チャンネルデバイダーのVR制御(構想編2)

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構想編2

前回の記事でアッテネータの減衰量切り替えにリレーの選定をしたので、具体的な構成を検討します。

実使用時のボリューム

写真は現状のシステムで使っているデバイダ兼ボリュームのパネル写真です。

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見栄えは悪いですが、2つのボリュームにそれぞれ2カ所位置を示すマーキング(三角のシール)を貼っています。これは、いつも音楽を聴くときにボリュームがとるポジションを示しています。2ヶ所あるのは、CDの録音レベルが高いものと低い物に対応するためです。普段はこの2つのポジションを中心に上下を微調整して使っています。下の図は、現システムのボリューム前後のブロック図です。減衰量は、ボリュームの位置と後段のパワーアンプの入力抵抗で決まります。

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2つのポジションの減衰量を算出するために、前段から見た負荷抵抗R1と後段から前段を見た出力側抵抗R2を測定し、それぞれの減衰量を算出しました。

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この2つの減衰量に対して上下に2段づつ減衰量を設定すれば実用上あまり不便は感じないと考えます。さらに実用上の利便性を考えて、さらに減衰方向に2段階追加して全8ステップで検討してみたいとおもいます。

リレーATT回路

8ステップを8個のリレーで構成するのは芸がないので、Muteを含めて下記の回路で検討をしてみます。Muteを含めて9ステップを6個のリレーで構成します。

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こだわるのであれば、前段から見た負荷抵抗を全ステップで同じにすべきですが、リレーの数を減らす為に妥協しています。尚、現状の回路もボリュームの位置で負荷抵抗値が変化します。この回路構成で、上から3段目を-12dB、4段目を-16dBとし、また切り替えの途中のステップとMute時にも前段から見た負荷抵抗が重くなりすぎないように抵抗値を設定してみました。下記が抵抗値を反映した回路図です。

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動作前提は、RL2~RL6のどれか1つのリレーがオンし、RL1の設定で分圧による減衰量がきまります。試行錯誤により決定した抵抗値は以下のとおりです。

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実用ポジションが-11.4dBと-16.0dBで最大音量時が-6.0dBで実用ポジションからの5.4dBのマージンが、最小音量時が-34.7dBで実用ポジションからの減衰量が-18.7dBとれています。なかなかいい感じに設定できたのではないでしょうか?念のために、各減衰量で実際に音楽を聴いてみる事にしました。現行デバイダーのウーハー用のボリュームツマミの下に紙を貼って、上記一覧表の減衰量となる位置に印をつけて、録音レベルの大きいCDと小さいCDを演奏してみます。各ポジションは、テスタでボリューム端子間の抵抗値を測定して指定の減衰量の位置を出しています。

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現状の2つの実用ポジション間が開いていますが、それ以外はいい感じの間隔となっています。実際に音楽を再生して各ポジションの音量レベルを確認しました。実用上不足はなさそうです。

リレー制御

簡単に制御するには、9ステップのロータリーSWと、Mute用のSWで構成する事もできますが、切り替え時のノイズ発生を押さえるためのディレイ制御等を考えるとマイコンによる制御が望ましいと考えました。私のようなアナログ人間には敷居が高いですが、せっかくなので今回はシリーズ初のマイコン制御を採用してみたいとおもいます。

マイコンについて

私のソフト経験ですが、大学でBASICを習い、その関係でシャープのポケットコンピューターを買って使っていたので、BASICに関してはそれなりに使いこなしていました。その後、会社に入社してから業務上必要となり、アセンブラをかじりました。そんな感じて、C系のプログラムを本格的に書いた事がありません。万が一完成できなかった場合のいいわけはこの程度にして、今回は安価に開発環境込みで手に入る、Arduino UNO(マイコンボード)を使った制御を検討してみます。

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次回はArduino UNOを簡単に紹介して、環境の構築およびソフトの製作について紹介します。

 

つづく(構想編3)

チャンネルデバイダーのVR制御(構想編1)

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構想編1

現行システムのフルマルチアンプ化を念頭に、現状のチャンネルデバイダーのボリューム制御を構想します。

現状のチャンネルデバイダーボリューム

前回の記事でも紹介しましたが、現状のチャンネルデバイダーは入出力がバランス方式で、LPFチャンネルとスルーチャンネルの2系統を持つので、ボリュームは全8チャンネルとなっています。

