10づつ並べて保管します。現状では各袋に4個のトランジスタが入っています。アクセス性もよく、保管効率も悪くないので重宝しています。

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次回は初段のJ-FETの変換基板実装を行い、アンプ基板の製作を開始します。

 

つづく(製作編3)

A級バランスHPアンプ製作(製作編1)

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製作編1

前回の記事で設計、および部品選定できなかった部分の検討を行い、平行して基板の製作準備を開始します。

ケースの選定

従来の製作では、タカチ電機のUS-260LHを使用してきました。今回は実装基板が1枚増えるため、このケースでは収まりそうにありません。タカチのカタログを確認したところこのシリーズにはまだ1サイズ上のものがありました。US-320LHです。シリーズ最大サイズのものとなりますが、型式が示すとおり幅が320mmとなり、今まで使ってきたものより60mm大きくなります。全体のサイズはW320xH84xD230と使用する基板を長手方向に3枚横並びが可能です。詳細の配置検討は後回しとしますが、このケースを仮決めとします。

ヘッドフォンジャック

前回の記事の部品表には、設計構想で掲げた2.5mm 4極ステレオジャックが見つからず、3.5mm 4極ステレオジャックを掲載しましたが、マルツオンラインにラインナップされていたため設計構想どおり2.5mm品を採用します。これで通常のヘッドフォンの誤挿入によるショートを防ぐことができます。

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念のためショートした際のアンプの保護用として2Ωを出力に入れていますがショートさせないに越したことはありません。

トランジスタの選別

製作編恒例のトランジスタの選別からスタートします。

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初めにオーディオ用の東芝製のバイポーラトランジスタ2SC1815GR/2SA1015GRです。(本記事アイキャッチ写真参照)すでに生産終了しているため購入できない事も覚悟していましたが、各20個入手しました。hfe測定は過去に実施した条件で行い、手持ちの残りも含めて選別対象としました。

■NPNのhfe測定回路

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■2SC1815GR hfe測定結果

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水色の網掛け部分が、使用済みで欠品していた部分で、今回購入した物の測定結果を記載しています。前回はGR品でありながらほぼ全てのトランジスタのhfeが200を割っていましたが、今回購入ロットは半数が200を越えていました。続いて2SA1015GRのhfe測定を行います。同様に残りの在庫も含めて選別対象としました。

■2SA1015GR hfe測定結果

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2SA1015GRは在庫のhfeは200を10%以上、上回っていましたが、今回購入したロットは200のすぐ上のレベルで、コンプリメンタリ品の確保には都合のいいロットと言えます。コンプリメンタリペアの選別は後日改めて行います。

セカンドソース品

東芝の2SC1815/2SA1015が在庫のみの販売になっていることから、UNISONIC TECHNOLOGIES(UTC)のものがセカンドソースとして秋月電子の通販サイトにラインナップされています。

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価格はオリジナルと同じに設定されています。通販サイト上にもFAQが掲載されていますが、要約すると以下のとおりです。

・ユニソニックは台湾の半導体製造メーカーでディスコン品を多く生産している

・このトランジスタの仕様書上にはオリジナル品との互換性に関する記載はない

・互換品として使用する時は使用者が仕様書を確認いただき判断してください

・大量に使用する際には、試作・実証実験によって動作を事前に確認してください。

ということで、仕様書を比較してみます。最初に電気的特性を比較します。上の表がオリジナルで、下がセカンドソース品です。

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掲載された数値はCob maxを除き同等です。次にftのグラフを比較します。左がオリジナルで、右がセカンドソースです。

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Ic=10mAくらいまでは同レベルとなっていますが、オリジナルはIc=50mAでft=500MHzとピーク値となりますが、セカンドソース品はIc=10mAでピーク値ft=400となります。続いてfheのIc依存特性の比較です。同様に左がオリジナルで右がセカンドソース品です。

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オリジナル品はIc=100mAまで特性をキープしますが、セカンドソース品はIc=30mAくらいからhfeの値が低下します。総じてIcが大きなレンジはオリジナル品の方が良好な特性となっていました。音質は特性に直結していませんので、最終的には音を聴いてみる必要があるとおもいますが、トランジスタの音質比較はどうやるべきなのでしょうか?今後の課題としておきたいとおもいます。次回は引き続き、使用トランジスタのパラメータ測定を続けます。

 

つづく(製作編2)

A級バランスHPアンプ製作(設計編2)

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設計編2

前回、プリアンプとパワーアンプの設計が終わったので、残りの設計と製作に備えて部品の発注を行います。

電源の設計

必要な電源は、プリアンプが+/-12V、ヘッドフォンアンプの電圧増幅段も+/-12V、ヘッドフォンアンプの電力増幅段が+/-9Vです。必要な電圧としては4種類ですが、これを左右独立とすると倍の8系統の出力が必要になります。4系統と8系統では実装量が大きく異なりますが、今回の目的のバランス駆動ヘッドフォンの大きな特長は、左右のユニットの片側のラインが共通とならない為、良好なセパレーションが得られる事なので、ここは少し無理をしても左右独立電源としたいと思います。8系統の電源回路は実装を考慮して三端子レギュレータを使用します。

電源の放熱設計

電源トランスの二次電圧出力をAC12Vと設定して、各レギュレータICの損失を見積もります。初めに+/-12V電源の片チャンネル分の出力電流を見積もります。プリアンプはオペアンプ2個構成で、1個当たり10mAとするとトータルで20mAとなります。ヘッドフォンアンプの初段が約2mA、二段目が約8mAなのでヘッドフォンアンプ側がBTL構成で2倍となりトータル20mAとなります。両者を合計すると+/-12V電源の出力は約40mAとなります。AC12Vの整流後の電圧は約16.3Vとなるので、+/-12Vのレギュレータの損失P12は、

P12 = (16.3 - 12) x 0.04 = 0.17 W

となります。このレベルであればレギュレータの放熱は必要ありません。次に+/-9V電源の出力電流を見積もり、同様にレギュレータの損失を計算します。終段のアイドリング電流が70mAでドライバ段のアイドリング電流が約7mAなので、BTL構成で2倍となりトータルで154mAの電流となります。12V系と同様に+/-9Vレギュレータの損失P09を計算します。

P09 = (16.3 -9) x 0.154 = 1.12 W

このレベルになると放熱処理が必要です。合計で4カ所必要となりますが検討をすることにします。負荷時の整流電圧は16.3Vより下がりますが、設計上のマージンとして無負荷時理想電圧を計算に使用しました。

放熱器の選定

基板に実装するレギュレータ用の放熱器を探します。秋月電子の通販サイトを検索したところ手頃なものが2つ見つかりました。

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高さはどちらも25mmで一緒ですが、幅と奥行きが異なります。右側が16Wx25Hx16Dで熱抵抗が20℃/W、左側が15Wx25Hx11Dで熱抵抗は37.9℃/Wです。サイズの小さな方から温度平衡値を計算してみます。環境温度を30℃とすると温度平衡値t1は、

t1 = 1.12 x 37.9 + 30 = 72 ℃

となりかなり温度が上がってしまいます。つづいてサイズの大きな方で温度平衡値t2を計算してみます。

t2 = 1.12 x 20 + 30 = 52.4 ℃

温度は高いですが、問題ない範囲と判断します。基板への実装方法は、実際に現品を入手してから考えることにします。

トランスの選定

いつも使っているトロイダルトランスは、12V/0.5A x2の二次出力をもっています。今回は、12V系の消費電流が40mA x2で9V系が154mA x2となり、単純に合計すると388mAとなります。さすがに500mA品では余裕がないと考えて、共立エレショップのサイトを検索してみました。同一系列のトロイダルトランスで1サイズ上で二次出力12V/1A x2が見つかりました。(アイキャッチ写真参照)今回はこれを採用することにします。ここまでの設計を反映した電源の回路図を掲載します。

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部品の発注

まだ細かな設計は残っていますが、基板の製作が始められるように部品の発注をかけます。そのための部品表を作成しました。プリアンプ部、HPアンプ部、電源部と3枚構成です。基板の製作と平行してケースおよび残った他部品の選定を進めたいと考えています。

■プリアンプ部部品表

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■HPアンプ部部品表(片ch分)