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その8チャンネル分を、2つの4連ボリュームで構成し、使い勝手としてはBass/Trebleというような感じで使っています。

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これと同じ考え方で3wayに拡張すると、Mid用のボリュームを追加する事になりますが、使い勝手が格段に悪化します。それ以前に音のバランスをマニュアルで取る事ができるか自信がありません。

12チャンネルボリューム構想

今までも、部品の調達の際のついでに、多チャンネルのボリュームやロータリーSWを探してきましたが、探すまでもなく、12チャンネルに対応したものはありません。次に4連のボリュームの連動も考えてみました。モーターボリュームを使った電気的な連動や、メカ的な連動ですが、実用に耐える設計はできそうにありません。それでは、電子ボリュームはというと、多チャンネルの連動はできそうですが、ネット上の製作記事によれば、音はそれなりとの事で採用に踏み切れませんでした。

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今回は原始的な方法ですがリレーを使った多チャンネルボリュームを構想してみます。

リレー

今まで仕事で電源用リレーを使ってきましたが、趣味(オーディオ)でリレーを使った事がありませでした。まずはオーディオ用リレーについて調べてみました。一番のポイントは小電流の開閉です。オーディオ用途ではスパークによるセルフクリーニング機能が働かず、接点の酸化膜による接触不良の防止が、オーディオ用リレーの1番のポイントのようです。

■接点材質による対策

リレーメーカーのWebページにいくつか情報が掲載されています。対策として「金クラッド接点」と「金メッキ接点」が上がっていました。どちらも安定性の高い金を接点につかったものですが、金クラッド接点は、金属母材の上に板状の金を貼り付けた構造をとり、金メッキタイプに比べて金層が厚く均一で、ピンホールの発生がなく、微少信号の開閉に適しているとの事です。

■接点構造による対策

接点開閉動作時にお互いが擦れる構造をとり、接触の信頼レベルが高まり小信号の開閉に適していると説明されています。調べた範囲では、オーディオ用途には適用されているか確認できませんでした。

■リレーの構造による対策

リレー接点部をプラスチックケース等で密閉し、接点に影響を及ぼすガスの進入を防止して、接点の信頼性を上げます。この構造もオーディオ用のものには見つかりませんでした。

リレーの選定

まずは秋月電子のラインナップを確認してみました。パナソニックの音響機器用リレーALA2F24を見つけました。操作コイルは24V仕様で接点容量は3A、接点仕様は2a品です。

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接点はAgNi系のAuクラッドタイプで、価格は180円です。秋月電子ラインナップで明快に音響用を唱っているのは、これだけでした。他を検索したところ第一電機(DEC)のDSシリーズオーディオ用を唱っています。

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接点容量は3A、接点仕様は2a品で、金クラッド接点となっています。残念ながら通信販売の取り扱いの確認はできませんでした。パナソニックとDEC製リレーのどちらもユニバーサル基板には対応していない為、私のような基板を起こさない趣味レベルの製作には不向きな仕様です。ユニバーサル基板対応のもので探してみたところ、秋月電子に手頃な物を見つけました。HSIN DA PRECISION社製941シリーズです。

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接点はAgAlloyとなっていますが、Featureに「Silver palladium overlaid gold crossbar」と記載されているので金メッキ接点のようです。接点容量は2Aで接点仕様は2cです。端子配置は以下のとおりでユニバーサル基板に対応しています。

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金クラッド品に対して接点の信頼性は下がりますが、自作なので交換用の部品さえ手配しておきば、柔軟な対応ができる事と、価格も100円と手頃なので、これを使って検討を進めたいとおもいます。次回も具体的な設計前の構想を続けます。

 

つづく(構想編2)

1000Mフルマルチアンプ駆動化検討(構想編1)

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構想編1

セミマルチアンプ駆動している現状のシステムのフルマルチアンプ化を構想します。

現状のシステム

フルマルチアンプ化の構想の前に、現状のシステムをおさらいしておきます。

■スピーカー

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YAMAHAのNS-1000Mをマルチアンプ対応させるために改造しています。具体的には、ネットワーク兼スピーカーターミナルを取り外し、そこへ各ユニット専用のスピーカーターミナルを設置しています。