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■電源部部品表

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つづく(製作編1)

A級バランスHPアンプ製作(設計編1)

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設計編1

バランス対応ヘッドフォンを入手したのでそれ用のヘッドフォンアンプを構想して、設計を行います。

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設計構想

今回の1番の目的は、ヘッドフォンのバランス駆動時の音を聴いてみることですが、せっかくつくるので欲が出てしまいます。今は比較的環境に恵まれていて、スピーカーからそれなりの音量で音楽を鳴らすことができますが、この環境もいつ変化が訪れるかわかりません。それに備えてヘッドフォンでの鑑賞環境を整えておくことも目的としたいとおもいます。最近の設計ではいろんな制約で設計的な妥協を行っていますが、2番目の目的を加えたこともあり、ここで一旦自作の原点に戻ってできる限り設計的な妥協は排除して進めたいとおもいます。それでは恒例の設計構想を箇条書きにまとめたいとおもいます。

・A級BTL駆動方式

・DCアンプ

・入力はアンバランス、バランス選択式

・出力はバランス2.5mm 4極ジャック

トロイダルトランス+レギュレータIC電源 ・放熱設計

それでは構想に従って具体的な設計を進めます。

プリアンプ

入力は利用範囲を増やすためにアンバランスとバランスの両方を設けます。アンバランスはRCAピンジャックを、バランスは3極のXLRコネクタとします。切り替えは4回路のロータリSWを使う予定です。アンバランス入力はオペアンプを使ってバランス変換します。バランス入力は各信号をボルテージフォロワで受けます。回路図はいつものとおり水魚堂様のBSch3V回路エディタを使って作成します。(本記事アイキャッチ写真参照)書き上げた回路は以下のとおりです。オペアンプは以前購入して交換により余っているMUSES8920を使用します。

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ヘッドホンアンプ設計

回路は定番のdual JFET入力差動二段構成とします。ヘッドホンとはいえ、A級動作させるため終段にはそれなりのアイドリング電流を流す必要があるため、パワーアンプ同様にドライバ段+終段の構成とします。初めに終段のアイドリング電流を決めます。今までヘッドフォンを鳴らすことに真剣に取り組んだ事がなかったので、出力がどの程度出せれば十分かわかりません。とりあえずの値として500mWを設定しました。購入したヘッドフォンのインピーダンスが45Ωなので、最大出力時の電流の実行値Imrmsは、

Imrms = SQR (0.5 / 45) = 0.1 A

その時のピーク電流Ipeakは、

Ipeak = 0.1 x 1.41 = 0.141 A

このピーク電流をA級動作で流すためのアイドリング電流Iidelは、

Iidel = Ipeak / 2 = 0.07 A

仮に終段の電源電圧を+/-12Vとしたときの終段トランジスタの損失Pidleは、

Pidel = 12 x 0.07 = 0.84 W

電源電圧を9Vまで下げられれば、ヒートシンク無しで進められそうですが、+/-12Vの場合、簡単な放熱器の実装が必要と考えます。終段に必要な電源電圧を見積もります。Ipeakが流れる時のピーク電圧Vpeakは、

Vpeak = Ipeak x 45 = 6.3 V

ヘッドフォンはBTL駆動されるので、終段の最大出力電圧Vfpeakは、

Vfpeak = Vpeak / 2 = 3.2 V

この結果から終段の電源電圧は+/-9Vとします。この時の終段トランジスタの損失Pidelは、

Pidel = 9 x 0.07 = 0.63 W

となり、ぎりぎりヒートシンクなしでいけるレベルになりました。ドライバ段のアイドリング電流は、終段のアイドリング電流値の1/10として約7mAとします。バイアス回路は、今までラインアンプで使ってきた定数の場合、コレクタ電流が小さくなりすぎる為、定数を見直します。初段および2段目の設計は従来の設計を踏襲します。これら設計を反映して回路図を起こします。