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取り外したネットワークは、スピーカーの上に置き、現状はスコーカーとツィーターのみネットワークを介して、アンプと接続しています。

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ウーハー接続用端子には、ダミー抵抗(8Ω)を接続しています。

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現状のセミマルチアンプシステムでは、ウーハーのみパワーアンプにダイレクトに接続しています。

■スコーカー&ツィーター駆動用アンプ

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自作の純A級バランス方式LE34ppパワーアンプを使用しています。参考に回路図を再掲載します。

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数年前に初めて真空管を採用したこのパワーアンプを作った時の音の印象は、響きが美しく、マルチアンプを組む場合はスコーカーの駆動に使いたいと思いました。出力段のトランスは、超低域の駆動は不利ですが、スコーカーを駆動する事を考えるとDCオフセットが発生しないため、理想的なアンプと考えます。設計は差動入出力の帰還方式でおこないましたが、運用の途中で無帰還方式に改造して使用しています。

■ウーハー駆動用アンプ

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自作のモノラルBTL方式A級DCパワーアンプを使用しています。終段はパラレルコンプリメンタリ構成をとっています。

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BTL方式なので、Hot/Cold用にそれぞれ上記の回路を1つ使用します。終段の電源には、電流容量5Aのトランスと、10,000uFの電解コンデンサを10本使用し、トータル100,000uFで整流回路を構成しています。このアンプと、1000Mのウーハーをダイレクトに接続して、ウーハーの駆動力を高めています。

■チャンネルデバイダー

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バランス入出力、セミ2way用の自作チャンネルデバイダーです。ウーハーチャンネルのみLow Passフィルターを入れ、スコーカーとツィーターはネットワークの使用を前提としているため、スルーで出力しています。

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ウーハー用のフィルターは、オペアンプJRCのMUSES03を使ったベッセル特性の2次のアクティブィルターを採用しています。出力段にボリュームを入れて、システムのレベルコントロールも行っています。

■USB-DAC

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オンキョーのDAC-1000をオリジナル状態で使っています。DACにステレオ用のもの(BB社製 PCM1795)を2個使用して、バランス出力を作っています。

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現状は、マランツのCDプレーヤーからコアキシャルのデジタル信号を入力して音楽再生しています。

フルマルチアンプシステム化構想

上記のシステムをフルマルチアンプ化するためには、現状スルーの信号ラインとしているスコーカーとツィーターチャンネルをチャンネルデバイダーラインに変更する必要があります。具体的な対応を箇条書きします。

・チャンネルデバイダーの拡張(3way化)

・NS-1000MのスコーカーとツィーターラインからATTとネットワークの取り外し

・スコーカーまたはツィーター駆動用のパワーアンプの準備

フルマルチアンプシステム化課題

上記の対応を行う上での課題を箇条書きします。

1)3Wayバランスステレオシステムのボリュームコントロール

2)3Way各ユニットのレベル合わせ

3)ステレオパワーアンプ(1台)の準備

特に今回の構想の中で一番課題として重いものは1)項です。全12チャンネルを連動させてボリュームコントロールする必要があります。正直なところ、今回の構想のハードルは高いので、現状のセミマルチアンプシステム用のボリュームコントロールを3Wayに拡張可能な仕様で一旦つくり使い勝手等の確認を行いたいとおもいます。という事で、次回からは、チャンネルデバイダーのボリューム制御を現行のシステム前提で検討したいとおもいます。

 

つづく(構想編1)

安定化電源性能改善(まとめ編)

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まとめ編

製作した電源の特性のまとめを行い、載せ替えたチャンネルデバイダーの音質評価をおこないます。

特性改善結果のまとめ

音質評価の前に、今回の特性改善についてまとめをします。改めて新旧回路を掲載します。旧回路は各チャンネルトランジスタ3石(今はこんな言い方はしませんね)で構成しています。

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ループゲインが低く、かつトランジスタのCobの影響を受けやすい回路構成となっていました。これらを改善するため、ドライバにCobの小さなトランジスタを選定し、かつダーリントン構成をやめました。さらに誤差アンプにオペアンプを使用してループゲインをかせいでいます。

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特性比較まとめ

矩形波応答比較

波高値70mA(負電源観測時60mA)と10mA(負電源観測時0mA)1KHz矩形波状の負荷電流を流して出力電圧の応答をポケットオシロで観測しました。正電源はch1を負電源はch2の応答波形を代表して掲載します。左が旧電源、右が新電源の波形で、新電源の応答波形のみ、10倍のプリアンプを通して観測しています。

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各チャンネルの過渡応答値は以下のとおりです。

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全チャンネルで改善する事ができました。

■出力インピーダンス周波数特性比較

波高値70mA(負電源観測時60mA)と10mA(負電源観測時0mA)正弦波状の負荷電流を流して出力電圧の応答をポケットオシロで観測しました。観測周波数範囲は、10Hz~100KHzで、その結果を等価インピーダンスに変換してグラフ化しました。正電源と負電源の比較結果は以下のとおりです。

■正電源出力インピーダンス周波数特性

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■負電源出力インピーダンス周波数特性

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旧電源の結果は、ch1とch2を代表として掲載しています。今回製作した電源は、正電源は測定範囲全域で、負電源は可聴範囲全域で旧電源に比べて低インピーダンスとなっている事が確認できました。正負電源ともにファンダメンタル帯域の改善量が大きく取れている事が特徴です。

音質比較

電源を入れ替えたチャンネルデバイダーをシステムに組み込んで音質を確認していきます。毎度代わり映えしませんが、システムブロック図を参考に掲載しておきます。

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音を最初に聴いた感じは、大人しい印象です。このためボリューム位置をいつもよりもやや上げて聴きました。

■Take Me To The Mardi Gras/Bob James(BJⅡ)

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中域のブラスの分離が良く、余韻が消えるまできれいに聴こえます。低音の印象はかわりませんが、普段よりボリュームを上げた事で、中域の改善とバランスが取れているように感じました。出だしのドラムが生き生き鳴ります。

■海風/風(海風)

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出だしのアコースティックギターの音が暖かみがあり、リアルな感じで鳴ります。男性ボーカルも暖か感じで歌われます。

■冬京/風(海風)

ベースの音が素直に低域まで伸びます。ギラギラ感がなく、ベースの音がまろやかに聴こえます。

■卒業写真/井筒香奈江(RINDENBAUM)

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ボーカルの定位が良く、音像が明瞭です。比較的ボーカルがオンな感じを受けました。余韻もきれいです。

■When You Wish upon a Star/Kenny Drew(Special)

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ピアノの音がきれいに響きます。ギラギラ感が全くない為か、ハデさはありません。素直に鳴ります。

まとめのまとめ

音はハデさはなく、素直な感じです。評価の冒頭でも書きましたが特筆すべき点として、感覚的に従来と同じ音量で聴こうとした時のボリューム位置が上がった事です。電源の変更で、アンプのゲインが変わる事はありませんので、音の印象の差による変化と考えられます。さらに他の楽曲を聴いていくのが楽しみです。2018-4-15から全13回におつきあいいただきありがとうございました。

 

おわり(まとめ編)

安定化電源性能改善(製作編5)

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製作編5

基板が完成したので、チャンネルデバイダーの電源を載せ替えます。取り外した電源基板は、矩形波応答の再確認を行います。

チャンネルデバイダー

製作した電源を搭載するチャンネルデバイダーを簡単に紹介します。最近手をかけたのは、「実験バッテリードライブ」記事で2018-2-23~2018-3-23に掲載した現行電源とバッテリードライブの音質比較です。回路の改造については、「女神たちの争い」(2018-1-26~2018-2-20)でアクティブフィルタに使用するオペアンプをMUSES01からMUSES03に変更しています。参考に回路を再掲載します。

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電源基板の載せ替え

現行の電源基板は、こんな感じで搭載されています。

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これを今回作成した電源基板に載せ替えます。端子台の位置をほぼ同じにしたので基板の載せ替えはわけありません。載せ替え前に、電源基板の外観を比較してみます。

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トランジスタ式の安定化電源は、各チャンネルの入力に4.7uFのフィルムコンデンサーを実装したので基板自体に迫力があります。今回の基板用に同じフィルムコンデンサーを4個購入していましたが、実装スペースの関係で搭載を断念しました。記事を書いていておもいましたが、全波整流用の電解コンデンサに並列接続して2個のみであれば実装できました。今後の楽しみにとっておきたいと思います。新基板をシャーシに実装するとこんな感じになりました。