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回路図にはすでに記入済みですが、終段はA級BTL DCパワーアンプの修理の際に購入し、結局使わずに済んだ2SC3851A/2SA1488Aを使用します。ドライバを含めた他のバイポーラトランジスタは2SC1815GR/2SA1015GRを使用します。入力のJ-FETは定番の2SK2145GRを使用します。終段はサンケン電気製ですが、それ以外は東芝製です。オーディオ用として使いやすい2SC1815GR/2SA1015GRはすでに製造が終わっていて在庫販売のみのようです。ビルダー部品の調達は生命線なので今後一層厳しい状況になっていくものと思われます。次回は残る電源設計と製作にむけた部品の調達を行います。

 

つづく(設計編2)

A級バランスHPアンプ製作(構想編2)

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構想編2

バランス対応ヘッドフォンを購入しましたので現品のレビューを行います。

ヘッドフォンの購入

前回の記事でバランス対応のヘッドフォンについて調べてみました。バランス対応ヘッドフォンの統一された端子の規格はありませんが、総じてケーブルの交換ができるようになっていて、バランス、アンバランスをケーブルの交換で対応するようになっていることが解りました。今回購入したものは、価格がお手頃でバランス用のケーブルが付属しているパイオニアのSE-MHR5です。アマゾンで14,592円でした。

着荷の確認

アマゾンからはとてもヘッドフォンとは思えない大きな梱包で届きました。内情を知る友人に聞いたところ、適合した梱包のラインが混んでいると、自動的に大きな梱包箱のラインに回るとのことでした。ボーナス支給後の間もないタイミングでしたので説明どおり梱包ラインが混んでいたものと思われます。

SE-MHR5レビュー

ヘッドフォン自体の梱包はシックでありながら高級感もあり好感がもてます。

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外箱は上から被せるタイプなので、上に引き抜きます。中箱は白箱に金文字でメーカーロゴのみ印刷されています。さらに開けると、クッション材の中に携帯用バッグが納められています。携帯用バッグのファスナーを開けると、中にはヘッドフォン本体と2本のケーブルが納められていました。

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折り畳まれたヘッドフォンを取り出しイヤーパッド部分を広げてみます。

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まず目に付いたのは、イヤーカップ部ダクトです。

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メーカーのサイトによるとバックチャンバーを2重構造として遮音性を高め、なお且つ低域特性のコントロールをしているとのことです。果たしてどこまで効果があるのでしょうか?

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次に目についのが、片出しのジャックです。

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付属のケーブルをみると、4極の3.5mm端子となっており、抜け防止の鍵のような特殊な形状となっていて、位置を合わせて差し込み捻ってロックします。

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簡単な構造ですが、接続部の信頼性が高められています。話がケーブルに及んだので、付属のケーブルを確認してみます。アンバランス用とバランス用の2本が付属されてます。

■アンバランス用ケーブル

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■バランス用ケーブル

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本体側は上で紹介したとおり、4極の3.5mm端子が採用され薄ピンクの金属ボディーとなっています。他方アンプ側は、使い勝手を考慮してアンバランス・バランスケーブル共にL字の端子が採用されています。アンバランスケーブルのアンプ側は普通の3.5mmステレオ端子となっています。一方バランス用は4極2.5mm端子が採用されています。バランス方式のヘッドホンアンプの保護の観点では、通常のヘッドフォン用ステレオ端子が刺さらないように4極2.5mm端子の採用は意味があると言えます。すでに別のメーカーからもこのタイプのバランス対応のヘッドフォンケーブルが発売されており、デファクトの流れに乗るかもしれません。イヤーパッドは人工皮革のやわらかい物が採用されていますが、耳を押さえるタイプの為、ネット上には長時間の鑑賞には向かないとの書き込みがありました。

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細かな点ですが、L/Rのマーキングはオーバーヘッドバンドの根元に刻印されていて目立ちませんが、親切なデザインとなっています。

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前回の記事には書きませんでしたが、このヘッドフォンも強磁力希土類マグネットが採用されています。

携帯用バッグ

私は外で使用する予定はありませんが、付属のバッグは保管の際に埃の防止とポケットにケーブルをいっしょに保管することで必要な時に探し回る心配が減らせる利点があります。

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今回は音のレビューはしませんでしたが、作りは価格の割に良いと感じました。次回はこのヘッドフォン用のヘッドフォンアンプの構想および設計を行います。

 

つづく(設計編)