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入れ替え前は、ヒューズホルダと放熱器のクリアランスがあまりありませんでしたが、今回、放熱器を寄せて実装したため、クリアランスが広がりました。(アイキャッチ写真参照)前回の記事でもアナウンスしたとおり、音質の比較の前に、現行基板の矩形波応答の再確認を行います。

行基矩形波応答

この基板の製作のタイミングで、評価用にジグ基板を同時に製作しています。使い方に慣れていなかったため、結果に違いがでるかもしれません。そもそも4チャンネルのうち、ch1のみしか確認を行っていないため、これを機会に全チャンネルを再確認しておきたいとおもいます。

正電源ch1矩形波応答

今回再測定した結果は以下となります。

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これは正電源ch1の結果で、立ち下がり時が4.64Vで、立ち上がり時が84mVでした。下記がいままで結果として掲載してきたものです。

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結果として、どちらも10倍のプリアンプをとおした波形として、立ち下がり時が440mV、立ち上がり時が7.4mVとして記事に掲載していましたが、今回の確認から当時の測定もプリアンプを使用していなかった事がわかります。数値がやや小さい点は、負荷電流の振幅がやや小さい事に起因しています。いままでの記事の記載に関しては地道に修正をしていきたいとおもいます。ch2以降の今回の観測結果を掲載します。

■ch2矩形波応答

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■ch3矩形波応答

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■ch4矩形波応答

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今回Tr式の負電源の矩形波応答を初めて観測しましたが、レベルは異なりますが、正電源の極性違いの応答となっていました。これらの結果を整理してみます。

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通常の音楽再生時にはこのような矩形波応答は発生しませんが、今回の確認結果レベルを考えると精神衛生上あまり良いものではありません。この点も今回の製作の効果が期待できます。次回は、結果の整理を行った上で音質の確認を行います。

 

つづく(まとめ編)

安定化電源性能改善(製作編4)

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製作編4

常用基板正電源ch3のインピーダンス周波数測定を行い、続けて最後のチャンネル負電源ch4の実装および通電確認、評価を行います。

正電源ch3インピーダンス周波数特性測定

測定条件は従来と同じなので説明は省略します。測定結果は以下のとおりです。

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試作、ch1、ch3とほぼ同等の特性となっています。試作回路は2kHz以上の帯域でインピーダンスがやや大きくなっていますが、矩形波応答対策の位相保証コンデンサオペアンプ負荷抵抗変更をしていない為です。どれも大変素直な結果となっています。

負電源ch4実装

最後のチャンネルの実装です。他のチャンネルと異なり、一番端の実装の為、電源ライン脇にGNDラインを他チャンネルと同じように引けません。従って、ch2の実装をそのまままねる事はできません。仕方がないので、出力引き出し用の列にGNDを引き込んで対応する事にしました。

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この対応でオペアンプの負荷抵抗の実装は問題ありませんでしたが、基準電圧用のツェナーダイオードの実装を工夫しました。写真のとおり被覆ジャンパー線を使わずに実装する事ができました。部品面はこんな感じです。

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心配していた片寄せして実装した放熱器は以下写真のとおりです。

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特に問題はなさそうです。

負電源ch4通電確認

Volを3.8KΩ対1.2KΩの位置にプリセットして通電確認をします。入力はユニバーサル電源から-16.9Vを供給します。電源オンして出力を12.0Vに調整しました。調整後の各部電圧は以下のとおりです。

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負電源ch4矩形波応答

他チャンネルと同様に60mApp/1KHzの負荷電流時の矩形波応答を確認します。結果は以下のとおりです。

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今回の波形は黄色のラインがオペアンプ出力をモニタしています。過渡応答値は、立ち下がり時が74.0mV、立ち上がり時が40.0mVでした。両者の数値の違いがオペアンプ出力を見るとわかるかとおもいましたが、数値の違いがそのまま誤差出力としてモニタされているだけで、原因の推定まではできませんでした。この結果も過渡応答値の一覧表へ追加します。

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今までの結果と比べてやや良い値となっています。

負電源ch4インピーダンス周波数特性測定

このチャンネルも同様に測定を行います。結果は以下のとおりです。

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ch2とch4はほぼ同じ結果となっています。試作の結果は全帯域でやや悪くなっていますが、正弦波応答のレベルをポケットオシロのVpp値を使った事による影響と考えられます。

パイロットランプ回路実装

これで実装が完了したかと思いましたが、パイロットランプの点灯回路実装を忘れていました。消費電力面では不利になりますが、全波整流回路の+/-から電力供給する事で、+と-電源のバランスを崩さず、且つGNDに余計な電流を流さずに済みます。2極の端子台位置は、現行の基板に合わせました。

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念のため点灯確認を行います。ユニバーサル電源から+/-16.9Vを供給します。端子台へダイレクトにLEDを接続して電源オンします。

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問題なく点灯しました。+/-電源を供給は初めてだったので、念のため4チャンネル分の出力電圧の確認も合わせておこないました。これも特に問題ありませんでした。今度こそ、全ての実装が完了しました。次回、チャンネルデバイダの電源の載せ替えを行い、先日の記事で書いたとおり、取り外した現行基板の矩形波応答を再確認します。

 

つづく(製作編5)

安定化電源性能改善(製作編3)

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製作編3

常用基板負電源ch2の実装および通電確認が完了したので、特性の測定を行います。引き続き、正電源ch3の実装、通電確認を行います。

負電源ch2矩形波応答

今までの測定と同様にジグを使って矩形波応答を確認します。負荷電流は波高値60mAと0mAの1KHzの矩形波です。下記が観測結果です。

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立ち下がり時の過渡応答値は、78.0mVで立ち上がり時は、46.0mVでした。前回の記事で作成した「結果一覧表」へ本結果を追加します。

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今回の結果を見ると、試作基板負電源と全く同じ結果となっていました。転記ま違いかとおもい、波形のキャプチャを見直しましたが、微妙に数値が異なっている部分があり、この結果は正しい事が確認できました。傾向的に立ち下がり時の過渡応答値が大きく(78.0mV)なっていますが、ch4の結果に注目したいとおもいます。

負電源ch2インピーダンス周波数特性

今までの測定と同様に波高値0mAと60mAの正弦波を10Hzから100KHz振って応答波形を観測しました。

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レベル観測は、前回の記事で説明したとおりポケットオシロのカーソル機能を使います。下記がインピーダンスの周波数特性の結果です。

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結果を見ると、試作回路、三端子レギュレーター版と比べて可聴帯域内では、一番良い特性となっています。20KHz以上で三端子レギュレータ版の特性が良くなっているのは、出力段に取り付けた100uFの電解コンデンサの効果によるものです。音質比較がますます楽しみになってきました。

正電源ch3実装

ch3の実装は、完全にch1実装をまねるだけで済みます。正直なところ惰性の実装です。この油断がミスを招いてしまうのですが。唯一、考えた点は、全波整流回路から安定化電源への+電源の引き込みです。ch4のー電源の引き込みを考慮しつつ、配線が容易となるように、ブリッジダイオードの+出力へ配線を行いました。

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ch3実装後の写真を取り忘れてしまい、一部ch4の配線がされていますが、ch3の電源引き込みラインをch4の電源およびGNDの配線にジャンパーを使って逃がしている部分が確認できます。部品面はこんな感じです。

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今回の製作では、試作基板と常用基板用にオペアンプを4個しか購入しませんでした。当初は、ch1とch3およびch2とch4でそれぞれ1つのオペアンプを共用する予定でしたが、実装面で現実的ではないとの判断から、各チャンネルで専用にオペアンプを実装する方針としています。このため、オペアンプが足りなくなってしまい、試作基板に実装した分を使い回して、対応する事としました。

正電源ch3通電確認

ch3の確認のみを行うため、ユニバーサル電源から+16.9Vのみを供給して確認を行います。ここまでくると、ミスもなくなり出力電圧調整も問題なくできました。下記が調整後の各部電圧確認結果です。

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ch1の電圧と比較して、やや高めの電圧になっていました。

正電源ch3矩形波応答

測定条件は、他のチャンネルと同じにして観測しました。下記が観測結果です。

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左が負荷電流立ち下がり時で、過渡応答値は46.0mVで、右が立ち上がり時で、58.0mVでした。一覧表に結果を追加しました。

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試作基板の結果、ch1の結果と傾向的には同じですが、ch3の結果はややおおきな値となっていました。次回は、ch3のインピーダンスの周波数特性の測定とch4の実装、通電確認をおこないます。

 

つづく(製作編4)